お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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ー*-

 蒼玻くんへ。

 普通の人がするという恋文(ラブレター)なるものを、彼氏と一心同体の令嬢たるわたくしも、書いてみようと思うのです。

 …思えばわたくしは、蒼玻くんをいつから知っていたのかよくわからず、そして気づいた時にはもう手遅れでした。脳の奥底に沈んだあやふやな意識から見上げた、わたくしの身体に宿る見知らぬ貴方が、燦然と蒼く輝いていたのですから。

 貴方はずっと、わたくしを蘇らせるつもりで、その時には入れ替わりで消え去るつもりでいました。だから、わたくしはそんな貴方のことを、かけがえない、わたくしにとって失われてはならないものだと思って。そして、貴方に落ちたのです。わたくしもまた貴方のために命をベットするほどに。

 蒼玻くん。ずっと、ずっと、いつまでも、好きですわ。わたくしと蒼玻くんは、一生離れられない天命の下に奇跡のような比翼連理で添い遂げるのだと、わたくしはそう信じています。

 よろしくおねがいしますね、わたくしの、運命の人。

 アオバ・フロックスより。

ー*-

 ポケットモンスター、縮めてポケモン。

 この世界の不思議な不思議な生き物。

 空に、海に、森に、街に、世界中の至る所で、その姿を見ることができる。

 この不思議な生き物と人間たちの、夢と冒険の世界。

 そんな世界を、「物語」として、その上に君臨する虚構神が存在する...そんな概念(アイデア)は、人々の奮闘と旅路の果てについに具現化することができた。

 名数は100。続いてきた物語には、良きエピローグを与えなければならないー文脈を紡がれ、完結へと帰結することが物語の、物語世界の、物語世界の絶対神の、使命なのだから。

 絶対神フィクトマキナの100話めの目的地は、第一話が紡がれた地、ユキコシ地方、トキトビ島。


#最終頁 「手を伸ばせ、存在の意義/存在の証明」

ー*ー

 

 「アオバくん、キミなら、あのモンスターが何処に行ったか心当たりがあるんじゃないのかね?」

 

 「…ないと言えば嘘になりますわカクミガシ博士。けれど…

 

 …世界の支配者となってしまったフィクトマキナが、何処へ向かおうが、わたくしたちにできることはありませんわよ…

 

 …それにわたくしにはもう、その理由さえ…」

 

 「…そうか。

 

 まあ好きにしたまえ。私も、私の心の赴くままにやるだけだからな。

 

 行くぞアブソル。」

 

ー*ー

 

 ユキコシ地方、トキトビ島、キンレンタウン南方の海岸。

 

 コンジキシティにて虚龍から進化し、天地を貫く漆黒のフィルムロールと宇宙を侵食する光芒の歯車腕を備えるに至った虚構神フィクトマキナは、虚ろな眼をギョロギョロ動かしながらゆっくり東進し、そしてここに至ろうとしていた。

 

 「この期に及んでまだ…」

 

 フィクトマキナをこれ以上進ませてはならない、好き勝手させてはならない、存在させてはならない…世界中の誰もが、そう確信している。根拠など、星を貫通して上下両側の全天に広がる無数のフィルムロールと、宇宙の果てまで伸びていそうな光芒で充分だ。

 

 故に、フィクトマキナ予想上陸地点となったこの浜に、トレーナーたちは集結した。

 

 「私たちも、あがくだけなんだよ。」ーウスベニおみやぐうじ、イチシノ。

 

 「神を興し、神を鎮める。まあぐうじの通常業務ではないかね?ちと骨だが。」ーコンジキおみやぐうじ、カクミガシ博士。

 

 「野放しにできないものを野放しにしない、ま、責任だな。」ーグンジョウおみやぐうじ、トチュウ。

 

 「気合いが、根性が、情熱が滾るぜ…!」ーワカナエおみやぐうじ、オリザ。

 

 「ひょひょっ、こんな面白いポケモンと戦えるとは、これじゃから歳を取るのはやめられんのぅ!」ーヌレバおみやぐうじ、アテ。

 

 「マニュアルにない事態?いいえ、我々がマニュアルを作るべき事態のようですね。」ーキンレンおみやぐうじ、カンゾウ。

 

 「いつも通り、示す、だけ。

 

 私が、最強だって…!」ーサンゴジュおみやぐうじ、チューリップ。

 

 「地元で逃げられたからな。今度こそ、仕留めさせてもらう。」ーニビジムリーダー、タケシ。

 

 「この私が、負けることすらできんままでは、終われん。」ーロケット団ボス、サカキ。

 

 「カントージムリーダーの主将として、わたくしのすべて、ぶつけさせていただきます。」ータマムシジムリーダー、エリカ。

 

 「アルセウスに並ぶ絶対神…見届けるわ。そして、悪いけど倒させてもらう。」-シンオウ地方チャンピオン、シロナ。

 

 「なんのためにぼくがとっても強くてすごいかって、示さなくちゃね。」ーホウエン地方チャンピオン、ダイゴ。

 

 彼らだけではない。各地からジムリーダー、四天王、チャンピオン、著名トレーナーたちをかき集め、フロックス家ヒスイ分家(STEAグループ)によってたった3日で世界中からトキトビ島へ終結させた。その人数、数百名。ポケモンに至っては3000をくだらない。

 

 所狭しと並んだトレーナーたちが、ボールを構え、今か今かとその時を待つ。

 

 息も止まりそうな数時間が経過して、水平線の向こうから、歯車仕掛けの両翼を左右どこまでも伸ばすモンスター(怪物)は出現した。

 

 「フィクトマキナ、会敵です!皆さん、備えて下さい!」

 

 しかしまだだ。まだ、本体が見えたと言っても、攻撃のタイミングではない。フィクトマキナの、天文台でも終わりを見通せないほどかなたまで上下連なる無数のフィルムロール環を見れば、フィクトマキナが生半可な攻撃、小手先の一突きなど気休めにもならない存在であることは明らかなのだから。

 

 フィクトマキナが未知の改変能力、事象改竄能力を持っているという情報があるからには、対処させる間もなく倒すことが絶対だ。二撃目を想定せず最大最強の一撃で葬り去る、これしかない。

 

 「距離、40、39、38、38.5、37…」

 

 メガホンが、海岸線からフィクトマキナまでの距離を大声で伝えてくれる。

 

 歴戦の勇士たちがただひたすらにかたずをのんで待ち続ける。呼吸音すらも聞こえてくるほどの静寂。

 

 「距離、6、5.7、5.4、5、4.8、4.3、3.9。

 

 距離3.9キロ!フィクトマキナ、決戦距離に入りました!」

 

 瞬間、ボールが夏の日差しの下を舞った。

 

 「来るんだよオーロット!」「実験を開始するぞアブソル。」「責務を果たすときだ、ライチュウ!」「アップリュー、熱意だぁッ!」「ドーブル、やるとするかのぅ。」「始業です、サーフゴー。」「メガシンカ、ユキノオー!」「ハガネール、やるぞ…!」「痛い目に、あわせてやろう。」「おあいてしてさしあげましょう、キレイハナ、おねがい。」「全力で、相手をします。ガブリアス…メガシンカ!」「石のきらめき、絆となれ!メタグロス、ゴー!」

 

 数百体のポケモンが、海岸線にずらりと整列する。

 

 「彼我距離2.8キロ!

 

 攻撃開始ッ!」

 

 「サイレントフィアーだよ!」「ディザスターウィング!」「グランボルトだ!」「情熱のぉ、ダイドラグーンッ!」「スケッチ(デスウィング)じゃ!」「ゴールドラッシュです!」「ふぶきっ!」「てっていこうせん!」「やれ、がんせきほう。」「リーフストームですわ!」「りゅうせいぐんよ!」「ラスターカノンだ!」

 

 混ざりあった種々の最強クラスワザは、色とりどりの光線となって突き進み、海面を蒸発させてえぐりながらフィクトマキナの胴体へと殺到する。

 

 ーフィクトマキナの ”解体(→BREAK)”! 

 

 motherの理、あった、シュシュ、埜差、依拠、ウクライナ諏訪、ザッハトルテ、色鳥取、鋸、右旋となっ鉄、キス、墨、海綿、ヲ字、洋髪させてえてえ、エグっ!Linux、殻喉歌、家、屠殺頭、どうする家康。

 

 「「「「「「「「「「…は…?」」」」」」」」」」

 

 矛盾、短絡、意味不明、無意味、破綻、崩壊、喪失、散逸と言った言葉が表すべきすべての現象が光景をなしていた。

 

 概念によって支持される実体現象が、概念を失い、実体を伴わない「裸の概念」に”解体(→BREAK)”された結果がどうなるのか…形而上学的混沌が発生し、ドス黒いマーブル色の閃光が消えなくなるのだ。

 

 見るに堪えない醜い混沌を、フィクトマキナは、光芒と暗黒を放って消し去った。写真に消しゴムマジックをかけるかのように容易く。

 

 2.1キロも遠くから、虚ろな4対の瞳が、トレーナーとポケモン達を見つめる。

 

 ーフィクトマキナの ”解体(→BREAK)”!

 

 備える暇どころか、危ないと思う時間すらなかった。あったとしても、その猶予という概念すら”解体(→BREAK)”されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一面に広がる草原に、トレーナーたちはあおむけに寝転がっていた。

 

 青空を穏やかに雲が流れていく。

 

 「…俺たち、なんか大事なことのために戦っていたような…」

 

 「…なんの、こと…?」

 

 そんなはずはないと、天を仰ぐ。ーあの天に神がしろしめす限り、彼らの人生という物語に大事などあるはずがないのだから。

 

 「…せっかく、なんでかわからんけどこれだけ集まってるんだし、根性試しでもやらねぇか?」

 

 「目と目が合ったらポケモンバトル、か?...強さも俺たちの責務ではあるな。」

 

 それぞれに、トレーナーたちが立ち上がり…ところで、どうしてみんなもうポケモンを出していたのだろう?

 

 ここはポケモンの世界。不思議な不思議な生物ポケットモンスターを連れた人々が、思うさま生き、時に恋し、時に喜び、時に挑み、時に競い、そうして人生という旅をする世界。

 

 「さあ、来なよ。」

 

 トレーナーたちの人生の物語は、ここからだ。

 

 バトルの始まりだ(打ち鳴らそうぜ)!」




ー*ー

 きっと、バトルに参加すべきなのでしょう。なぜならわたくしはポケモントレーナーでジムリーダー、ポケモンと旅をし、バトルを挑み挑まれるのが、わたくしの役回りなのですから。
 
 (けれど、他にすることがある、そう気づいているのでしょう?わたくし。)

 「はい。

 …刻は未だ、満ちてはいませんわ。

 /では、行きますわよ、わたくし?」

 …その前に、貴女の名前を、お聞かせ頂いても?

 (わたくしは六条エリカ。エリカという物語の、可能性の一つですわ。

ー*ー

 わたくしが知っているフィクトマキナと、あのフィクトマキナは、きっと違うのでしょう。

 わたくしの世界のフィクトマキナは、新見教授が「物語を創作する営為」から創り出した「執筆者」ですが、こちらは「物語世界であるという世界の法則から産まれ出た自然現象」で「改竄者」であるように思えますわ。そしてあちらはアルセウスと口喧嘩したりなかなかいい性格をしていましたが、こちらのフィクトマキナは自我があるのかすら怪しくて、機械に近いのではないかしら…

 そうだとしたら、フィクトマキナに立ち向かえるのは、物語世界であるという法則にのっとってのこと…登場人物ならば物語の先を変えられます。けれど、物語の要となる「主人公」は奪われてしまったとのことで...

 だから、わたくしが。別の物語の、別のフィクトマキナにまつわる物語の主人公であるわたくし、六条絵里華(エリカ)が、物語を騙りつなぐことになったのですわよね。

 「立ち上がってください。

 アオバ・フロックス。舞台で劇を演じられるのは、登場人物だけなのですわよ。」

ー*-

 トキトビ島、トキトビシティ市街。

 「立ち上がってください。

 アオバ・フロックス。舞台で劇を演じられるのは、登場人物だけなのですわよ。」 

 いつか中橋蒼玻がイーブイを拾ったその場所で、エリカ/六条エリカは、昏い顔でうなだれるアオバ・フロックスに向き合っていた。

 「エリカ、さん...

 …もう、無意味ですわよ。

 わたくしたちがしょせん作中人物だと言うのでしたら、(登場人物)ペン(物語上位世界)に敵いませんわ。」

 すべての抵抗は無意味なのだと。

 自分たちの行動も存在も、Enterキー一つで書き換えられ、Backspaceキー一つでなかったことにされる程度のものでしかないのだと。

 そんなアオバ・フロックスの絶望を…エリカ/六条エリカは…鼻で嗤った。

 「ちょっと!お姉ちゃんになんてひどい!」

 「パーティーで数回会っただけのわたくしが知っているのですから、妹の貴女ならもっと思っているはずですわよ。

 貴女、こんなところで黙って負けて、我慢できるキャラではないですわよね?」

 「…それは…」

 カグヤが、押し黙る。

 「誰かの掌の上で負けて、悔しくはないのかしら?

 低俗で下賤な思惑に踊らされるわたくしではありませんことよ…なんて、それが、わたくしの知っている貴女。運命を切り拓くことができる、そういう、キャラだったはずですわ。

 /この世界が例え物語だったとして、文字に書かれた泡沫の幻影だったとして、納得できない行動や後悔する決断なんてなかったはずですわ。

 誰かが言ったのです。
 
 『全部俺が選んできた路、配られたカードの中で最善手だと思ってやった人生ゲーム』だと。『一生懸命世界を生きてきた、そのことは否定できないし、みんながそうだってことを否定したらいけない』と。

 わたくし(前主人公)から貴女(ヒロイン)に伝えるメッセージですわ。

 「舞台に上がれ、舞台に上がり直すんだ、アオバ・フロックス」!」

 はっと、アオバは、うつむく顔を上げた。

 「…伝わった、ようですわね!」

 「ええ。

 少々耳に痛い喝でしたわよ、エリカさん?」

 青い瞳に、力と高貴さが戻ってくる。

 「お姉ちゃん...?大丈夫…?」

 「もちろんですわカグヤ。

 例え、わたくしに手段がなくたって、わたくしがわたくしの物語の主人公でなくたって、ペン先一手で書き換わる天命だとしたって、上位世界の誰かの活字体に過ぎなくたって…

 …わたくしは戦って、フィクトマキナを止めます!

 誰かが描いた筋書きなんかじゃない!わたくしの旅路が!人生が!蒼玻くんとの恋路が!本当の運命だって、照明して見せますわ!」

ー*ー

 ー「お前自身の存在意義を、聞かせてくれ。

 お前がこれをした、意味、意義、動機はなんだ?」

 ー「中橋蒼玻、アナタは何もわかっていない。

 開かれた因果の輪は閉じられる、拡げ過ぎた座布団は畳まれる、そうあれかしです。

 だからこうなっています。

 動機?存在意義?そんなものはない。

 何か概念が、その概念の事象、存在、現象があることに、理由や理屈などない。ただそれがあり、起きたという事実がここにあるだけです。

 物語だとしても、そうですよ。」

 ー「そうか、じゃあ、そうさせてもらう。」

 -「『裸の概念』でしかない、実体を伴わない形而上学的存在たるアナタに、何ができる?

 世界の法則はすでに、この創作者たる大学院生は対象になりません。(大学院への進学は 18 歳人口の 5.5%に留まっておりフィクトマキナに握られたというのに!

 …今、何をしました?」

 ー「あいにく俺は、ポケモンをなんとなく知ってるけど全部の名前を覚えてない程度の、インターネットに棲むニワカクソオタクでな。どうでもいいような小ネタとネットミームの知識だけは事欠かないんだ。

 スペルインターセプト。言葉、概念を操る相手なら、言葉を崩せば、『無意味にすれば』充分だ。

 さあさあさあ...!誇り高き俺らの燦然、誰にも超えさせはしないぜ!

ー*-
 
 「おいでくださいラフレシア…

 BREAK進化っ!」

 世界のあり方が壊れ(BREAK)新しい時代が訪れる(進化)-物語上位世界存在者フィクトマキナの出現という変化によって、この世界の同義語とは異なるその進化は可能になった。

 鉄錆のベールが晴れ景色のすべてをゴールデンに染める黄金を纏い、ラフレシアは花粉をふりまく。

 ーラフレシアBREAKの アレルギーボム!

 あらゆる状態異常を誘発する花粉霧が、かぐわしく舞う。

 ーフィクトマキナの ”解体(→BREAK)”! 

 荒川、ゆるキャラグランプリ、嬢、大尉、場、魚、有髪するか、奮起せよ、リガ(ラトビアの首都)、かぐやさん、双頭の鷲、熊本県、うるさいな!

 「え、ええ...?」

 繰り広げられたのは、見ているだけで頭がガンガンしてくる光景だった。実体を伴わないー正確には、矛盾と破綻によって完全な実体化を許されない概念群が相互に干渉しながら散逸しているのだ。

 ラフレシアBREAKのソーラービームが、マーブル模様の混沌に乱反射して消失する。あらかた形而上学的八代市あたりの散逸と運命を共にしたのではないだろうか。

 ーフィクトマキナは メタフィクションを 発動した! 

 ーこの世界は 二次創作物語である! 

 ーフィクトマキナの BREAK=Write:”超電磁砲”! 

 「は」

 極超音速。プラズマの極光が、何もないところから出現して空気を裂き、ラフレシアBREAKを貫通する。当然ラフレシアは戦闘不能となった。

 ー「なぜこんな無駄な抵抗をするのですか?前作2章主人公。

 既に完結してしまって、再び日の目(最新話)を書かれることも出来ないというのに?」

 ダレデモナイ?いや、そうではない。そこには本が一冊転がっているだけだし、声は確かに聞こえてくるけれどどこからも聞こえて来ず、視線は認識できても顔を目視できない。

 「ええ、そうかもしれませんわ。ですがわたくしの世界の物語は未だに残り、めくられ続けているはずです。

 ああ、そうだ。それは「天の声」「神の視点」「読者目線」「物語の語り手」、そう呼ばれてきた、まさに「誰かではあるが、誰でもない」存在だ。

 ー「そんな日はじきに来なくなる。

 誰にも、この物語の完結は止められないのだから。

 フィクトマキナ、六条エリカを元の世界に。」

 -フィクトマキナの BREAK=Write:”六条エリカの物語位相座標を「フラダリ転生」の物語世界へ”!

 エリカが、その身を司る意思の半分を抜き去られて、思わず体勢をぐらり崩す。

 けれど。

 異なる物語異世界へキャラクターを送り返すなどという、虚構神ならではの暴威に対して、エリカはひるみも怯えもしない。

 「いいえ、『誰にも』などということはありませんわよ。

 まだ、彼女がここにいます。

 まだ、彼女たちの高貴なるものの義務(ノブレス・オブリージュ)は、ここと、皆さんの胸の中にあるはずですわ!」

 「イーブイ、スピードスターッ!」「グレイシア、ふぶきッ!」

 描写の埒外から出現したそれは、今日初めて、フィクトマキナの身体を、その歯車腕の端だけとはいえよろめかせた。

ー*ー

 「蒼玻くん!聞いてくださいませ!」

 フィクトマキナの目の前で、ユキコシ地方の冬景色のように白い着物と袴ー純白の象徴のような姿の少女が、風に白い髪をたなびかせ、叫ぶ。

 「これは蒼玻くんへの、メッセージでしてよ!

 わたくしと蒼玻くんは、必ずまた一つになれる!」

 袖口から、使い慣れて塗装がやや禿げた、赤と薄紫のボールを取り出して。

 「これはそのための道しるべ。今やユキコシの至宝と呼ばれしわたくしの、世を照らす灯台となるべくして瞬く輝き!」

 左手薬指を高く掲げ、その付け根に輝く盟約指輪を、その合意と一致(芝桜)の紋章をなぞった。

 「…直視すること能わざる輝きに、ひれ伏すのですわ!

 ディアンシー…メガシンカ!」

 そのピンクの高貴は、フィクトマキナを照らした。

ー*-

 「やんごとなき御方」「(口にするのも)畏れ多い」ーそんな言葉がある。本当に高貴で敬意を払われるべき対象は、時に具体的な明確描写の対象から外れるのだ。

 だから、フィクトマキナの光翼が放つ全宇宙にも等しい光芒のオーバーフローにも、フィクトマキナ本体のメタフィクション能力にも、メガディアンシーの光は負けはしなかった。その高貴さも、高貴なる義務(ノブレス・オブリージュ)の本質も、やんごとない/止む事無いものだったから。

 ただ強いだけの、直視できないだけの眩い光。けれどそれは、フィクトマキナの絶対性をー物語世界は言霊によって記述できるという絶対性を毀損していて。

 ゆえにフィクトマキナは書き換える。自らが掌握した、この物語を。

 ーフィクトマキナっていつもそうですね!の BREAK=Write:”失敗ファミチキください成功へ”!

 無数のチキンが散乱する。アオバは、目をぱちぱちしばたかせた。

 -「中橋、蒼玻ァ…!」

 フィクトマキナが、いや物語世界そのものが、あってはならない抵抗に、咆哮した。

 「蒼玻くん、応えて、くださるのですわね…!

 ディアンシー、ダイヤストーム!」

 -フィクトマキナの ”解体(→BREAK)”:アオバ・フロックスとデートなう、に使っていいよ

 -メガディアンシーの ダイヤストーム!

 無機質な真球の胴体がナノダイヤに削られ、歪で怪な轟音が軋む。

 ーフィクトマキナは 「もうパターン化された”メタフィクション”気持ち悪すぎるんだよ」 を 発動した!

 -フィクトマキナの誰もお前BREAK=Write:”ディアンシーD暗視へを愛さない”!

 フィクトマキナが改変を繰り出すそばから、言霊に言霊が追記され、物語への干渉は失敗され破棄され散逸され、マーブル色の混沌が産まれては消えていく。

 ーフィクトマキナは だいよんのかべBREAKを 発動した!

 ーフィクトマキナの ログインページ遷移、ハーメルンID:342105、パスワード:だが断る

 パスワードが間違っています!

 フィクトマキナの執拗なアプローチは、ついには物語世界の掲載媒体へと及ぶ。それすらも、フィクトマキナに取り込まれた中橋蒼玻の意思が阻止する。

 -「ならば、アオバ・フロックスの存在を削除すれば…!」

 「やれるものならやってみればよいのではなくって!?」

 丸くなったなフィクトマキナ ディスってみろこれはフリースタイルの 服が変BREAK=Write:”キミは完璧で究極のアオバ・フロックスゲッター存在しない規定値へ”!

 -「ならば、この制御不可能な物語を、破綻させくれる!」

 ーーフィクトマキナの ”解体(→BREAK)ぶっ殺しゾーン通常数理学及び10進数東方12kmまでの土壌アルファベット

 フィクトマキナの光芒が薄れ、アルファベット数式トキトビ金鉱石で創られた間取り図が空から降り注ぐ。

 ー「馬鹿な!そんな馬鹿な!こんなふざけたことが!」

 歯車仕掛けの腕から鉄錆のスパークが散り、フィルムロール環のいくつかからが脳漿の炸裂に書き換えられ、虚ろなからマナマコが零れ落ちる。

 フィクトマキナVS論理的構造VSまたしても何も知らないダークライは、内部からの言霊の挿入によって概念的にフィクトマキナが単なる馬鹿騒ぎに堕して一人負けしようとしていた。

ー*-

 「偽られた世界の真実、か…

 よもやこの世界が、小説とはな…」

 「クワズさん、今から、合理的なことと非合理的なことを言う。どっちを先に言うべきだ?」

 「…コンフリー、代替可能なほうから頼む。」

 「じゃあ合理的な方から。

 フィクトマキナは物語の方向性を制御するためにアオバ・フロックスの片割れ…中橋蒼玻とかいう奴を取り込んだらしい。それで彼女の『主人公性』を簒奪できたつもりでいたんだろう...が、その時に中橋蒼玻自身を消しておかなかったから、取り込まれて実体を消失してもなお中橋蒼玻の概念は登場人物として消滅せず、依然として、いやフィクトマキナの権能を内部から弄れるようになったことでむしろ暴れまくっている。

 巨敵の内部に主人公がいるなら簡単だ。中橋蒼玻がフィクトマキナを乗っ取り返せば、混乱は終結する。現在はフィクトマキナと中橋蒼玻の産み出す言霊、概念が伯仲してどちらも物語改変に失敗している状況だから、フィクトマキナの処理能力を上回るだけの概念をぶつければ中橋蒼玻が勝利してフィクトマキナ本体の物語を改変、無力化するだろう。無数の概念・情報がひしめくインターネットを攻撃手段にするのがいいんじゃないか。」

 「…幸い俺は電子生命でコンフリーはサイボーグ、目途は立つな。

 それで、代替策がないほうは?」

 「こんなのは感傷、まったく非合理的で期待値ゼロパーセントなジョークだ。

 この世界が物語ってんなら、ハッピーエンドで終わるべきだ...幸せなカップルは元さやに戻るべきだろ。」

 「…中橋蒼玻はそうしたがっているだろうな。しかし、中橋蒼玻がアオバ・フロックスの脳内に戻ることはすなわち、フィクトマキナのアウトオブコントロールを意味する。主人公性を失えばフィクトマキナはストーリーラインを自由自在にいじれはしないが、好き勝手に言霊、概念を吐き散らして世界をしっちゃかめっちゃかにできるだろう。」

 現に先程、フィクトマキナは通常数理学ほかいくつかの概念を”解体(→BREAK)”しようとしていた。蒼玻の介入によって察しが悪くなったために失敗したが、もし成功していれば世界から数学的論理が消滅した結果としてあらゆる数値であらわされる現象・実体が破綻し、一撃で宇宙が崩壊していた可能性すらある。

 「ああ。フィクトマキナの暴走を止める方法がなくなるから、非合理的なんだ。中橋蒼玻をフィクトマキナから引きはがすのは。

 けど、何も物語を操るのは狂言綺語の神様フィクトマキナだけの特権じゃない。奴が神格なだけで...

 そして、物語をつづることに何も権能や資格は必要ない。」

 「フィクトマキナなんてものに頼らずとも、創造者の役目は、決意と脳と指先さえあれば、誰にだって代替可能、か。」

ー*-

 言霊が吼え、ダイヤモンドが渦を成す中で。

 ー「よう、俺たちのことを字面でなぞってる奴!」

 それは、物語に描かれ見下ろされてきた登場人物たちの、叛逆の声だった。

 「貴方方のもとになった世界はどんな世界なのかしら?神様気取りの狂言家!」

 しかしそのように言われては、反論せざるを得ない。ーどうせ意味もなく生きてきたくせに、キャラクター風情が粋がるなよ?

 ー「ああ、聞こえてるのか?聞こえてるんだな、フィクトマキナの向こう側カーソルをあわせなきゃ透明化されてる視線だけど、ずっとそこにあったんだな。

 フィクトマキナは俺たちの世界をしょせん物語と思って好き勝手書き換えたがってる。お前はどっかの投稿サイトのことだと思って書き散らしてる。

 だけど、お前らの世界の正統性は、一体どこの誰が保障してくれるのだね?

 「貴方方の世界もそうではないかしら?

 物語として貴方が描いた世界。

 神話で騙られるしかない貴方たちの創世

 何処に違いがあるのかしら?」

 だからこそ、我々は根本的に同じとでも言いたいのか?

 ー「いや?だからこそ、俺たちの、本当の意義…ってのを、聞きたい。

 

 ……

 ー「お前が始めた物語だろ!『何か概念が、その概念の事象、存在、現象があることに、理由や理屈などない。ただそれがあり、起きたという事実がここにあるだけです。』
 
 …俺たちに意義なんかなくてただ事実がここにある、この世界にとってはそうだとしても、お前にはあるはずだよな!俺を主人公として生み出し、アオバちゃんをヒロインとして、カグヤちゃんをシスコン妹として、TS転生二次創作なんて黒歴史をシコシコ書きなぐったんなら!

 教えてみろ、お前の理由を。叫んでみろよ!」

 

 ……

 https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=306456&uid=342105

 「そうじゃないだろ。

 お前は、俺たちの物語を書いたお前は、何故存在する?

 もう一度はっきり聞かないとわからないか?お前の世界が確実なものだって…言い換えるか。お前の世界の物語は、どこに読者がいないって保障できる?」

 「それとも、貴方の人生の物語が、『それでも』何か読者に誇れるものがあるって、保証できるのでして?

 わたくしはありますわ。一分の悔いもなく、わたくしの旅路は、誰が語り手となり読み手となろうとも、誇れるものだったと。」

 

 ……

 ー「言葉もないのなら、誇る自分語りもないのなら、俺のターンに」「わたくしの出番に、させてもらいますわよ。

 この世界が空想だとか現実だとかそんなことはどうでもよろしくってよ。わたくしたちは誰かに恥じ入るようなこともなく堂々と立ち振る舞い」

 ー「そして誰にもゆがめられることなく俺たちの生を生き、考え、仲間を集め、旅してきたのだから!

 これが、この誇りが、俺たち蒼玻・フロックスの」

 「わたくしたちアオバ・フロックスの、存在を誇る言霊ですわ!」

 ……

 それもまたひとつの答え、それもまたひとつの物語、か。

 なら、君たちは、目前に迫るこの言霊には、どう返答を返す?入力:「フィクトマキナの BREAK=Write:”中橋蒼玻は死んだ”」Enter。

 ーフィクトマキナの BREAK=Write:”中橋蒼玻死んだと思ったら聞き覚えないポケモン地方にTS転生してた!?”!

 「…蒼玻くん、蒼玻くん…!/戻ってきたぜ、アオバちゃん...!」

 「良かったね、お姉ちゃん...!」

 「あらあらあら/さあさあさあ...

 誇り高き俺らの燦然/直視せざること能わざる高貴なる輝きに」

 ー「やめろ!アナタは一体」

 「ひれ伏すのですわ!/誰にも超えられはしないさ!」

ー*-

 あっはっは、これだから騙り手はやめられない!作中人物が物語上位世界たる、執筆者たる、私の手を離れて動き出すんだから!

 じゃあ廻ってみろよ、廻ってみせろよ、主人公!

 それが、その矜持が物語だってんなら、私も、エピローグまで踊ってやるからな!

ー*-
 
 ーデュアルメガディアンシーの トリックルーム_ディセラレーション!

 ピンクの燦然を放つや否や、蒼玻/アオバは、カグヤやデュアルメガディアンシーを巻き込んだ時間減速領域で自らを包んだ。

 「…よく、これが答えだと自力で気づいたな、アオバ・フロックスに、中橋蒼玻。」

 ぬっと現れた、関節から機械音がするシニカルな青年が、拍手で蒼玻/アオバをほめたたえる。

 「やっぱり見てやがったか、ラスト団/もう驚きもしませんわよ…」
 
 ー「それでは、答え合わせといこうかね。キミたちのプランは俺のプランを代替するに足りるかな『転生令嬢』。」

 コンフリーが手に持つタブレット端末から、懐かしのラスト団ボス兼元副会長クワズの声がする。

 「…ああ。

 俺たちの/わたくしたちの物語は、わたくしたちだけのものですわ。誰にも騙れはしない。/だから俺たちの物語を綴り直す。

 明文化ってやつだ。言霊って言うからにはな。」

 物語の力には物語の力ーフィクトマキナが、この世界を物語世界とみなし自信を上位創作者としつらえて好き勝手に物語世界を書き換えるからおかしなことになっているのだ。ならば、自分たちもそれに対抗し、現実にリンクした物語として旅の自伝を書けば、それはフィクトマキナが書き換え難い劇中劇であり、劇中劇内に描写される蒼玻/アオバの旅物語への物語改変を防げるのではないか…というわけである。

 「同じか。代替不可能な唯一無二の策だったようだな。」「それでどうする?口頭文学にでもするかい?それとも、ポケモン図鑑のメモ帳にでも書いてみるか?」

 「…それは…」

 蒼玻/アオバは絶句した。

 虚構神フィクトマキナほど達筆ではない蒼玻/アオバとカグヤが、自分たちの1年を超える旅路を物語としてーそれもフィクトマキナからの干渉にある程度耐えうるほど強固で緻密なー書き上げるにはそれこそ歳月がいる。だからこそ外の世界に比べて時間減速をさせ地質時間を汲み出し、執筆の猶予を生み出したのだ...が、この精神と時の部屋モドキは時間の断絶の結果として、内部がオフライン状態になっている。

 例として、androidスマホのメモ帳の文字数容量は2万枚以下。どの世界でも需要に大差なければ供給にも大差はなく、このポケモン世界においても、携帯端末に「わざわざオフライン環境でも保存できる」機能の容量はたかがしれている。コンフリーの皮肉は言い過ぎにしても、とても数十万文字の物語は保存できない。

 「俺のストレージを使え、転生令嬢。

 仮にも50代のエリートをまるごと電脳化して格納しているペタバイト級先端メモリーだ。キミらの旅の追憶くらい、いくらでも書き込める。思考入力を採用しているから圧倒的にスピーディーだしな。」

 「クワズ…

 …わかったよ/感謝はしませんわよ。」

 「せんでいい。俺とキミらは、常にそういう関係だ。」

ー*-

 俺とアオバちゃんにとって、あの時間は本当に、幸せなものだったと思う。

 この世界に来てからの、アオバちゃんやカグヤちゃんとの幸せな旅。その波乱万丈を、大切な宝物を箱から取り出して眺めるように、大事に一つ一つ振り返り書き記す…いや、実際に筆を手に取るわけではないけれど。

 この夢のような喧騒に飛び込むことになった、トキトビ島の廃坑前。ここで、3人と12匹の旅の振り返りをするのは、ぬるま湯のような…

 「…白昼夢からは、そろそろ覚めなければなりませんわね。」

 ああ、そうだなアオバちゃん。

 …でも、ちょっと待ってくれ。

 「そ、そう?」

 …ほい、これで、俺のぶんの入力は完了だ。

 「カグヤも、終わりでよろしいのですわよね?」

 「うん。

 …蒼玻くん、何?」

 「カグヤちゃん、ちょっと、頼みがある。」

 「…うんうんうん...

 …わかったよ。でもそれ、ちょっと寝取られたみたいで嫌になるな。…なんてね?うそうそ。蒼玻くんのこと、私も好きだよ。恋じゃないけど。

 お姉ちゃん、蒼玻くんが、私に読み上げてほしいものがあるんだって。」

 「…え…?」

 サプライズとしては、成功かな。

 「アオバちゃんに、返さなくちゃいけない返事があったからな。

 それに、読者がいない物語(観測されない世界)なんて、物語(世界)として存在するとは言えないだろ?」

 「読むね。

 『アオバちゃんへ

 俺はずっと、アオバちゃんのことを思って生きてきた。アオバちゃんの青い高貴(光輝)にふさわしいように、そして憑依してしまったアオバちゃんがいつか俺の代わりに復活できるようにって。

 だから、意味もなく生きてきた俺にそういう生きる意味が与えられて、それを果たしてなおアオバちゃんに必要とされて、嬉しかったんだ。これが幸せだって思ったんだ。…幸せだって、勘違いしたんだ。

 だけど今ならわかる。アオバちゃんに生きる意味なんて与えられなくたって良かったんだ。…こんな簡単なことに気付くまで、本当に、回り道をしたもんだ。なんせ前世ひとつと宇宙一巡だもんな。

 俺は、ただアオバちゃんと、波乱続きの日常を折れることなく明るく生き抜いていくだけで、幸せだ。これまでどおり、これからも。

 こちらこそよろしくな、半身を分かつ相棒(パートナー)、生涯の伴侶(パートナー)

 蒼玻より』」

ー*-

 閉じた青い瞳の眦から、涙が地面へと落ちる。

 トリックルームが、スゥーっと消滅していく。

 青と蒼の瞳が、きっと、動き始める世界を睨んだ。

 ー舞台の最後の幕は上がったーThe Show Must Go On(すなわち、演目は完結されなければならない)

 「さあ、そろそろ決着を/つけようかしら、フィクトマキナ。」

 ー「フェイラーなストーリーはデリート。」

 ー「ディスオベイメントなキャラクターはパニッシュメント。」

 ー「物語のすべてを正しく完結させる。しないのならば、世界に終末を。」

 歯車が唸り、光芒が光線を成す。フィルムロールが廻り、全天を漆黒に染める。それはあたかも、物語として記録された物語世界のアカシックレコードを、空というスクリーンに映し出す映写機のような…

 ーフィクトマキナの ”解体(→BREAK)”:ポケットモンスターdarkcatastrophe/snowwhite

 高貴なるピンクの燦然が、蒼と青の瞳に輝く。

 ーデュアルメガディアンシーの イデアリー・イデアノヴァ:”お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~”!

 ー「神の御前にて(この世界は)、虚ろなる世界の理、(依然我が支配の)天上の意を示せ(下にある)!」

 「わたくしの/俺の想いは、旅路は、人生は、字面で騙れるストーリーなんかじゃない!俺が/わたくしが、わたくしのために歩み続けるナラティブですわ!」

 かくて、世界の物語を支配する絶対神の権能に、自分たちの物語を誇る令嬢の想い入れは、挑んだ。

 世界が明滅する。

 そして、明滅する世界が、破れた。

 ー「やはり、矮小な存在は神には叶わない。神は天地の法をしろしめし、世界の在り方が変わることはない!」




























 「それは、どうかな/どうかしら?」

 ーイーブイ<Copied_LegendⅡ_Mod2.Emulated_”Arceus”>の Emulated_”さばきのつぶてBREAK(ジャッジメントバースト)”!

 破れた世界の隙間から覗く外宇宙が、閃光の神撃を放つ。
 
 ーグレイシア<Copied_Legend(3rd).Emulated_”Giratina”>の Emulated_”ロストインパクト_BROKEN(スターレクイエム)”!
 
 宇宙そのものを弓となし、破られた世界の論理構造そのものを矢となし、叛撃が宇宙を揺らす。

 フィクトマキナの歯車もフィルムロールも、衝撃によって圧砕される。虚ろな眼を持つ無機質な真球の本体は、世界に溶けるようにして消えた。フィクトマキナは無意味になったのだ。

ー*-

 「…やっと、すべての因縁に、けりがついたな…

 /あら、蒼玻くんはそう思いますのかしら?」

 「…お姉ちゃん?」

 「カグヤも、そう?

 /なら、アオバちゃんの気持ちを聞かせてくれ。

 /言わずともわかるではありませんの。波乱のけりなどありませんわ。代わり映えのない日常が存在しないのと同様に。

 だって、わたくしたちの物語はTo Be Continue…ではなくって?」

 「…あはは、さすが私のお姉ちゃんだ。

 ウールー、マハリハグルマ、ファイアロー、ヒヲマトウハネ、ビビヨン、出ておいで!」

 「そうだな、アオバちゃん!

 出てこいシャンデラ、ブロスター、クリムガン、オリセクト!

 さあ、ワカナエに帰るぞ!なんてったって俺たち/わたくしたちの旅は、これからも、まだまだ幸せへと駆け出し続けますわよ!」

 転生憑依日本人/被憑依令嬢は、シスコン妹令嬢は、かけがえのない仲間たちとともに、満天の星空の下を走り出した…
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