毎日投稿したいけど、中々時間なくて申し訳ないです。
胎動修羅―①
『――であり、専門家の見解も現段階では不明瞭な部分が多々あるため、回答が出来かねるとのことでありました。現場からは以上です』
『いやぁ~! ホンマに不可思議な現象ですね~! 先程紹介にありました神社は、由緒正しい神社であり、その神社で起こった数々の不可解な現象なんですけどね? 私は現政権による腐敗が横行した結果、祀られている神様達の逆鱗に触れたと思ってるんですよ! なにせG党による政策は、庶民の皆様の生活を脅かすものばかり――』
TVからニュースがBGMかのように垂れ流されながら、
「夜宵ちゃんは本当にお勉強が好きだよね! はぁ~、螢君……♡ まだかなまだかな?」
チラっとスマホの画面を確認し、螢多朗の現在地を確認しながら、「螢君……♡」と思わず感嘆の声を上げる詠子。
そんな詠子のストーキングなど知るはずもない螢多朗は、ゆったりとした歩調で真っ直ぐ寶月家に向かっており、次の角を曲がれば目と鼻の先に寶月家。
「きゃー! 螢君がもうすぐ来るぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! もっと速く歩いて! 螢君ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
思わず詠子はその場で叫ぶと、
(了解。じゃ、この子でも持って行くか)
無造作に人形を抱きながらテクテクと夜宵は階段を下りていくのだが。
いつも通り夜宵に声をかけるのを忘れ、既に準備万端な様子で螢多朗を心待ちにする詠子が玄関で待機していた。
(……流石は詠子。引くわー、普通に引くレベルでマジ凄いわー。報連相って知ってる? って小一時間問い詰めたいレベルで引くわー。……だけど毎回こうやって螢多朗がいつ来るかはすぐに分かるし、居候の身だし、別にいいけど)
そうしてインターホンが一度鳴った瞬間に、寶月家の玄関の扉がゆっくりと開かれる。
満面な笑みで出迎えする詠子と、大好きな人形を抱き締めながら真顔で出迎える夜宵。
二人のギャップにもう慣れてしまった螢多朗は普通に挨拶し、家庭教師として今日も一日頑張ろうと螢多朗は誓っていた。
※
「……ねぇ、夜宵ちゃん? 本当に夜宵ちゃんは家庭教師必要なのかな? 僕、何も教えることがないんだけど?」
そりゃそうだ、毎回問題集の問題の解答が全て正解なのだ。
真面目な性格の螢多朗は、段階的に問題のレベルを上げ続け、夜宵の限界を知ろうと試みているのだが、既に超難関校で有名な高校受験の過去問すら夜宵は難なく全問正解してしまっている。改めて夜宵のスペックの高さに驚かされるのと同時に、これ以上何を教えればいいのか本気で分からなくなっている螢多朗が夜宵の目の前にいた。
(……ヤバい。へなちょこメンタルの螢多朗がマジで悩んでいる。どうせまたうじうじする。よし、ここは一つ――)
「螢多朗、ごめん。この過去問、実は何度か解いていた。だからすぐに解けた。ただそれだけ」
「あ、あぁ! そ、そっか! そうだったんだね! ごめんね、夜宵ちゃん……。じゃあ次来るときにさ、これまで解いた過去問に関して、答えれる範囲でいいからアンケート形式で答えれるようなシートを作ってくるね! だからそれさえ分かればさ、用意する過去問に関して――」
(うわ、めんどい。螢多朗の自信を取り戻せたけど、マジでめんどい。だって今まで過去問なんて解いたこともないんだもん。まぁ、いいや。適当に詠子に答えさせよう。それでいい、詠子?)
(オッケー! 螢君のケアは任せてね! どんどん私に任せて!)
螢多朗が真面目に今後の内容を話している間、螢多朗にバレないように夜宵と詠子は情報共有を行っていた。
その方法とは互いの瞬きの回数及び次の瞬きまでの空白の時間を利用したものであり、モールス信号に近いものと言えば分かりやすいだろうか? 夜宵は螢多朗の話を聞きながら適当に頷きをする。螢多朗の背後にキッチンがあるので、そこから詠子は夜宵の瞬きを自然に確認できるという寸法だ。
しかも夜宵も詠子もかなりのハイスペック女子。即ち、互いに瞬きの回数や空白の時間を瞬時に脳内で言語化し、内容を完全に理解するやり取りを今まさに行っているのだ。
この方法を考案したのは、鬼子母神との戦い後であり、螢多朗を大切に想っている夜宵が詠子に提案したのだ。何より恐ろしいのが詠子がたった数時間程度で、瞬きによる情報交換マニュアルを完成させ、夜宵にそのマニュアルを渡し。マニュアル完成後から僅か一時間足らずの練習だけで、互いに完璧に使いこなすようになった。
当然ながら螢多朗は二人の情報共有システムなど理解できるはずがない。
なんせ夜宵の瞬きが多いのは、自分が知らないところで勉強を頑張っているであろうという認識からだ。
故に先程の過去問の件も素直に信じ、螢多朗は照れくさそうな表情で夜宵に今後の勉強方法を説明している。
よって、自然な感じで夜宵は、円滑に螢多朗のモチベーションを上げることに成功し、何より嫌がる螢多朗を連れて心霊スポットに行ける下準備も同時進行で行っているのだ。
「――というわけなんだ! 夜宵ちゃん、どうかな?」
「最高にグッドアイディア。流石は螢多朗。真面目なへなちょこ野郎だぜ」
「ちょ、ちょっと!? 言い方! もう! あ、夜宵ちゃん、ごめん! 少し休憩にしよっか! トイレ行ってくるね!」
「うんこ? 詠子のためにいっぱい出すがいい。何なら床等も汚してもいい、中年のおっさんのように。びちょびちょになるがいい」
「や、や、夜宵ちゃん!? 螢君に失礼でしょ! き、気にしないでね、螢君! 汚しても大丈夫だから! 私がしっかりと掃除はするからね! なるだけゆっくり出していいからね! きばっていこ~! すと~!」
「……は、ははは。気遣いありがとうね……」
※
「そう言えばさ、夜宵ちゃん。ちょっと教えて欲しいことあるんだけどさ?」
「何? この子のこと? たまたま拾った子。また集めないとね」
そう言いながら大好きな人形の首をゆっくりと締め付ける夜宵。
夜宵の手でバタバタと手足を動かしながら悶え苦しむ人形をじっと眺め、特に何も感じず詠子は話の続きを始める。
「あー、その子のことじゃなくてね? えっとさ、さっきニュースで流れてたんだけどね? とある神社の境内が酷く損壊したんだって! 多くの国登録有形文化財に被害があったせいか、全国のニュースになったのかな? でね? 専門家も呼んで原因究明している最中なんだけど、その地域で大震災が発生したわけでもないというのに、被害状況がそれに匹敵するんだって! 夜宵ちゃんはさ、私なんかよりも詳しいじゃん?
「……詠子、録画してたりする? 実際に見ないと分からない」
「録画はちょっと……。あ! 動画サイトのニュースまとめに上がってるね! えっとちょっと待ってね! TVの画面で表示っと……。すと~!」
そう言いながら詠子はリモコンを操作し、すぐさまTVの画面に先程流れていたニュースがそのまま流される。
と、同時にある異変が人形に起こった。
「……これは螢多朗に見せるべきではない! 今すぐ消して、詠子!」
「え、あ、は、はい!」
画面が消されたのと同時に、螢多朗がリビングルームに戻ってきたのだが。
螢多朗はすぐにある変化を察知し、夜宵にこう語りかけた。
「
「この子、要らない子だった。だから暇潰しに殺した、ただそれだけ」
下手な嘘だ。
だが、そう言わなければならない程までに夜宵は考える余裕がなかった。
何せ神によって夜宵の部屋は荒らし尽くされ、一人の卒業生が誕生したばかりであり。
だからこそ現在夜宵は、更なる戦力増強のために悪霊を集めている最中であり、まだまだ悪霊のストックが足りていない状況だ。
故に危険な心霊スポットに行きながら戦力増強を三人で行い、大したことない悪霊であれば即座に夜宵一人で散歩感覚で集めている。そんな大したことない悪霊でさえも、互いに殺し尽くしあえば新たな卒業生になることは既に実証済みであり、だからこその螢多朗の質問だったのだ。
「……実はね、おばあちゃんから着信があったんだよ。懇意にしている神社だったんだけど、かなり損壊している状態みたいな感じでね? で、おばあちゃんがこう言っていたんだ」
「――何? どんなこと言ってたの、おばあちゃん」
「
「……。だから、何?」
「だから……、ね? 夜宵ちゃん、僕は夜宵ちゃんの先生なんだ。だからさ、正直に話して欲しい。改めて聞くよ?
螢多朗はゆっくりと人形を指差し、じっと夜宵を見据える。
夜宵の目の前に映る螢多朗は日常の螢多朗ではなく、夜宵の頼れる相棒として――闇を狩る相棒として真剣な表情をしていた。
「
「え!? わ、私!? 私、何も悪いことしてないよ!? たださっきTV画面にニュースを流して――」
「
「っ!? わ、分かったよ! 夜宵ちゃん! 特に詠子! 絶対に触っちゃ駄目だよ! 約束だよ!?」
「は、はい! わ、わ、わ、分かりました!」
【専門用語等】
現在の夜宵ちゃんの部屋……可愛いお人形さんが沢山であったが、キャッキャウフフな感じで神様にぶっ壊された。結果、新たな卒業生が誕生。「戦力整えなきゃ……(使命感)」により、新たな卒業生を作るために人形が少しずつ増えている。
卒業生……ガチャで言うならば、レアリティが高い存在。レア度がNから進化してSRになったね! ヤバイ神霊スポットにはレア度が高い卒業生予備軍が沢山いる。やったね、たえちゃん! これで新しい家族が増えるよ! みたいなアレ。