ポケットモンスター -紫電のゼオン・ベル-   作:やぶゆー

30 / 79
ガッシュ2は常に単話で書い続けていたのですが
単行本の方におまけ漫画があることをつい最近知りました
単話全部持ってる人は単行本も落とせるようにしてくれないかなー


4章:地方選抜大会
30話:チームメンバー決定


 

 

「結局ミュウツーと研究施設の引き渡しを迫った男は引き下がったのだな」

 

 パソコンのモニタに映し出されているゼオン。そして通話先のデュフォー達。

 台無しにされた論功式が終わった後も、デュフォーと四天王達は会場に残り続けていた。

 通話アプリで療養先のゼオンと繋いだのは、事の顛末と今後を話し合うためだ。

 

「オレはほぼ口を挟まなかったから、キクコ氏が説き伏せたようなものだった」

 

「丸くなったなデュフォー。昔のお前だったら相手が発狂する様な事を言ってただろうに」

 

「まあ、あいつの立場もあるからな」

 

 所詮あの男は金持ちに雇われているだけの、ただの代理人。

 伝書鳩を公衆の面前で論破し恥かかせたところで、デュフォーの得には何もならない。

 

「あたしの一存で決めちまったけど、皆はそれで良かったのかい」

 

「いえ、私もキクコ殿と同じ気持ちでした。立場上口には出来ませんでしたが」

 

「俺も賛成ですね。デュフォー君が四天王の格を手にする機会は与えられたし、見事勝ち取って欲しいものです」

 

 タマランゼとシバに続き、淡い青色のロングヘアをなびかせる女性が糾合する。

 四天王カリン。年代はカンナと近いが、見た目や性格は正反対の毛色をしている。

 

「私も乗るわ。デュフォー(あなた)は面白そうだし、賭ける価値があると思ってる。

 選抜大会が終わるまで、ミュウツーを管理する責任も一部私が背負っても良い」

 

 次々に手厚いサポートを差し伸べる上層部の者達。

 しかしそれもデュフォーが結果を出し、出世してくれるという期待あってこそだ。

 少しでも期待を裏切ることになれば、すぐにミュウツーの引き渡しにかかるだろう。

 

「オレも構わない。大会に優勝するのが難しいという理由はまだ理解できていないがな」

 

「キクコ、あんたから見て選抜大会はデュフォーとオレでも厳しいレベルなのか?」

 

 デュフォーやゼオンはまだ世界のトップランカーの実力を知らない。

 それでも自分達が高水準の力を持っていることは、ランクと今までの試合を見ればわかる。

 それを踏まえた上での比較を尋ねられ、キクコは忌憚のない評価を伝える。

 

「ゼオンの坊やは、カンナを難なく下したミュウツーと渡り合えたんだ。

 事前情報無しの平等な1対1のバトルなら、デュフォーもあたしに勝つかもね」

 

 ポケモンバトルはタイプ相性やパーティ相性が影響する。

 『AはBに勝ち、BはCに勝った。だから実力はA>B>Cだろう』

 というような単純な三段論法は、ポケモンバトルで必ず適用できるとは限らない。

 

 それでもカントー大会での35体抜き、そして末席とはいえ四天王に名を連ねるカンナとミュウツーの力量差から、ゼオンが飛び抜けた力を持っていることは明白。

 四天王筆頭である自身のエース(ゲンガー)と総合力で同等以上と見立てていた。

 

(ほう……こういった人種は人前でプライドや立場を重んじて弱みは見せないと思っていたが、自分以上の存在を素直に認められる者もいるんだな)

 

 優勝が難関だという疑問が余計に深まりながらも、ゼオンは内心でキクコに対する認識を改める。

 だがその疑問も、続くタマランゼの説明で解消されることになる。

 

「懸念はデュフォー君の実力以外にあるのでしょうね。

 選抜大会は個人戦ではなく、4人でのチーム戦なのです。

 つまりデュフォー君だけでなく、他のトレーナーにも勝ってもらわればいけないのですよ」

 

 ようやくデュフォー達はキクコが言わんとしていたことを理解する。

 そして、自分達が予想以上に深刻な状況に置かれているということも。

 

「おい……それってオレが全勝したとしても負ける可能性があるってことだよな。

 優勝するとなると、根本的にオレ達の力でどうこうできない話じゃないか?」

 

 ゼオンが率直に思いを口にする一方で、デュフォーはスマホロトムに手を伸ばす。

 キクコからメッセージアプリで転送してもらった選抜大会の特設サイトにアクセスして、詳細なルールを確認しようとしていた。

 

 選抜大会公式ルール

 

・チームは4人構成(+コーチャー)。その地方の出身(エントリー)トレーナーであること。

・チャンピオン(ナショナルリーグ含む)、四天王はコーチャーには選べるが、試合にはエントリーできない。

・勝利条件は互いのリーダーが話し合って決める。決まらない場合は、2シングル、1ダブルバトルで2勝先制したチームの勝利とする。

 

「どうだいデュフォー。あんたもゼオンの坊やと同じ考えかい?」

 

 四天王達から凝視される中、デュフォーはしばしの沈黙を経て口を開く。

 

「本番のバトルも重要だが、それよりも事前準備の方に力を注ぐべきだ。

 今のままでは厳しいが、3つの条件を満たせば優勝が現実的になると思う」

 

 そうこなくっちゃね、とキクコが漏らすと残りの四天王達も表情を少し崩す。

 既にデュフォー個人の強さや戦略眼は四天王の水準を十分に満たしている。

 しかし、四天王が強いのは当たり前。それだけでは務まらない。

 今求められているのは、指揮力や人的資源の管理力といった能力だ。

 

「コーチャーだけど、坊やが良ければあたしが引き受けるよ。

 難しい条件を出しちまった以上、少なからずあたしにも責任があるしね」

 

 その提案はキクコなりの気遣いだろう。そして現にそれは確実なメリットとなる。

 四天王筆頭である彼女の関与は、プラスになれどマイナスにはなりようがない。

 

「うむ。キクコ殿が適任だろうな。チャンピオンのワタル殿と俺は多忙で手が回らん。

 カリン殿は確かもうオファーを受けているのだろう?」

 

「ええ。今回はジョウトのリーダーからコーチャーの勧誘を受けているの。

 デュフォーには優勝して四天王になって欲しいけど、それとは別に私は全力でコーチングしてジョウトのチームを勝たせるつもり。

 これ以上あなたの作戦を聞き続けるのは失礼だから、別行動を取ったほうがいいかもね」

 

 デュフォーの返事を待つこと無く、ウインクを送りカリンは会場を去っていく。

 業務が残っているシバとタマランゼもそれに続き、残された者達は作戦会議のフェーズに移る。

 

「それじゃあ、残り3人のメンバー選抜の話をしようか。

 わかってると思うけど、この人選に失敗は許されないよ」

 

 キクコの言葉は脅しでも何でもない。人選を誤れば優勝する確率は激減するだろう。

 それを承知しているデュフォーは既に脳内で候補となるトレーナー達、そしてベストメンバーの絵図面を描いている。

 

 ――トレーナーとしての強さで真っ先に頭に浮かんだ候補は3人。

 その内1人はそもそもエントリーができず、もう1人は今長期不在だったはず。

 勧誘するなら残りの1人一択だな。

 それとは別に更にもう1人、固有能力的な意味で確定で勧誘しておきたい奴がいる。

 その2人が順当に参加できる場合、残りの枠はあと1つ……。

 

「2人心当たりがある。残りの1人は選考会を開いて、立候補制でメンバーを募集してもいいが、まずは()()()()に率先して声をかけてみたい」

 

「ふうん。推薦したい2人とは別に、実力的には及第点だけどあんたが個人的に誘いたい3人がいるってことかい?」

 

 ピンときていないキクコに対し、「ああ、あいつらか」と呟くゼオン。

 これは決してキクコの理解力がゼオンに劣っているからではない。

 彼らと共に修羅場を潜ったか戦友であるか否か、ただその差だけであった。

 ひとまずこの時点で、大まかなチーム構成は纏まり話は一段落したのだが――

 

 「「……」」

 

「なんだいこの空気は。あー……あたしがいない方ができる話もあるさね」

 

 デュフォー、ゼオンに流れるギクシャクした微妙な沈黙に気付くキクコ。

 運営側でもあるキクコは、決してデュフォー達の純粋な味方ではない。

 当然聞かれたくない話も色々あるだろう。席を外しても良いが後々の面倒臭さも踏まえてキクコは譲歩することを選んだ。

 

「今のあたしは純粋なコーチャーとしてあんた達に協力してる、一人のトレーナーさ。

 都合の悪い話は聞かなかったことにしてやるよ。それに言いたいことはミュウツー辺りの話題だろ。何が言いたいか大体察しはつくよ」

 

 デュフォーはゼオンに目配せして小さく頷く。

 『アンサー・トーカー』の力が『キクコの言葉を信用して問題なし』と答えを出した。

 それを理解し、ゼオンも口に出すのを思し憚っていた話題を切り出す。

 

「今回ばかりは不確定要素が多すぎるぞ。優勝を逃した場合、奴らの言いなりになってミュウツーを引き渡すのか?」

 

「オレはそのつもりだ。だが、大会終了と同時にミュウツーがオレ達を裏切って姿をくらませたら、引き渡したくても出来ないだろうな」

 

 その言葉の意図を理解したゼオンはクク、と小さく笑う。

 有事の際は逃げるようミュウツー側に裏で手を回しておけば、少なくともミュウツーは失わずに済む。

 しかし、それは四天王になる機会を失うだけでなく、管理を申し出た四天王とタマランゼに責任を押し付け、裏切る形となる。

 間違いなくキクコの前ですべき話ではないというのに、躊躇わず切り出すデュフォーの胆力にキクコとゼオンは呆れながらも目を見張っていた。

 

「立場上あたしは止められないし止めるつもりもないけど、そうなったらあんたの信用は失墜するよ」

 

「ミュウツーをあの連中に引き渡すくらいなら安い損失だ。

 それに四天王の地位は、オレ達の目的達成のために必須というわけではない」

 

 断固とした態度で言ってのけるデュフォー。

 その理由は当然、ミュウツーという圧倒的な武力と最先端のクローンテクノロジーを自分の下に収めておきたい、という打算が主たるものだろう。

 だがそこには、かつて同じ実験動物として扱われ運良く他者に助けてもらった者として、同じ境遇であるミュウツーに対する"情"が含まれていたのかもしれない。

 もっとも、自分に芽生えたその感情にデュフォーが気づくのは少し後の話であるのだが。

 

「オレはまだ詳しくわかっていないのだが、デュフォーにとって四天王の地位を手に入れることはそもそも何の益があるんだ?」

 

 デュフォーとゼオンがポケモンマスターを目指していることはキクコも周知している。

 その問いの意味を「四天王を経由しなければポケモンマスターになれないのか?」という意味だと汲み取り、デュフォーに代わり応える。

 

「その話をするなら、まず「どうやったら『ポケモンマスター』になれるか」ってとこから話した方が良いだろうね。

 3年に一度、ガラル地方でポケモンワールドチャンピオンシップス(WCS)っていう世界大会が開催されるのは知ってるかい?

 そこで優勝すればポケモンマスターさ。至極簡単だろう」

 

 各地方の四天王やらチャンピオンやらはランクマッチで勝つだけではなく、いくつもの活動実績を積まなければ到達できない。

 だがポケモンマスターはそれらと違い、ただひたすら強さを示すだけ。

 他とは違う、単純にして原始的な孤高の存在と言える。

 

「確か、WCSの参加資格は「世界ランクがクリスタル帯以上であること」だったな」

 

「ん? デュフォーのランクは今990位だからクリスタル帯のはずだよな。

 ならもう既に参加資格は得ているんじゃないか?」

 

=ランキングの仕組み= 20XX年/1月 updated

 

マスターズエイト 1位(ポケモンマスター)~8位

マスター 9位~50位

ダイヤモンド 51位~200位

プラチナ 201位~500位

クリスタル 501位~1000位

 

~ここから上はWCS参加可能~

 

ゴールド 1001位~3000位

シルバー 3001位~10000位

ノーマル 10001位~30000位

ビギナー 30001位~

 

 デュフォーがスマホロトムに映し出したランク図を改めて見ても、確かに条件を満たしているようには見える。

 だが、事情に精通しているキクコはゼオンの言葉へ首を横に振る。

 

「確かに参加だけはできるんだけどね、詳しく調べてもらえばわかるけど、下位のランクほどエントリー時に大きなハンデを背負わなきゃならないのさ。

 いくらあんた達が強くても、最低でもダイヤモンド帯にはならないと優勝は絶望的だよ。

 ちなみに四天王になれば、その時点で無条件でマスターランクに到達できるね」

 

 そういうことか、とゼオンが画面越しに相槌を打つ。

 今のデュフォーは参加可能なランクの中でも最下層。ハンデの煽りを最も受ける位置にいるため、少しでもランクを上げる必要がある。

 四天王になりマスターランクに手っ取り早く到達するのが、今打てる最善の策。

 それが無理なら地道に順位戦と活動実績でランクを上げるのが、次善といえるだろう。

 

「いずれにせよ、今は選抜大会に全てを注力することは変わらない。

 まずは優勝するための1つ目の条件、メンバー集めに今すぐに取り掛かろう」

 

 己とゼオンの力で切り抜けてきたこれまでの半生と違い、他力が大きく自身の運命を左右しようとしている。

 なのに、仲間を集めようとする少年(デュフォー)の心は今までにない高揚が芽吹いていた。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 セキエイ高原での論功式から時は移り、72時間後。

 ヤマブキシティで借り入れたマンスリーマンションのエントランスで、デュフォーは遠くの故郷からはるばる足を運んだ少年を出迎える。

 

「論功式ぶりだな。あれから石化の後遺症は大分収まったようだ」

 

「うん、あの時は身体もダルかったけど、かなり元気になってきたよ。

 それよりデュフォー、ゼオン。今回の選抜大会に俺を誘ってくれてありがとうな!」

 

 ミュウツーと戦う前以来の元気を完全に取り戻したサトシが駆け寄ると、肩に乗っていたピカチュウが飛び降りる。

 デュフォーの隣にいたゼオンはピカチュウと互いに小さな手を重ね、和らいだ表情で再開の握手を交わす。

 

「どうせサトシは人数合わせでしょ。他地方のエリート達とは実力差が有り過ぎじゃない」

 

「カスミ! やる前から相手にビビってどうすんだよ!」

 

「しかし、選抜大会は本当にハイレベルだぞ。

 ……気になるのはあと2人の人選だな。一体誰を誘ったんだいデュフォー?」

 

 それぞれ故郷での所用を済ませサトシと合流したタケシとカスミが後から続く。

 タケシの言う通り、残りメンバーはまだサトシにも知らされていない。

 デュフォーが口を開こうとした時、ソファに腰掛けていた2人のトレーナーが身を起こした。

 

「久しぶりね、マサラタウンの子。私に感情を取り戻してくれたあなたと、他者のために私の力を役立てる意義を与えてくれたデュフォー。

 私が2人と共に戦えるのは、間違いなく運命……」

 

「ミュウツーの一件以来ですね。共に死線をくぐり抜けた君達とまた戦えるのは嬉しいです」

 

 かつてのジムチャレンジでサトシに一度は完璧な絶望を与え、最も強いトラウマと恐怖をあたえたエスパー少女。

 そして、ミュウツーとの戦いを経て絆が芽生えた戦友の少女。

 頼りにならないはずがない2人の顔を見て、サトシは思わず高揚の笑みを浮かべた。

 

「もしかして君達が……!」

 

「ああ、今回のカントー地方選抜チームは――

 デュフォー(オレ)、マサラタウンのサトシ、ヤマブキシティのアマネ、ジムリーダーのナツメだ。

 この連合軍で大会の優勝を目指す」

 

 




いつもご視聴ありがとうございます

人選に迷って大分更新が遅れました
最初はサトシ、ヒロシ、シゲルのトリオが参加する予定だったのですが
どう考えても引き立て役が固定になりそうだったので変更しました

いよいよ次回から他地方のトレーナー達が参戦します
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。