ポケットモンスター -紫電のゼオン・ベル-   作:やぶゆー

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45話:テラリウムドームの五つ巴-⑤ アマネとブルベリーグ四天王

 

 

 決勝戦 第1ラウンドエリア収縮中

 

 サバンナエリア サトシVSナンジャモVSマリィ 戦闘継続中

 サイトウVSネモ 戦闘開始

 

 ポーラエリア キバナ,オニオン移動中

 

 コーストエリア アオキ,グルーシャ移動中

 

 

 アマネという少女は、ポケモントレーナーというジョブにおいて、基本的には同年代の競争相手を()()()()()側だった。

 地元のトレーナースクールは成績TOPで卒業し、ジムバトルも苦戦することなく制覇。

 公式大会では自分以下の世代の相手に、安定して勝ち越し続けてきた。

 

 "俺は本物じゃない"

 "私はチャンピオンの器じゃない"

 "僕は天才ではなかった"

 

 アマネに敗れたトレーナー達は、次々思い知ったことだろう。

 彼女がカントー地方に留まっていたというのもあるが、逆にアマネが認めた才能など、精々セセリとナツメくらいのものだった。

 しかし彼女にも、とうとうその日がやってきた。

 デュフォーという規格外の怪物に照らされ灼かれ、()()()()()()()

 そして、彼と共に初めて世界へ巣立った此度の大会。この決勝もまた同様であった。

 

「……前方に標的を発見。カントーのアマネ選手ですね。現在はプラチナランクの308位」

 

「よーやくオイラ達ブルーベリーチームも接敵できたぜぃ」

 

 キャニオンエリアの上空、グライオンの背に揺られるアマネと相対する、低空飛行状態の4人の少年少女。

 その4人には、同世代のトレーナー達を一目で圧倒するオーラ,華,そして確固たる実力がある。

 地元で1番強い子ども達がゴロゴロと集まるブルーベリー学園。そこから精鋭を選りすぐり、更にその中で上澄みとして勝ち上がった怪物達。

 ブルベリーグ四天王と直接対峙し、1対4の状況とはいえアマネとて例外無く呑まれてしまう。

 

(うーん、これがゲームとかならこの人達も中ボスポジションなんだろうけど、実際現物はヤバすぎでしょ。

 私でも対応できると思ったけど、雰囲気からしてレベチ過ぎ。

 でも私の()()もいるんだよなあ)

 

「ブルーベリー学園四天王……私は一騎打ちを申し込みます」

 

 唐突なアマネの宣言に4人が硬直する。

 内心で驚いているのかもしれないが――その実、最も戸惑ったのは張本人のアマネ自身だった。

 

(あれ、今何言った? ()()を所定の場所におびき寄せて、仕掛けた罠にハメるのが私の役割だったはず。

 私がまともに一騎打ちでボロ負けでもしたらそのまま押し込まれて、サトシ君やデュフォー君、皆の頑張りが全て無駄になる。一体どうした私……)

 

 自身の奇行にアマネが悩む一方で、ブルーベリーチームの代表であるカキツバタも繊細な対応と判断を迫られている。

 開始位置として指定されたポーラエリアと、対角線上にあるサバンナエリアで戦闘が始まったせいで、完全に他のチームに出遅れてしまった。

 今からどの戦いに介入しても、ハイエナの様に漁夫の利を得る形になってしまう。

 今大会がバトルロイヤルの巧さを争う競技であったなら、彼らのムーブは満点に近い。

 しかし、主たる目的は親善と真っ向のバトルの強さを競うことにある。

 ただでさえ決勝はコネ枠で招待されているため、他のチーム以上に綺麗な戦い方を要求される。

 ならば申し入れを受けフェアな戦いに興じればいい、と思うかもしれないがコトはそこまで単純ではない。

 彼らは遠目にサバンナエリアのやりとりを観察し、ポーラとコーストに1体ずつの生体反応を掴んでいた。

 カントーチームのただ1人を除き、暫定で全チームの位置を把握していたのだ。

 そして、ネリネのメタグロスによる感知に反応しなかったアマネは、ステルス状態で単独行動をしていたと考えられる。

 

(アマネはサバンナエリアの2つの戦いに、いつでも背後から漁夫れるメチャクチャ優位な状態にあった。なんなら、オイラ達が漁夫ったところを背後から挟撃することもできた。

 なのにその圧倒的優位を捨てて、何故オイラ達にタイマンを仕掛ける?

 それにオイラ達がアマネに気付いた時にはもう、向こうは先に気付いていた。

 もしこれが不意の接敵ならさっさと逃げりゃいいのに、わざわざ接近してきた。

 もしもアマネがオイラ達の位置情報を把握していたとしたら……狙いはオイラ達にある?

 勝負を受ける保証も無いのにか?)

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()。だからこそ即答をためらうカキツバタに対し、アマネが機先を制するかのように畳み掛ける。

 

「アカマツ選手、お相手願えますか」

 

「え、オレ? 挑戦なら受けて立つぜ! 燃えてきた!」

 

 コック服を纏う赤髪の少年が、普段のブルベリーグチャレンジのノリで元気よく受け答えると、残りの3人が顔色を変えてそれを静止する。

 

「待てぃアカマツ。譲歩して一騎打ちを受けるとしても、選択権はオイラ達にあるだろうよ」

 

「ネリネは私達の中で末席のアカマツを、狙い撃ちにしている可能性も考慮」

 

「タイプ相性的にアカマツくんが倒しやすいのかもしれないよ。安請け合いするの、良くないと思います!」

 

 三者三様の言い分だが、相手の要求を素直に飲むなという点は共通していた。

 アマネ自身も簡単に話が進むとは思っていない。

 だから最善のターゲットであるアカマツから、すぐさま()()へと照準を移す。

 

「ではカキツバタ選手がお相手願えますか」

 

「へっ、オイラ?」

 

「あなた達はアカマツ選手への指名理由に対し、「相性による優劣」「アカマツ選手が最も強さで劣ること」を指摘した。

 なのでランクが最も高く、ほのおタイプ使いのアカマツ選手と弱点の被らない、ドラゴンタイプ使いのカキツバタ選手を指名しました。

 あなた達に一騎打ちをする気があるなら、何も問題がないと思われますが」

 

『……ッ』

 

 タロ、ネリネ、カキツバタはほぼ同時にアマネという少女の特性を察知する。

 バトルの実力はともかく、立ち回りのしたたかさは自分達を超えるのかもしれない。

 だからこそカキツバタは尚更反応に詰まってしまう。

 

(何よりも最優先にカントー代表を潰す……まったく、クソ喰らえなミッションだろぃ)

 

 カキツバタという青年は、ブルーベリー学園(母校)が、切磋琢磨する仲間達が好きだ。

 だからこそこのミッションを試合直前にシアノから受けた時に、珍しく反抗心を露にした。

 

『ごめんねカキツバタ君、こんな厄介事を押し付けてしまって』

 

『……スポンサーからの指示ですかぃ? こんなの校長のやり方じゃない』

 

『最大手スポンサーの代理人から頼まれてね……いや、何を言っても言い訳になるか。

 何かあった時は僕が全て責任を取るよ』

 

 さすがのシアノもいつもの飄々とした態度を潜ませ、申し訳無さそうに頭を下げる。

 皆が不本意なのは百も承知だが、無条件で突っぱねるわけにもいかない。

 

『いくら校長といえど、個人に対する風評被害まで止めることはできないでしょう。

 この事は他の3人には他言無用でお願いします。

 校長がオイラに指揮権を託して、オイラが組み立てた戦略としてカントーチームを率先して狙う、という体にしましょうや。

 その結果、計画に支障が出てもこちらは関知しない。それがオイラがこの指示を受ける最低条件っすね』

 

 カキツバタはブルベリーグの筆頭トレーナーではあるが、それは留年を重ねた末の経験による結果だ。

 ポテンシャルという意味では他3人は己を超えると見立てている。だからこそ、経歴や評価に傷を残すこと無く無事に卒業してほしい。

 カキツバタが彼なりに、後輩たちに残そうとする計らいだった。

 

「もういいよ、その勝負オレが乗った!」

 

「アカマツ……!?」

 

 カキツバタが言い淀み、シアノとのやり取りを思い返していると、改めてアカマツがアマネの誘いに応じる。

 

「カキツバタ先輩は全体の指揮があるんだろ? ならオレが受けるべきだ。

 相性くらい、いつも先輩達だって技術で覆してるじゃないか。オレだってそれくらいできるさ!

 せっかく他でバトルが多発してるのにオレ達だけグダグダしてるのは、熱くないぜ!」

 

 仮にアマネが策を用意していようと、その策もろとも打ち破れば良いだけのこと。

 そう言い切るアカマツに、カキツバタは観念したように頭を掻きむしりながら後輩の言い分を受け入れた。

 

「それじゃーアカマツに任せるとするか。ネリネ、2人の勝負の立会を頼む。

 オイラはタロと()()()()に行ってくる」

 

 アカマツ、そしてネジのような髪型が特徴的な、眼鏡を掛けた褐色肌の少女が相槌を打つ。

 アマネはその指示に何も異を唱えない。

 他者が一騎打ちに横入りを入れてきた場合、そして万が一アカマツが負けた場合の保険としてネリネを残す、ブルーベリー側からすれば当然の采配だ。

 カキツバタとタロが去るのを見届けたところで、アマネは高度を落とし、気合を充足させ待ち構えるアカマツへと接近する。

 

「アカマツ選手……バトルを始める前に一つ相談が。もしも私が勝てたなら、このブルーベリー学園の情報を教えていただきたい」

 

 ピクリ、とアカマツとネリネの表情が動く。

 不服というよりは、その要求の意図がわからないといった様子だ。

 

「そんなことで良ければ、勝敗に関わらずオレが知ってる範囲で大会の後に教えるよ」

 

「いえ、この決勝戦の間でなければ意味がないのです。

 具体的に求めているのは、この施設内で大規模な演算処理ができる制御装置を置けそうな場所です」

 

「えーと……あーごめん、教えてあげたいけどそういうのはわかんないや」

 

 バツが悪そうにアカマツが頭を捻る。おそらく本当にそういった情報には疎いのだろう。

 だがアマネも確実に答えが聞けるとは思っていなかったので、その反応に失望はしない。

 そもそもアカマツを選んだ理由も、四天王の中で最も感情を優先するタイプだと見立て、相手であろうと惜しみなく情報を開示してくれるだろう、という仮説に基づいたものだ。

 どうにかして次の策を打ち立てようか、と思案を始めようとしたその時――

 

「校舎のエレベーターから行ける地下フロアはセキュリティ区域になっています。

 そこから先はネリネ達も入れない場所だけど、高度な設備があるとすれば、そこである可能性が濃厚です」

 

「……!」

 

 ターゲットではなかったはずのネリネが横から、まさかの有力な情報提供を飛ばす。

 アマネはその僥倖に喜びながらも、その先を頭に思い描く。

 

(これだ……私が求めていた情報! もうこれで私の役割は半分終わった。

 なんなら、ブルーベリー代表と戦う意味も無くなってしまったけど……)

 

 あとはこの場所を離脱して、所定の場所に仕掛けた罠へ誘い込めば、アカマツの撃破どころかネリネもろともダブルキルも夢じゃない。

 幸いまだアマネはグライオンの背にいて、すぐに逃走することができる。

 おそらく5分前の彼女なら、躊躇せずに即離脱を図ったことだろう。だが――

 

(ごめんなさい、サトシ君,デュフォー君,ナツメさん。

 皆が最善と死力を尽くそうとしているというのに、欲が出てしまいました)

 

 カキツバタの反応からアマネは、おそらく残りの3人には正確な指示は行き渡っていないと見立てた。

 精々カントー代表を優先して狙おう、程度のものしか伝わっていないのだろう。

 アカマツとネリネは純粋にポケモントレーナーとして、不利な状況でも勝負を挑むアマネに敬意をもって接してくれているのだ。

 ならば、2人の厚意を無下にするのは、アマネが抱えるトレーナーとしての道に反する。

 だからグライオンの背から降り、実力で一回り格上のアカマツとネリネの前で退路を絶ったことに、何の後悔も無い。

 

「情報の提供……そして、挑戦を受けてくれたこと、感謝します。

 こちらも失礼のない様に、全力で勝ちに行きます」

 

「ブルーベリー学園、ほのお四天王アカマツ行くぜ! アマネとは楽しいバトルができそうだ」

 

 アマネにとってこの一戦は、後の転機となる。

 サトシやデュフォーは紛れもなく彼女の戦友であり、大切な仲間だ。

 しかし、彼女がポケモントレーナーとして青春を謳歌できる、真の居場所はこのブルーベリー学園となる。

 

カントー代表:残り12体

パルデア代表:残り12体

ガラル代表:残り12体

ブルーベリー代表:残り12体

 

 





いつもご視聴ありがとうございます。
今回も溜める感じで終わってしまいましたが、次回からどんどんバトルが動いていく予定です。
アマネは個人的に動かしやすくて好きなオリキャラですが、次章以降にデュフォーの右腕として使うっていうのもなんだか違う気がするので
キリのいいところでメインパーティから離脱させるつもりです。
いずれデュフォーやゼオンのピンチに駆けつける役割となってくれるといいな、と思ってます。
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