祝福の花を君に   作:キューマル式

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第65話 『つまりブーストを使ったジャンプは厳禁ということ』

 化け物……3体のアイスワームのセカンダリーアーマーを突破する方法の目処はたった。

 『RaD』の『オーヴァード・レールキャノン』と、『ルビコン解放戦線』の提供する『アイボール砲』の全力照射である。

 そのために足りないピースであるアイボール砲用の『パワーソースとレーダー施設』……これを調達する必要がある。

 そして思った通り、こういう面倒ごとは俺のところにやってくるのだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 『ブリーフィングを開始する。 今回は『抵抗軍』からの依頼だ。

  『ルビコン解放戦線』のサム・ドルマヤンからミッションの説明がある』

 

 

 

『独立傭兵ヒナタ、これからミッションの説明をする。

 この間の『抵抗軍』会議であったようにフルチャージしたアイボール砲なら、あの化け物(アイスワーム)どものセカンダリーアーマーを突破できる。

 だが、そのためには『パワーソースとレーダー施設』が必要だ。当然、わしらにはそんなものはない。なら……答えは一つじゃ。

 現在、すでに組織的抵抗力を失った『惑星封鎖機構』は星外へ脱出しようと残存戦力が『ヴィルフール空港』へと向かっている。 

 この『ヴィルフール空港』は大型攻撃ヘリや大型輸送ヘリの整備・補給拠点の一つだったが、今では『惑星封鎖機構』に残されたほぼ唯一の星外への脱出口じゃ。

 施設としても基地用のパワージェネレータにレーダー施設が揃っておる。この施設を……丸ごといただく!』

 

『ただ1つ注意がある。今回はあくまで基地のパワージェネレータにレーダー施設を手に入れることが目的じゃ。

 直前までその存在を察知されず奇襲によって施設の破壊を最小限に抑えて防衛戦力と管制センターを破壊、その後何も知らずにノコノコやってくる『惑星封鎖機構』の敗残兵どもを叩き潰して完全制圧……というのが今回のミッションとなる。

 あの『RaD』の特殊装備、『V.A.B2ーBABY CRADLE』を使って奇襲する案もあったが、それだとやつらの強固な対空レーダー網に引っかかり奇襲作戦としては失敗じゃ。 

 つまり何が言いたいかというと、『ヴィルフール空港』に着くまでは『ブーストを使ったジャンプは厳禁』ということじゃな。

 同時に歩哨部隊に発見された場合にはデータを送信される前に撃破する必要がある。 

 まとめると『地上での通常・クイックブースト機動だけで敵拠点に接近、発見されたら通報される前に即時始末しながら、施設の破壊を最小限に抑えて敵のみを排除し、その後やってくる敗残兵を始末する』というわけじゃ。

 なお、今回のミッションは『アーキバス』から、本人の強い希望で『ヴェスパー(フォー) ラスティ』が僚機として付く。

 ……難しいミッションは百も承知じゃが、お前とあやつのコンビで失敗するなら他の誰にも成功させることなど出来まい。 

 よい報告を期待しておるぞ、ヒナタ』

 

 

 

「ブーストジャンプ無しの接近に、施設の破壊を抑えながらの敵の完全排除か……。

 まったく……ドルマヤンのじいさんは気楽に言ってくれるな」

 

『お前ならば出来るという信頼の表れだ。 それよりも……機体の調整は万全なのか?』

 

「どんな機体に乗り換えても、機種転換訓練無しで十全に機体を操れることが俺たち強化人間の特徴だろ?

 今回は今まで以上の高機動と瞬間火力、それに周囲の施設にダメージを与えずに目標だけを撃破する必要がある。

 いつも使ってるショットガンの散弾や爆発範囲の広いプラズマミサイルはマズいからな」

 

『……その通りだな』

 

「心配するなウォルター。 軽量機だろうとうまく操って見せるさ。

 それじゃ『日向葵』あらため『日車』、出撃する!」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 夜の闇に包まれる中央氷原は、吹雪に見舞われ視界は最悪の状態だ。

 その中を今回のために夜間迷彩を施した2機のACが通常ブーストで高速で駆け抜ける。俺のAC『日車』とラスティのAC『スティールヘイズ』だ。

 その時、通信機が鳴る。ラスティからだ。

 

 

『独立傭兵ヒナタ、今日はよろしく頼む』

 

「こちらこそ頼む。 あんたほどの相手が僚機なら心強い」

 

『……実はどうしても君に聞いてみたいことがあって僚機に立候補させてもらった。

 おかげで同じように立候補していたヴェスパーⅠには恨まれてしまったよ』

 

 

 そう言ってイケメン特有の朗らかに笑うと、スッと雰囲気が変わる。

 

 

『君は何故戦う? 何を背負い、何を捨ててそこまで強くなった?』

 

 

 世間話のように軽く聞いてくるが、その奥には嘘やごまかしを許さぬ力強さがあった。

 

 

「そういうあんたは何故強いんだ?」

 

『……このラスティには、このルビコンで成すべきことがある』

 

 

 原作AC6を知っている身からすれば、ルビコン3の独立を勝ち取るというのが成すべきことなのだろう。

 

 

「それがあんたの強さの原動力か? 

 俺は独立傭兵だ。 自由に生き理不尽に死ぬ……そんな独立傭兵には戦うことに高尚なお題目なんぞ無いさ」

 

『……理由無き強さほど危ういものはないぞ、地獄の猟犬(ヘル・ハウンド)

 

「無論、あんたほど高尚なわけじゃないが一応の理由はある。

 ……あんたは子供のころに絵本やらで物語を読んだことはあるか?」

 

『……』

 

「俺はある。 どれもこれも『めでたしめでたし』で終わる、眠たくなるような陳腐なハッピーエンドの物語さ。

 だが……俺はその使い古された陳腐なハッピーエンドで終わる物語が今でも大好きでな。 それを現実でも見たいのさ」

 

『現実は物語ほどに優しくはないぞ』

 

「百も承知さ。 でもな……『見てみたい』と心の底から思った。

 だからこそ……戦う。

 それが、俺の戦う理由さ」

 

『……独立傭兵ヒナタ、君は……』

 

「おっと、おしゃべりはここまでらしいぞ」

 

 

 何か言おうとしていたラスティの言葉を遮る。

 前方には歩哨と思われる『惑星封鎖機構』のMT2機のライトの光が見えた。

 

 

「俺は右を殺る。 そっちは左を頼む」

 

『了解だ』

 

 

 そしてライトの光を避けるようにグルリと旋回すると、左右から挟み込むようにして『日車』と『スティールヘイズ』が襲い掛かった。

 連続したクイックブーストで一気に至近距離まで接近した『日車』が、右肩のガトリングキャノンと両手のバーストハンドガンを乱射する。

 

 

『て、敵しゅ……』

 

「キャプチャーはさせんよ」

 

 

 奇襲が決まり鉛弾の嵐に晒されたMTは一瞬にしてスタッガー状態に陥った。そしてそのMTのコックピットに持ち替えた必殺のパイルバンカーが突き刺さりMTは物言わぬ鋼鉄の骸と化す。

 見ればラスティの方も手際よく、一瞬でレーザースライサーでMTを八つ裂きにしている。

 

 

「流石、良い腕だ」

 

『君こそ、いつもと違う軽量機でも鮮やかな手並みだな。

 力強い羽ばたきを感じる』

 

「それじゃ、この調子で行こうか」

 

『了解した』

 

 

 そこから先の歩哨部隊の末路は悲惨の一言に尽きる。『蹂躙』という言葉すら生ぬるい。

 軽量の高速機が全速で接近し、嵐のような近接射撃と凶悪な威力の格闘兵装で殺しに来るのだ。しかもそれを操るのはルビコン3のトップクラス2人である。

 こいつらには不幸としか言いようがないが……『惑星封鎖機構』に組した以上容赦は無しだ。

 

 

「許しは請わん。 恨めよ」

 

『もうすぐ対空レーダー網を抜ける。 抜けたと同時に基地への奇襲といこう』

 

「了解だ。 俺は敵の戦力を潰すことを優先する。

 あんたは管制センターの破壊を優先してくれ」

 

『わかった』

 

 

 そして対空レーダー網を抜けた瞬間、『日車』と『スティールヘイズ』は同時にアサルトブーストを点火させた。

 起動されても困るので『ヴィルフール空港』に駐機していた数機の、いずれも傷ついた大型攻撃ヘリをフルチャージパイルバンカーで貫く。これで厄介な大型戦力はなくなった。

 

 

『お、おのれぇ!!』

 

 

 やっと事態に気付いたのかMT部隊が俺に突っ込んでくるが、放たれるレーザーをかわしながらアサルトブーストで接近、ハンドガンとガトリングガンの鉛玉の嵐でお出迎えする。

 

 

『星外への脱出路は今やここだけだ! 失うわけにはいかん!死守だ!!』

 

 

 『惑星封鎖機構』側からは必死さと悲壮さが混じりあっていることを感じるが……戦いのルールは非情だ。

 

 

「あんたらも随分、この惑星で暴れ回ったんだ。

 お前らにも死ぬ順番が来ただけさ」

 

『ぐぁぁ!!?』

 

 

 そう言って次々とMTを屠り、最後の一機に強烈なキックを叩き込む。

 ボールのようにバウンドしながら転がるMTはそのまま燃料タンクに突っ込むと、その炎が引火して大爆発を起こす。

 そして、そのまま脱出用と思われるシャトルがその爆発に巻き込まれていった。

 

 

『こちらラスティ。 中央管制センターの破壊に成功した』

 

「流石だな。 こっちも防衛戦力の排除に成功だ」

 

『やるな。 となれば後はミッションの最終段階だ』

 

「ああ、ちょうどこっちのレーダーにも映った」

 

 

 見ればこの基地を目指してきていた『惑星封鎖機構』の部隊……ドルマヤンのじいさん曰く『敗残兵ども』をレーダーで捉え、そうかからずに肉眼でも確認する。

 どの機体も満足に動けていないほどの損傷度で、それが比較的マシな状態のHCに率いられている僅か12機の部隊である。内訳はHC1、LC1、MT10機といったところだ。

 

 

『な、基地が!』

 

『シャトルが燃えてるだと!?』

 

『ああ、シャトルが……俺たちの脱出手段が……』

 

「悪いね、あんたらの行き先は星外じゃなく地獄なんだよ」

 

『お、おのれぇ!この秩序を乱すイレギュラーめ!

 こうなったら貴様らも道連れにしてやる!!』

 

 

 そう言って攻撃を開始してくる『惑星封鎖機構』部隊。

 

「『道連れ』なんて子供じみたことを言うなぁ」

 

『敵も必死ということだ。 だが……倒させて貰う!』

 

 

 とはいえ万全な状態でも敵わないだろう俺とラスティのコンビに、まともに修理も出来ていないような部隊が敵うはずもなかった。

 それに最後の頼みの綱と思っていた星外への脱出手段も潰えていたことも心理的な大打撃になったようだ。

 次々とMTは撃破されていき、LCは『スティールヘイズ』のレーザースライサーで八つ裂きにされる。

 そして俺に向かってきたHCのシールドバッシュを避けると、ハンドガンとガトリングガンの全力射撃をその背中に叩き込んだ。

 

 

「じゃあな」

 

 

 そしてトドメのパイルバンカーがHCの装甲を串刺しにする。

 

 

『来るんじゃなかった……こんな惑星(ほし)……』

 

 

 そんな最後の言葉を残して、『惑星封鎖機構』の残存部隊は壊滅した。これで作戦は終了。あとは後続の接収用の歩兵部隊と『カーペンターズ』に任せればいい。

 

 

『独立傭兵ヒナタ、今日は共に戦えてよかった。

 君のことを知れたような気がするよ』

 

「こっちもだよ」

 

 

 とはいえ今回のミッションなんてただの前哨戦もいいところだ。

 

 

「次の化け物退治のときも頼むぜ」

 

『あまり過剰な期待は緊張してしまうな』

 

「その腕で何を言ってるんだか」

 

 

 ラスティと軽口を叩きながら、回収部隊を持つ俺たち。

 

 これでピースは揃った。次は本命……化け物(アイスワーム)どもの討伐戦だ。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

今日のアセン

 

AC名:『日車』

パイロット名:『C1-53 ヒナタ』

 

R-ARM UNIT:MA-E-211 SAMPU(バーストハンドガン)

L-ARM UNIT:MA-E-211 SAMPU(バーストハンドガン)

R-BACK UNIT:DF-GA-09 SHAO-WEI(ガトリングキャノン)

L-BACK UNIT:PB-033M ASHMEAD(パイルバンカー)

 

HEAD:HC-2000/BC SHADE EYE

CORE:AC-J-120 BASHO

ARMS:AA-J-123 BASHO

LEGS:EL-TL-10 FIRMEZA

 

BOOSTER:BST-G2 P06SPD

FCS:FC-006 ABBOT

GENERATOR:DF-GN-08 SAN-TAI

 

EXPANSION:ASSAULT ARMOR

 

 

解説

今回のミッションは『基地までのジャンプやアサルトブーストの禁止』『基地施設へのダメージを最小限に抑える』『その上で防衛戦力を殲滅する』という特殊な状況のため、今回のミッションのためにヒナタが通常使用している『日向葵』を高速軽量機としてアセンを修正、カラーリングも夜間迷彩へ変更したのがこのAC『日車』である。

ちなみに『日車』は『日向葵』と同じく、ヒマワリの別名。

 

いつも使っているショットガンは周辺施設へのダメージの可能性もあり使用不可。同じく広範囲のプラズマ爆発を起こすプラズマミサイルも使用不可。

そう考えたヒナタは両手にバーストハンドガン、右肩にガトリングキャノンと直線的な攻撃で、しかも銃弾を外しにくい近接射撃を主体とすることにした。

高速の通常ブーストとクイックブーストで一気に間合いに入り、反撃の間も与えぬ弾の嵐を叩き込んでスタッガー状態に陥れ、最後はお馴染みの必殺のパイルバンカーで確実に仕留めるというのがコンセプト。

完全に1対1を想定したような機体なので集団戦は苦手だが、本人の技量もあって持ち前のスピードで引っかき回し1対1の状況を何度も作り上げて丁寧に相手を血祭りに上げていく仕様になっている。

 

アリーナとミッションでテストしたが当然アリーナ、1対1の方が適している。

意外にガトリングキャノンが万能なのでミッションでも戦えるが、軽量機としての火力不足は如何ともしがたい状況になるだろう。

また小説ということもあり主人公の象徴的な武器であることと、低い攻撃力ばかりの中で大きなダメージソースとなるべくパイルバンカーを採用しているが、フルチャージパイルバンカーを当て続ける技量がないならパルスブレードでも十分に強い。

というかスタッガー状態+バショウ腕+格闘兵装が強いので正直いくらでも変更の余地はある機体である。

 

 




ミッション内容は懐かしのACPPの『ブーストを使ったジャンプは厳禁』と、AC6の『スウィンバーン暗殺』をミックスしたような内容。
……これ、実際にあったらかなりキツいミッションかも。
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