サンドイッチ用に真っ二つに切られた固く、細長いパンの上に豆腐が1丁、まるごと落とされた。
べちゃ、という水気を含んだ音があたりに響く。
しかし、パンの上に鎮座する豆腐はぷるぷると震えながらもその形を崩すことなくその存在を主張している。
少年はゴクリとつばを飲み込んだ。
調理は、まだ始まったばかりだ。
べちゃ、という水気を含んだ音があたりに響く。
2丁目である。
少食なポケモンなら1丁だけで満腹になってしまいそうなボリュームの真四角の大きな豆腐が、これまた大きなパンの上に、2丁。
あまりにも衝撃的な光景である。
すでに食欲を失いそうな光景だが、まだまだ調理は終わらない。
ピラミッドのごとく積み重なった豆腐の上に、新たな食材が自由落下する。
ライスだ。
パンの上に、豆腐を山ほど乗せて、その上から……ライスである。
ラーメンとライスを同時に食すというカントー地方の住人ですら眉をひそめるような悪夢のような光景である。
調理はまだまだ終わらない。
ドサドサと続けて落とされたのは、レタス、そしてアボガドである。
ただでさえ味の薄い豆腐とライスの上に落とされた、これまた味の薄い食材であるレタスとアボガド。
このレシピ考えたやつは頭おかしいんじゃねーのか、という罵倒混じりの雑念が頭をよぎる。
いけない。
最後の仕上げに取り掛かる前に深呼吸をして雑念を振り払い、パンの上半分を手に取った。
そして、パンが白い塊の上にボトリと落とされ────崩壊。
「あ、ああああああああ!」
「アギャアアアアアアアアッス!」
崩壊。崩壊である。
うず高く積み上げられたライスとトーフがれいとうビームを食らったアローラナッシー(×4倍弱点)のごとく崩れ落ち、ビチャビチャと水っぽい音を立ててテーブルの上に散らばってゆく。
「し、失敗だ……!」
「ア、アギャアッス……」
少年は失意に満ちた声でヨロヨロとしながらもピックを手に取り、
それをトーフがかろうじて一つ乗っただけのパンに突き刺して、言った。
「かんせい……!」
「さあ、ミライドン、食べよう……!」
「アギャ……」
どう見ても失敗作。
どう見てもおいしくない。
それがわかっていてもなお、ミライドンと呼ばれたポケモンと少年は悲惨な姿になってしまったパンを口にした。
味は────
「おいしくない……!」
「アギャッス……!」
失意に沈み、崩れ落ちるこの少年。
名をハルトといい、こんなんだがパルデア地方のチャンピオンランクのトレーナーの一人である。
そこに声をかける少女が一人。
ガラル地方からの留学生にしてチャンピオン、ユウリ。
「……何回見ても思うんだけどさ。なんでわざわざパンを自由落下させるの?」
「サンドイッチはそういうものだからだよ!」
「いや、だとしても、ねえ……それにレシピもめちゃくちゃじゃない? 何? このスーパートーフサンドって」
「さあ……? 完成さえすればまずくはないからいいんじゃないかな?」
「それにしたって見た目最悪じゃない?」
「その発想はなかったなあ」
「とりあえず口直しにカレー作ってあげるからぐちゃぐちゃになったテーブル片付けておいてね?」
「えっ……?」
青ざめるハルト。
脳裏によぎるのはメシマズ大国との評判をほしいままにするガラルの凶悪な料理の数々。
スターゲイジーパイ。
シビルドンの(体液から作った)ゼリー寄せ。
脂ぎったフィッシュアンドチップス。
思わず拒否しようとするが、その前にユウリが先制する。
「む、何よその表情は……まあうちの地方の料理の評判は聞いてるからしょうがないと思うけど、カレーだけは大したものよ?カレーだけは」
そう言いながら、キャンプの準備を始めるユウリ。
「まずはふといながねぎにニンジン、じゃがいも、玉ねぎと肉を炒めてー、隠し味にカムラのみを3つ入れてー♪」
テキパキと材料を切り、鍋に入れて調理をしていくユウリ。
その様子を見るに料理には慣れているようだ。
「さ、ここからが難しいところよ! うちわで扇いで一気に強火にして……良し! この火加減を維持したままこぼれないようにに混ぜる!」
「そして……」
何故か手をハート型にして構えるユウリ!
「……ここだ!まごころを込めるッ!」
ハート型にした手から謎の光が飛び出しカレー鍋に放り込まれる!
そしてッ!次の瞬間ッ!
カレーが光り輝き光の柱が立ち上る!
「かんせい!」
ネギもりカレー!
「さて、お味は……?」
『『『!』』』
「うん! 完璧!」
「おいしい!」
「アギャッス!」
リザードン級のおいしさ!
HPと 状態異常と PPを すべて 回復
たくさん 経験値を もらった!
ユウリとハルトと ミライドンたちは とっても なかよくなった!
「ところでちょっと聞きたいんだけど……カレーから出てきたあの光、何?」
「さあ……? おいしいしどうでもいいんじゃない?」
オチはないです
感想ほしいです
あと☆ください