ポケットモンスター -紫電のゼオン・ベル-   作:やぶゆー

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※今話でサトシとデュフォーの名前を間違うとんでもないミスをしてました。ご指摘ありがとうございました。


17話:本戦1日目-こだわりマイク_ニシの本戦実況レポート

「本戦トーナメント1回戦第3試合。快進撃を続けるデュフォー選手の懐刀、今大会17匹抜きのゼオン・ベル!

 ここにきてカオルコ選手の最後の切り札、マダツボミにまさかの苦戦を強いられております! これは思わぬ伏兵の登場だぁ!」

 

 本戦の舞台となるフィールドは、特殊なギミックのないオーソドックスな草原のフィールドだ。

 ゼオンは晴天の下で天然芝を踏みしめながら、しょくぶつポケモンのマダツボミとの対峙を数分に渡り続けている。

 

「ハハッ……こんなやつがいたとはな」

 

 食虫植物の様な頭を持つひょうきんな見た目の小柄なマダツボミからは、強者特有のプレッシャーや雰囲気が全く感じられない。

 それでもここまで全ての攻撃を捌かれ、そして互角の攻防を繰り広げるゼオンは歯がゆさと同時に笑みをこぼす。

 強力な電撃を打ち込んでも、枯れ枝の様な足から地面へと電力を放出させられる。

 格闘技を放っても独特な体術と、木の葉の様な軽く細い身体にことごとくいなされる。

 逆にゼオンの力を利用した合気の要領で、鋭い蹴りを返されその都度マントで防ぐハメになる始末だ。

 タイプ相性や特性による事前準備の対策でもなく、ミュウツーの様な圧倒的な力でもない、今までにない戦い方をする相手にゼオンは久々に心から勝負を楽しんでいた。

 

「エリカといい、キモノ女にはつくづく手を焼かされる」

 

 誰に言ったわけでもないゼオンのつぶやきは、タマムシジムのエリカを彷彿とさせる和装姿のカオルコに拾われる。

 

「あなたエリカさんに苦戦したんですの?」

「バトル以外で絡まれただけでジムバトル自体は楽勝だ。エリカの知り合いか?」

 

 エリカの名前を聞く度にカオルコの眉が僅かに釣り上がる。ただの仲良しという間柄でも無さそうだ。

 

「同じ地元のジョウチャタウンで幼馴染でした。彼女はバトルの才能があったのに、香水や生花に浮気する始末。

 おままごとにうつつを抜かしているあの娘なんかに、戦いで遅れを取るわけにはいきません。そしてこの大会で優勝するのもわたくしです!」

「そうか。後半はともかく前半部分はすこぶる――」

 

 同感だッ、と吐き捨てながらゼオンは跳躍し戦闘を再開する。

 再び両者が被弾を許さない膠着状態の攻防が続くと、それまで何も考えずに戦いを見守っていたデュフォーが初めて頭に思考を宿らせる。

 

(そのマダツボミは"特殊個体"*1だ。正攻法では攻めきれない。

 オレがアンサー・トーカーに頼らず対処するとしたら、方法は3つ。

 1:このまま制限時間まで守り続け判定に持ち込むこと。

 2:接近戦で地から引き離してから一気に電撃を浴びせる。

 3:マントで拘束して窒息させること。

 しかしどの方法にも欠点が存在する。ゼオンならどうする?)

 

 1つ目は既に2勝しているデュフォー側が確実に判定で勝利できるが、ゼオンの連勝記録は途絶え観客達もフラストレーションを溜めてしまうだろう。

 2つ目は超接近戦となるため、ゼオンが攻撃を食らうことで素の耐久力を衆目に晒すリスクがある。

 3つ目はこれまで防御にしか使って無かったマントの活用術を明かしてしまうし、そもそも簡単には成功しないはずだ。

 ゼオンもそれをわかっているからこそ、格闘戦を繰り広げながらも第4のルートを構築しようとしていた。

 

(技を使う時にポケモンの身体から生成される生命エネルギー。

 このマダツボミはそのエネルギー量が高く、戦局においてエネルギー出力を瞬時に効率よく調整する運用が抜群にうまい。この一点はオレよりずっと上だ。

 人間達が使う"ジュウジュツ"や"アイキドウ"を模した戦闘技術も高い次元でまとまっている。

 この戦いで色々学び、楽しむことができた。だからこそ、オレのやり方で決着をつける!)

 

 中距離から再びゼオンは掌からでんげきはを放つ。マダツボミもそれを事前に感知し、地に根を張りながらエネルギーを身体に纏わせ完全な防御態勢を整えていた。

 ダメージの全てを逃されながらも、ゼオンはお構いなしにでんげきはの範囲を拡散させ広範囲に雷撃を展開させていく。

 

『ゼオン・ベル、マダツボミに電撃が通用しないとわかっていながらも攻撃をやめない! 意地の張り合いなのか!

 しかし、でんげきはがフィールド全体に轟音と雷光を生み出しています! 両選手と審判、サングラスと耳栓の準備は大丈夫かー!?』

 

「す、凄まじい力ですわね。しかしどれだけ出力をあげても電撃は通用しませんわ!」

「今自分で言ったじゃないか。それ(音と光)が目的だ」

 

 五感に影響が出るほどの電撃にひるみながらも、優勢を疑わず笑みを絶やさなかったカオルコの表情がハッと曇る。

 確かにマダツボミに電撃は通らないが、聴覚と視覚による影響までは防げない。1分、2分と継続して電撃を浴びているマダツボミは、現に今目をつぶり硬直している。

 

「マダツボミ! 今すぐ動いて!」

「無駄だ、お前の指示は雷音で聞こえていない。だから手の内を明かしてやったんだ」

「ツボ……ツボ……」

 

 目を閉じても防ぎきれない強烈な閃光を浴び続けた時、人間は最終手段として身をかがめ無力な赤子の様に丸まってしまう。

 それはポケモンも例外ではなかった。

 

「まだ続けるのか?」

 

 雷光に目がくらんでいた審判は、デュフォーに問われ今一度戦況を確認する。

 既にゼオンは攻撃を中止しているにも関わらず、マダツボミは地に伏せ怯えるように震え続けている。

 肉体の損傷こそ見られない。直にマダツボミの視覚と聴覚が回復したなら、戦闘を続行することは可能だろう。しかし今ゼオンが生殺与奪の権を握っているのは誰の目にも明らかだった。

 カオルコ本人も観念したようにうなだれている。

 

「マダツボミ戦意喪失! 3匹全てが戦闘不能となったため、第3試合はデュフォー選手の勝利!」

 

『なんとゼオン・ベル、激しい閃光を利用しスタン・グレネードの要領で強敵のマダツボミを無力化しました!

 これでゼオン・ベルは圧巻の18匹抜き! デュフォー選手も未だ1度もポケモンを失っておらず実力の底が全く見えません!」

 

 もはやダークホースという表現では収まらない。本大会の新たな優勝候補の誕生に観客とメディアが熱狂していた。

 インタビューを希望するマスコミに丁重な断りを入れながらデュフォーが控室に戻ると、ドンカラス(オカシラ)がモンスターボールから自ら飛び出す。

 

『らしくねえな、ゼオン(ガキ)。無傷での勝利に拘らなきゃ別の方法でも勝てただろ』

 

 デュフォーも抱いていた疑問がオカシラから投げかけられる。

 いかにゼオンの生命エネルギーが強大といえど、あれだけ電撃を垂れ流しにすれば、それなりの消耗は避けられないはずだ。

 燃費の悪い勝ち方をした当の本人は、強敵と手合わせした余韻に浸りながら一言だけ応える。

 

『当面はオレに攻撃を当てられるのは、ミュウツーとオカシラ(お前)くらいでいいってことだ』

『……なんだそりゃ』

 

 そう吐き捨てるオカシラと共に照れくさそうな表情をするゼオン。

 デュフォーはそれを見ながら(恥ずかしがるなら普通に言えばいいのに)と思ったが、それを口に出すことはなかった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 デュフォーとカオルコの決着から一時間後、次の第4試合も既に終局を迎えていた。

 赤コーナーではサトシが、緑コーナーはサトシと同い年くらいの少年が正念場を迎え、手に汗握り締めている。

 

「リザードン、"かえんほうしゃ"!」

 

 鼻を鳴らしながらサトシの指示を一蹴し、リザードンは前方に突撃する。

 

『お前の指図は受けねえ。ゼオン(アイツ)と戦うまでは本気でやってやるから黙ってろ!』

「ピカ……!」

 

 リザードンの体当たりをまともに受け、ダメージの蓄積で既にふらふらだったピカチュウは堪えきれずに倒れ込む。

 トレーナーに報いようと意識を保ち地を這うが、既に戦えないことは誰の目にも明白だった。

 

「ピカチュウ、戦闘不能! 3匹全てが戦闘不能となったため、第4試合はサトシ選手の勝利!」

 

「な、なんとか勝てたよ……」

ピカチュウ(レオン)……! よくやった」

 

『サトシ選手とヒロシ選手のエース対決は、サトシ選手に軍配が上がった!

 ピカチュウが相性で優勢といえど、さすがに2段進化のリザードン相手には力不足だったか!

 リザードンがサトシ選手の指示を無視したように見えたのが気になりますが、素晴らしいバトルでした!』

 

 観客達が惜しみない拍手を送る中、客席から試合を観戦していたデュフォーは既に立ち上がり会場を後にする。

 リザードンの指示無視というアクシデントに見舞われながらの勝利を収め、緊張していた力が抜けその場にへたりこむサトシと相棒(レオン)を労うヒロシの姿を思い返していた。

 

(予選の後にサトシと意気投合してたヒロシ……。強さの最終到達点という意味での伸びしろはサトシにやや劣るが、知力や判断力、ポケモンの管理能力は上回っている。

 こいつも才能に溢れるトレーナーだな。しかし今考えるべきは、次に当たるサトシか)

 

「サトシとはもう明日の試合まで会わないのか?」

「今のオレはただでさえ噂を集めている渦中の人間だ。余計な火種をサトシにまで飛ばすことはない。ゼオンも同じ考えだろう」

「まあな。いかに顔見知りといえど、真剣勝負を控えた者同士が不用意に会うべきではない」

 

 今はデュフォーに関するゴシップ記事が、ネット上であること無いこと好き放題書かれている状態だ。

 サトシと試合直前まで会っていることが知られたら、ここぞとばかりに八百長疑惑が浮かぶことは容易に想像できる。

 そして何より――2人は明日の勝負に情や馴れ合いを持ち込むわけにはいかなかった。

 宿へと戻ったデュフォーはPCを立ち上げ、オンラインストリーミングで残りの試合を閲覧しながら、逐次更新されていく大会の公式サイトを確認する。

 

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 Last update 30 mitues

 

 

 今季のカントーポケモンリーグも本戦1回戦が終了しました。

 明日の2回戦から始まる6対6のフルバトルを控えて、当特集Web記事ではここまで勝ち残ったトレーナーの中から注目選手をピックアップして紹介を行います!

 執筆は今大会の予選初日から実況役を預かっているこの私、『こだわりマイク_ニシ』が行っております。

 

 アマネ選手(クリスタル帯 510位 ヤマブキシティ) パーティA 戦略・戦術A+ 注目度A+

 主な使用ポケモン:カメックス フーディン ネイティオ

 前回準優勝の今大会"3強"の一角。戦術眼もさることながら、心理戦や盤外戦術も長けている。

 1回戦ではマサラタウンのシゲル選手を完封して、ルーキーに強烈な洗礼と現実を味わわせた。

 

 デュフォー選手(シルバー帯 6991位 トキワシティ) パーティA~(未知数) 戦略・戦術B~(未知数) 注目度S+

 主な使用ポケモン:ゼオン・ベル

 エースのゼオン・ベルが18匹抜きの連勝記録を継続中。その実力は四天王のレギュラーポケモン相当。

 デュフォー選手は1回戦以外で全く指示を出しておらず、手持ちポケモンも4体しか見せていない。

 セーブしている力の度合い次第では、今大会の優勝候補対抗馬となるだろう。

 

 サトシ選手(シルバー帯 3022位 マサラタウン) パーティB 戦略・戦術B- 注目度B+

 主な使用ポケモン:ピカチュウ キングラー リザードン

 初の公式大会でベスト8まで食い込んだ期待のルーキー。他の選手より総合力でやや落ちるが主力のパワーは侮れない。

 サトシ選手の指示や判断力の瞬発性は光るものあり。

 

 ユウジ選手(プラチナ帯 290位 オレンジ諸島) パーティS 戦略・戦術A 注目度S

 主な使用ポケモン:メタモン ハガネール ゲンガー フシギバナ エレブー カイリュー

 オレンジ諸島のサザン・クロスヘッドリーダーにして、今大会の強化招待選手。現時点で間違いなく優勝候補最右翼。

 "3強"の筆頭と言われる強さを持ち、エースのカイリューは1対1で負けた経験が一度もないと言われているほど。

 

 セセリ選手(クリスタル帯 573位 タンバシティ) パーティA+ 戦略・戦術B-~A+ 注目度A

 主な使用ポケモン:エビワラー バンギラス リザードン

 前回3位の"3強"の一角。調子の波が強く、その日のコンディションに応じて戦術やスタイルがガラリと変わる。

 噛み合った時の突破力は今大会NO1。

 

 ライター:こだわりマイク_ニシ

 

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(他のブロックで2回戦を勝ち上がるのはおそらくこのアマネ、ユウジ、セセリの3名だろう。まずは準決勝で当たると思われるアマネから情報を収集するか)

 

 あれほどサトシとの戦いを望んでいたにも関わらず、デュフォーの注意はその先で戦う者へと向いている。

 デュフォーにとって勝敗は二の次でしかないのか。それとも――

 

 

 本戦トーナメント2回戦

 

 Aブロック

 アマネ VS サユリ

 

 Bブロック

 デュフォー VS サトシ

 

 Cブロック

 ユウジ VS ナカソネ

 

 Dブロック

 シュウ VS セセリ

*1
無印79話






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