ポケットモンスター -紫電のゼオン・ベル-   作:やぶゆー

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31話:打ち合わせ

 

 

「おじゃましまーす。あ、引っ越す前より大分広くて綺麗ですね」

 

「俺、デュフォーの前の家行ったこと無かったんだけど」

 

「わたしも……」

 

 開幕速攻でアマネから無意識の訪問経験マウントを食らいながらも、サトシとナツメ達は新居に足を踏み入れる。

 デュフォーはかつてのマンスリーを引き払い、駅近くの準タワマンへ拠点を移していた。

 金策と賞金で資産が貯まったことで、デュフォーの生活レベルはこの世界に転移した頃とは比べ物にならないくらい潤沢なものになっていた。

 

「早速ですけど、何故この4人なんですか? 人選の基準とか理由とか教えて欲しいです」

 

 茶菓子とポケモン用のおやつが用意されたリビングに腰を下ろして早々に、皆が気になっていた質問をアマネが飛ばす。

 サトシ、ナツメ、アマネには共通の項目が無い。

 一体何故この3人が選出されたのか、誰もその理由をまだ知らないのだ。

 

「最初に実力という理由で頭に浮かんだのがユウジ、セセリ、アマネの3人だった。

 まずユウジは言わずもがな。

 セセリはゼオンの話を鵜呑みにするなら、覚醒時の戦術の鋭さは清麿に肉薄するレベル。

 アマネもミュウツーとの戦いで一皮剥けて、セセリと肩を並べる程の成長を遂げた」

 

 デュフォーの評価を受け、遠慮なく茶菓子を口に運んでいたアマネは「もったいないお言葉ですねぇ」と上機嫌で笑みをこぼす。

 

「私が勧誘されたのは消去法ですかね。

 ユウジさんはオレンジ諸島のヘッドリーダーであるためエントリーできない。

 それにセセリさんも、海外渡航でしばらくカントーには戻らないと言ってました」

 

「ああ。それにセセリの力には波があり、連戦には向かないという懸念点もあった。

 ――そして次に誘いたかったのがナツメ。ナツメが持つ超能力の力は強力な武器となる」

 

 今回、最も謎の人選であったナツメに皆の視線が集約する。

 ただ一人、アマネだけはライバル(セセリ)の姿を想起し、何故彼女が選出されたか解明に至る。

 

「……セセリさんの様に、超能力を運用してバトルするってことですか?」

 

「そうだな。ジムバトルではトレーナーの資質を試す目的があるため、超能力を使うことは無いだろう。

 だが、今度の大会ではポケモンやトレーナーに対して直接干渉しない範囲での使用は、ルール上認められている」

 

「確かに、普段のジムチャレンジの際は力を制限しているわ。

 それでチャレンジするトレーナーをねじ伏せても意味が無いし」

 

 しれっと言ってのけるナツメに、サトシ達一行が思わず互いに顔を見合わせる。

 

「俺がジムバトルに挑戦した時*1、思いっきり超能力を使ってたような……」

 

「あら、昔の話じゃない」

 

「ナツメ、お前昔は結構メチャクチャやってたんだな……」

 

 サトシとピカチュウが仲良くズッコけ、その横でゼオンが呆れたように突っ込むが、ナツメは悪びれる様子もなく無表情で茶をすする。

 こういった掴みどころのない反応とか、似なくて良いところはデュフォーに似ているんだよな、とゼオンは言葉に出さず内心で押し留めた。

 

「確かに、超能力が味方になるなら頼もしいことこの上ないですね。

 デュフォー君の強さもその一種みたいなものですし」

 

「ええっ、そうだったの!?」

 

 アマネの言葉が意外だったのか、サトシが大げさに驚く。

 デュフォーの《アンサー・トーカー》による戦略眼や理解力は常人を遥かに超えている。

 ナツメとの戦いで超能力を知っているサトシなら、よくよく考えれば気づけたかもしれない。

 それでも念動力といった物理的な力ではないため、完全な盲点となっていた。

 

「ナツメとは種類が違うが、似たような力だ。

 今のところ実際にバトル中に力を使ったのは、タケシのイワークとのバトル、カスミのアズマオウとのバトル、そしてこの前のカントー大会でモンメン(エルフ)に指示を出した時だな」

 

 カスミとタケシは、かつてのジムバトルを回想すると抱いていた違和感と戦慄の正体を理解し、改めてその脅威性を認識させられる。

 

(やはり、デュフォーの指示は特殊な力を使っていたのか!

 そして、この前の大会では本戦で1度も力を使わずに圧勝した……)

 

(ゼオンはもうカントーのポケモンで最強クラスの力を持っているわ。

 デュフォーが本気で指示をすれば、あれから更に数段強くなるってこと……!?)

 

「話を戻して最後にサトシだが、ミュウツーとの戦いを共にしたよしみでヒロシ,シゲルと併せて同時にオファーを出していた。

 だがシゲルには辞退され、ヒロシはパルデア地方の交換留学と日時が被ってしまった。

 承諾してくれたのがサトシだけだった」

 

「ん?」

 

「それって……」

 

 皆がその言葉に顔を見合わせる中、アマネがソファに寝そべり気まずい沈黙を掻き消さんとわざとらしく声を張り上げる。

 

「ナツメさん以外消極的採用ですやん! ま、せっかく何かの縁でこのチームになったんだし優勝目指しましょう!」

 

 選択肢が限られた中、消去法で選ばれた人選ではあるがそれは結果論。

 他者の代替として呼ばれたわけではないとわかっているから、誰も不平は抱いていない。

 アマネのツッコミはあくまでその心中を代弁したに過ぎなかった。

 

「そう言ってもらえるなら何よりではある。

 ……ところでゼオン、思ったより来客者が連れているポケモンの数が多いようだ。

 ポケモン用のおやつを用意するから手伝ってくれ」

 

「ああ、タケシやカスミの分までは手が回っていなかったか」

 

 デュフォーとゼオンが共に身を起こし、キッチンへと向かう。

 客をもてなそうとポケモンのおやつを仕込もうとする2人。

 かつての彼らを知る、ガッシュ達の世界の者達にとっては信じがたい光景だろう。

 そんな衝撃映像の希少性など知るわけもなく、サトシ達がリビングで大人しく待ち続ける中、それまでほぼ口を開かなかったナツメが沈黙を破る。

 

「時にアマネさん、あなたはデュフォーとどういう関係なの?」

 

「一言で言うなら"戦友"ですね。といっても実力には大きく隔たりがあるので、精神構造的には師弟くらいに思ってますよ」

 

「個人的によく会ったりする?」

 

「デュフォー君が帰省した時はちょいちょい2人で会ってますよ」

 

「特別な感情とかはある?」

 

「……? 友情と尊敬の念はありますけど……」

 

「……そう」

 

 そこでナツメは会話を区切り、一方的に口を閉ざす。

 状況を理解できないアマネが冷や汗を流し、隣のサトシとピカチュウに「え、なんすかこれ」と耳打ちするが、サトシ達にわかるわけもなく首を傾げられる。

 

(カスミ、これはまさか……)

 

(ええ、その可能性があるかも……。でもまさかね……)

 

 ()()()()を打ち立て、含み笑いを浮かべ合うカスミとタケシ。

 ナツメの思惑が一体何なのか、それがわかるのはもう少し先の話――。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 デュフォー達が戻り、リビングは改めて談笑で盛り上がった。

 サブコーチャーを申し出たタケシ達も含め大分メンバー同士が打ち解けたところで、話題は今度の選抜大会へと移る。

 

「デュフォー君は今、世界で最も注目されているトレーナーの一人です。

 他チームからめちゃくちゃマークされてるでしょうね」

 

「そうなのか? オレはネットを見ないからそこら辺がわからんな」

 

「poketubeやpoketterでもこの通りです。

 もちろん、デュフォー君の主力であるゼオン君も相当注目されてますよ」

 

 アマネが開いたスマホロトムの画面を、ゼオン達が頭を突き合わせ覗き込む。

 かつてシゲルと話した時*2とは比にならない程、SNS上はデュフォーの話題で溢れかえっていた。

 

ゆっくり強ポケトレーナー解説チャンネル

60万回視聴

【ゆっくり解説】今季カントーリーグで優勝したデュフォー選手!

不自然なまでの強さに各界隈から様々な疑惑が浮上!

 

ポケ沢カリソ

@pokekari3

「デュフォー君というカントー地方の少年と、そのパートナーでありエースポケモンであるゼオン・ベル。

異世界から転移したという疑惑のある、チートじみた彼らの強さをまとめろ。

あとついでにデュフォー君がヤマブキシティで、何人かの女性と2人きりでいた件を取り上げろ」

というDMを数々頂きましたが、異世界転移してきて無双することも、甘酸っぱい青春を送ることも何も悪いことではないため、取り上げません。

 

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「なかなかとんでもない事になってるな……」

 

 自分も騒動の渦中だったとは思わなかったゼオンが、他人事の様に呟く。

 これが小規模の騒ぎならもう少し当事者感も湧いたかもしれないが、これだけ多くの人間が動いていると、池に投げ入れられたエサに群がる大量の鯉を見ているような感覚だった。

 

「私が対戦相手なら、ゼオン君やドンカラス(オカシラ)を徹底的に対策するか、そもそもデュフォー君とまともに戦わない選択肢を取ります」

 

 アマネの言う後者の意味は、デュフォー相手には捨て駒をぶつけるということだろう。

 デュフォーに勝てずとも、アマネやサトシに主力を当てて確実に勝ちを拾えばチームの総合勝数で上回ることができる。

 

「オレも同意見だ。だからこそオレ以外の強化が必要となる。

 そのためにオレが大会まで3人を本格的に直接指導してやる。どうすればお前達を強くさせられるか、その『答え』をオレは知っている」

 

 その言葉の重みを知る者達が、例外なく息を呑む。

 カントー大会の前にデュフォーはサトシを指導をしたことはある。

 だが、それは自主トレの管理とポケモン育成指導といった基本的なアドバイスばかりで、細かい戦術指導までは行っていなかった。

 それだけでもサトシは一回りの成長を遂げている。

 本格的な指導を施されたなら、どれだけ強くなれるのか想像もつかない。

 

 デュフォーが打ち立てた個別のカリキュラムを、この日から3人は受けることとなった。

 

 ナツメ

 課題:『答え』を出すという作業は、物や生物を念動力で動かすといった一見派手な能力以上に演算処理を要する。

 今のままではセセリの様に能力の制御に苦労する。

 トレーニング:デュフォーと共に超能力の安定性を強める。

 

 アマネ

 課題:ナツメの様な超能力や、サトシの様な発想力や瞬発力といった個の強みを持ち合わせていない。このスタイルでは格上とぶつかった時に勝ち目は薄い。

 トレーニング:デュフォーが実戦で培った戦術を取得する。

 

 サトシ

 課題:トレーナー、ポケモン共に素の練度、実力が最も劣る。

 トレーニング:ゼオンとデュフォーが実戦形式で指導する。

 

 その間にもデュフォーは己のポケモン達の育成を行い、ミュウツーと新しいクローン体の設計図のレビュー、クローン体精製作業のリハーサルの打ち合わせを進めていた。

 私有の時間はほぼ無かった。労力のほとんどが他者のために費やされただろう。

 それでもデュフォーの表情、雰囲気からは今までにない活力で溢れている――最も近くで時を過ごしたゼオンはそう感じていた。

 

 そして時は流れ3週間後――カントー地方から遠く離れたイッシュの地。

 そこに近年設立された『ブルーベリー学園』にて、選抜大会の幕が開ける。

*1
無印22話

*2
15話




今回もご視聴ありがとうございます


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