お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~ 作:十二の子
前回までの転生ポケモン令嬢は…
ポケモン原作に登場しない、ユキコシ地方。その巨大財閥の令嬢、アオバ・フロックス。彼女は妹のカグヤとともに、日本からの転生者中橋蒼玻を自分の中に取り戻し、ラスト団やホープ団と雌雄を決し、古代ユキコシ文明の脅威に立ち向かい、虚龍フィクトマキナから世界を救った。
あの旅から7年目、アオバは、己の体に同居しているもう一つの心である蒼玻の分離という事態に直面する。それはシンシュー地方エクリプスタウンの科学者バックレアによる一時的アクシデントだったが、姉妹の目をシンシューに向けるには充分だった。さらにはシンシュー地方ウコンタウンからは、フロックス分家を騙る者からの遣いが来て…
調査を重ね約1年。ついに2人の令嬢は、混沌渦巻くシンシュー=コーシュー地方に挑む…!
ー*ー
ホドモエ鉱業令嬢のタロとの通話を切り、端末をポケットに仕舞う。
「やってきたぞ、ウコンジム。/何を、語ってくれるのかしらね?」
説明してもらいたいことはいくつもある。だから、身をともにする転生者と令嬢は、雪山をはるばる越え、この秘境へやってきた。
寒村に似合わない、白いレンガ作りのジムを見上げる。
「お姉ちゃん、開けるよ!」
妹のカグヤが、ジムの扉に手をかける…と、扉がひとりでに開いた。
「…あれ?私力こめてない…」
「…サイコキネシス、のようですわね。」
蒼玻/アオバが見つめる先、扉の奥のバトルコートで、宙にぷかり、女性が浮かんでいる。
「どうも、お待ちしておりました。
私めはカタクリ。ウコンジムジムリーダーにございます。
ルールは3対3、双方ともに交代あり。さあ、ジム戦を始めましょう。」
着地、同時に、カタクリの膝の上からエーフィが飛び降りる。
【ウコンジムの カタクリが 勝負を挑んできた!】
蒼玻/アオバとカグヤは互いに目配せを交わした。
「…そうするのですわね?」
「うん。お姉ちゃんの露払いは、私の役目だよ。
行くよ、グレイシア!」
ー*ー
「グレイシア、ゆきげしき!」
「エーフィ、サイコフィールドです。」
バトルコートにしんしんと雪が降り、地面は紫色に光りだす。互いに戦場を味方につけてのバトルだ。
「ふぶき!さっさと吹き飛ばして!」
「めいそうです。一発ならば耐えます。」
猛吹雪がエーフィを襲う。エーフィは吹き飛ばされないように地面にしがみつき。
「でも二発目は耐えられないでしょ!」
再びの猛吹雪。エーフィの姿が雪煙の中に消えていく。
(これで仕留め…いや、わかってて黙ってやられるわけないよね…?)
「…っ、グレイシア飛んでっ!」
「ワイドフォースです。」
バトルコートが激振した。めいそう後でサイコフィールド下のワイドフォース、グレイシアに耐えられるものではない
「ツメが甘いです。『みがわり』『まもる』…必中でもダメージを与えられるとは限りませんよ。」
「そうだね。だから、私はグレイシアに常々言ってるよ。
『不意を突かれたら即時ゆきなだれ』って!」
降りしきる雪が、一斉に崩落した。
ー*ー
「グレイシア、ありがとう。それとお姉ちゃん、ふがいなくてごめん。」
「気にしませんわよ?」
「そっ?
マハリハグルマ、蹂躙するよ!」
ユキコシリージョンフォームのギギギアルが、噛み合いの間から不快な不協和音を奏で登場する。
「ユキコシギギギアル…はがね/ゴーストでしたか?
私めウコンジムはエスパー、どく、ゴーストのタイプエキスパート。あまり有利ではありませんね。
やりようはありますが。行きましょう、ジュペッタ。」
「マハリハグルマ、ギアチェンジ。」
歪な音をギアから立て、マハリハグルマが回転速度を上げる。
「ジュペッタ、メガシンカ!」
ジュペッタの両手が、パクリと開いて呪いを溢れさせる。
「行きましょう…ゴーストダイブ!」
そしてカタクリのメガジュペッタは、影の中に消えた。
弱点攻撃が来るとわかっている。その上、相手は見えない…しかしカグヤは慌てない。
「メガシンカしたところでゴーストタイプとして格下だと思うんだよね。シャドーダイブ!」
マハリハグルマもまた、影の世界に消えた。遠い昔に祖先のギギギアルがギラティナから授かったこのワザは、ゴーストダイブの上位互換…メガジュペッタを影の世界から弾き出し、さらに「かげうち」を影の中から追撃として放つ。
「みちづれです。」
宙高く飛ばされたメガジュペッタが、両手から呪いをバトルコートへ振りまいた。
マハリハグルマはシャドーダイブで影の世界に潜っており、シャドーダイブの仕様上いずれは飛び出して攻撃しなければならない。待っていれば確実にみちづれにできるのだ。
事実、そのとおりになった。
ー*ー
マハリハグルマとジュペッタが、ボールへ戻される。
(カグヤちゃん、珍しく苦戦だな…エスパーやゴーストの翻弄的な動きってのもあるけど…
/わたくしの露払いを自認して、わたくしへの脅威を退けることを第一にしているから、ですわね。負けそうになれば相打ちに持ち込み、勝てそうなら速やかに押し切る…そのバトルスタイルが、相性が悪いのかしら。)
「…決めるしかないよね。お姉ちゃんの前で負けられないよね。ビビヨン!」
「これを見せなければいけなかったのですよね。
エルレイド、出てきてください。
行きますよ、EXオーバーラップ!」
カタクリの出したエルレイド。それに、コインの表と裏、利き手の右と左ー様々な可能性が凝縮し、重複する。
(…あれが、ポケモンEX…)
ユキコシ地方には未だに再現できていない、ポケモンのパラレルな可能性を重ね合わせる強化形態。それを初めて目の当たりにし、蒼玻/アオバは目を見開いて文字通りの注視をする。
(前情報のとおりなら、「種族値」で2倍。どれほどのものかな?
/相手は本気のカグヤですわ。どうなるかしら。)
「サイコカッターです。」
ブン!ーエルレイドEXの腕が振るわれると同時に、衝撃波が地面を粉々にし、ジムの建物全体が震えた。
(なんて威力…!)
砂塵がバトルコートを覆う。何も見えない。
(ビビヨンは…どこかしら…?/もうやられた、か…?)
「チェックメイトだよ。」
ービビヨンの ぼうふう!
砂塵が晴れていく。その下で、エルレイドEXは、カクカクと頭を揺らしながら膝をついていた。
「…何、を…?」
「ポケモンEXは、様々な可能性を重複させてるんだよね?
状態異常が、重複するってことも、あるよね?」
しびれごなによるマヒと、ねむりごなによるねむり。砂塵に混ぜられていたそれらが、エルレイドEXに重複してかかっている。
「…状態異常にかかっていない可能性というのも、重複していることをお忘れですか?
整い次第サイコカッター!」
エルレイドEXが、うつらうつらしながら、震える腕を構え、サイコパワーを込め、振るおうとする。
「遅い遅い遅いよっ!
そんなじゃ、お姉ちゃんにははるか及ばないッ!」
(カグヤの買いかぶりですわね。私よりずっと巧みですわ。/あのビビヨンの速さ…いつのまに「ちょうのまい」を…)
ービビヨンの ぼうふう!
マヒした腕で振るわれたサイコカッターが見当違いの方角へ飛んでいき…次の瞬間、ぼうふうがエルレイドEXを地面へと圧殺した。
ー*ー
「おめでとうございます。
これが、ウコンジムを突破された証の、ジムバッ」「いいからそういうの。」
バシン!ーカグヤは、カタクリの手を払い除けた。
ジムバッジが、床に転がる。
「で?
そろそろ、出てきてくれない?お姉ちゃんも飽きたって思ってるよ?
ジムリーダー、『おひいさま』さん?」
「…お気づきに、なられましたか。」
カタクリが頭を下げるとともに。
バトルコートの奥、レンガの壁が、大仰な音を立てて左右に割れた。
ー*ー
白いレンガ造で、火の玉が煌々と照らす廊下。
十数人の貫頭衣の人々が、両脇で膝をつき頭を下げている。
廊下の奥、バトルコートがあり、そしてそのさらに向こう。
「…御簾…?」
垂れ下がるすだれの向こう、顔を見せないことから、相手が格別な存在とされていることがわかる。
「おひいさま、本家様のお越しです。」
御簾の向こうの存在が頷く雰囲気。
「さようですか。
皆の者、下がりなさい。」
御簾の奥の声は、荘厳さと静謐さを兼ね備えていた。貫頭衣の人々が下がっていき、カタクリがバトルコートの審判位置に立つ。
「手の者に試させたことを詫びましょう。
私が、ウコンジムジムリーダー、ハナツメ。
ハナツメ・フロックスです。」
【ウコンタウン 雪深い山奥の秘境】
長野県栄村・秋山郷あたりです。