名前の無い少女は。
主人公side
今日も聞こえる、ターゲットの悲痛な叫び声。
だけど私はやっぱり何も感じることが出来ず、銃弾を撃ち放った。
私の表情は、どう見えているだろう。
きっと氷のように冷たい目をしているに違いない。
目の前に転がった死体を見下ろしながら、私は携帯をいじった。
無事ターゲットを殺したことを報告するためだ。
私は裏社会で働いている。
私みたいな人間は、こんな汚い世界に居るので精一杯。
「…バカみたい」
よく思う。
私はどうして生きているのかと。
何のために生きているのかと。
寝ても覚めても、目の前に映るのは真っ赤な血と悲痛な叫び声。
寝ても見るのは悪夢だけ。
そのせいでクマが酷いけど、そんなことを気にしていては仕事にならない。
「………はぁ」
私は再びため息をついて、自身の住処へと帰るのだった。
夜の12時を回った深夜にも関わらず、私の歩く街は喧騒で溢れていた。
相変わらずこの場所は治安が悪い。
だけど、家賃が安いのが唯一の魅力だろうか。
私の住んでいる場所はいわゆる貧民街だ。
生まれた時からこの街に居て、大人達の汚い行動も全部見てきた。
麻薬、殺人、窃盗。
そんなの日常茶飯事。
食べる物も着る服も、全部他所街の家から盗んできた。
だってそうしないとここでは生き残れなかったから。
善悪なんて関係ない。
必要なのは生きられるかどうか。
幼い私は死ということに敏感だった。
しかし、今では死というのは私の日常にあり、些細なものになっている。
ある日私は偉い人に才能を買われ、殺し屋になるための訓練を始めた。
『偉い人』が言うには、私には殺し屋の才能があるらしい。
そんなもの、欲しいとも思わなかったけど。
…だけど。
これが私の生きる道だ。
これしか、私の生きる道は無いんだ。
そんなことを考えながら私は携帯に目を通す。
そこには次のターゲットとなる可哀想な人の名前やら何やらが載っていた。
可哀想、と思うけど実は本心ではない。
どうせ人は死ぬんだから、別にいいじゃん。
こんなことを考える私は狂っているのだろうか。
「……はは」
乾いた笑いが口から漏れる。
狂う筈だ。
こんなおかしな世界に何年も居るのなら。
だけど、今更戻りたいとも思えなかった。
「次に殺すのはアンタか.....」
どうやら学生のようだった。
私はそいつの顔写真を見て、名前を読み上げた。
「…赤崎京治」
画像が荒いため細かくは分からないが、優しそうな雰囲気を持っている。
こんなに若く、しかも学生がターゲットとは...初めてのことだ。
学生と聞いてふと自分のことを考える。
私は学校なんて、小学校すら行ったことがないから集団生活なんて少しも知らないし、漢字だって独学で学んだし、計算も割り算までしか出来ない。
ネット環境も悪いから、テレビなんて素晴らしい代物は見たことがない。
盗めばいい物だけど、教養がないから見ていてもつまらない。
電化製品はほとんど持っていないし、携帯の使い道はメールと電話だけ。
時代遅れもいいことだ。
そんな自分だからこそ、学校というものに少し憧れを抱いてしまった。
そんなことは関係ないと私を一瞥して、眠りについたのだった。
次の日。
私にしては珍しく昼間に家を出た。
今ではすっかり昼夜逆転している。
私が向かう先は、ターゲットが居る場所。
何しろ今回のターゲットは高校生だ。
殺し屋にわざわざ頼むなんて…よっぽど恨まれるようなことでもしてるのかな。
まあ、私には関係ないけど。
私は言われた通り、指示に従うだけ。
そこに私の意思なんて存在しない。
学校の名前はお茶野漬け高校。
家から結構離れた場所ということもあり、学校に着くまでに今回のプランを考える。
偉い人はいつも、殺し方を私に任せている。
いつもメールにはターゲットの情報だけ。
タイムリミットも特に設けられているわけではない。
だが、面倒事を先伸ばししてもいい事は何もないので、基本的に2週間以内に殺すと決めている。
自分で期限を設け、それに従うことで仕事のモチベを保っている。
今回は、ターゲットに自分のことを信用させて油断したところで殺すことにした。
あれこれ考えているうちに、目的の学校に着いた。
赤崎君は2年生か.....。
私はその学校の制服を着て忍びこむ。
私も、本当だったら高校に通っているはずの年齢だ。
時の流れが速すぎて全然気づかなかったけど、きっと、高校二年生のはずだ。
私が校内に入って時々生徒とすれ違うことはあったが、何も気づかれない。
この制服、ぴったりだ。
いつも口を塞いでいるマスクは外した。
だけど眼帯だけはいつまで経っても外すことは出来なかった。
これは、私の体の一部みたいな物だから。
赤崎君のクラスを見つけ、私はそこへ向かう。
時間帯はすでに放課後になっていた。
窓から中を覗くと、タイミングのいいことに赤崎君一人だけが教室に残っていた。
私はドアを開け、彼に近づく。
彼は机で何か作業をしている。
「こんにちは」
出来るだけ不自然じゃないように。
私はここの生徒だ。
演じることには、すっかり慣れた。
「えとっ、こんにちは、、、?」
彼は不思議そうに私を見つめる。
…何この人、意外にイケメン。
携帯で見た時はそれほどまでには思わなかったんだけど。
画像が荒くて顔が分かりづらかったのか。
….ああ、何だか。
こんなカッコいい人を殺してしまうのは勿体ない気がする。
……って。
私、何考えてるんだろう。
イケメンなターゲットなんて今までに腐る程居たじゃん。
いつも通り、殺せばいい。
本当、何考えてんだか。
「…赤崎京治君、だよね?」
私は確かめるように名前を呼ぶ。
「えっと、どこかで会いました...?」
彼が私を怪しんでいることは明白だった。
そんなの、顔の表情と声でわかる。
何年殺し屋をしてきたと思ってるの。
「ううん。私ね、君に会いに来たんだ。本当はここの生徒じゃないんだけど」
何故か、私はそう言ってしまった。
まずい、口が滑った。
頭が働いていないのか、睡眠時間が足りていなかったのか。
私にしては珍しいミスだった。
それにしても、これはヤバイ。すぐに始末するべきじゃないのか。
思考に反して体は動かない。どうしてっっ、、
「ここの生徒じゃないって…じゃあ何でここの制服着てるんですか?」
「知り合いにね、借りたんだよ。似合うでしょ?」
咄嗟の嘘で誤魔化した。
そのことに彼は何の疑いも持っていなかったようで、私は安心した。
「あなたの名前は、なんですか?」
予想外の言葉だった。
私に名前なんて無い。
貧民街で生まれた時には、既に両親はいなかった。
もしかしたら近くに居たのかもしれないけど私は何も知らなかった。
だから両親がいないのと同じだ。
今まで私は、誰かに自分の名前を呼ばれたことが一度でもあっただろうか。
無いはずだ。
それに、私は自分の名前を知らない。
「どうしたんですか?」
彼は不思議そうに私に聞いた。
「私、名前ないの」
そう言うしかなかった。
嘘をつくなんて考えられなかった。
今時、名前の無い人間なんて居るのだろうか。
いや、わからない。
何しろ私は世間知らずなのだから。
まあ、どっちでもいい。
…でも、何でだろう。
この優しそうな雰囲気、すべてを包み込んでくれそうな温かさは。
彼にだったら、何でも話せる気がする。
そんな気がした。
「名前が無いってどういうことですか?」
「そのままの意味だよ。」
私はそれから全てを話した。
いや、話してしまった。
どうしてかわからない。
ターゲットなのに、こんなことを言ってよかったのだろうか。
そう思ったけれど、どうしてか何でも話せた。
貧民街に居たこと、昔から悪いことばかりしてきたこと。
どれもありえないような話だけど、彼は黙って聞いてくれた。
でも、私が殺し屋であることも、目の前に居る赤崎君をこれから殺さなければいけないということは、さすがに言えなかった。
「……辛かったですね」
一言、そう言ったのだった。
別に私は同情してほしかった訳ではない。
なのに彼はそう言って、私の隣まで来て、私の頭を撫でたのだ。
「…あ、すいません」
その行為に気づいたのか、赤崎君は謝った。
…どうして、今胸が痛くなったのだろう。
心臓の鼓動がいやに速い。
その理由は、いくら考えてもわからなかった。
「どうして俺に会いに?」
殺すためだよ。
そう思った。
でも、言えるはずがない。
それどころか、何だか私はおかしな気持ちになっていた。
赤崎君を殺したくない。
何故だかわからなかったけど、そう思ったのだ。
どうして?
今まで何百人と殺してきて、そんなことを思ったことはただの一度もない。
どうして、こんなことを思ってしまうのだろう。
私は殺し屋だ。
ターゲットを、ただ言われるがままに殺す。
だってそれが仕事なんだから。
そうしないと私は生きていけない。
「どうして泣いてるんですか?」
赤崎君は困ったように、びっくりしたようにそう言った。
……泣いてる?
赤崎君が放った言葉の意味は、少し考えないと理解することができなかった。
私の類に、温がりが伝わる。
………これは、涙?
今まで幾度となく見てきた物ではあったが、私が流したことはなかった。
どうして私は泣いているのだろう。
人は悲しい時に涙を流す。
逆に、嬉しい時に流すこともあると聞いた。
だけど私が見てきた人達は皆、恐怖に怯え涙を流す。
だけど私には...わからない。
一体どうしてなのだろう。
考えても考えてもその答えはわからなかったけど、涙が止まることはなかった。
「大丈夫ですか?どこか痛いんですか?」
赤崎君は泣き止まない私を見て心配そうにそう言ったけど、私は何も答えることが出来ず幼い子供のように泣き続けたのだった。
赤崎side
放課後。
今日は日直だったせいもあり、最後まで教室に残ることになってしまった。
丁度帰ろうとしたそのとき、教室のドアが開いて一人の少女が入ってきた。
同じ制服を着ている。
この学校の生徒だろうか、その子は眼帯をしていた。
もしかしてものもらい?
「…こんにちは」
彼女は口を開いてそう言った。
…なんというか、可愛い。
こんな子この学校に居たっけか。
こんなに可愛いのに今まで見つからなかったということは俺の目は相当曇っているに違いない。
そう思うぐらいの可愛さ。
だけどそれと同じくらい、どこか不気味な雰囲気があった。
彼女は俺のことを知っていたみたいだった。
そうして自分の過去を話し出した。
ずいぶんと可哀想だと思った。
名前が無いなんて、嘘みたいな話だけどどうもその子は嘘をついているようには見えなかった。
だから、不思議と疑うことはなかった。
少し驚いたのは、こんな都会に貧民街という場所が存在しているということ。
…びっくりだ。
それにしても、彼女はどうして俺に会いに来たのだろうか。
聞くと、彼女は帰るところが無いと言った。
「だったら、俺の家に来ませんか?」
俺の両親は今、海外出張に行っていて、後半年は帰って来ない。
つまり、実質一人暮らしだ。
俺がそういうと、彼女はとても嬉しそうに
「いいの?」と言った。
でも、彼女のことは何と呼べばいいだろうか。
名前が無いなんて不便だ。
「今までなんて呼ばれていたんですか?」
「…別に『お前』とか『アンタ』とか?」
可哀想だ。
彼女は本当に名前が無いのか。
だとしたら俺は彼女のことを何と呼ぼうか。
どうせだったら、特別な名前をつけたい。
こんな可愛い人に似合う名前を。
「桜さん、って呼んでいいですか?」
桜のように綺麗で、おとなしそうで。
そんな名前がぴったりだと思った。
「ん、いいよ…」
桜さんは嬉しそうにそう言ったのだった。
主人公side
『桜』
私の名前は桜になった。
しかも赤崎君につけてもらった名前。
何でだろうな。
どこにでもありそうな普通の名前なのに。
どうしてこんなに嬉しいんだろう。
そこまで考えて私は我に帰る。
何を考えているんだ、私は。
私は殺し屋なのに。
今目の前に居る赤崎君を殺さないといけないのに。
それが私の仕事なのに。
なのに、嬉しいなんて……どうかしている。
私に感情なんてなければ良かったのに。
ああ、情が移っちゃったかな。
だけど、私の帰る場所ができたというのはいいことだ。
ターゲットのすぐ側に居られるから、いつでも殺すこともできるだろう。
こんなに効率のいい仕事は久しぶりだった。
だから、私の頬が緩んだのはきっとそのせいだと思う。
「…すごいね、結構広い」
「そうですか?普通ですよ?」
赤崎君は何と一軒家に住んでいた。
まずその時点で驚きを隠せない。
私なんて朽ち果てた家とは言えない場所に住んでいたのに。
しかもそこにたった一人で住んでいるというのだから。
私の生活では、考えられないことだった。
「そんなに驚くことですか?」
いや、それが驚くことなのだ。
「桜さんの部屋はここでいいですか?
俺は両親が使っていた部屋なんですけど」
赤崎君の両親は今はいないらしい。
何だかこんな広い家に二人っきりとか緊張する。
何故だろう。
どうして私はこんなことを考えてしまうのだろう。
明らかに、今までのターゲットとは違う。
そんな感じがする。
殺さなきゃいけないのに。
常にポケットに入っている小さなナイフ。
私はそれに手を伸ばすことがどうしてもできなかった。
どうしてこんな気持ちになるんだろう。
それは、私が今まで感じたことのない感情だった。
……おかしいな。
今まで殺してきた奴らには何も感じなかったのに。
赤崎君と一緒に住み始めてから一ヶ月が経った。
私は未だに赤崎君を殺すことができないでいる。
赤崎君は昼間は学校だ。
その間、私はずっとテレビを見ていたり次の仕事をしたりしていた。
赤崎君は学校に通っていない私をどう思っているのだろうか。
気になっているはずだと思うけど、私には何も聞いてこなかった。
もしかしたら気を使ってくれているのかもしれない。
私はどこへ行っても、帰る場所はここになった。
家に帰れば赤崎君が居る。
そんな些細なことが私にはとても嬉しかった。
「…何、考えてるんだろ」
殺したくないとか、バカじゃないの。
私には選択肢なんてないのに。
私は…人殺しなのに。
今まで何人、何百人殺してきたかわからない。
私がそんなことをしていたと知って、赤崎君はどう思うだろう。
きっと私から離れて行くに違いない。
それなのに私は離れたくないと思ってしまっている。その時
ピリリリ
かかってきた電話。
電話の相手は、「偉い人」だった。
私はその人の本当の名前を知らないから、携帯にはそう登録してある。
「…もしもし」
「まだ殺していないのか?もう一ヶ月だぞ」
やっぱり、その話。
どうして赤崎君を殺さないといけないんだっけ。
私、やだよ。
生まれて初めて私に優しくしてくれた。
帰る場所を作ってくれた。
そんな赤崎君を、私は殺せない。
「…ごめんなさい、出来ません…」
私はそう言って電話を切った。
私が命令に逆らうのは、初めてのことだった。
赤崎side
桜さんを家に泊めて2ヶ月たった頃。
今日は部活が長引いて、家に帰った頃には9時近かった。
桜さんはご飯も食べずに俺のことを待ってくれていた。
いつもそうだ。
桜さんは優しい。
「赤崎君さ、もし私が犯罪者とかだったら、どうする?」
不意に桜さんから放たれた言葉。
恐る恐る俺に聞いてきた。
何故か、その嘘みたいな話が本当のことみたいに聞こえて。
俺は少し怖くなったけど。
「桜さんが俺と一緒に居てくれるならそれでもいですよ」
それは本心だった。
今更ながら、俺は桜さんが好きだ。
会ったその時に一目惚れしてしまったのだろう。
きっと桜さんは俺のこと好きとかそういうことは全然考えていないのだろうけど。
俺は桜さんが殺人犯でも窃盗犯でも逃亡者でも別にどうでもいい。
桜さんは桜さんだ。
どんな状況でも、俺は絶対に桜さんを見捨てたりしない。
そう、決めたんだ。
「…そっか、ありがとね…」
桜さんはそう言って、寂しそうに笑った。
その意味が一体なんだったのか、俺にはわからなかった。
「赤崎君は私に何があっても一緒に居てくれる?居なくなったりしない?」
確認するように、桜さんは聞いた。
こんなことを言うなんてなぜだろう。
「大丈夫ですよ」
俺がそういうと、桜さんは口を開いた。
「そっか、良かった。私が赤崎君に会いに来たのは…赤崎君を殺すためなんだ。」
一瞬、桜さんが何を言っているのかわからなかった。
だけど、この状況で嘘を言うとも思えない。
それに疑わしい行為だって、実は結構知っている。
何も言わなかっただけで。
桜さんが昼間出歩いているのが気になって、後をつけたこともあった。
その時桜さんは、平気な顔で人を殺していた。
明らかに俺とは違う世界に住んでいると思った。
だけど、それでも俺が何も言わなかったのは桜さんが好きだから。
でもさすがに俺を殺そうとしていたなんて…
少しながらも重たいショックを受ける。
でも、気になることがある。
「じゃあ、何で俺を殺さなかったんですか?」
桜さんがここに来てからもうかなりの時間が経っている。
だが、俺に危ないことが起こるという事は1度もなかった。
「やめたの。最初は仕事だからしょうがないと思ったけど…やっぱり無理だった」
話を聞くに、どうやら桜さんは殺し屋として働いているみたいだった。
「私、赤崎君が好きなの」
今日は本当に驚くことばかりだ。
好きだと思っていたのは俺だけじゃなかったのか。
「…ごめんね。こんなこと言われても困るよね」
「俺も桜さんのこと、好きですよ」
そういうと桜さんは顔を赤らめた。
「…本当?」
俺はその言葉にうなずいた。
この気持ちは本物だ。
桜side
赤崎君は私を好きだと言ってくれた。
それがとても嬉しかった。
でもきっと、こんなことが「偉い人」に知られたら私も殺されるんだろうな。
でも、赤崎君が死なないならそれでいい。
私なんかは、どうでもいい。
絶対に守り抜いてみせる。
私はそう誓った。
そのあとしばらくして季節は代わり春がやってきた。
私と赤崎君は街に出た。
いわゆるデートだ。
その日は初めて二人で外出した。
すごく嬉しかった。
何でだろうな。
私はやっぱりバカだ。
デートの帰り、私は怪しい人物を見た。
恐らく殺し屋。
まだ諦めていなかったのか。
そいつはこちらの様子を伺っていた。
胸ポケットの膨らみ...おそらく拳銃だろう。
明らかに赤崎君を狙っていた。
私は本当にバカだ。
私が今日出かけなければ。
こんなことにはならなかったはずなのに。
私が赤崎君を少しでも守らなきゃ。
「…赤崎君、私に優しくしてくれてありがとうね」
「急にどうしたんです?」
だってさ…もう終わりたから。
「私、赤崎君のこと大好きだよ。」
そう言った瞬間、私の目の前は真っ赤に染まった。
それは私が赤崎君を庇って前に出たから。
赤崎君は相当驚いていた。
「桜、さん、、」
私、本当に赤崎君に会えてよかったよ。殺したくないって初めて思うことができた。
好きな人ができた。
…私は本当に幸せだ。
だがもう遅い。
殺し屋が行動に出たら最後、ターゲットは確実に殺すだろう。
私が庇ったところで意味がない。
殺し屋は私が死んだ後に赤崎君を殺すだろう。
赤崎君を守ることはできないんだ。
でも…
私の血は木から落ちてくる桜の花びらについた。
いつの間にか時間が過ぎて、春になって、私は私の名前と同じ桜と一緒に死ぬことができた。赤崎君がつけてくれた名前。
桜って名前。
大切な物なんだって、気づけた。
ありが…と…う