アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

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♫6.5 もう一人(二人?)の黒幕

ー*ー

 

 「そんなことがあったのですわね。」

 

 オンライン会議アプリの画面の向こうで、通話相手は優雅に微笑んでいる。

 

 「…あったのですわね、なんてかわいらしくごまかさないでくださいよ。」

 

 嫌そうに、画面のこちら側で彼女は首を振る。

 

 「あら、なんのことかしら?」

 

 通話の相手…フロックスグループ総帥にしてフロックス家当主、蒼玻/アオバ・フロックス嬢は、ふふふと小さく笑い、ティーカップを持ち上げる。白い背景に、湯気が溶け込んでいった。

 

 「答え合わせを、しませんか?」

 

 ホドモエ鉱業グループ令嬢、タロは、コーヒーカップを置きながら一言、挑むように口にした。

 

ー*ー

 

 「全部、アオバさんは知ってたんですよね?

 

 パパが調べてくれてましたよ。ブルーベリー学園の学術振興基金…私がこの学園島に視察に来るきっかけになった、ブルーベリーでポケモンバトルだけじゃなく幅広い研究に力を入れるという話。迂回して出資されてますが、最大の出資者はユキコシリーグですよね。」

 

 「…ユキコシリーグはまだチャンピオンリーグどころかポケモンリーグも設置できてないわ。だから、世論でのポケモンバトルに対するポケモン研究の比重を高めれば、地位が高まると考えた…というだけのことではなくって?」

 

 「チャンピオンを決めてないからポケモンバトルを軽んじている地方…とは誰も思っていないでしょうに。チャンピオンリーグの出資者も勝者もアオバさんではつまらない…ってだけで。」

 

 「わかりませんわよ?カグヤが勝つかもしれないですわ。」

 

 「…まあ、それはどっちでもいいのです。

 

 学園島で、フィクトマキナと『学園島の秘宝』を巡って大ごとが起こる…そう知って、いわば、舞台に役者を集めた…んですよね?」

 

 ーフィクトマキナが描く物語の、登場人物としての役者を。

 

 「買いかぶりですわよ。本当に。」

 

 「本当に?」

 

 「本当ですわ。

 

 …答え合わせ、しておかないといけないかしら。」

 

 紅茶を一すすり。

 

 「『学園島の秘宝』を早く処分しなければと考えていたのと、それを巡って何やら暗躍している者がいることは気づいていましたわ。そこで、オリハルコンをダシにアリア・コトホギを巻き込んで、彼女の素質が知りたい…と思いまして。」

 

 パーシモンを、ポケモントレーナーの坩堝にした。それは確かに、政財界に直接にも間接にも話が通じさらには学園理事長を任せているヒスイ分家に頼み事ができるフロックス本家の、企みではあったのだ。

 

 「だから、何かが起きると思ってはいましたけれど。

 

 まさかそこまで大ごとになるとは思いませんでしたわ。それだけが、わたくしの見込み違いでしたの。特に、よもや貴女方が、勘違いから分家の敵に回るとは。」

 

 「それは…すみません…」

 

 「いえ。サンジェルマンを甘く見たわたくしの過ちですわ。こちらこそお詫び申し上げますわ。

 

 ああまで入り込まれているとはとてもとても。わかっていれば他にやりようは…」

 

 「…とにかく、事情はわかりました。…そういう、黒幕みたいなの、やめたほうがいいですよ。アリア・コトホギさんになにやら勘違いされていた私が、言うことでもないですが…」

 

 「私だって、裏でこそこそするのはガラではないですわよ。もっと華々しく…そのはずなのに…」

 

 跡継ぎでしかないし、その義務だって背負っているわけではないタロには、縁戚全員を失って妹と2人で巨大財閥を抱えているアオバの苦労と忙しさに、掛ける言葉は見つけられなかった。

 

ー*ー

 

 「それはそうと、先ほどレプトシフォンさんからも聞いたのですけれど、あらためて聞いておきたいのですわ。

 

 アリア・コトホギは本当に、『学園島なんて如何にも追加コンテンツみたいな島』『エアプタロ』...そう言ったのかしら?」

 

 「はい。...いまいちピンとこない言葉だな、と思いました。それが?」

 

 「…いえ、貴女にはピンとこなくて当然ですわ。なにせそれは」

 

 蒼玻/アオバ・フロックスは、そこで紅茶のカップを持ち上げ、表情を覆い隠す。

 

 (それは、アリア・コトホギが、俺と同じ/蒼玻くんと同じ、転生者である証拠ですわ...!)

 

 資質、人柄…それだけではない。7年前の英雄歌姫と行動を共にし、シンシュー地方を回り、順調に時代の寵児として育ちつつある、順調に台風の目として育ちつつあるアリア・コトホギが、かつての自分と同じく世界を揺るがす転生者であるのか…それが、蒼玻/アオバ・フロックスが本当に知りたかったことだったのだ。

 

ー*ー

 

 「それにしても、いろいろ手を広げて人を集めなくても、自分でさくっと解決できたんじゃないですか?…シンシューの2人を見定めたかった、というのはさておきましても。」

 

 「さておいたとしても、まさか、わたくしとカグヤでは参戦不可能でしたわ。

 

 わたくし、一人二役を物理的に行うのは不可能ですわよ?」

 

 そこで初めてタロは気づくー今までずっと、通話画面の背景は白い壁紙だと思っていた。けれど違う、これは...

 

 ...一面の雪景色だ。

 

 「ではそろそろ、わたくしジム戦なので、これにて終わりとさせていただきますわね。

 

 ヤーコン会長と、カキツバタさんとチャンピオンアイリスによろしくお伝えくださるかしら。」

 

 「サンゴジュ?ワカナエ?ジム戦頑張ってくださいね!」

 

 「もちろん。…ただ一つ、訂正ですわ。」

 

 「訂正?だって、今大雪で、ユキコシのジムで…」

 

 「いえ、ここは、シンシュー地方最凶の秘境、ウコンタウン、ウコンジムですわ。」




 次話は「転生ポケモン令嬢」側の最新話 ( https://syosetu.org/novel/333781/102.html )として掲載します!ご注意ください!
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