ポケットモンスター -紫電のゼオン・ベル-   作:やぶゆー

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25話:四局の攻防-②

 

 

 情報制作局ファイルサーバー\バトル部\ジム課\ジムリーダー取材\未発行記事\ナツメさん用\取材記録.txt

 

 ※1 絶対にナツメさんに無断で本記事をアップしないこと! 怒らせたらシャレにならんお人……。

 ※2 バトル部外秘ファイルにつき、担当者と管理者以外は当ファイルの暗号化解除およびファイル共有を禁止します。

 ※3 ナ→ナツメさん発言部分

 

 私:――ヤマブキジムのリーダー、ナツメさん。

   本日はお忙しい中、インタビューを快諾していただきありがとうございます!

 

 ナ:よろしくお願いします。

 

 私:御本人の前で言うのもアレなのですが、ナツメさんとのインタビューはスリリングだということはメディア界隈でも有名でして、今ヒジョーに緊張しております!

 

 ナ:あら、誤解が独り歩きしてるだけよ。わたしはインタビュアーの人にぞんざいな対応をしたことはない。

   ただインタビュアーとは名ばかりの迷惑な人達のことは知らないけど。

 

 私:といいますと?

 

 ナ:わたしが話した内容と全く違う文章で記事にしたり、わたしを付け回して伏せている過去を無理に暴こうとしたり、そういった人達は何故か取材後に色々トラブルが起きてるみたい。

   つまりお互い敬意をもってインタビューに臨めば何も気にすることはないでしょう。あなたまだ若くて純粋そうだし。

 

 私:(私の方が年上なのですが……汗)。で、では早速本題に。ナツメさんは過去に超能力を研究する機関におられたとのことですが。

 

 ナ:居た、と言うよりは囚われてた感じ。能力開発振興機構とは名ばかりだった。

   平たく言うなら反社会的組織の人体実験施設ね。

   記事にできないようなことも色々あったし、拷問に等しい実験中に友達だった子供達も何人か逝ってる。

 

 私:名前は口が裂けても言えませんが、某有名団体の下部組織との噂もあったところでしたね。

   しかし、その施設は今は存在しないのですよね?

 

 ナ:被検体達のクーデターで滅びたの。といっても暴れたのは主に私ともう一人の女の子だけなんだけどね。

 

 私:なっ……たった2人で施設一つを潰したのですか!?

 

 ナ:2人共エスパー少女としてズバ抜けた力を持ってたし、手を組んだら思いの外あっさりいったの。組織側の()()も解除する方法を心得てたしね。

 

 私:(保険……?) それで、もう一人の方はいまどちらに……?

 

 ナ:さあ、あれから別れて数年以上会ってないし。

   風の噂でタマムシの少年少女とポケモン用の鑑別所に預けられたとは聞いたけど。

   

 私:た、タマ鑑っすか!? 札付きのワルガキ……失礼、非行少年やポケモン達が収容されるあの!?

 

 ナ:私と違って彼女は強い力をうまく制御できていなかった。

   幼い頃組織に連れてこられて道徳も知らずに育てられたから、ああいう施設に入ったのは仕方ないんじゃない。

   といっても悪さしないであそこに放り込まれたのはあの子くらいだし、施設側も悪いようにはしなかったと思うけど。

 

 私:制御、というとどんな感じでしょうか?

 

 ナ:普通の人は友達やポケモンと喧嘩したり、会社で上司に怒られたりすると気分が落ち込んだり、怒ったり、不機嫌になるでしょう?

   私や彼女の精神は常にそういう状態にあるの。だから日頃から常人より精密な精神のコントロールが求められる。

   例えば脳や精神的に強いショックを与えられたら、今の私でも暴走する可能性は否めない。

 

 私:さ、最後の一言はおそらくカットとなるでしょう。

   今回のpart1はここまでとさせてください。

   今回は色々お話を聞けて非常に感謝しております。

   後日Part2の収録をさせていただきます。

   ありがとうございました。

   

 ナ:ぜひよろしくお願いします。あなたも頑張ってね。

 

 ※私の方が年上です(7個上)

 

 執筆:新人記者 ピクシー早川

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 ゼオン(オレ)は己が万能だと思ったことは一度もない。

 現時点の武力,統一者としての力は全盛期の父王(ダウワン)に遠く及ばない。

 フィジカル一本だけで言えば龍族には歯が立たない。

 だがそれもオレがまだ幼いというだけの話。

 ポテンシャルを将来的にうまく開花させ成長すれば、いずれは魔界の頂点に到達できる、そう信じていた。

 

 ……オレの独白は一旦置いて、現実の話をしよう。

 実力,才能両方においてオレの一歩先を行っているミュウツーが今目の前にいる。

 今までオレが他者に与え続けてきた圧倒的な資質の彼我差を、今度はオレが受けている番だ。

 なのに、絶望感や悲壮感は不思議と無い。なぜならこれは我が弟、ガッシュがこれまで歩んできた試練なのだから――。

 

ブースター(レンカゲロウ)、その状態で無理をするな!』

 

 レンカゲロウの"れんごくボディ"は、身体に纏った炎熱を身体能力に変換するレアな特性。

 負担の大きい"出力レベル2"で爆発的なパワーを得ているのに、今のリザードンツー相手に殴打戦で攻めきれていない。

 相手もまた"フレアドライブ"の炎を纏い、高い次元で身体を強化している。

 それでいて負荷の軽さ,戦闘技術共にレンカゲロウより上ときているから、分はかなり悪い。というか、多分勝てん。

 だがこの状況も、このあと起こるであろう結果も、全てはデュフォーから指揮権を預かっているオレの責任だ。

 決して懸命に戦っているレンカゲロウの実力に責任転嫁してはならない。

 

 ――戦況が芳しく無いのはオレ達だけではない。

 ヒロシとサトシは連携してカンナ相手によく食らいついている。

 だがそれも長くは保たないだろう。

 そして他の戦いは終局が近づいている。

 

『リザードンツー、そのまま攻め続けるんだ。そしてそろそろ終わらせろ、フシギバナツー、カメックスツー』

 

 ミュウツーから指示を受け、2体が既に大ダメージを受けている相手へトドメを刺すべく躍り出る。

 おそらく次の攻撃を対処することは、アマネとセセリでは困難だ。

 事実、敵のわざはよく鍛えられている。

 ユウジのカイリューやドンカラス(オカシラ)クラスの技量が無ければ安定して捌けない。

 

『おうよ!』

 

『終わらせようか』

 

 強化された"つるのむち"と"ハイドロポンプ"が今一度打ち込まれたその時――

 "つるのむち"の拘束を受け、フシギバナが放り投げられた。

 その軌道上にいたセセリが巻き込まれ、フシギバナもろとも壁へと吹き飛ばされる。

 

「ああっ!」

 

 ……オレの見る限りでは初めて起きたアクシデント。

 魔物の子同士の戦いとポケモンバトルは似ているが、魔本や心の力の有無などの違いがいくつかある。

 そして、人間への直接攻撃をするか否か。

 この世界でも敵対者同士がトレーナーを直接攻撃しないわけではない。

 実際にサトシやオレはロケット団相手に電撃を打ち込んでいるわけだしな。

 だが、純粋に互いの力量を競う目的のポケモンバトルでトレーナーを意図的に狙うようなことはしない。

 そこは魔物同士の戦いとは異なるが――

 

『わりィな。トレーナーまで巻き込むつもりは無かったが……これもバトルだ、恨むなよ』

 

 こういうケースの様に、トレーナーがバトルに巻き込まれる可能性は十二分にある。

 フシギバナツーも悪意は無かったのだろうが、特別バツが悪そうに振る舞うわけでもない。

 

『ニンゲンとは脆い生き物だな。()()が全て済んだら手当してやる』

 

 ミュウツーもあくまで事故の延長線として扱っている。

 正直オレも態度には出さないが似たような気持ちだ。

 この程度で狼狽えていては魔物の子同士の戦いなど到底できない。だが、その考えはオレにある誤算を生む。

 

「セセリさん!? 大丈夫ですか?」

「アマネ、目を切らすな!」

 

 まだ年齢も経験も浅く、競技バトル中心の戦いをしていたアマネはセセリのトラブルを重く受け止めたのだろう。

 思わず駆け寄ろうとしたアマネをオレもすぐさま静止するが、その隙を逃すほどカメックスツーは甘くなかった。

 

『よそ見する余裕あるのかい?』

 

 アマネの行動に狼狽えるカメックスへ、ダメ押しのハイドロポンプが突き刺さる。

 

「ガ……メ……!」

「しまった! カメックス!?」

 

 タイプ的に効果は今ひとつとはいえ、無防備な状態で喰らい再度ダウンを喫するカメックス。

 その容態を確認し自分の失態を悔いるアマネ、

 これ以上の戦闘続行は厳しいだろうと見立てたオレ、

 勝利を確信するミュウツー側の勢力、

 それらの耳に――

 

 ――シャバの人々は知るまいね

 ――恨む親すらいない子ら

 ――この世の地獄はここにある……

 

 この戦場に到底似つかない呑気な歌声が届く。

 出所は先程フシギバナが吹き飛ばされた方からだ。

 おそらく壁とフシギバナに挟まれた状態でセセリが歌っているのだろう。

 だがこれはそもそもなんの歌だ? 

 皆の疑問に応えるかのように、後ろで戦いを見守っていたスリーパーがボソリと呟く。

 

「ありゃタマ鑑出の奴が歌ってた……」

「お前、余計なことは本当に何でも知ってるな。あとオレを盾にして隠れすぎだ」

 

 "タマ鑑"とやらが何かを問いただそうとしたその時、歌声は突如止みフシギバナの奥にあった影がのそりと動いた。

 

「あんた……も……か」

 

 セセリは途切れ途切れに呟きながら、無機質な動きで立ち上がる。

 頭部から鮮血を流し、主の容態を気遣うフシギバナの傍らに並ぶ。

 その姿、立ち振舞い、様相は先程までとは別人のようで、虚ろな笑みを浮かべていた。

 フシギバナツーも、オレも、ミュウツーすらも注視して眼を離さない。

 言語化は出来ないが、その光景は何故かオレ達を惹きつけるものだった。

 

「そうかミュウツー、あんた()で実験動物としてこの世に産み落とされたか」

 

 はっきりと聞こえたセセリの言葉は、視線を交わしたミュウツーの表情を揺り動かす。

 それはオレが辛うじて気付けた程の僅かな変化。

 その反応の続きを待つこと無く、セセリは更におもむろな行動に打って出る。

 

「"エナジーボール"」

 

 "虚を突く"という表現があるが、まさにこういうことを言うのだろう。

 指示を受けたフシギバナですらワンテンポ遅れて反応する程の、唐突な技宣言。

 再び感情の消えたセセリが指差す先、戦闘不能に近いダメージを受けながらもフシギバナが健気に緑色のエネルギー弾を打ち込む。

 だがこれは――

 

「『話にならん』……」

 

 オレとミュウツーの見解は即一致する。単純に、技のクオリティが先の"ヘドロばくだん"以下なのだ。

 セセリの豹変には確かに目を奪われた。

 だが、それでポケモンの放つ技が急激に強くなるという都合の良い事態が起こるわけがない。

 これが魔物同士の戦いなら、パートナーの心の力が激変することでそういったケースも有り得ただろうがな。

 フシギバナツーもそれを見抜き、タカをくくる様に鼻を鳴らす。

 

『ナメやがって。こんなものすぐに叩き落として……』

 

 敵ながらさすがにそれには同感だ――

 

『グオオッ!』

 

 !?

 敵の悲鳴、遅れて一瞬視線を逸らしたオレも慌てて戻す。

 エナジーボールが肩に着弾したフシギバナツーが、のけぞり後ずさっている。

 効いた、というよりは驚いた様子だ。ミュウツーも表情は平静に見えるが、何が起きたか事態を測りかねているように見える。

 

『どうしたフシギバナツー。何故避けなかった。気を抜いたのか?』

『そうじゃねえ……威力もスピードも大したことなかった。なのに反応出来なかった上に、急所に入ってきやがった』

 

 あまり要領の得ない説明にミュウツーが訝しむが、オレはその技法に心当たりがある。

 

「……この世界のトレーナーにも使える奴がいたのか」

 

 かつてデュフォーや清麿が使っていた、オレがまだ修得していない技術――"弱所突き"を。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「な、な、なんであんたがここにいるの!?」

 

 デュフォーは狼狽えない。

 先程この島に上陸した時にゼオンが行った生体感知は、ミュウツーが創り出した結界を超えた島の外にまでは及ばないことはわかっていた。

 ならば、感知後に島の外から侵入した者がいてもカウントできないのはやむを得ないだろう。

 

「そのセリフ、そっくりお前達に返すぞ。ムサシ、コジロウ、ニャース」

 

 そう、今この場での存在が最もありえない闖入者、ロケット団のトリオを前にしても。

 ミュウツーが現れたタイミングで、ドンカラス(オカシラ)を除く全ての手持ちポケモンをゼオンに預け、デュフォーはホールから離脱していた。

 目的地である孤城の地下入口、研究施設と化した室内へとたどり着いたところで、ロケット団と鉢合わせたデュフォーは面倒くささ半分、腐れ縁の善意半分で追い払おうとする。

 

「お前達、さっさとここから帰れ。ここには強力でヒトに対して敵対心を持ったポケモンがいる。

 オレとゼオンでも勝てるかわからん」

 

 彼らの知能でもわかるよう、状況をデュフォーが簡潔に伝えたことでロケット団の顔色がみるみる変わる。

 

「マジかよ……!? オレ達、ボスの命令で極秘の調査に来たんだけどそんなことになってたのか。

 しかしそのゼオンがいないようだけど、デュフォーは一人で何してるんだ?」

「このままでは奴を……"ミュウツー"をどうにか対処できる可能性は高くない。だからここに情報を調べに来た」

「ミュウツー? そうか……ミュウツーってポケモンのことだったのか」

 

 そのコジロウの返答は、デュフォーにとっても、ムサシ達にとっても意外なものだった。

 

「コジロウ、ミュウツーってポケモンのこと知ってるニャ?」

「ああ。この前俺達、香水売りさばいて大儲けした功績でボスの懇親会に呼ばれただろ?

 お前達は飲み食いに夢中だったから知らないかもしれないが、あの時ボスは全体的な収益が右肩上がりでかなり機嫌が良かった。

 宴の終わりの頃には酒量も多くて浮かれてたのか、たまたま漏らしてたんだ。

 あとは"ミュウツーさえ戻れば私の計画通りだ"って」

 

 わけがわからず小首をかしげるムサシ達の横で、デュフォーはボソリと呟く。

 

 ――わからないものだな、まさかお前達から有益な情報が聞ける日が来るとは。

 

「ミュウツーは元々お前達のボスのポケモンだったということか。

 奴の強さ、性格からして人の言いなりになるとは到底思えないが、お前達のボスは楽観的主義者か?」

「ボスはプランが大きすぎてビジョンが見えない時があるけど、いい加減な事は言わない性格ニャ。きっとミュウツーってやつが戻ってくるアテがあるはずニャ」

「ソーナンス!」

 

 ニャースの否定で情報は更にまとまりを見せる。

 ムサシの手持ちから、勝手に青い身体の冴えない顔をしたポケモンが出てきて合いの手を入れて来たが、デュフォーはお構いなしに思考を巡らせる。

 

(ロケット団のボスとは会ったことがないが、ミュウツーを実力で支配できる組織力があればとっくに今頃どこかの地方くらいは秘密裏に制圧できているはず。

 ボスは力ではミュウツーには及ばないが慎重ではあったのだろう。

 ミュウツーが離反する可能性を懸念して、何らかの搦手や保険を用意していたと考えられる。

 ならば探すべきはやはり――)

 

 デュフォーは施設内部を進み、最奥に設置された巨大なマザーコンピューターのインターフェースを躊躇なく操作する。

 《アンサー・トーカー》の力があれば、初見の機械を意のままにコントロールし、目的のデータにたどり着くことは造作ない。

 インターフェース横に備え付けられたサブモニターに表示された文面はデュフォーの眼を輝かせ、ロケット団の心身を更に怯えさせるのに十分であった。

 

『ここより先は機密資材区域です。閲覧、書き込み、実行にはR団セキュリティレベルSS相当の、いずれかの権限が必要になります。

 ・ボス

 ・マキシマムナンバーズ最上位(Aクラスナンバー3以上)

 ・『M2計画』プロジェクト最高責任者

 ・技術開発局局長

 

「この資料を見れる者はロケット団の中でボスを除いて5人といない。

 中に必ず、オレの求める情報が眠っている」

 

 

 

 

 




ナツメの過去はアニポケから変えてあります

さらっと名前が出たので触れますが、
私個人はダウワンが好きではありませんが、当作品内ではアンチ・ヘイトはしないつもりです
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