少年提督と野獣提督   作:ココアライオン

21 / 30
御忙しい中、いつも読んで下さり有難う御座います!

12月になり、年末に向け更新が遅れ気味になるかと思います。
以前、削除させて頂いた短編3の修正作業も、まだ全ておわっておりません。
迷惑をお掛けして、申し訳ありません。

次回更新もいつになるか分からない為、
修正が終わった分のみ投稿させて頂きたいと思います。
修正に伴い字数も嵩んでしまい、前、中、後、終編の4話となると思います。 
長々としておりますので、御暇潰し程度にでも読んでいただければと幸いです。





修正版 短編3 前 

 

 青空の下。埠頭に並ぶ倉庫前にて、艦娘達が今日のレクリエーションの為に集合していた。

彼女達の首には、“ロック”の為のハート型のネックレスの他に、チョーカーが在る。

午前中に配られたものであり、黒地に赤色のスペード型をしたエンブレムが刻まれている。

ちなみにこのチョーカー、一度装着するとロックが掛かるようになっている様だ。

少女提督も参加することになり、嫌々ながら装着した瞬間、カチリと音がしたのを聞いた。

触ってみても外れる気配が無いし。もうこの時点で、かなり不吉と言うか嫌な予感しかしない。

何が何でも断るべきだったのだが、北上を助けてくれた少年提督に“一緒に参加しませんか?”と声を掛けられ、無碍に出来なかったのだ。

彼の澄んだ眼で見詰められ、無垢そうな愛らしい笑顔を向けられると、どうも断りづらい。ドキッとしてしまうのだ。

あの笑顔を見て、何と言うか、此処の艦娘達の多くがショタコンになった理由が分かる気がした。そんな自分にちょっと凹む。

 

カモメの暢気そうな鳴き声が聞こえた。恨めしげに青い空を睨んでから、少女提督は溜息を吐き出す。

周囲を見回して見る。不穏なざわめきが波音に混じる中、皆一様に不安そうな貌をしている。

無理も無いだろう。野獣主導で行われるイベントは、だいたい無駄に手が込んでいて、毎回参加するものの心身を消耗させる。

おまけに大掛かりだ。何でも某テレビ番組にインスパイアを受けたという事で、今回のレクリエーションも、鎮守府をフィールドにした“鬼ごっこ”的なイベントとの事だった。

 

 野獣が何を考えているのかなんて、分からないのはいつもの事だ。ただ話を聞いたところ、大掛かりな用意が必要になるこのイベントも、本営からの指示が在ったのだという。

規模の大きい作戦も成功に終わった今のうちに、『艦娘達の集団生活の中にも潤いが在るという証明として、こうしたイベントを実施せよ』、という事だった。

俗っぽい言い方をするならば結局今回も、“艦娘達の人権や人格についての関心が更に高まる中で、本営が世間に良い顔をする為の“材料”を揃えておけ”と言う具合なのだ。

 

 実際のところ、少数ならばともかく、これだけの数の人格持ちの艦娘を保有し、一人一人が人間らしさを育んでいる鎮守府は、此処以外ではかなり少ない。

かつて少年提督と野獣の二人は、軍部の中でも煙たがられる存在だった。しかし今では、この二人は世論の眼に対する、本営の切り札になりつつある。

野獣自身には上層部にも繋がりが在るそうだが、こうした本営からの高い評価を向けられるようになったが故に、軍部の中でも、あの二人の敵は多くなった。

艦娘を消耗品として扱うような提督連中からも、自分達の風当たりが強くなった故に逆怨みされている。彼や野獣を、快く思わない者は少なく無い。

 

 とは言え。彼や野獣は、相変わらずと言うか何と言うか、そうした評価や敵意にも一顧だにしない。自分のやりたい事や意志を、勝手気侭に貫いている。

いつもだったら「あ~、めんどくせぇマジで……(悪態)」とか言ってそうだが、今回は「あ、良いっすよ(快諾)」と、引き受けたらしい野獣の事だ。

普通に“鬼ごっこ”をやらせるなんて事はまず無いだろう。苛烈な罰ゲーム的なものが用意されているのは目に見えている。誰も参加したくないのは言うまでも無い。

だが、かと言って理由も無く参加拒否した者は、これから一週間の食事が、三食全てチャーハンカレーになるという通知が携帯端末に在った。

艦娘達の脳裏には、比叡と夕立の姿が浮かんだに違い無い。死んだ方がマシな一週間になることは目に見えている。精神が崩壊するだろう。文字通り地獄だ。

このレクリエーションの参加は、確かに自由だ。強制じゃない。ただ、参加しなかった者の末路は想像に難しく無いというだけだった。酷い話である。

少女提督が再び溜息を漏らしかけた、丁度その時だった。

 

「お、集まってんじゃーん!!(悲劇を召ぶ者)」

 

 愉快そうな声がした。ウキウキしているのが此方にも伝わって来るような弾んだ声音だった。集まった艦娘達の前へ悠然と歩み出たのは、海パンTシャツ姿の野獣である。

タブレット型の端末を手に持っている。大型倉庫のシャッターを背に、楽しげな笑みを浮かべていた。ゲームオーナー側であるが故の余裕だろう。

そして、少年提督、少女提督を含む、その他の艦娘達がプレイヤー側である。ただの鬼ごっこ的なイベントという事は聞いているのだが、油断出来ない。

野獣の登場に、集まった艦娘達の間にも緊張が走る。野獣があの笑みを浮かべている時は、本当に碌なことを考えて居ないのを知っているからだ。

誰も言葉を発しなかったが、そんな嫌な感じの静寂は長くは続かなかった。集まった艦娘達を睥睨した野獣が、また笑う。

 

「おいおいお前らぁ! 何黙りこくってんだよ?

ホラホラ、もっとテンション上げてホラ! みんな踊れーーーーっ!!(煽動)」

 

「そういう賑やかしは要らん(一蹴)。結局、貴様は私達に何をさせたいんだ?

 レクリエーションは結構だが、中身が把握出来ないままでは不気味でかなわん……」

 

 お前が企画したものであれば、特にな……。そう言葉を続けつつ、集まった艦娘達の中から歩み出たのは長門だった。その後について、渋い顔をした陸奥も続く。

多分、自分も似た様な顔をしているし、集まった艦娘達もそうだ。レクリエーションを始めようとしている空気では無い。皆で集まって、悪い報せでも聞くみたいな空気だ。

ただ、「別に難しい事をさせようって訳じゃないから、安心して、どうぞ(怪しい笑み)」と、含みのある言い方をした野獣からのルール説明は、至極単純なものだった。

 

 制限時間内を生き残ることが目標である事と、そのフィールドは鎮守府の敷地内。だたし、間宮と鳳翔の店、食堂は除く。鬼ごっこらしくシンプルで、たったこれだけだった。

設定されてある時間は、開始から4時間。ずっと動いている訳でも無いだろう事を考えれば、普段から訓練などで鍛えている艦娘達にとっては、問題の無い範囲の時間だろう。

そして、逃げ切った者への賞品の一例として、『少年提督が何でも(常識と良識の範囲内で)言うことを聞いてくれる券』が、用意されているとの事だ。

 

 集まった艦娘達の間でどよめきが起きる。少年提督が言う事を聞いてくれるという事は、かなり応用が効く。食事や甘味を奢って貰ったり、休暇を貰ったり。

或いは、秘書艦として傍に置いて貰ったり、より自身の錬度を高めるべく、改修を望む事も出来る。勿論、提督と共に休日を過ごすなどという要望も選べるという事だ。

そしてこの賞品は、少年提督が召還した艦娘に限らず、野獣が召還した艦娘も持つことが出来ると、野獣は明言した。つまり、艦娘全員にある権利である。

主導権が艦娘にあり、能動的にアプローチ出来るという事実は大きい。この賞品については少年提督も了承している様子である。微笑みと共に、周りの艦娘に頷いている。

「僕に出来ることであるなら、何でも仰って下さいね」と、にこやかに言う彼に、『ん? 今、何でも仰ってって言いましたよね?』みたいな感じで、艦娘達の眼の色が変わった。

提督が休暇の日に、一緒に過ごす時間を作って貰ったりも出来るだろう。少年提督LOVE勢が多いこの鎮守府では、非常に魅力的な報酬である事は間違い無い。

「他にも色々と用意してあるから、楽しみにしとけよしとけよー☆」と、艦娘達を労うみたいに野獣は笑う。

しかし同時に、此処で疑問が浮かんでくる。追われる側に賞品が用意されてあるのに、追う側には賞品が無いという事だ。少女提督はこの時点で、かなり嫌な予感がしていた。

ただ、あくまで基本ルールだ。タブレットを操作する野獣は含みのある笑みを浮かべているし、まだ何かの説明されていない要素が在るのだ。

 

 

「フィールドっつっても、結構広いからね?(配慮)

 他の艦娘の生き残り状況とかも気になるだろうから、その辺りは俺が配信してやるよ?

 嬉しいだルルォ? あと、艦娘同士で連絡を取り合うのも良いゾ~、コレ」

 

 野獣はそう言いながら、手にしたタブレットを操作した。すると、野獣の背後からゴウゥン……、という重たい駆動音が響く。埠頭の大型倉庫のシャッターが開いていく音だった。

シャッターが開かれたこの大型倉庫は現在、中は空っぽだったと少女提督は記憶している。だが、違った。結構な広さが在る倉庫の中心には、何らかの装置がポツンと置かれていた。

見た目で言えば銀行などに置いてあるATMの機械に良く似ている。無骨なボディは白色で、正面にモニターがあり、手元にはタッチ式の操作パネルが在る。

薄暗い倉庫の中に、モニターから漏れるぼんやりとした光が灯っているのは、相当に不気味な感じだった。ざわ……ざわ……、と艦娘達が不審そうに顔を見合わせる。

 

「あと、逃げる側を有利にする、ちょっとしたギミックも在るから。(お楽しみ要素)

 鎮守府内に幾つか、アレと同じ型の端末を置いてあるからアクセスしてみて、どうぞ」

 

野獣が顎をしゃくって言う。

すると不穏な感じに、ぬるい潮風が埠頭を吹き抜けていった。少しの沈黙。

 

「……その端末にアクセスしたら、何がどんな風にゲームに関わって来るの?」 

陸奥が、明らかに怪しむような様子で野獣に訊いた。

 

「直接影響が出るんじゃなくて、色々とミッションが用意してあるんですよ。

 それをクリアするとぉ、鬼の数が減ったりするって言うかぁ……(フェードアウト)」

 

 少女提督は軽く顎に触れて、倉庫の中に不自然に置かれてある端末を見遣る。確かに、鬼の数を減らすのは重要だ。単純に考えても、捕まるリスクを大幅に減らせる。

生き残る艦娘の数に、大きく関わる要素なのは間違い無い。その分、冒さなければならないリスクの存在も想像出来る。その辺りは、その時々の状況による筈だ。

攻め、守りの選択権が有る。だからこそ、艦娘同士で連絡を取り合う事を、野獣は禁止していない。つまりは、プレイヤー側で作戦を構築する事を推奨しているという事だ。

生き残った艦娘の状況を配信するというのも、プレイヤー側にとってもかなり重要な情報だからだろう。ルール自体は単純だが、把握しておくべき情報が多い。

 

 結構面倒そうだなぁと、少女提督が軽く息をついた。

丁度そのタイミングで、野獣の持つタブレットに着信が入った。テレビ電話のような機能なのだろう。ディスプレイには、にこやかな赤城の顔が映しだされている。

赤城が居るのは、何らかの大規模なモニタールームの様だ。いや、何処……? こんな場所、鎮守府に在ったっけ? 少女提督は野獣の持つタブレットを凝視する。

 

『こちら赤城です。映像と音声が届いていますか?』

 

「見える聞こえる、太いぜ☆ じゃあもう、準備は整った感じなんだ?」

 

『はい、此方の準備は出来ております。いつでも開始出来ます』

 

「やったぜ。あと言い忘れてたけど、リタイアとか自首とかは無いから(いつもの)」

 

 よく見れば、タブレットに映る赤城の背後には、大和や武蔵をはじめ、戦艦棲姫や戦艦水鬼、港湾棲姫、それから時雨の姿も在った。

全員がヘッドセットを装着しており、何らかの機器類の前に座り操作している。少年提督の配下に在る深海棲艦達は、今回は不参加という安全圏に居た筈だ。

それも、彼女達をイベント運営の手伝いに参加させる為か。優秀な人材を確保し、運営委員として配置しているのを見るに、かなりの周到さだ。野獣の説明が続く。

 

 彼女達は、いわば審判員だ。各ミッションクリアの判定は、時雨や赤城、それから大和や武蔵達が、別室のオーナールームから判定を行うとの事である。

赤城達は野獣と同じく、ゲームオーナー側である。鎮守府各場所を監視するモニターで、ミッションの判定だけで無く、不正などが無いように見張っている。

万が一怪我人が出ても、迅速に対応できる準備もしている様で、野獣は特別医務室で待機しつつ、管理運営の指示を出すという体制だ。

『準備も用意もしているから、心置きなくイベントを楽しめ』という事なのだろうが、未だもっとも肝心なポジションについては不明瞭なままだ。

その事に関しては、集まった艦娘達の中からも挙手をして、質問をぶつける者が居た。先程の陸奥と同じく、明らかに怪しむ様な貌をしている天龍だった。

 

「なぁ、野獣。“鬼ごっこ”っつーけどよ。“鬼”はどうすんだよ?

逃げる側にも賞品が在るんだろ? 今からジャンケンでもすんのか?」

 

その質問に、野獣が唇の端を持ち上げた。

埠頭に集まった艦娘達が一瞬ざわついたが、すぐに黙り込む。

野獣が快活に笑う。

 

「心配すんなッテ! 全員に豪華賞品のチャンスが在るようにしてるから安心!

“鬼”はこっちで用意しといたからさ、お前らの為に(悪意と紙一重)。

まぁ、ちょっとスリル増し増し路線だけど、大丈夫だよな?(半笑い)」

 

「おい、野獣。スリル増し増しとは何だ……?

今回はオカルトだのホラーだのとは無縁のイベントだと言っていた筈だろう」

 

若干、声を震わせながら言う長門の貌は盛大に強張っていた。

 

「えっ、そんな事言ったぁ?(レ)」

野獣の方は、不思議そうな貌で長門に向き直った。

 

「貴様ぁ……ッ!!」 長門が野獣に詰め寄る。

 

「ねぇ……、さっき“鬼は用意した”って言ってけど……。

まさかモンスターパニック系とかいうオチじゃないでしょうね?」

 

普段は優しい陸奥が、眼を鋭く細めて野獣に訊く。

野獣の方は、面白くなさそうにそっぽを向いて、鼻を鳴らした。

 

「……そうだよ(白状)」

 

「本当にふざけるなよ貴様……(震え声)」

 

 長門が言うのと同時だったろうか。キチキチキチキチ……。ジジジジジ……。チチチチチチ……。寒気のするような音が、倉庫の中から聞こえた。

集まった艦娘達全員が、その体を強張らせた。硬いものを、細かく擦り合わせるような音だ。同時に、何か大きなものが動く音だった。

止めておけば良いのに少女提督は、薄暗くだだっ広い倉庫の中を凝視してしまった。何か居る。装置の向こう側と、倉庫の横の両壁際だ。巨大な何かが幾つも積まれている。

暗がりに眼を凝らして、気付く。薄っすらと見えてくる。あれは、巨大な檻だ。中に居るアレは。何だろう……。獣? いや、違う。そんなフォルムじゃない。

肉と骨を持つ生き物の外見では無い。艦娘達の何人かが悲鳴を上げた。尻餅をついている者も居る。泣き出す者も居た。無理も無い。何て事だろう。

 

「そんなビビんなくても大丈夫だって、安心しろよー!

 金属模型に機能を与えただけの、人造ペットみたいなもんやし。本物じゃないゾ。

 攻撃機能の無い愛玩用ロボット犬とかそんな感じだから。可愛いダルルォ?(狂気)」

 

 もはや、誰も野獣の言葉に反応を示さない。そんな余裕が無いからだ。正直、少女提督だって心が折れそうだった。積まれた檻の中に居るのは、数種類の蟲だった。

それも、滅茶苦茶デカイ。だいたいが人間と同じくらいの大きさだ。いや、もっと大きいものも居る。あれは、クモか。脚の長さのせいで、此処からだと更に巨大に見える。

「模型は、わし(野獣)とAKSの合作だゾ。協力を頼んだら、泣いて喜んでくれてさぁ!(悪魔)」艦娘達が脚を震わせてその場に立ち尽くす中でも、野獣は楽しそうだ。

明石にしても、あんなに巨大で精巧な蟲模型を作れなどと言われれば、普通に拷問に近いだろう。暗がりの向こうで蠢く蟲達の生々しさは相当なものだ。

檻の中の蟲達の数は、此処に居る艦娘の数よりも少ないものの、かなり多く見える。何て言うか、其々の種類が一匹とか二匹じゃない。

全体の数はちょっと数え切れないし、無駄にバリエーションも在る様子だ。暗がりの中に薄っすらとシルエットが見えたのは多分、ゴキとムカデだ。やっぱりクソデカイ。

気分が悪くなって来た。少女提督は片手で眼を覆って、顔を倉庫の中から逸らす。しかし、視線を逸らしても聞こえてくる。この蟲が蠢き、這う音。かなりに精神に来る。

 

「生命鍛冶術と金属儀礼術、あとは生命科学の応用技術の粋を集めて用意したんだよなぁ。

 お前らに喜んで貰えて、苦労した甲斐があったゾ……(しんみり)」

 

 少女提督の悪寒が最高潮に達した時だった。絶句する艦娘達を睥睨した野獣が、わざとらしい真面目な貌で語り始めた。勿論、誰も聞いてない。

此処って、ホワイト鎮守府なのかブラック鎮守府なのか、もう分かんないわね……。考えるのが面倒臭くなって来た少女提督は空を仰いで、思考を半分放棄した。

 

「先端技術と理論の無駄遣いは止めろ!! 

今日のレクリエーションはもう終わりッ!! 

解散ッ!! 皆、もう帰っていいぞ!!(必死)」

 

「おっ、そうだな! 

もう何匹か寮にも放たれてる筈だけど、遭遇しないように気をつけて、どうぞ(包囲)」

 

起ころうとする悲劇を回避する為に、長門が大声で避難を呼びかける。だが、野獣の方が二手も三手も先を行っていた。

ゲームの舞台は、プレイヤーのやる気に関わらず完成しているという事だ。これでもう、傍観者で居られる者は居ない。

倉庫前の埠頭が、阿鼻叫喚の坩堝と化した。最早、後戻り出来ないところまで来ている。叫び喚く艦娘達の声を聞きながら、陸奥が深呼吸してから、睨むように野獣に向き直った。

 

「……一応、聞くけど。あれに捕まったらどうなるのよ?」

 

確かに、重要なポイントである。

艦娘達の絶叫が、止んだ。野獣が喋るまで、少女提督も息を呑む。

 

「別にどうもしないゾ。

ただ巣に連れて行かれて、色々と補給(意味深)されるかもしれないけど(無責任)。

まぁ罰ゲームも考えてあるから、捕まらないように気をつけてくれよな~、頼むよ~」

 

 野獣は、肩を竦めて笑って見せる。何かを想像したのだろう。青い顔になった陸奥が、自分の体を抱き締めるようにして、ぶるるっ!、と体を震わせた。

いや、そもそも罰ゲームまであるのか……(絶望)。あんな巨大な蟲に追い回された挙句、更に罰ゲームとか。泣きっ面に蜂も良いところだろう。

集まって居た艦娘達も再び絶叫し、そのボルテージを増した。だが、この場から逃げ出そうとする艦娘達は居なかった。

此処から逃げたところで、既に蟲は鎮守府内に放たれているのだ。もはや、安全地帯は何処にも無い。長門は頭を抱えてその場に蹲る。

「大惨事じゃん……(恐怖)」と、少女提督も思わず言葉が漏れた。怖い物知らずな少年提督だけが、ウキウキした様な楽しそうな様子だった。

 

 

「そんな怖がる事は無いんだよなぁ……。

人間や艦娘を攻撃する機能は備えて無いから、危害を加えて来る事は無いゾ」

 

胡散くさい優しい貌で言って、野獣は肩を竦めた。

 

「あの蟲共の実体だって、本営が開発を目指してる、“独立型自走式の入渠ドック”のモデル案やし(都合の良い言い訳)」

 

「だったらもっと普通の外見があるでしょ!! 

なんで態々あんなのにする必要が在るのよ!?(正論)」

 

「そっちの方が面白そうだろ!!(弾丸論破)

まぁ、今んところは人懐っこいチワワみたいなもんだからさ!

可愛がってあげてくれよなー(他人事)」

 

「何処がチワワよ!! チョロQと戦車くらい違うわよ!!」

 

「大事なのは外見じゃなくて中身だって、それ一番言われてるだろ?(詭弁)」

 

「そういう事じゃなくて!! ビジュアルに問題が在るって言ってんの!!

 あんなのが鎮守府の敷地外に溢れ出たら、それこそ陸軍の出番になっちゃうでしょ!!」

 

叫ぶ陸奥の言うとおりだ。そうなったら大惨事だが、野獣の方は、「心配は要らないんだよなぁ……」と肩を竦めて見せた。

 

「鎮守府外に行かない様に、しっかりプログラムしてるんだからさ。

 そもそも攻撃機能は無いし、艦娘達にじゃれついて遊んで貰う以上の事は設定されてないから(説得)」

 

取り乱す陸奥をはじめ、この場の混乱は止まらない。長門は蹲ったままで動かない。

 

 

 

「あと、お前らの首のチョーカーには、艤装召還を封じる効果があるから。ついでに発信機も付いてるゾ。

海の中に逃げ込んだりフィールド外に行ったりしたら……。あとは分かるよなぁ~?(dominate先輩)」

 

 野獣は茶目っ気のある笑み笑顔を浮かべつつ再びタブレットを操作して、其処に映る赤城達に「そんじゃあ、そろそろ始めんぞー☆(ウキウキ顔先輩)」と、呼びかける。

それから野獣は、黒いクローバーの飾りが付いたペンダントを取り出して、自分の首に掛けた。クローバーの飾りには蒼色の微光が灯っており、鈍く明滅している。

何らかの効果が付与されている様だ。いや、この状況だ。何となく分かる。アレは多分、金属術的な“蟲除け”だ。自分だけ安全地帯に逃げ込んでいる。何て奴だ。

いや良く見れば、野獣の持つ端末に映る赤城達も、クローバーのペンダントを身に付けて居る。ゲームオーナー側だけの専用アイテムらしい。

 

「ついでに言うと、鬼の数は時間経過で増えていく仕様だから!(難易度・甲)

 ゲージ回復的な感じだけど、どう、行けそう?」

 

 艦娘達の中から、「ふざけんな!!(声だけ迫真)」 「冗談じゃねぇ!!(激怒)」 「やめちくり~……(泣)」などと言った怒号が幾つも上がる。

鬼の数が増えていくという事は、逃げ回るだけでは必ず限界が来る。野獣が言っていたミッションをこなす必要性が、否応無く出てくる。無理矢理にでも艦娘達を動かす気か。

酷いところでゲームの体裁とバランスを取ろうとする野獣に、少女提督も何か言ってやろうと思ったが、それよりも先に野獣は倉庫の中へと歩み出していた。

蟲達が蠢く、大掛かりな鉄檻が積まれた倉庫の中へ悠然と歩いていく。そして端末の前で立ち止まり、パネルを操作し始めた。

それに合わせて、鉄檻の扉を締めていた電子ロック部分が、ピ――、と軽い音を立てる。

 

 

「じゃあ、カウントダウンしよっか! 逃げる準備は良っすかぁ~? OH^~~?」

 

 野獣はディスプレイの赤城に頷いて見せてから、喚き散らしている艦娘達に、芝居がかった優しい笑みを浮かべて見せた。

艦娘達は一斉に野獣を見てから、全員が全員の顔を見回した。やばい。やばいよ。もう逃げよう。逃げる? でも、逃げるって、何処へ? 

刹那の間に、艦娘達の間でそんなアイコンタクトが交錯する。ただ確実なのは、この場に留まっていれば間違いなく全滅するという事だ。

鉄檻の中に居る蟲達が解き放たれれば、きっと凄い数になる。此処から離脱する事が最優先だ。全員が倉庫から後ずさる。

その間にも、野獣の動きは止まらない。見るからに悪役の貌で端末を操作していく。「それじゃあ、1から10まで数えるゾ」 野獣が宣告する。

それを聞いて、集まった艦娘達が逃げようとした次の瞬間だった。「……10!(せっかち)」 野獣が、速攻で蟲達を解放した。

「貴様ァァアァーーーーーーーーッッッ!!!!??」 長門の怒号が聞こえた気がしたが、すぐに掻き消された。倉庫内に詰まれた鉄檻が、一斉にバァン!!と開かれたのだ。

最悪のスタートだ。硬い物が激しく擦れる音。コンクリの地面を叩く音。這いずる音。鳥肌が立つ様な硬質な羽の音。その全てが、倉庫の内から一斉に溢れ出て、艦娘達に迫る。

 

 

 

大海原に響き渡るような、悲鳴と怒号と絶叫が爆発した。

 

 

 

 少女提督は大慌てで踵を返し、全力疾走で逃げる。何処へとか、そんな思考は無い。ただ、逃げる。

視界の端っこに、恐怖に顔を歪めた長門と陸奥が、アスリートみたいな綺麗なフォームで走っていくのが見えた。ちょっと待って……! 待って待ってお願い……!!

と言うか、全員必死だった。死に物狂いだ。気付けば、逃げ散る艦娘達の最後尾だ。肩越しに背後を振り返る。蟲達が迫ってきていた。すぐ背後。人くらいの大きさのゴキだ。

3匹。速い。めっちゃ速いし、めっちゃ気持ち悪い。金属細工の癖に、なんて精密な造形なんだ。怖い。死にそう。カサカサと言うか、ガチャガチャガチャという音が追って来る。

なんて攻撃的な金属音だ。少女提督も必死に逃げるが、こけた。致命的ミスだった。声も出なかったし、死を覚悟した。やだも~~……(泣)。同時だった。

 

「大丈夫ですか?」 落ち着き払った声が聞こえた。

 

「うひゃあ!!?」 変な声が漏れる。

 

 次の瞬間には、お姫様抱っこで抱き上げられていた。少年提督だった。彼は横合いから走りこんできて、少女提督を抱き上げたのだ。

それだけじゃない。少年提督は、少女提督を抱っこしたままで疾駆している。凄い速さだった。この小柄な脚幅で、どうやったらこんな速度が出せるのか。

恐らく、一歩で稼ぐ距離が尋常では無いのだろう。少女提督は、少年提督の顔を見上げると目が合う。眼帯をした彼は、走りながら静かに微笑んだ。

「何処へ行きましょうか? とは言っても、まずは蟲達を振り切らねばなりませんね」 彼は呼吸も声も全く乱れていない。

「と、取りあえず、建物の中へ……ッ!」 少女提督は、高速で流れていく景色を感じつつ、彼を見上げながら言う。彼は少女提督に頷き、更に走る速度を上げた。

まずは何処でも良い。鎮守府庁舎内へ逃げ込んで、追い縋ってくる蟲達を巻く必要がある。その為に、彼は駆ける。少年提督には、迷いや怯みが無い。

蟲達の狙いを分散させる為だろう。彼は長門や陸奥とは別方向へ向う。彼と行動を共にしようとする艦娘数名が、彼の後に続いてくる。

少女提督は彼と目が合う。彼は、やっぱり微笑むだけだった。

眼を逸らして、前を見た。何だか顔が熱い。鼓動が高まったのは、蟲達に追われているからだろうか。それとも、久ぶりに全力疾走したからだろうか。分からない。

とにかく、今は蟲達から逃げ切らないと。周りを見れば、艦娘達は散り散りに逃げた様だ。果たして何人生き残れるか。ゲームが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 鎮守府庁舎の内、座学教室が在る棟へと逃げ込んだ陽炎は、荒い息を吐き出しながら廊下を走る。蟲達が追いかけて来ないか、肩越しに背後を見た。

陽炎の後ろには、皐月、長月、霰、曙、潮が居た。逃げる方向が同じだったのだ。ただ、蟲達は居ない。上手く巻いたようだ。緊張が緩んで、代わりに疲れが一気に来た。

近くの座学教室に駆け込んでから、すぐに床に手を付いてへたり込んだ。続いて、皐月達が順番に教室へ走りこんで来る。皐月は陽炎と同じく、べちゃあと床に倒れこんだ。

曙と長月が近くの座学椅子に腰を乱暴に下ろし、天井を仰いで大口を開け、ぜぇぜぇと荒い息をしている。霰と潮の二人は、膝に手を付いて俯き、肩で息をしていた。

誰もしゃべれない。呼吸が。酸素が足りない。陽炎は身体を起こしつつ手を付いて、両足を投げ出して天井を仰ぐ。荒い息を繰り返す。その内に、遠くから悲鳴が聞こえた。

「だぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!!」 「ぱぁぁあああああああああああああああああああああああ!!!!」

朧と漣の悲鳴だった。あの二人も勇敢な駆逐艦だし、錬度の高さも相当なものだった筈だ。だが、切羽詰りまくったあの悲鳴は、かなりガチだった。

 

 

 へたっていた潮と曙が、座学教室の窓際へと慌てて駆け寄り、悲鳴が聞こえた方を見遣った。陽炎も立ち上がり、二人の視線に倣う。すぐに後悔する。見るんじゃなかった。

陽炎達が居る座学教室は3階だ。其処から見下ろして、ちょうど向いの庁舎前。その舗装通路だ。朧と漣が、蟲達に追い立てられていた。

あれは、蝿だ。大きさは丁度、朧や漣と同じくらいだ。キモ過ぎる。大きさもそうだが、造形が精密過ぎる。生々し過ぎて、悪い意味で鳥肌が立つレベルだ。

あんなのに追っかけられたらたまったもんじゃない。余裕で夢に出るだろう。朧と漣は、漫画みたいに必死に走ってる。そりゃそうだ。

二人は、向かいの庁舎の中に駆け込んだ。それを追って、蝿達も庁舎内へ。其処まで見ていた曙と潮も、朧と漣の名前を呼ぼうとしなかった。呼んでも無意味だからだ。

此処からじゃ何も出来ないし、あの状況では逃げ切ってくれと祈るだけだ。潮と曙、それから陽炎が互いに顔を見合わせた。三人とも、苦しい表情だった。

 

 

「今回のイベント、ほんと駄目だよコレ……。

 草毟りでもしてる方が100万倍マシだよこんなの……」

 

 陽炎が教室内へと視線を戻すと、体を小刻みに震わせる皐月が、半ベソで床に体育座りをしていた。見るからに相当参っている。

普段は溌剌としていて勝気な彼女らしくも無い様子だったが、聞こえて来た朧と漣のガチ悲鳴に、動揺を誘われたに違い無い。

 

「なぁ皐月……。あんまりベソベソしないでくれ。その、こっちまで泣きそうだ……」

 

そのすぐ傍で椅子に座って居た長月の方は、口調こそ落ち着いているものの平静とは言い難い状態だった。

皐月と同じ様に身体が震えているし、眼が潤んでいる。皐月の悲壮感が感染しつつある様である。

 

「野獣提督は一度……、

『レクリエーション』の言葉の意味を、真剣に考えるべきだと思う……」

 

 ボソッと呟いた霰の言葉は、本当にもっともだと思う。いつもは口数も少なく、声も小さい霰だが、その言葉と声音には普段には無い力みが在った。潮がその場にへたり込む。

曙の方も何も言わず大きく息を吐き出してから、外から見えないように、窓際に隠れるように座る。そして険しい貌で右手親指の爪を噛み始めた。

先程の朧や漣の様子を見て、これからどう動くかを考えているのだろう。陽炎も同じ様に、窓際に隠れるように座り、瞑目する。生き残るには、やはり作戦が必要だ。

他の艦娘との協力、情報の共有が鍵を握っている。適当に逃げていても、自ずと限界が在る。野獣が設置したという、あの端末をまずは探すべきか。

陽炎は携帯端末を取り出し、不知火に連絡を取ろうとした。その時だった。「あの、アレは……」と言いながら、潮が座学教室の隅の方を指差した。全員が顔を上げる。

潮が指差したのは、座学教室の黒板の横。教室の前方の窓側だ。其処に、何か置かれている。銀行のATMにも似た装置だ。……何よ、在るじゃん。

 

 陽炎は弾かれたように立ち上がり、その端末に駆け寄る。タッチ式の操作パネルに触れると、正面のモニターに鼻クソをほじる野獣の顔が映し出された。

『あっ(油断)』と間抜けな声を漏らした野獣は、モニターの向こうで鼻クソをほじったままで陽炎に笑いかけた。『陽炎じゃねぇかよ~。端末、見つけるの早いッスね(賞賛)』

「どうも……」と言いつつ、陽炎は自分の表情が歪むのを感じた。皐月や長月、潮や霰、曙も、陽炎の傍に駆け寄って来た。野獣は全員を順番に見て、軽く笑った。

 

『そんじゃあ、もうミッション受けるか?

 まぁまだ序盤だしなぁ。リスクを抑えたいなら受けなくても良いゾ。

 多分、他の奴等の状況を把握してからでも遅くは無いと思うんですけど(名推理)』

 

「ミッションって結局、私達は何させられんのよ? 裸になって踊れとか言うんじゃないでしょうね?」

曙が噛み付くような勢いで、モニターに映る野獣に聞く。野獣の方も、ワザとらしく微笑んで見せて、『ま、そんな感じですね……(小声)』と答えた。

「ふざけんじゃないわよッ!!!(激怒)」と、曙が怒鳴ろうとしたところを長月と皐月、霰が、曙の口を手で塞いだ。蟲達に気付かれてしまう。

 

『冗談は置いといて……。ミッションは操作画面で確認出来るから、参考にして、どうぞ。

 クリアした奴の携帯端末に、パスワードを添付したメールを送るからさ(仕様説明)』

 

 陽炎はモニターの野獣を無視しつつ、タッチ式の操作パネルに視線を走らせる。タッチ式の広めのディスプレイには、幾つかの操作項目が並んでいる。

その中には確かに“パスコード入力”の項目があった。あとは“ミッション選択”の項目。陽炎は思考を巡らせつつ顔を上げる。攻略の糸口が見えた気がした。

「ミッションやパスコードの入力操作は、端末ごとに違うんですか?」と聞こうとしたが、丁度同じタイミングで隣に居た潮が野獣に聞いてくれた。

野獣は『いや、同じだゾ(断言)』と頷いた。なる程。と言う事は、“ミッションをクリアする艦娘”と、“パスワードを入力する艦娘”が別であっても良いという事だ。

端末の場所を把握しておけば、ミッションを誰が受けるかという選択も出来るし、リスクの分担が出来る。野獣が、情報の共有を推す理由を理解した。

 

 陽炎は自分の携帯端末を操作する。そして、あるアプリを立ち上げた。通称。艦娘囀線。作戦行動中の各部隊の状況や、海域の戦況などを広く伝える為のツールだ。

掲示板とツ●ッター、それからLI●Eを組み合わせた様な機能なのだが、基本的に緊急時にしか使わないものであり、普通の無線通信の方が手早い為、無用の長物だった。

最近になってからは本営からのアップデートも打ち切られ、各鎮守府内々での連絡網程度にしか使われなくなっている。ただ、この鎮守府では殆ど誰も使っていなかった筈だ。

陽炎自身も今まで使った事の無い機能だが、参加している艦娘達の数と、其々に連絡を取り合う手間を考えれば、今の状況ではベターな気がした。

 

陽炎は、モニターに映る野獣に向き直る。

「野獣司令からの連絡が無いところを見ると、まだ脱落者は出てないんですよね?」

 

『おっ、そうだな! まだ始まったばっかだし、捕まった奴は居ないゾ』

 

「あと、……もう一つ確認したいんですけど。

 鬼であるあの蟲達は、そっちで恣意的に動かせるんですか?」

 

『動作の強制停止は、リモートで完璧に出来るゾ。

ただ、こっちから細かい指示は出せないんだよね……(弱点)』

 

それはつまり……、と。陽炎はモニターの野獣をぐっと見詰める。

 

「あの蟲達は、そちら側の指示では動かない。

要するに、勢力を増していく軍勢であっても、統率されていない。

ただ艦娘達を捕まえる為に、鎮守府内を無軌道に動いている……って事ですよね?」

 

『まぁ、そうなるな……(HYUG並感)。

 蟲共に干渉は出来ても、その行動パターンや範囲の指定は出来ないゾ。

 フレキシブルな状況判断は、自由な行動の特権だから、まぁ多少(の放任)はね?』

 

 つまり野獣達は、このゲームの盤面に直接触りに来ることが出来ないという事だ。艦娘達の行動を先読みして、蟲達を配置したり、移動させたりは出来無い。

その野獣の言葉を聞いて、陽炎はホッと一つ息を吐き出しながら、“ミッション選択”の項目をタッチした。そして曙達に振り返る。

「ねぇ皆、お願いが在るんだけど良いかな?」全員の視線が陽炎に集まる。それを確認してから陽炎は一つ頷き、“艦娘囀線”を使用する旨を伝えた。

 

「かんむすてんせん、……って何だっけ?」 不思議そうな顔をした皐月が、陽炎に聞く。

 

「端末受け取った時に説明受けたでしょ? アレよ、あの~、ほら、SNSみたいなヤツ!

 プリインストールされてるけど、今までの実戦じゃ使わず仕舞いだったアレよ、アレ」

 

使った事が無いのは事実なので、陽炎はフワッとした説明しか出来なかった。

だが皐月の方は、ああーー……、と一応は納得してくれたようだ。

 

「携帯端末の使用が禁止されてないんだから、この際フルに使おう。

 戦場じゃ一々文字なんて打ったり読んだりする時間もないけど、今なら出来るしね。

 他の艦娘達も一緒に上手い事使えば、きっと良い連携が取れる筈よ」

 

「皆乗ってくれるかなぁ? 初めて使う機能でしょ」皐月は微妙そうな貌をしつつも、携帯端末を取り出してくれた。陽炎の案に乗ってくれる様だ。

駄目で元々よ、と。陽炎は軽く笑う。「試してみる価値は、在る……」 「参加者の数を考えれば、有効だと思うが……」霰と長月も頷く。

 

 潮と曙も続いて頷き、携帯端末を取り出した。そして、全員で艦娘囀線を起動する。使い方自体は訓練を受けたことがあるし、其処まで難しいものでも無い。

アプリを開いても、全員がチンプンカンプンで頓挫という事態にはならずに済んだ。足並みが揃ったところで陽炎はまず、≪逃亡中。生き残ってる人は集合≫ というスレを立てる。

端末の場所。ミッションへの挑戦者。クリアした際に送られてきたパスワード。そのパスワードの入力者。蟲達が少ない場所。或いは、多い場所など。

これらの情報を書き込み、それを共有する場所を用意した。艦娘囀線の掲示板は、匿名掲示板とは違い、誰の発言かすぐに分かる。だから、発言そのものはかなり信頼出来る筈だ。あとは、それらの情報をまとめたページを作れば、もっと効率的に動ける。情報の密度と質は、参加者の数次第になるだろう。急いで取り掛かる。

曙、潮、長月、皐月、霰の五人は、まずは手当たり次第に他の艦娘達に連絡を取った。まずは各々の艦娘達が持つ端末で、艦娘囀線の機能起動を要請する必要が在るからだ。

まだ全員が生き残っている事を考えれば、本当に誰でも良い。連絡がつかない場合は、端末の電源をOFFにしているか、バイブにしているか。

或いは、蟲達に追い立てられて、それどころでは無い場合も考えられる。だが、まだ脱落者は居ないのだ。まずは連絡がつながる者だけでも良い。

他の艦娘達も、恐らくは何人かのグループで動いているだろうし、ネットワークは広がり易い筈だ。中には参加しないという選択をする者も居るだろうが、それは強制出来ない。

これは、飽くまで陽炎が考えた作戦の一つであり、団結して動くための一歩に過ぎない。状況が変われば、それに対応していくしかない。

他の艦娘への連絡を曙達に任せ、陽炎は手元のディスプレイで各種ミッションを確認しつつ、正面のモニターを一瞥する。それを端末のカメラで撮影し、スレに張り付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「陽炎から連絡が入りました。

持っている携帯端末で、艦娘囀線を起動して欲しいとの事です」

 

 庁舎内にある、会議室兼ミーチィングルームに身を隠していた不知火が、荒い息を整えながら言い、手袋をした手の甲で顎の汗を拭う。

自身の携帯端末を操作する不知火は、壁に寄りかかる姿勢だった。肉体の酷使は訓練で慣れているものの、此処まで精神的に消耗する全力疾走は初めてだからだろう。

言葉自体には乱れが無いものの、その声音や様子からは、余裕が在るようには全然見えない。その眼の鋭さも鈍く、いつもの力強さは無い。

 

「……どうやら、陽炎が何かを思い付いたようですね。

何度も連絡する手間を省く為、此方のメンバーは伝えておきました」

 

不知火の他には、天龍、加賀、翔鶴、瑞鶴、葛城の6人が息を荒くして、へたり込むようにして椅子に座っていた。あんだと……? と、突っ伏していた天龍が顔を上げる。

 

「艦娘囀線って、アレだろ? 結局使われなくなった奴だろ?」

 

「えぇ。そのようです。

情報共有の為のツールとして、活用できるのではと言っていました」

 

 不知火も携帯端末を手に、天龍に向き直る。

艦娘囀線は機能性こそ高いものの、戦場での通信手段としては迅速性に欠けるという事で、使われなくなったのは天龍だって、というか、此処に居る全員が知っている。

最近になって野獣に召還された葛城だって、端末に備えられた機能や、現在まで使われた機能については訓練だって受けている。だからこそ、怪訝な表情を浮かべていた。

チンタラやってる場合じゃないのは今の状況でも同じだとも思うが、天龍は試しに端末を取り出して艦娘囀線を起動した。それに続き、加賀や瑞鶴達も倣う。

 

「情報共有するっつってもよ。それ野獣も見れるんじゃねぇのか。

……端末権限の問題だな。良い考えだとは思うけど、こっちの動きまで筒抜けになっちまう」

 

 下手すりゃ一網打尽だぞ。天龍はそう言いながらも携帯端末を操作するが、どうも乗り気にはなれない。自分達の行動を明かす事に、どうしても強いリスクを感じてしまう。

加賀達にしてみても、その辺りは天龍と同じ意見のようだ。携帯端末を持つ彼女達は、天龍の言葉に頷いている。自身の持つ端末から顔を上げた不知火が、天龍達を順番に見た。

 

「野獣司令はこれ以上、直接的にはゲームには関わらないそうです。

 言質を取ったと、陽炎が言っていました。飽くまで、ゲーム進行の管理に努めると」

 

「何でも周到な野獣にしちゃ、随分ヌルいな……」 天龍は嫌な予感がした。

 

 携帯端末で艦娘囀線を起動すると、既に何人かがログインしていた。≪逃亡中。生き残ってる人は集合≫ というスレッドが立っており、もう書き込みも幾つかされている。

陽炎が立てたであろうスレの本文には、何か音声ファイルと画像ファイルが添付されていた。そして、『端末を発見しました。座学教室の●●号にあります』という書き込み。

添付ファイルを開く。音声ファイルには、陽炎と野獣の遣り取りを録音したもの。そして画像ファイルは、陽炎が見つけた端末ディスプレイに表示される、ミッション一覧だった。

天龍は顎に手を当てて思案する。そもそも、野獣の言葉を信用しても良いものか。ゲーム進行に携わる以上、間接的には干渉してくるという事だ。それに、だ。

 

「何この糞ミッション!!?(驚愕)」 端末を操作していた瑞鶴が声を上げた。

「えぇ……(困惑)」と、戸惑いの声を漏らしたのは翔鶴だ。葛城は無言で硬直している。

「ハァ~~……(クソデカ溜息)」 加賀はもう遣る瀬無いと言った感じで顔を手で覆う。

空母組の反応も当然だろう。天龍だって気が滅入って来た。陽炎が添付した画像ファイル。

そのATMに似た端末のディスプレイに表示されているミッションの数々は、かなりパンチが効いていた。

 

≪よく冷えたビールを執務室まで持って来い≫、

≪3時のオヤツを執務室まで持って来い≫、などのパシリ系。

 

≪埠頭の真ん中で加賀岬を歌え≫、

≪何か面白い事をして、ゲームオーナー側を笑わせろ≫、

≪最高に格好良い口説き文句で、ゲームオーナー側をときめかせろ≫、などの無茶振り系。

 

≪判断推理の5択問題を、制限時間内に解け≫

≪人文科学分野の5択問題を、連続で5問正解しろ≫、などのクイズ系。

これは、端末を直接操作して回答していくものだろう。

 

そして恐らく本命の、

≪少年提督の執務室に置いてある、失敗ペンギンを手に入れろ≫

≪地下動力室に置いてある、失敗ペンギンを手に入れ入れろ≫

≪鎮守府の何処かにある、長門がプリントされた抱き枕カバーを手に入れろ≫

などの、○○○を探せ系と言った、各種ミッションが画像ファイルからは見て取れる。

自身の持つ携帯端末を見ながら、不知火は顔を歪めた。

 

「なるほど……。こういうカラクリですか」

 

「陽炎のおかげで合点が行ったな……。

野獣が大人しくしてんのも、もう既に手を加える必要が無ぇってワケだ」

 

 天龍も、並んだミッションを一通り眺めてから、大きく息を吐き出した。

パシリ系、無茶振り系、クイズ系など、半ば冗談で作ってあるミッションはともかく、○○○を探せ系のミッションは、完全に待ち伏せが可能だ。

具体的に場所が指定されている項については、罠が仕掛けられて居るのは眼に見えている。どれもこれもリスクが高い糞ミッションなのは間違い無い。

しかし、何も行動を起こさないままでは、鬼である蟲が増えるばかりだ。そうなれば、何れ全滅するだろう。じゃあ、俺達はどう動くか。天龍が口を開こうとした時だ。

 

 風が吹いた。此処は2階だ。窓が在る。さっき締めた筈だ。

何時の間にか空いていた。ゾワッと悪寒がした。全員が携帯端末を仕舞い、席を立つ。

殆ど音がしなかったが、奴らは忍び寄って来ていた。会議室の長テーブルの影。

天龍達から見えない角度から、ソイツらは物凄い勢いで這い出て来た。

鈍色をした精巧・精密な姿を、蒼の微光で薄く包んでいた。

 

床を這い、壁を這って迫ってくる。巨大過ぎるアシダカグモだった。

この距離で見ると本当にヤバイ。脚を広げている大きさとキモさは尋常じゃない。鳥肌ものだ。

 

「だぁあああああああああああああああ!!!!」 天龍は絶叫して逃げる。

「ぅあっッ……!!!!」 不知火も表情を恐怖に歪め、踵を返して駆け出す。

瑞鶴、翔鶴、葛城、加賀も、其々が悲鳴を上げながらも走る。

そんな天龍達に、アシダカグモ達は容赦無く迫ってくる。

 

先頭を逃げる天龍は、ミーティングルームの扉を蹴破って外に転がり出た。

勢い余ってこけるが、すぐに立ち上がって走り出す。不知火達も続く。クモ達が追う。

「もうじき突き当たりだ! 階段だぞ!!」 廊下を走りながら、天龍は背後へと叫ぶ。

 

「上か下か、どっちか決めとけよ!!」

言うついでだ。肩越しに、一瞬だけ後ろを振り返った。全員が頷いてくれる。

更にその背後。追ってきてやがる。クモ共め。全部で3匹。逃げ切れるか……?

 

 

 

 

 

 

 吹雪、睦月、夕立、3人は、緑豊かな中庭を通る、舗装通路を必死こいて走っていた。

その背後には、板金鎧みたいに重厚で長大な体躯を持つ、ニ匹の大ムカデが迫っている。

三人は“改二”の改修が済むほどの錬度が高いものの、今はその勇敢さなど微塵も無い。

というか無理だ。深海棲艦もグロテスクな感じはあるけど、今回はベクトルが違う。

生理的に嫌悪感を与える姿をしているのに、あんなサイズになったら心が折れる。

RPGゲームに出てくるモンスターそのものだ。見たまんまの怪物である。

野獣曰く、あの蟲達は艦娘にじゃれついて来ているだけらしいが、本当に冗談じゃない。

あんなのに捕まったら心に傷を負うどころか、再起不能になってしまう。

 

 吹雪は走りながら後ろを振り返ろうと思うが、止めた。そんな必要が無い。

来てる。首の後ろ辺り。何かが通り過ぎたような、風を切るような音が聞こえた。

ガチャガチャガチャ……!!! という、金属が地面を削る足音。

キチキチキチ……、チチチチチ、という、硬い物を擦り合わせる様な音。

これは、吹雪たちのすぐ背後に居るムカデ達が、顎を鳴らす音だろう。寒気がした。

いや、ほんと! もう、音がね! すごい近いんだけど! 近い近い近い近い近い……!!

来てる来てる来てる来てるヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ……!!!

「(><;)ううううううううううううううううううううううううううーーーーッ!!!」

吹雪は涙を堪えて走る。泣いてない。まだ泣いてない。でも泣きそう。

 

「ムカデさん!!! ムカデさん許して!!! 心肺壊れるっぽいぃ^~~!!!」

「あぁぁああああああああああああ!!! もうやだぁあああああああ!!!」

 

 夕立と睦月も絶叫と共に走る。逃げるしか無い。捕食者と餌食の構図だ。「蟲どもぉ!! これでも喰らいやがれぇ!!」 しかし、そんな三人を救うべく、誰かが叫んだ。

走る吹雪達の右斜め前。中庭の植え込みの影からだ。誰かが、ハンマー投げみたいに身体をぶん回して、何かを剛速で投げつけるのが見えた。赤い。あれは、消火器だ。

凄い勢いで回転している。砲弾みたいに飛んでくる消火器は、丁度吹雪達には当たらない角度で、しかし、首を擡げた大ムカデの頭には、抉り込むような角度で飛んで来た。

グァアッツーーーンッ!!! と、めちゃくちゃ良い音が中庭に響く。一匹の大ムカデが、頭に消火器をまともに喰らう。頭を上げていたせいで、横に倒れていく。

そのまま隣に居た大ムカデに縺れるようにしてひっくり返った。大ムカデ達の足が、一蹴止まる。その隙に、吹雪達はムカデ達を引き離す。

消火器を投げて助けてくれた艦娘は、「こっちだ!!」と腕で、ジャスチャーしてくれた。彼女も駆け出す。小柄な背中だ。速い。

その背中を追う。背後を見ると、もう大ムカデは追ってきていない。ホッとし過ぎてちょっと漏れそうだったが、我慢しなければ。

 

 

 少しの間、彼女について走る。彼女が駆け込んだのは、鎮守府内の弓道場だ。

それも中では無く、手入れされた庭の茂みに駆け込んだ。身を隠すのには丁度良い。

植えられた木に背を預ける格好で、乱れた呼吸を整えながら彼女は座り込んだ。

後頭部を植え込みの幹に当てるようにして空を仰いで、深呼吸している。

吹雪達も膝に手をついて呼吸を整えていると、彼女は顔を上げて笑って見せた。

駆逐艦。朝霜だ。「あの消火器、良い武器になりそうだったけど、早速使っちまったな!」

精悍でありながらも、やんちゃそうな笑顔だったが、彼女の魅力を引き立たせている。

息を整えながら笑う朝霜に釣られ、吹雪も少しだけ笑顔を浮かべる。

それから、夕立と睦月と一緒に、助けて貰った礼を述べた。同時だったろうか。

「無事だったんですね。……良かった」と、また別の声が聞こえた。

現れたのは、疲れたような貌をした大淀だった。吹雪達を順に見て無事を喜んでくれた。

安堵したような貌で微笑んで、ほっと息を吐き出している。

どうやら二人共、一緒に此処に身を隠していた様だ。

 

 吹雪達は、軽巡である大淀に一度頭を下げる。

それから手短に、大淀から現在の状況について軽く説明を受けた。

埠頭から逃げてきた大淀は、途中で二人と一緒になり、行動しているのだという。

他にも足柄や明石も居たのだが、逸れてしまったとの事だ。

だが、まだ脱落者を伝える連絡が携帯端末に無いので、まだ生き残っている。

それは間違い無い。こうした生存者との連携を取るべく、手が打たれてあると言う。

ゲーム序盤の今。艦娘囀線を使いながら連絡を取り合い、情報を募っている段階らしい。

陽炎が考えた案らしいが、大淀が参加したことで、一気に参加する艦娘が続いたとの事だ。

吹雪達も端末を取り出し、艦娘囀線を起動してログインする。

陽炎が立てたであろうスレッドにも、もう多くの書き込みが在った。

 

 陽炎の書き込みには、『陽炎@kagerou.1.●●●●●』の表示が在る。恐らく、●●●●●の数字とアルファベットは、艦娘の識別番号なのだろう。

各鎮守府には、同じ名前の艦娘が居ることがあるが、其々で錬度や人格の有無に於いて違いが在る。その為、この番号で“どの陽炎”なのか、厳密に分かるようになっている様だ。

本営からは回覧板程度の価値しか見出されていないだろうアプリだが、その辺りの厳格さや規則ばったところは軍属アプリっぽい。

その分。見易いレイアウトと整理されたインターフェースで、扱うのも簡単だ。吹雪はディスプレイをスクロールさせる。タイムライン的には、上から下に見れば良いようだ。

 

 

 

 

≪天龍@tenryu1. ●●●●●≫

俺は不知火と行動してる。加賀、翔鶴、瑞鶴、葛城とはぐれた。

生きてるなら此処に書き込んでくれ。俺達は工廠裏手の資材置き場に隠れてる。

ついでに、端末も見つけた。この近くだ。いつでも動ける。

ミッションを受ける時は、至急メールくれや。

 

 

≪陽炎@kagerou1.●●●●●≫

了解です! 私達も新しく端末を見つけました! 

●●棟一階のトイレ前です! ただ、巨大なゲジゲジが一杯居て近づけません。

此処に留まるのは危険と判断し、私達は一度場所を変えます。

 

 

≪山城@husou2.●●●●●≫

ちょっとすみません!!!!!!!!!!! 

緊急事態です!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

扶桑姉様と逸れました!!!!!!!!!!!!!!!!!

お見掛けましたら、私の端末までメール下さい!!!!!!!!!!!

何でもしますから!!!!!!!!!!

 

 

≪陽炎@kagerou1.●●●●●≫

えぇ……。

 

 

≪扶桑@husou1. ●●●●●≫

こけたなう

 

 

≪山城@husou2.●●●●●≫

扶桑姉様!!!!!!!!!!!!

今どちらに居られますか!!!!!!!????

至急向います!!!!!!!

 

 

≪満潮@asaio3.●●●●●≫

@husou2.●●●●● いや、至急向いますじゃないから。

私達と逸れて、そっちが勝手に一人で迷子になってるだけだからね。

私達は一旦、天龍達のトコに向かうわ。向こうで合流して。

 

 

≪山城@husou2.●●●●●≫

@asasio3. ●●●●●  はい

 

 

≪満潮@asaio3.●●●●●≫

よろしい。私達は霞と朝潮、それから扶桑と一緒に居るわ。

あとは、●●号の庁舎には近寄らない方が良いわ。凄い数のゴキよ。

近くに居る人は注意して。

 

 

≪野獣@Beast of Heartbeat≫

おっ、そうだな

 

 

≪曙@ayanami8.●●●●●≫

なんか居るんだけど!!?

 

 

≪野獣@Beast of Heartbeat≫

おいAKBNォ、俺とお前の仲だろ? そんなツンケンすんなよ

 

 

≪曙@ayanami8.●●●●●≫

@Beast of Heartbeat  死ね。あんたと私が、一体どんな仲ですって?

 

 

≪レ@bikibikibikini123≫

ワーオ! ツンデレね!?(レ)

 

 

≪曙@ayanami8.●●●●●≫

@bikibikibikini123 絶対違うから!

 

 

≪野獣@Beast of Heartbeat≫

女の子が“死ね”とか言ってはいけない。†悔い改めて†

そんなんじゃ提督に嫌われるぞお前。なぁMTSOォ、お前もそう思うよな?

 

 

≪曙@ayanami8.●●●●●≫

召されろ

 

 

≪満潮@asaio3.●●●●●≫

亡くなれ

 

 

≪レ@bikibikibikini123≫

ダブルツンデレ!!(レ)

 

 

≪球磨@kuma1. ●●●●●≫

いや、野獣提督が此処に張り付いてるなら好都合だクマ!

≪何か面白い事をして、ゲームオーナー側を笑わせろ≫、

≪最高に格好良い口説き文句で、ゲームオーナ側をときめかせろ≫、

とかは、此処でやっても良いクマ? 

 

 

≪多摩@kuma2. ●●●●●≫

さすがに一々端末の前でやるのはリスクが大き過ぎるニャ。

蟲の数も多いのに、端末に近づくだけでも一苦労ニャ。

 

 

≪野獣@Beast of Heartbeat≫

しょうがねぇなぁ…… 

じゃあ、検索用タグ付けて書き込んでくれや!

俺と此処に居る奴らで、じっくり審議してあげるからさ。 

タグはミッション名の前に“♯”付けてやれよ?

 

 

≪球磨@kuma1. ●●●●●≫

やったクマ。よし、じゃあ木曾 

景気付けに一発頼むクマ

 

 

≪木曾@kuma5. ●●●●●≫

何で俺が! と言うか、こっちはそんな場合じゃない! 

阿武隈と一緒に寮の裏手に居るが、この辺りは蟲の数が多過ぎる。

碌に動けないんだ。勘弁してくれ

 

 

≪多摩@kuma2. ●●●●●≫

あくするニャ

 

 

≪木曾@kuma5. ●●●●●≫

やったら助けに来てくれるのか

 

 

≪球磨@kuma1. ●●●●●≫

球磨と多摩も身を隠している最中だけど、考えてやるクマ。

 

 

≪木曾@kuma5. ●●●●●≫

わかった

 

 

≪木曾@kuma5. ●●●●●≫

ちょっと待て

 

 

≪木曾@kuma5. ●●●●●≫

行くぞ

 

 

≪ビスマルク@Bismarck1.●●●●●≫

Bosukete

 

 

≪木曾@kuma5. ●●●●●≫

♯ 格好良い口説き文句

 

“俺の眼帯が何の為か、お前に分かるか?

教えてやる。両眼でお前を見詰めると、恋が始まっちまうだろう?”

 

 

≪野獣@Beast of Heartbeat≫

おっ、やべぇ!! 110番だな!!

 

 

≪木曾@kuma5. ●●●●●≫

何故だ!!?

 

 

≪北上@kuma3. ●●●●●≫

我が妹ながら、これは無いわー……

って言うかコレ、別に口説いて無くない?

 

 

≪大井@kuma4.●●●●●≫

真面目にやってる?

面白い事をする方と間違って無い?

 

 

≪球磨@kuma1. ●●●●●≫

木曾。駆逐艦の艦娘達も利用するんだから、此処でそういうのは止めるクマ

 

 

≪多摩@kuma2. ●●●●●≫

木曾に人権が無くなったニャ。凄い塩対応ニャ

 

 

≪木曾@kuma5. ●●●●●≫

もう俺は何も言わん

 

 

≪阿武隈@nagara6. ●●●●●≫

木曾さんが泣いちゃったじゃないですかーー!!

ホントにこっちは身動き取れないんですぅ!!

そういう姉妹イジリは、今は控えて下さいぃーー!!

 

 

≪プリンツオイゲン@Admiral Hipper3.●●●●●≫

あの! 盛り上がってるところ横からすみません! 

ビスマルク姉様のSOSが埋もれてます! スルーされてるんですけお!

あの、ビスマルク姉様!! 今、どちらに居られますか!?

 

 

 

 タイムラインを其処まで読んだ時点で、吹雪は首を傾げて渋い貌になった。

吹雪だけでなく、睦月と夕立も、何とも言えない貌で端末をスクロールさせている。

脱線しまくってるし、これ、ちゃんと機能していくのか分かんないなぁ……。(一抹の不安)

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。