ポケットモンスター -紫電のゼオン・ベル-   作:やぶゆー

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62話:サトシVSワタル

 

『ドラパルト翁……貴殿には2度敗れているが、此度こそ勝利を我が手にいただくぞ』

 

『最近一段威厳と勝負強さが増したねえ、ブリジュラス君。

 でも僕は昔の荒々しい口調だった頃の君が好きだよ』

 

「ダンデとのラス1バトルは結局こうなるんだよなあ……」

 

「キバナ……また一段と腕を上げたな。良いライバルに恵まれたんじゃないか」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「この強敵に出し惜しみは無用よ! メガルカリオ、"はどうだん"! トゲキッス、"ダイジェット"!」

 

「耐えろ、メガリザードン! シロナさんは初手から()()に行くつもりだ!

 俺たちはここを凌いで後半に巻き返す!」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「素晴らしい集中力です、サイトウさん。

 あたくしと対極の戦いをするトレーナーであれど、あなたも光り輝く(スター)の一つ。

 だからこそ、格闘使いのあなたにとって相性最悪の、あたくしのメガサーナイトをどう攻略するか――見せてもらいます」

 

「私の目的はカルネさんではない……。

 しかし、あなたはそんな事を言う余裕など与えない程の、紛れもない達人。

 ()まで取っておく予定でしたが、ここで至ります。《人魔語らう世界》へ――」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「タクトさん……これがあなたの真の切り札か。今日の標的は極上だ、メガメタグロス!」

 

「早々にダークライを退けるとは、さすがダイゴ選手……。

 共にマスターズエイトの壁を超えるぞ――メガレックウザ!」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「すごい……私の攻撃がことごとく外される……急所に食い込んでくる……デュフォーさんと戦った時みたい!」

 

「こちらの"エスパー"による指示に対し直感とセンスだけで対応してくるとは。

 バトルセンスはマスターズエイト以上ね……」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「コージーさん……本戦で使ってこなかったマイナーポケモンをここでいきなり使うのは、頭バグるからやめてよー」

 

「そっちこそ初手メタモンはヤクザよアイリスちゃん……」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 到達者達が己の全てをぶつけ、互いを高め合っていく。

 だがこれも勝負の定め。生き残りしは片方のみ。

 

『グランドカーニバル1回戦も第7試合に突入しました!

 

 第1試合、ダンデ選手とキバナ選手のラス1対決は紙一重でドラパルトに軍配!

 1回戦から王者がフルセットの接戦となったことで、早くも今大会が群雄割拠であることを示しております!

 

 第2試合、シロナ選手対アラン選手のダブルバトルは、シロナ選手のメガルカリオとトゲッキッスが開幕猛攻! アラン選手も食らいついたが、巻き返しが辛くも間に合わず!

 

 第3試合、サイトウ選手VSカルネ選手 崖っぷちのサイトウ選手が、未知のフォルムチェンジを披露し大逆転! 早くもマスターズエイトの一角が崩れました!

 

 第4試合、ダイゴ選手VSタクト選手 なんとタクト選手、レックウザという規格外の伝説ポケモンを持ち込んできたー! ここまで徹底していると清々しささえあります!

 

 第5試合、ネモ選手VSナツメ選手 試合の中で覚醒し、ナツメ選手の戦術に適応しきったネモ選手! 急激に成長するその姿は、サトシ選手を見ているかのようです!

 

 第6試合、アイリス選手VSモ・コージー選手! 実戦で滅多にお目にかかれない、バルビートの"ほたるびバトン"が炸裂!

 本戦で一度も披露しなかった奇襲に、2回戦以降も更なる奥の手の披露が期待されます!

 

 そして第7試合、ワタル選手のカイリューがダイマックス! 開幕ダイマックス戦術は、第2試合のシロナ選手以来となります!』

 

 スタジアムの天井を貫く勢いで、ワタルのカイリューが振動と轟音を奏で巨大化。

 相対的に大人に対する赤子程のサイズ差となったサトシのカイリューを見下ろしながら、全身に紫のエネルギーを纏わせる。

 

「"ダイドラグーン"!」

 

 紫色の波動が、虫一匹も逃すまいと徹底してスタジアム全域を覆い尽くし、雪崩の様にカイリューを飲み込む。

 

『ダイマックス技は不可避の非接触技、逃れることはできません!

 タイプ一致バツグンのダイマックス技を受け、サトシ選手のカイリュー為すすべなしか!?』

 

 波動が収まり、次いで煙が止み視界が晴れる。

 全身に手傷を負い地に伏せながらも、カイリューは顔を見上げ雌伏し機を伺っている。

 

「あの攻撃を防いだ!? "マルチスケイル"でもない限り、耐えられるわけが……」

 

 マルチスケイル。万全の時に受けるダメージを半減する、あまりにも強力過ぎる特性。

 高い育成難易度を誇るカイリューの中でも、更に世にも珍しいごく一部の個体のみが先天的に発現するため、実戦ではほぼお目にかかれない幻に近い特性だ。

 龍使いの頂点といっていいワタルですら、グランドカーニバルで戦える程に鍛えたマルチスケイルのカイリューは、2体しか所持していない。

 そして、サトシのカイリューがその力を持っているはずがない。

 あのカイリューは、紛れもなくワタルの親友、ユウジが所持していた一匹。あの個体の特性は"せいしんりょく"だったはず。

 

(まさか……後天的に特性が()()()()()()()としたら?

 一般人がおいそれとは手に入れられないが……ポケモンの特性をレアなものに書き換える、特別なアイテムは存在する。

 ならばあの個体がマルチスケイルを持つことは不可能ではない!)

 

「カイリュー、"はねやすめ"を維持!」

 

 サトシの指示から、ワタルもその意図を把握。

 ダイマックスは体力の倍加、技の強化などメリットが多いが、ダイマックス技を3回撃つとエネルギー切れで発動が解除されてしまう。

 "マルチスケイル"の強靭な受け性能と"はねやすめ"の回復でダイマックスを受け切るつもりなのだろう。

 

「ならば――カイリュー、"ダイナックル"!」

 

『おおっと、ダイナックルが炸裂したが、今度は効果今ひとつで大して効いていない!』

 

『あのダイナックルは攻撃するためではなく、副次効果で攻撃力をあげるためのものですね。

 サトシ君はダイマックスを枯らすのに手一杯なため、ワタル選手はその間にできるだけ強化技を積んでおきたい。

 十二分に強化してから、マルチスケイルごと貫くつもりなのでしょう。

 しかし同族対決を仕掛けておいて、ワタル選手に先手を譲り続けるサトシ君は内心肝を冷やしているかと。彼も私と同じギャンブラーですねえ』

 

 実況席の隣ではイッシュ四天王のギーマが、一観客の様な視点で第7試合を解説する。

 ギーマの予想通り、ワタルのカイリューはここから更にダイマックスが解除された後へと備えるべく"ダイジェット"により素早さを積んだ。

 

「"スケイルショット"!」

 

「"しんそく"だ!」

 

 高速の突撃を仕掛けるサトシのカイリューに対し、カウンター気味に無数の鱗の矢が突き刺さる。

 1度しか攻撃を防げない"マルチスケイル"に相性の良い、連続攻撃が全弾刺さり、カイリューも堪えきれずダウンを喫する。

 

「カイリュー戦闘不能! ワタル選手残り4体! サトシ選手残り3体!」

 

 火力と速度が強化され、大してダメージも受けずにカイリュー対決を制した。

 一見ワタルが圧倒しているように見えるが、本人の感触は然程でもない。

 

(状況だけ見れば、1体リードした上でカイリューに全抜き態勢が整った俺が優勢。

 しかしダイマックスは枯らされ、最後の"しんそく"でマルチスケイルを潰された。

 犠牲の代わりに得た対価をどう活かすつもりだ、サトシ君?)

 

「よくやってくれた……カイリュー。次はラプラス……君に決めた!」

 

「次はカンナから託されたラプラスか……」

 

 カイリューを戻し、ラプラスを繰り出すサトシの顔に迷いと焦りは無い。

 付け入る隙を与えないよう、マイナスの感情を伏せているとも考えられるが、ワタルはそうではなく本当にサトシはこの展開を予期していたのだと、自身の経験から嗅ぎ取る。

 

「行け、ラプラス……ダイマックスからの、"キョダイセンリツ"!」

 

 サトシからの返しの矢。巨大化したラプラスから霰と、重音を奏でながら輪状に走る直線の波動エネルギーが走り、カイリューを容易く吹き飛ばす。

 

『今度はサトシ選手の切り返しダイマックス!

 タイプ一致の4倍特効ダイマックス技が直撃! いかに頑強なワタル選手のカイリューといえど、これは耐えられなかった!』

 

『それだけではありません。"キョダイセンリツ"は物理特殊問わず全てのダメージを一定時間半減させる、特殊な結界を展開します。

 むしろサトシ選手の目的はこちらがメインかと。潮目がここから変わりますよ』

 

 ギーマを含め、試合を見守る最上位帯の選手達は、既にこの時点でバトルが8割方決まったことを理解している。

 決め手は"キョダイセンリツ"の追加効果となるオーロラベール。

 その影響はみるみる後続の戦いに響いていく。

 

 ワタルが繰り出した2体目は、特殊個体と言える赤い体色のギャラドス。

 トレーナーと強い絆で結ばれた一部のポケモンのみが果たせる、進化を超えた極限の進化――"メガシンカ"を修得した個体であった。

 メガギャラドスへとメガシンカし、"ダイサンダーと"パワーウィップ"で、ラプラスと互いにタイプ不一致の弱点を突きあった。

 だがダイマックスとオーロラベールで4倍相当の耐久を持つラプラスと真正面からの打ち合いは分が悪く、2撃目の攻防で討ち取られる。

 3体目のキングドラの"りゅうせいぐん"が直撃し、さすがにラプラスもダメージの蓄積が重なり倒れるが、キングドラもみずタイプ特効の"フリーズドライ"を切り替えされ相打ちとなる。

 遅れて観客席の一般トレーナーも、ようやくバトルの大勢が決したこと、大番狂わせが起きようとしていることに気付き始めていた。

 

「"キョダイセンリツ"が成功した今、おそらくサトシがそのまま押し切るだろう」

 

「ああ、大きなヘマでもやらかさず丁寧に詰めれば勝ちきれるはずだ」

 

「待ってくれ。確かにオーロラベールは強力でサトシも優勢だが、トレーナーとしての腕はワタルさんの方が上だ。指示技術次第では、巻き返しも不可能じゃないと思うが」

 

 客席からゼオンとデュフォーのやりとりを横で聞いていたタケシが思わず割って入る。

 たった一つの大技でチャンピオン格に勝てるほど、ポケモンバトルは甘くない――その考えと疑問はもっともだ。

 

「今回のバトルにおいては、その単純な作戦が通用する。

 ポケモンバトルに限らず、スポーツや格闘技を含めあらゆる戦いの上位帯には必ず流れと傾向が存在するんだ。

 ダンデ対キバナは真正面から殴り合う押し相撲。

 シロナ対アランは先手必勝と後の先の張り合い。

 ネモ対ナツメはトレーナー同士の指示技術戦。

 アイリス対コージーは、全抜きエースのお膳立て。

 そしてワタル対サトシのテーマは、一撃必殺の大砲で交互に殴り合う西部劇のケンカに近い」

 

「バトルが単純化したきっかけは、ワタルの初手ダイマックスだ。

 それにより強力な技や特性、スペックと相性がそのまま勝利に直結しやすくなる。

 ドラゴンタイプに有利な氷技をぶつけながら、壁も貼れる"キョダイセンリツ"はこのバトルにおけるワタルにとって致命的だった」

 

 デュフォーの言葉が事実なら、この結果はワタルが招いた戦略ミスということになる。

 だが、中立の立場でフィールドを見下ろす彼の見解はやや異なっていた。

 

「しかし……この状況を作り出した張本人は正確にはワタルではない――サトシがこの盤面へと試合前から"誘導"したんだ」

 

 

 

 

 




いつもご視聴ありがとうございます。
WCS編全編のプロットが一通りできました。
70話までにWCSが終わる予定です
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