名前を無くした、天権の懐刀   作:久遠とわ

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ようやく完成したので投稿。

予定より、だいぶ遅れてしまいました…。
(本来は今月の8日辺りに投稿する筈だったのですが、今は年末という事も相まってリアルに激務になりつつある事や、前から言っていました資格関連の勉強を今より追い込んでいかなければならない事。そしてそんな色んな意味で忙しくて中々時間の確保が出来なくなっている中、まさかの自分がインフルエンザに罹ってしまい、そうして動けなくなってしまったというトラブル。合併症状等の重症ではありませんでしたが、一週間ほどではないものの数日以上は療養、安静し続けなければならなくなってしまったというトラブルで散々でした…)


ですが、とりあえずはこの話を書き切る事は出来て良かったです。


それでは前回の続き。

とある男の璃月港に停泊している艦隊への号令の声が、刻晴達の元へと響き渡ったシーンからです。


_本当に感謝してもしきれないな

Side:刻晴

 

 

「_っ!?今の声は!?」

 

ちょうど視線を彼の方に向けた刻晴は、突如響き渡る“とある男の声”。

 

璃月港の港湾中に響き渡った声自体はやや小さくとも、なぜかはっきりとしっかりと聞き取れる“彼の声”に対し、思わずそう声を上げながら彼女は驚愕の表情を見せる。

 

 

「_今のって、彼の声…?」

(あの黄金の翼の彼、あの灰色の男の…?)

 

刻晴は驚きの表情を隠そうともせずに、自分達の頭上の空を飛ぶ彼の方を見ながらそう呟く。

 

「先ほどの声…。まさか、この声は彼の_」

 

そして刻晴の隣に居た甘雨もまた、刻晴と同じように驚愕の表情を浮かべながら、そう呟く。

 

 

「い、今聞こえてきた声は…?」

「あの男の声、まさか彼、なのか…?」

「あの声。空を飛んでいる彼か?」

「黄金の翼の男の声か?今のは…?」

「灰色の彼。あの者の声なのか…?」

 

そうして周囲に居る璃月港の住民達や通行の為にここを通り掛かっていた一般人達、そしてここの労働者の大男達や職員達に千岩軍の兵士達が、聞こえてきた彼の声によって愕然とした表情や困惑の表情、そしていずれも驚愕の声をそれぞれが上げていた。

 

 

 

_そうしてその時であった。

 

 

 

 

 

「_艦隊出港!!艦隊出港っ!!」

「_出港っ!!出港だぁっ!!」

「_彼からの合図だ!!行くぞ!!」

「_それぞれの持ち場につけぇ!!」

 

その時、璃月港に停泊していた南十字船隊の船やその協力者達の艦船達、もとい“璃月艦隊”の各船から船乗り達の雄たけびのような声が上がり、そうして各船から一気に帆を張り展開されていく音が璃月港中に響き渡る。

 

「っ!?」

「っぅ!?」

 

そうしてその声や音に驚いた刻晴と甘雨は思わず、目を見開かせてそちらの方を慌てて見る。

 

 

 

「_帆の角度調整を間違えるなよ!!これから強い陸風が来るのを忘れるな!!」

「_操舵手!!操舵する時は注意しろよ!!各船との間隔を間違えるなよ!!」

「_櫂(かい)衆!!良いぞ!!オールを漕ぐペースはそのペースを維持するんだ!!」

「_推進補助機!!もう大丈夫だ!!陸風が来たら、惰行に変更しておけ!!」

「_了解!!陸風を利用し、予定通りに艦隊旗艦の死兆星号を中心に陣形を組む!!」

「_了解だ!!おい!!お前ら!!これから来る陸風に備えておけよ!!倒れたりするなよ!!」

「_あぁ、分かってる!!お前らこそ風の勢いや加速した時の衝撃で転倒とかするなよ!!」

「_そうだ!!そうだ!!もし海に落ちたとしても助けないぞ!!泳いで船に追いつけよ!!」

 

 

 

ゆっくりと、だが確実に璃月艦隊の各艦は璃月港から出港すべく少しずつ増速、加速していって桟橋や埠頭から次々と離れて行き、艦隊の各艦はそれぞれ動き始める。

 

 

「うわぁ…。す、凄いわ。本当に……」

「わぁ…。本当にです。刻晴さん……」

 

そうして次々と桟橋や埠頭から船が離れていく光景に刻晴と甘雨は、感嘆の声を漏らしながら、そのような光景を見つめていた。

 

 

 

「おぉ、艦隊が、璃月艦隊が次々と出港していくぞ…!!」

「これはこれは…!!いやぁ!!本当に凄い光景だな…!!」

「あの船の周りに集まるように動いているな。じゃあ、あれが…!!」

「あぁ!!あれが死兆星号で間違いない!!艦隊の旗艦だ!!」

「凄いな!!行けえ!!行ってこい!!頑張れよぉっ!!」

 

そしてこの場に居る璃月港の住民達、一般人達、そしてここの大男達や職員達に兵士達もまた、それぞれがそれぞれの船、璃月艦隊に声を上げたり、また出港していく彼らに向かって盛大に声援を贈ったりしていた。

 

 

 

 

 

___そうしてその時であった。

 

 

 

「_っ!?こ、これは!?」

「_っぅ!?これは!?」

 

その時、刻晴と甘雨達に強烈な強風が襲い掛かった。

 

 

「_っ!?こ、この風が…!?」

(彼が艦隊に発光信号で送っていた陸風という事!?)

 

刻晴は自分達に襲い掛かった強風、陸風によって舞い上がりそうになる髪を押さえながら、そう考える。

 

「うわっ!?か、風だ!?本当に風が来たぞ!?風が吹いて来たぞ!?」

「おぉっ!?ほ、本当に強い風だぞ!?こ、この風は本当に!!」

「っ!?陸風か!?何ていう強さの風だよ!?吹き飛ばされるかと思ったぞ!?」

「っぅ!?危ないな!!軽く倒れそうになったぞ!!なんて強さだ!!」

「ど、どうして彼は!!このような風がやってくることが分かったんだ!?」

 

そうしてまたこの場の住民達や一般人達、そして大男達や職員達に兵士達は、口々にそのような声を上げていく。

 

 

 

「_っ!!あっ!!」

(い、一気に…!!)

 

そうして刻晴は視線を陸風が吹かれた璃月艦隊の方に向けて、その目を見開かせる。

 

 

「_っぅ!!あぁっ!?」

 

そして甘雨もまた、刻晴と同じように陸風によって吹かれる璃月艦隊の光景に目を見開かせる。

 

 

陸風の影響を受けた璃月艦隊の各艦は、先ほどまでの速度とは比較ならない程に加速、増速していきながら艦隊は陣形を整えつつ沖の方、孤雲閣の方へと向かって行っていた。

 

 

 

「ほ、本当に凄いわ…。あっ…」

 

刻晴は悠然と航行する璃月艦隊の光景を見つめながらそう呟くと同時にとある者、“彼の姿”を視界に捉えて感嘆の声を上げる。

 

 

「灰色の者、黄金の翼…」

 

彼女は静かだが、それでいて力強い視線を彼の方に向けながら、静かにそう呟く。

 

 

今の彼は艦隊旗艦である南十字船隊の死兆星号、そして集った璃月艦隊を先導するように艦隊の目の前の上空を飛びながら、彼は己の存在を誇示するかのようにその翼をはためかせていた。

 

 

「本当にあの者は、彼は、凄い人です…」

 

そうして甘雨もまた、刻晴と同じように彼の方を見つめながらそう呟く。

 

 

「お、おぉ…」

「あ、あれは…」

「なんと…」

「本当に…」

「こんな事が…」

 

そして彼ら璃月港の民衆達や、それぞれ労働者達や兵士達もまた、彼のその姿にただただ呆然とする事しか出来なかった。

 

 

 

「_あっ」

(_また白い光が…)

 

そうして璃月艦隊を先導していた彼の事を見つめていた刻晴は、彼から離れすぎている為か弱々しいながらでありながらも、白い光が点滅している事に気づき、彼女は静かに声を漏らす。

 

 

「また艦隊への発光信号でしょうか…」

 

そしてまた、刻晴の隣にいた甘雨も彼から白い光が点滅している事に気づき、彼女も刻晴と同じようにそう呟く。

 

 

 

_そして、その時であった。

 

 

「うわぁ…」

「わぁ…」

 

刻晴と甘雨はまた、感嘆したかのような声を上げる。

 

彼女達の目の前で彼は一気に急上昇せしめ、璃月艦隊から離れるように飛び上がりながら、その翼を大きくはためかせながら、その身を翻す。

 

そうして___。

 

 

 

「_あ、あれ…?」

「_戻ってきました…?」

 

彼の姿が徐々に大きくなっていく光景を、刻晴と甘雨は呆然とした表情で見ながら、そう呟く。

 

 

「は、はぁ…?」

「あ、あれ…?」

「戻ってきた…?」

「ど、どうしてだ…?」

「あ…。もしかして…」

 

そして刻晴と甘雨達と同じように璃月港の住民達や一般人達、そして大男達や職員達に兵士達は、それぞれがそれぞれとそう言い合う。そうしてまた、一部の者達は彼が戻ってきた理由に何かしらの心当たりがあるのか、そのようにそう呟いては近づく彼の姿を見続ける。

 

 

 

「っ…。そう言えば確か……」

「あっ…。そうでしたね……」

 

そうしてその次の瞬間、刻晴と甘雨は彼が璃月港に戻ってきた理由に思い至ったのか、そう呟く。

 

 

「_スメール艦隊やフォンテーヌ艦隊達と合流する為よね…」

「_最終合流地点であるオルモス港へと向かう為ですよね…」

 

刻晴と甘雨の彼女達は、それぞれそう呟きながら、彼へと視線を向け続ける。

 

 

そうして彼はまたここを通りかかった一般人達や璃月の民衆達の頭上を通過するように、そして彼女達の直上を飛翔するように彼らや彼女達への元へと戻ってくる。

 

 

 

「_おぉ…!!」

「_うわ…!!」

「_あんな…!!」

「_何ていう…!!」

「_凄いな…!!」

 

そうしてこの場に集った璃月港の住民達や一般人達、それに加えて港湾の労働者の大男達に各種の職員達や千岩軍の兵士達は皆一様に彼のその飛翔する姿に感嘆の声を上げ、見惚れていた。

 

 

「わぁ!!あんなに高く!!それに…!!」

 

甘雨はそう声を上げながら、彼のその翼をはためかせながら飛翔する姿に見惚れる。

 

 

「うわぁ!!さっきよりも高い所を飛んでいるわね!!そして…!!」

(さっきよりも圧倒的な速さで飛んでいくわね…!!)

 

刻晴もまた、彼のその翼をはためかせながら飛翔する姿に見惚れ、驚愕する。

 

 

灰色の彼はその黄金の翼をはためかせながら、璃月港の港湾、璃月港の市街地の上空を一気に駆け抜け、空を駆ける。

 

それは圧倒的な速力を誇る航空機、言うなれば戦闘機の如くのような速さで、悠然と璃月港上空を通過していく。

 

 

「「「「「………」」」」」

 

外国人等を含む通行人達や、それぞれの労働者等を始めとする璃月港の民衆達、璃月港にいる者達は例外なく一様に、空を駆ける彼の姿に見惚れながらも、呆気に取られていた。

 

「「………」」

 

そしてそれは刻晴と甘雨達も同様であり、彼女達もまた呆然とした表情で、その空を駆ける彼の姿を見つめ続ける。

 

上手い事、彼は気流等に乗る事が出来たのか、彼は最大推進力を以って璃月港の市街地上空を駆け抜けて行く。

 

 

 

「…もう」

(璃月港を抜けていったわね…)

 

刻晴は静かにそう呟く。

 

大空を翔る彼の姿はかなり小さくなり、飛翔する彼の近くには凝光の群玉閣が見える。

その事から今の彼は璃月港近郊にある璃月造幣局、黄金屋の近くまで飛翔していったことが見て取れる。

 

「…そうですね。刻晴さん。あれであれば……」

 

そして刻晴の隣に立つ甘雨もまた、小さくなってゆく彼の姿を見ながら、そう呟く。

 

「えぇ、そうね…。あれならば、あれ程の速さで飛翔して行けるのであれば、そう長くない内に層岩巨淵周辺の上空、そしてスメールの領空へと入っていく事が出来るかもしれないわね…」

 

そして刻晴は甘雨の言葉に静かに頷きながら、そう呟く。

 

「はい…。そうですね……」

 

甘雨もまた刻晴の言葉に静かに、だが力強く頷きながらそう答える。

 

 

 

「「「「「………」」」」」

 

「「………」」

 

 

そうして自分達から遥か彼方の上空を飛び去っていく彼の姿が璃月港から、璃月港に住まう者達や璃月港に滞在していた者達、そして刻晴と甘雨の視界から完全に消え去るまで、彼らや彼女達はただ静かに彼のその後ろ姿を見送り続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふぅ、はぁ、ふぅ、はぁ」

 

とある一人の男は深呼吸を行う。

 

 

自身の心を落ち着かせるように、そうして男自身の凄まじい集中力等を完全に発揮させるために。

 

何故、尋常ではない集中力等を発揮させなければならないのか。

それはここは既に地上ではないから。

 

男が居る場所は璃月の大地ではなく、その大地を見下ろす事が出来る程の高度に居るからだ。

 

そう、ここは空、璃月の空、しいてはテイワットの大空だ。

 

 

璃月港に停泊していた艦隊の船から発艦した彼は、その“黄金の翼”をはためかせながら、ただひたすらに空を駆けていた。

 

 

 

「…もう、ここまで来たんだ。後戻りはできないか」

 

男は静かにそう呟くと、その目を鋭く細める。

 

 

そう、男はもう後戻りをするつもりは毛頭ないし、引き返して全てを中止にするつもりもない。

 

男や仲間達は全てを、己の命すらをも賭け、そうして覚悟も決めたのだから。

 

 

「おそらく璃月艦隊はもう‘彼ら’と合流し、そして“三ヶ国合同艦隊”としての陣形を組み終えた頃か…」

 

男はそう呟くと、孤雲閣上空で男が目にしたその光景を再び思い出す。

 

 

「ドーンマンポートから出航して来た‘モンド艦隊’に、主に離島の港から出航してきた‘稲妻艦隊’、か。彼らも本当に本気になって、あの図体のでかい海の化け物に挑むつもりだという事か…」

 

男の脳裏には、自分達璃月艦隊に合流せんと航行する‘モンド艦隊’と‘稲妻艦隊’の二つの艦隊の勇姿が思い浮かぶ。

 

 

璃月艦隊に負けない程の規模である十隻程度の戦列艦の艦隊、二列の単縦陣で悠然と航行していた‘モンド艦隊’。

璃月艦隊の船の数には劣るものの、どの船も大型な稲妻様式の帆船かつ、船上に配置されていた強力そうな大砲を備え、そうして一糸乱れぬ動きの単縦陣で接近しつつあった“稲妻艦隊”。

 

両艦隊合わせて二十隻程度に及ぶ程のモンド・稲妻艦隊の勇姿溢れるその光景は男にとって、まさに圧巻であった。

 

 

「…ふんっ。まぁ、俺達南十字船隊。俺達璃月艦隊は、いい加減にあの海の化け物と決着をつけるために、様々な準備をしてきしな…」

 

そして男は静かにそう呟くと南十字船隊のリーダーであり、璃月艦隊の長である死兆星号の船長、並びに彼ら璃月艦隊の面々が決着の日まで、最終決戦を行う日までにしてきた事を思い出すかのよう、その顔を険しくとも決意に満ちた表情へと変える。

 

 

 

「_それに俺だって、色々な準備や多くの事を行って来たんだ。本当に彼ら、あいつらには感謝しきれないな」

 

その男はそう言うとチラッと、自身の“黄金の翼”、そして腰にぶら下げている片手剣やボウガン等に視線を向ける。

 

 

今の彼が使用している道具や武器類というのは、彼の仲間達や知り合った友人達と言った大勢の人の協力や助力、または彼らの好意によるものと言っても過言では無いだろう。

 

 

 

「…本当に感謝してもしきれないな」

 

男は改めて、その事に対して感謝の気持ちを呟く。

 

 

 

男の視線の先にある物。

彼が腰にぶら下げている武器の片方は、もはやその男の相棒と言えるほどに使い込んできた“片手剣”。

 

 

それは肌身離さずに使い続けた事で、例えば“ナタの鍛冶職人である彼女”を始めとする各国の鍛冶職人や武器職人達、彼らに定期的なメンテナンスや修繕等をお願いし、剣を握る柄の部分等は長い事使い込んだ関係で少し色や柄が変わってしまっているが、実際に斬ったり刺したりする部分である刀身部分は常に最高な状態を維持し続け、近距離戦や接近戦の時には男の前に立ち塞がった者達全てを制圧してきたその片手剣。

 

 

そうして男のそんな片手剣というのは、長い事様々な場面で使い込まれたためか、どこか独特な雰囲気すらをも纏うようになり、それが故にその剣の雰囲気に惹かれたり、その剣自体に興味を抱いた七国各国で知り合った友人達に持たせてみたり貸し出したりしてきた事で、知り合った人達や友人達との思い出や彼らの繋がり等が染み込まれている男の剣でもあった。

 

 

 

「………」

 

そしてまた、男の視線が反対側に移る。

 

視線の先にあるのは、腰にぶら下げていた片手剣側とは反対側にある武器。

中距離やある程度の遠距離において、主に狙撃等を行うために使用してきた“ボウガン”。

 

 

一見すると彼のボウガンはただのボウガンのように見えるが、‘スネージナヤやフォンテーヌ等を始めとするとある技師達’のそれぞれの手によって改造や改良を施し、特殊な機構を施した試作品でもある特殊ボウガンであり、取り回しは通常のボウガンと同等でありながら通常のボウガンよりも高い威力や広い範囲の射程距離を誇っていた代物であった。

 

また特殊機構による反動軽減のおかげで、入り乱れまくる乱気流を巧みに利用、活用しながらの戦闘機動や回避機動を取りながらも精密狙撃が可能という優れ物であり、またそんな特殊ボウガンが放つ矢にも特殊な工夫が施されており、それは通常のボウガンでは発生させることはまず不可能である”元素反応”の発生を意図的に発生させる仕組みすらも彼らの工夫で実現していた。

 

 

そうしてそんな男のボウガンというのも、このボウガンの改造や改良を巡ってそれぞれの人物達と様々なひと悶着やら、珍道中やらがあったりしたこともあって、そんな彼らとの思い出や繋がりを生み出した物であり、彼らとの絆を象徴させる思い出深い武器でもある。

 

 

 

「…ふっ。それに、俺の風の翼もな。今までで一番、調子が良いかもしれないな……」

 

そして最後に、男は自身の背中から姿を現している“黄金の翼”へと視線を移す。

 

 

男の黄金の翼というのは、日頃から自分自身の手で点検や調整等を行っていた。

 

だが黄金の翼もとい風の翼というのは、大元を辿ればモンドの滑空道具である。

そしてそれはつまり、風の翼の事を一番理解しているのはモンド人という事である。

 

 

 

「_本当に“騎士団の知り合いの奴ら”には感謝しないとな」

 

男はそう言うと心の中で自分の風の翼のメンテナンスや調整、また改良や改修等までを行ってくれた“とある騎士団の首席錬金術師兼調査小隊隊長である彼”や、その彼を手伝う形でお手伝いをしてくれた“とある騎士団所属の錬金術師であり、その騎士団首席錬金術である彼の助手である彼女”。

 

またある意味では“彼と同じ風の翼の使い手”であり、場合によってはその“とある騎士団の騎士である彼女”と編隊飛行を行い、彼女と協撃を行う事で魔物達等への空爆や空襲を実行する事で地上の騎士団に対して効果的な上空支援を行ってきた事などの出来事を通じて、彼らにとってはある意味戦友とも相棒とも言えるような、確かな絆と信頼関係を築いた“騎士団の偵察騎士である彼女”。

 

 

「_ふっ」

 

そんな彼や彼女達、それにそれ以外の彼らや彼女達、モンドを守るとある騎士団達の面々の事を思い出しながら、男は少しだけ笑う。

 

 

 

 

 

「___さて」

 

男はそう呟くと、目つきが一気に鋭くなる。

 

 

「本当にもう後戻りはできない。いい加減に覚悟を決めなければ。今もスメールのオルモス港、オルモス港で到着を待っているスメール艦隊達との合流を目指して“モンドと璃月と稲妻の三ヵ国合同艦隊”もとい、“東部大陸合同艦隊”が航行しているんだ。それに_」

 

男はそう言うと力を籠めるように、その身に纏う黄金の翼を大きくはためかせながら、己の拳を握りしめる。

 

 

「_数は少ないがそれでも強力な武器や兵器を携えたフォンテーヌ艦隊やスネージナヤ艦隊、また自分達の艦隊を支えてくれるナタから出航した補給物資や医療品等を積んでいるナタの数隻の補給船を合わせた“フォンテーヌ、ナタ、スネージナヤの三ヵ国合同艦隊”もとい、“西部大陸合同艦隊”がオルモス港に向かって航行しているんだ」

 

男はそう述べると、衣から‘とある小型の一品’を取り出す。

 

 

「ふむ…」

 

男は視線の先にある“それ”を見つめながら、自分達の計画の進行状況を頭の中で思い返す。

 

 

男が手にしている“それ”。

それは名高い技術国家としてもその名をテイワット大陸に轟かせているフォンテーヌの“懐中時計”であった。

 

彼の懐中時計は長針と短針が規則的に動き続け、彼に正確な時間を教えてくれていた。

 

 

 

「成程。この時間なら、おそらく…」

 

彼はそう呟くと、その懐中時計を衣の懐へと仕舞い直す。

 

「………」

 

そして彼は少しだけ難しそうな表情、険しそうな表情を浮かべる。

 

今の彼のその顔から読み取れるのは、“戸惑い”、または“迷い”といった感情であった。

 

 

 

「_だが本当に良かったのか…?もっと情報収集をした方が……」

 

男は静かに目を閉じ、そして再び開く。

 

 

その瞼の裏には、とある出来事が思い浮かんでいた。

 

それは直近で知ってしまったとある事柄、そして情報。

“冥界巨獣、海山が今までの度重なる自分達の船隊や艦隊との戦いで成長し、そうして海山が進化しつつある可能性や、既に人知れず進化してしまったかもしれないという仮説や論証”。

 

「………」

 

男は再び目を瞑り、沈黙する。

 

やはりどうしても、男はその事について考え込んでしまう。

 

 

 

「_否…!!」

 

そして彼は再び目を開く。彼のその瞳は先ほどまでとは打って変わり、決意に満ち溢れていた。

 

「もう、後戻りはできない…!!出来ないんだ…!!この日を迎えるのに、彼らはどれだけのどれだけの苦労と努力を行ってきたか…!!」

 

彼はそう言うと、自分達のために協力してくれた各国の友人達や知り合い達、そして自分達の挑戦に賛同し、そうして自分達南十字船隊の元に集ってくれた命知らずの船乗り達や、彼ら乗組員達に思いを巡らせる。

 

 

例えば炎国のナタの場合であれば、かの国は“戦争の国”である事。

 

かの国のナタが戦争の国であるという事に関しては、まずかの国の土地は今現在においてもその土地を喰らわんとするアビスによって、ナタは幾度もなく執拗な侵略を受け続けてきた。

 

そしてそんなアビスの魔物の軍勢達を、ナタの勇士達や戦士達が少なくはない犠牲を払いながらも、彼らの尽力によってナタはナタ人達の手によって守られ、そうしてナタは今日まで存続してきた。

 

だがアビスは、規模の大小はあれども今現在においても継続的にナタへの侵略を試みており、そんなアビスの継続的な侵略に対してナタは今でも防衛をし続けている。

 

そうしてそんな彼らの“終わりなき守護の為の戦い”、“ナタを脅かす侵略者達に立ち向かう為の護国の争い”が、かの国のナタは“戦争の国”であるという所以なのだ。

 

 

 

であるからこそ___。

 

 

 

「_まさか本当に、大勢の人間がナタから出国することを許すなんて思わなかったな」

 

男は心の底から、そうして心の底から感嘆の声を上げる。

 

 

ナタ防衛の為には、まず大前提の一つとして多くの人手や頭数を揃える事が必要不可欠だ。

 

だからこそ、基本的にはナタ人達は自分達の土地や離れるという事はしない。

 

 

ナタ人達やナタの民達が自分達の国から離れる事や出国する事が禁じられているという事でもなければ、暗黙の了承やルールとして明確に定められている訳でもない。

 

だが自分達の国や土地が侵略される事。

そして大切な家族や友人、そうして仲間達がアビス達に傷つけられるところを黙って見ているという選択肢は、ナタ人にとってはありえぬ事だ。

 

であるからこそ、自分達が土地を離れて活動するという文化や認識がないナタ人達を、ナタ以外のテイワットの他国で彼らの姿を見かける事がないのだ。

 

だがそんな彼ら、その男や彼の所属する南十字船隊達の挑戦を知ったその男の知り合いの大勢のナタ人達の一部は、自分達の挑戦を共に行いたいと言い出し、そうして今までのナタやナタ人達の慣習を覆してまで、ナタ以外のテイワットの他国に踏み出そうとした。

 

 

「………」

 

男の顔が、より真剣で険しいものに変わる。

 

 

 

「_ナタ人達。彼らだけは必ず、誰一人として死なさずに、全員生かしてナタへと帰さないと」

 

そうして男は、静かに、そして重くそう呟く。

 

 

知り合いのナタ人達のその声は、ある意味でナタ中で騒然となった。

 

 

どう考えても当然の事だ。

 

ナタ人には、ナタに居なければならない当然すぎる理由。

そしてそれは、ナタ人の責務どころか、ナタに生まれた者達の運命や宿命といえるような事であり、それをひっくり返そうとしたからだ。

 

であるからこそ、ナタの六部族の族長達。またナタの炎神である彼女はとても頭を悩ました。

 

彼ら族長達はナタを取り巻く情勢を始めとした理由や理屈の面で明確に反対していたものの、だが彼らその男の知り合いの大勢のナタ人達の熱意や情熱の前に、また過去に男や男の船隊の面々達が補給等によってナタ近海に停泊し、そのまま小型ボード達で立ち寄ってその男達がナタに滞在していた時の思い出や出来事を思い出したことで感化され、彼ら族長達はどうしても感情の面では反対しきれず、むしろ賛成してやっても良いと考えたり賛成したいと考えた程だったのだ。

 

そうしてそれは、ナタの族長達を取り纏めている炎神の彼女も同じ事。

 

 

だからこそ炎神がいる聖火競技場の談義室、その部屋に各族長達が集まって連日の話し合いが行われ、どう結論づければ良いのかと炎神と族長達は議論しあった。

 

 

そうして最終的には炎神や族長達、そしてナタの夜神や大霊達を巻き込んだ話し合いや協議が一週間程度以上行われる事となり、その結果として最終的には希望者全員の出国は認める事がなかったが、ナタの中でもマリンスポーツが盛んであり海と関わり深い者達の集まりである“流泉の衆”出身の者達と、体力自慢や活力旺盛な者達が非常に多い“豊穣の邦”出身の者達を中心とする一部のナタ人達は特例的に出国の許可が下りたのだ。

 

 

 

「はぁ、本当に…」

 

男は静かにそう呟くと、再度だけ目を瞑り、そしてゆっくりと目を開ける。

そうして感慨深い気持ちと同時に、重くのしかかる責任感をその胸に感じながら、男は自分の決意と覚悟を改めて固める。

 

 

正直、夜神や大霊達が彼らの出国を認めてくれるとは思ってもいなかった。

 

 

自分達船隊が向かう場所は戦場であり、死地となりうる場所でもある。

 

普通であれば、そんな場所への出国を認める事なんてありえないだろう。

 

 

おまけにナタ人は、アビスから受ける長期的な影響が原因でナタ人と大霊は互いに寄り添わなければ生きることができないという事情もあるようなのだ。

 

男は詳しい理由を知らないが、ナタを離れた者は大霊の加護を受けなくなり、記憶と感情に影響が及ぶ危険性があると聞かされたことがある。

 

そのためナタを離れる時には族長を通じて大霊の認可を得て出国者に大霊の加護を受ける必要があるが、それはアビスに対抗する貴重な力を消耗する事に繋がりかねないので、その判断はとても慎重なもので厳しいものであると言えるであろう。

 

 

だがそんな事情があるのにも関わらず、それでも出国を認めたという事。

 

おそらく一つは今現在のナタの侵略を目論んでいるアビスの動きが停滞ぎみであるからという事ではなかろうか。

 

 

そしてもう一つ。

彼らナタ人達を自分達の元に送り届け、そして男達と共に海の化け物に挑戦をするという経験が、アビスとの戦争を行っている彼らに対し、何か貴重な教訓や気づきをもたらしてくれるかもしれないもの。

 

つまり戦争の国のナタにおいて、アビスとの戦争の際に何かしらの参考になるかもしれないない出来事や新たな発見、戦争を有利に進める事ができるそれらヒント等を自分達と行動したナタ人達はそれらを知っては吸収し、そうしてその貴重な教訓や発見等をナタへと持ち帰ってくれるのではないかという期待もあったからであろうか。

 

 

 

「おそらく…」

 

男は思考する。

自分達の挑戦とナタの情勢、それぞれを比較するように。

 

自分達の挑戦というのはテイワット各国に呼びかけ、そして各国の命知らずの船乗り達や各国で知り合った海に生きる者達が集い、そんな彼らが“テイワット連合艦隊”として艦隊を組み、“冥界巨獣の海山という名の海の化け物”に挑むという挑戦だ。

 

 

この挑戦という名の構図。

 

“テイワット連合艦隊”というのは、ナタにおける“炎神と六部族”。

 

そして“冥界巨獣の海山という名の海の化け物”というのは、ナタを侵略しようと目論む“アビスそのもの”という構図と言えるのだろうか。

 

 

 

「_ふんっ。それなら、尚更だな」

 

男は真剣な表情でそう呟く。

改めて男は、必ず彼ら全員を生かして帰すという決意を更に強くする。

 

そしてそんな特殊な事情を抱える彼らの安全を極力確保する為に、ある意味彼らは観戦武官的立場兼、後方支援要員的な立場で艦隊に加えさせることで、全員が全員無事に生還できるように自分達の艦隊の方も工夫して彼らを受け入れる事としたのだ。

 

 

彼らの多くは、ナタから航行する事となった中型や大型の病院船や補給船といった非戦闘船に乗船させる事とした。

 

これにより、彼らが戦死するリスクや負傷したり死傷するような危険性もかなり低くなるだろう。

 

それらの船舶は基本的に艦隊の後方で待機するなり、活動する船舶となる。

 

自分達璃月艦隊を始めとするモンド艦隊と稲妻艦隊にスメール艦隊、そうしてナタの補給船や病院船の護衛のために後方で待機している一部の艦船群を除いたフォンテーヌ艦隊とスネージナヤ艦隊の戦闘艦に大勢乗船させるよりかは、それら言ったリスクや危険性を低く抑えられやすいだろう。

 

 

 

「_だが、それにしても…」

 

そうしてナタ人の彼らの事を考えていたその男は、彼らナタの船と行動を共にするフォンテーヌ艦隊とスネージナヤ艦隊の事に思いを巡らす。

 

「俺達に協力してくれたフォンテーヌ艦隊とスネージナヤ艦隊、それだけじゃなくてスメール艦隊も、か……」

 

そして男は静かにそう呟く。

 

自分達の挑戦に対する純粋な共感、そうして彼らや、またその彼らをサポートした者達や援助した者達の思惑に、男は彼らへの思いや考えを巡らす。

 

 

「ふむ…」

 

男は特に気にした様子もなく、ただ淡々と呟く。

 

彼らの思惑に興味がないわけではない。

 

 

ただ今はそれよりか_。

 

 

 

「___そろそろだな。さてと今の状況は…」

 

男はそう言いながら、再び衣から‘とある小型の一品’、‘懐中時計のような物’を手に取る。

 

「ふむ、成る程…」

 

男は手に取った‘やや大きめの懐中時計のような物’に対し、真剣な眼差しで見つめる。

 

 

男の視線の先にある‘やや大きめの懐中時計のような物’。

 

それは懐中時計のように時計盤に長針と短針が備わっている通常のそれとは異なる。

 

 

 

「………」

 

男は無言でそれを見つめる。

 

 

男が手にしている物。

 

真ん中の大きな盤に、その大きな盤の真上、斜め左下、斜め右下、それぞれに中型の盤が三つ。

そしてそれぞれの盤には、それぞれ異なる数字や記号が刻まれている円盤。

 

 

 

「_高度は適性。方位も合っている。温度と湿度は、おおよそ変わらず…か」

 

男は読み上げるようにそう呟く。

 

 

その‘やや大きめの懐中時計のような物’のそれぞれの物。

それは真ん中の大きな盤にある“高度計”、大きな盤の真上にある“方位計”、斜め左下にある“温度計”、斜め右下にある“湿度計”、それぞれの計器。

 

それら計器類を一つに集約したそれは‘飛行計’と呼ばれる逸品。

 

 

それは本来、フォンテーヌの飛行マシナリーに搭載される予定でもあった計器群。

それを一つに集約した一品。

 

フォンテーヌの精巧な一品である懐中時計よりも貴重な逸品。

あくまでもそれは試作品やサンプル品であったが故に、フォンテーヌはおろかテイワット全土でもほぼ出回る事のない極めて貴重な物。

 

それが今、その男の手元にあった。

その男が主に超長距離飛行を行う際、飛翔時の気流の変化等や気象条件の変化の予兆等、それらを男の勘や経験と組み合わせる事で確実に掴み、そして男が飛翔する時に極限までに体力やスタミナの消耗を防ぎ続けるための重要な道具の一種、‘懐中飛行計’として。

 

 

 

「_そして…。ふむ……」

 

そうして男はその‘懐中飛行計’を手にしたまま、周囲を確認するかのように見回す。

 

男の眼が映したものは、“璃月の層岩巨淵と璃沙郊を隔てる関所”、“璃月とスメールの国境地帯のスメール側にあるガンダルヴァー村”。そして“超巨大な大樹である『聖樹』と一体化する形で作られた樹上都市、スメールシティ”が、それぞれ順番に男の眼に映っていた。

 

 

「_ふむ、成る程…。より正確には今、大方は層岩巨淵上空のその辺りを飛翔中という感じ、か……」

 

そして男は頷きながら、指を折ったり曲げたりしながらそう呟く。

 

先程の三地点。

“層岩巨淵の関所”、“ガンダルヴァー村”、“スメールシティ”。

 

 

これら三地点を基に、まるで男は脳内で三角法や三角測量を用いた暗算等をしたかのように、自分自身のおおまかな現在位置を割り出す事に成功する。

 

 

 

「いよいよか…」

 

そして男は手にしていた懐中飛行計を服の懐にしまいながら、そう呟いては真下の方を見つめてみる。

 

 

男の真下の方では丁度、璃月の層岩巨淵の鉱山や岩山が広がっていた光景から、スメール特有の雨林が広がっていく光景へと切り替わっていった光景であった。

 

 

「よし、スメールに入ったな…」

 

そして璃月領空からスメール領空へと進入した事を確認した男はそう言うと、先ほどの‘懐中飛行計’を使わずに自身の感覚や体感で、気流の変化等や気象状況の変化を感じ取ろうとするかのように、自身の感覚を研ぎ澄ませるか如くに静かに眼を瞑る。

 

 

 

「_ふんっ。相変わらず璃月の空とスメールの空では、それぞれの風の吹き方が少し変わってくるな…」

 

そうして男は、自身の所感を静かに呟くとその眼を開き、また服から‘別の物’を取り出す。

 

男が取り出した物。

それは先ほどまでの懐中時計や懐中飛行計よりも、より‘特徴的な代物’。

 

特徴的な小型アイテムと言える代物。

それは何枚ものの羽根が高速回転するように作られた代物。

 

 

そしてそれは男にとって、懐中飛行計並みか、それ以上に重要な道具に値する物。

 

 

 

「_っぅ…!!」

 

刹那、飛翔していた男から上昇気流、風域が発生し、その男こと黄金の翼はその風域に乗って一気に自身の高度を上昇させる。

 

 

その現象は自然発生によって発生した現象ではない。

男の‘特徴的な代物’によって、男自身が意図的に発生させた上昇気流だ。

 

 

 

「よし…!!‘伍号型風力ファン’も、今日は特に調子が良いみたいだな…!!」

 

急上昇してゆくその男はそう言い放ちながら、満足げな表情を浮かべながら頷く。

 

 

男が手にしていた‘特徴的な代物’である‘改修風力ファン’。

それは男の特殊ボウガンと同じように、幾度ものの改造や改修を施したことによって本来の性能より大幅に強化された‘伍号型風力ファン’。

 

上下左右あらゆる方向に風域を人為的に発生させ、そして更には男の意志によってその風域や気流の強さの調整すらもが可能な代物であり、飛翔する男が通常の飛翔から戦闘機動に移った時によく使われる道具である事から、それはまさしく男の空戦能力を支える一つの道具と言っても過言では無いだろう。

 

 

元々はフォンテーヌで生み出された“風力ファン”と呼ばれる物。

本来であれば小さな風域、多少の上昇しか行えない風力ファンであった。

 

 

 

「ふっ。よしっ…」

 

一定の急上昇を終えた男は、姿勢を正すと滑空するかのように真っすぐへと飛翔しながら、まじまじとその幾度の改修が施された伍号型風力ファン’に対して、まるで生まれ変わった強力な相棒とでも言わんばかりに見つめる。

 

 

過去に男が手に入れた風力ファン。

 

元々、この風力ファンはフォンテーヌのスチームバード新聞のお偉いさん達が日頃のお礼として渡して来た物だ。

 

 

“スチームバード新聞のとある女記者による男自身への突撃取材をきっかけに知り合った彼女”。

そしてフォンテーヌ国内や外国の各国で彼女と出会えば、そのままなし崩し的に同行する事になり、そうしていつものように真相を追い求めて自身の危険を顧みずに取材や調査を彼女は敢行し、その度に毎回のように危険な目にあいかける彼女の事を彼女のボディーガードや護衛人の如く、彼女に襲い掛かった様々な危険や脅威の全てを撃退、駆逐し続けてその記者の身を護り続けてきたお礼として、プレゼントされた代物であった。

 

 

 

「はっ…。あの“取材馬鹿”…。どうせ、オルモス港でスタンバイし、そして俺の事を待ち伏せでもしているんだろうな……」

 

やかましいくらい元気でいて、人懐っこくて明るい性格の彼女の姿が、もう既に男の頭の片隅に焼き付いていた。

 

 

 

「ふっ…。ははっ……」

 

そうして男は飛翔しながら笑う。

 

完全にストレスや緊張等と言ったものが、彼女の事を思い出した事で吹き飛んだかのようであった。

 

 

 

 

 

「_待っていろよ…!!冥界巨獣、海山…!!いい加減に決着をつけてやる……!!」

 

そしてその男は滾る己の感情を露にしながら、そう言うと手にしていた風力ファンに力を込める。

 

 

 

 

 

 

 

「___俺や船長達!!集まった命知らず達!!テイワット連合艦隊を舐めるなよ!!」

 

そうしてその男、“灰色の男”は力強くそう言い切ると急加速していき、“黄金の翼”はそのまま一直線に飛翔していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、予定通りにオルモス港で各国の艦隊は集結した。

 

そしてオルモス港に集結した各国の艦隊は、そのまま補給や最終調整等を行った。

 

そうしてトラブルが何一つも無く、無事に補給や最終調整等を終える事が出来た各国艦隊の船乗り達は、その日の夜に一部の船乗り達が開こうとしたことによって、結果的に盛大な式典と化した出撃壮行式が開かれた。

 

 

出撃壮行式では、各国の人間達が自由に混ざり合い交流し合い、そして彼らは各々の精いっぱいを尽くす事を誓い合いながら盛大に祝い合った。

 

そうして式の最後には艦隊総旗艦である“死兆星号の船長”による彼らへのスピーチ、そしてまた彼女の右腕である“灰色の男”による彼らへの演説により、彼らの士気が最高潮にまで高まる。

 

 

そして夜が明けて空が明るくなり始めた頃、各国艦隊もとい“テイワット連合艦隊”は、遂に冥界巨獣の海山を討伐する為、オルモス港に集まった大勢の観衆達の声援を受けながら、彼らは出航していたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そうして彼らの結末というのは、下記にある本作品のプロローグとなります。
・第1章「縛られた者と解き放つ者達」・「_起きてください、目覚めてください。」
【https://syosetu.org/novel/333745/1.html】

それでは次回は時間軸が飛び、【1幕:「群玉閣、目覚めし男」編】時点での刻晴視点での出来事を描写としていければと思います。


なお前書きにある通り、作者の自分が置かれてしまっているリアルな状況が、インフルエンザに罹ってしまった事も相まって滅茶苦茶な状態となってしまい、非常に不味い状況となってしまっています。

そのため今年の投稿はこれでもう最後とし、一度リアルに色々な事の立て直しを行っていきたいと思います。



今までにお気に入り登録してくださいました皆様方や感想をしてくださった皆様方。
去年に引き続き、今年も本当にありがとうございます。


プロフィールにある通り、描きたいものを描いていくというスタンスでここまで描き上げて行きましたが、この作品を約二年間かけてここまで描き上げられてきたのはそれだけではなく、皆様方のお気に入り登録や感想をしてくれた事でおおよそ二年間も続けられたのではないかと思います。

改めて感謝します。本当にありがとうございます。



それでは次回、来年の最初の投稿まで気長にお待ちください。
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