ローグライクなスタンド使いのキヴォトス新生活記録 作:enigma
7月くらいに最後の投稿をしてから、はや半年近くが経過してしまいました。
私の方はというと、モチベの低下や生活の忙しさなど、多々の問題を抱えつつ現在チマチマと書き進めている始末で御座います。
昨今厳しくなりつつある中、今年一年も元気に過ごし、こちらの小説の投稿を進めていければと考えている次第でございます。
それでは短いですが、よければどうぞご覧ください。
「あったあった!ここだよ!ここがうちの制服を卸してくれてる学生用品店!」
「先輩、あんまり走ってると転びますよ。」
「大丈夫大丈夫!これくらいなんともないって!」
唐突な先輩の提案から少しして・・・俺はあれよあれよという間に先輩にアビドスの商業地区まで引っ張って来られ、気が付けば制服を始めとした学生用品やその宣伝チラシが目立つ一つの店舗に連れてこられていた。
(この辺りも砂まみれだなぁ・・・マジで全然環境整備が追い付いてねえや。この辺りも将来的には何とかしないとなぁ・・・)
「ほらほら!ボォーっとしてないで早く行こう!」
「あっはい。」
そのまま手を引かれ、所々舞っている砂埃や積もって小山になってるところが地味に気になる外から店舗の中に入っていけば、数多の種類の学生服や学生鞄、一般的な筆記用具から多種多様な銃火器とそれらに対応したガンケースまで、より一層多種多様な学生用品の数々に出迎えられる。先輩に連れられながらそれらに目を通していると・・・
「いらっしゃいませ!本日はどのようなご用事でしょうか?」
俺たちの姿を捉えた店員らしきアンドロイドが一体奥からやってきて、丁寧な挨拶と共に俺達を出迎えた。
「すみません。これからの入学式に向けて、この子の分の制服を大至急作ってほしくて。」
「なるほど、制服のご注文ですね。着る方はそちらの方で・・・おや?」
出迎えた先輩が用件を伝え、それを把握した店員は紹介された俺の方に視点を合わせる。
そして俺の姿を上から下までまじまじと見つめると、電子音声で問いかけてきた。
「失礼ですが、そちらの方はひょっとして男性の方では?」
「はい!少し前にキヴォトスに迷い込んだらしくて、これからウチの学校の一年生になるんです。それで入学式に間に合うように急いで制服も用意したいんですけど・・・」
「なるほど!そう言う事でしたか。見たところ、用意するのはアビドスの制服でお間違いないでしょうか?」
「はい!そうなんです。」
「なるほどなるほど、となると・・・・・・入学式の前日までに制服一式をお渡しするとして、男性用の服に仕立てる手間も踏まえて・・・ふむ、今日から作るとなるとかなりタイトなスケジュールになりそうですね。」
なんだかとんとん拍子に話が進んでいるかと思えば、そう言って少し考え込むような仕草をした後汗を流す困り顔のフェイスパターンになったアンドロイド店員がそう言い、それに対して先輩が不安そうな顔をする。
「え゛!?だ、ダメなんですか!?」
「いえいえ、今の段階であれば全く無理ということはありませんよ、はい。一つ確認なのですが、確かアビドスの入学式は来月の7日と伺っているのですが、こちら御間違いありませんか?」
「あ、はい。その日で間違いないです。」
「であれば、今日からさっそく取り掛かればギリギリにはなりますが、恐らく間に合う事でしょう。」
「ほんとですか!?」
「はい。如何でしょうか?」
「泰寛君!それでいいよね!?」
「・・・急ぎになる分通常よりは割高になります?」
「ええ、そうですね。流石に期日が近い状態での依頼ですのでその分はこちらとしても相応の費用を頂かないと・・・」
「どのくらいかかりそうですか?場合によってはもうちょっと工面してくる必要があるんで予め聞いておきたいんですけど。」
「フム、そうですねぇ~凡その見積もりとしては・・・」
そう言って懐から携帯を取り出し、少しの間画面を操作するアンドロイド店員。
「・・・はい、そうですね。制服の材質などにも拘るともう少しかかりますが、最短で一番お安い値段となると大体このくらいかと。」
「どれどれ・・・・・・なるほど。」
提示された値段は、通常の制服の約3倍くらいの値段だった。
「これは一式そろえてこのお値段ということで?」
「はい。その通りです。」
「え!?こ、これは流石にちょっと・・・」
「分かりました、じゃあとりあえずこの線でお願いします。」
「ちょ!?泰寛君!?」
提示された値段に納得いかなそうな先輩を遮る形になって申し訳ないが、この後の予定もまだまだあるため時間が惜しい。もう少し高めの額なら考えるが、この程度の額ならば、まだまだ賞金首を一人捕まえるだけでおつりが余裕で出る程度でしかない。先輩の話によると販売実績もちゃんとあるところみたいだし、このくらいならここは即決で買いだ。
「よ、よろしいのですか?」
「はい。ちゃんと期限内に制服を卸して頂けるのであればそれで構いません。」
自分で言っておいて即決されたことに驚いているのか、フェイスパターンが変わったアンドロイド店員に俺はそう言い切る。
そうすると、数瞬して気を取り直した店員は話を続けることにしたようで、身を半歩引いて奥のデスクカウンターを指し示す。
「かしこまりました。それではさっそく手隙の従業員に準備をさせますので、その間にこちらで必要書類に記載をお願いいたします。」
顔が笑顔の差分になった従業員に誘導されて、俺はデスクカウンターの前に移動し座る。
「本当に大丈夫?その・・・もし厳しかったら、私も出してあげるからね!」
「ありがとうございます先輩。でも俺の懐は大丈夫なんで、それは本当にいざという時の為に取っておいてください。」
先輩とそんな雑談をしながら必要書類に一通り書き込みをした後、別の従業員に呼ばれた俺は先輩と別れて別室で身体の採寸を測ることになった。
「お待たせ致しました、それではこれから体の各部分の採寸を測ってまいります。まずは身長から見ていきますので、そちらの身長計にお立ち下さい。」
「あっはい・・・こんなもんで良いですか?」
「はい!それではそのまま測り終えるまでお待ちください!」
従業員はそう言うと、今の体になって、体格や身長は姿見で見た姿から大体の目算で把握していたが、改めて正確な数値が出ることに少しだけ期待感と緊張感を同時に覚えてしまう。
そんなことを考えていると、頭頂部に身長計のカーソルが押し当てられ、身長計に取り付けられた液晶パネルの目盛りがアラビア数字で数値を表示する。
「173.6㎝・・・はい!それでは次に座高を測りますので、隣の計測器にお座りください!」
「あ、はい。」
店員に促されて座高用らしき計測器に座る。
・・・173.6㎝か、前の世界で同じ年齢だった時と比べて大分伸びたな。確か16歳の時ダンジョンの世界に入り込む前に測った身長が170㎝だったから、それより早い段階でもう追い越してたわけか。やっぱり、良い食事と運動と、ちゃんとした睡眠のバランスが良いからだろうか。
「それにしてもお客様、その年頃でとても立派な体格をしていますね。見たところキヴォトス出身の方というわけではなさそうですが、何か特別なトレーニングでもされているのですか?」
「え?あー、はい。どこもかしこも何時流れ弾が来るかわからないんで咄嗟に対処できるように頑張りました。まあ、内容は特別と言えば特別ですかね・・・」
一日たりとも欠かさず、毎日波紋呼吸矯正マスクを着けたまま足腰立たなくなるまで走り込んだり、練り上げた波紋を指先に集中して校舎の壁にくっついて登ったり、咄嗟の受け身や態勢の立て直し、鉄球の回転・投球トレーニングなど限界まで体を酷使した後パール・ジャム入りの料理で超回復するサイクルを繰り返し続けたおかげで、この2か月弱で今や体はほぼ仕上がり(流石に羽の模様はないが)橋本陽馬並みの鍛え抜かれた体となっている。さらに最近はそれらに加えて本格的に戦闘訓練もするようになり、毎日【ホテルの外】のダンジョンで瓶詰にして保存してた承太郎と一騎打ちで戦ったり、何も持たない状態から【ホテルの外】に入って攻略するなどして、戦いの勘自体も着実に戻ってきていた。
・・・もとより命懸けのこの環境に適応するためという必死の目的が理由ではあるが、ここまで短期間で自身の成長を実感できるっていうのはそれとは別にいいもんだ。
「なるほど、それは大変切実な問題ですね。我々のようなキヴォトス出身のものにとっては大抵の銃火器はそれなりに痛い程度で済みますが、確か外の方にとってはどこに当たっても大怪我に繋がると聞いたことがあります。」
「そうですね、おかげで外じゃ気を張ってない時間はないですよ。」
実際は外どころか、住まいにしている学校内ですら常に防御と周辺監視用のスタンドを使っているけどな・・・・・・かつては一刻も早く脱出して元の世界に帰りたいと願い続けていたあのダンジョンの空間が、今や唯一本当に休める場所になるとか予想できるか。
「・・・前から偶に言われてましたけど、キヴォトスの外ってどういうものなのかご存じですか?ネットで調べてみても、いまいち判然としない事しかわからないというか・・・」
内心で愚痴を溢すのを一旦止めて、気分を変えるようにふと前から少し疑問に思っていたことを店主さんに聞いてみる。
ユメ先輩や病院の先生・看護師の人達、あるいはその辺の店で偶々あった人などから聞く、【キヴォトスの外】という言葉。
聞いていた当初はてっきり某魔法少女のアニメのような、並行世界、あるいはまったくの別世界から漂流したり渡航してくる事例が珍しくない世界観なのかと考えたが、ネットなどを駆使して色々と調べている感じ技術力はかなり高そうだがそういう事が平然とできるレベルではないみたいで、そう言う渡航の記録は探したがなかった。じゃあ学園都市の範囲外は俺のような人間がいてその領域をキヴォトスの外と呼んでいるのかとも思ったけど、キヴォトス全体の地図と各学園の分布図を見た感じでは俺の元居た世界とほぼ変わらない地球の地形で、その中で文化圏があった箇所とほぼ変わらない位置に学園都市が点在しており、それ以外の場所に世間一般にあるキヴォトスの外のイメージに合致するような場所もなさそうだった。
なら、あるいは一方的に外から俺のような人間や物が流れ着くことが多いのかとも思えば、調べてみるとそれらしい情報もない様子。精々が、最近のどこぞの地方紙の小さな余白部分やマイナーな掲示板サイトに俺のことを言及していると思われる記事や書き込みがあったくらいで他はさっぱりである。
「いやぁ~~~、改めてそう言われますと私もあまり大したことは知らないですね・・・このキヴォトスの社会とは別の、通常の方法では行き来ができない領域がどこかにあるとか、今お話ししたように我々キヴォトスの人間と比べると体が丈夫ではない人間が生活する世界だとか・・・そういうところが存在するという話がどこからか実しやかに流れてはいるのですが、その実態に関しては私も残念ながら・・・」
「なるほど。」
案の定というかなんというか、帰ってきたイマイチな答えに「まあだろうな。」と内心で呟く。
こんな、ハッキリ言って都市伝説と同レベルの信憑性しか感じられない概念が、俺を見ただけで一般人の口から出てくるくらいには広まっているのか・・・ぬ~~~~~ん、よくわからん。
「泰寛くーん!そっちはどう~?今何してるの~?」
などと色々と考え事をしていると、部屋の外から唐突にユメ先輩が声をかけてきた。
「まだ体の採寸中ですよ。多分もうちょっとで終わります。」
今チラッと俺の身体データを書き込んでいるであろう従業員の手元の用紙を見て、項目が後2、3個だけ残っている様子が見えたためそう言って返す。
「そう?OK!終わったら声かけてね!」
「了解です。」
足音とともに先輩が離れていくのを感じながら、俺は残る項目分の測定を受けていった。
「・・・・・はい。これで測定は以上になります。商品の完成およびお引渡しは現状、アビドス高校の入学式の前日までを予定しております。なお、完成までに一度試着を行って完成度の確認をすることがありますので、その場合事前にいただいた電話番号およびメールでご連絡いたします。」
「わかりました。」
「急な注文ですけど、出来るだけかっこいい制服を作ってあげてください!」
「ええ、もちろん。引き受けたからにはお客様のご満足いただけるものをお渡しできますよう、精一杯尽力させていただきます。」
一通りの注文が終わった俺達は、そのやり取りを最後に店を出ていった。
これで何事もなければ、入学式までに制服のほうは間に合うことだろう。急な依頼だったため、やはりそれなりの値段はかかったが・・・まあ、学生の一大イベントだ。やっぱりちゃんとした格好で迎えるのがいいよな。今日までいろいろ忙しかったとはいえ、やっぱり入学式をジャージ姿で迎えるというのは、一応生徒会長である先輩の体面とか、後輩への印象とか考えるとよろしくないし。
「えへへ、どんな感じになるのかなぁ~?楽しみだね!」
「そっすね。まあその辺は出来上がってからのお楽しみってことで。」
「うん!えへへへへぇ~、どぉんなふぅ~になるのっかなぁ~♪」
ザリザリと砂まみれの道中を、俺の前で楽しそうに笑いながら歩いている先輩を見つつ歩いていく。
「・・・ところでお楽しみのところ申し訳ないですけど、この後はどうします?まだ補償金を送金してないですし、その旨を伝える書類も全部は作ってないですけど。後、学校の内外もここ最近の砂嵐でまた大分荒れてきてますし・・・」
ある程度歩いて周囲の人通りがないことを確認したところで、話辛かったが仕事の話を切りだす。
すると、今までの先輩の笑顔が補償金の言葉を聞くと同時に【ピシッ】と罅割れる音が幻聴で聞こえそうなほどに一瞬固まって震え、その後に続く言葉を聞くごとに目と眉をハの字にしながら涙目になる。
「ひぃん・・・そういえばそうだった・・・折角のいい気分がぁ~・・・」
「もうお互い十分休めたでしょ。新入生を笑って迎えられるように先輩として片づけられるものは片付けないと。」
「うへぇ・・・それもそうだよねぇ・・・・・・あ!でも今日はもう流石に遅いし、また明日からってことにしない!?」
「・・・あぁ~、まあ確かにそれもそうですね。」
言われてスマホの時計を確認すれば、時刻は既に夕方の4時を迎えようとしている。
ここから帰るとなると、未だに学校が寝床になっている俺はともかく、普通に自宅がある先輩は流石に帰宅しないとまずい。
「じゃあこの後は解散ってことで、残りの作業は明日以降にしますか。俺はちょっと途中で銀行口座に今ある金を入金しに行こうと思うんですけど、先輩は学校に取りに帰るものとかないです?」
「うん!私は大丈夫!この後バイトがあるからそのまま帰れるように準備してたんだ!」
「・・・また糞ブラックなバイトじゃないことを祈っときますよ。」
「や、やだなぁ~・・・流石に早々そんなバイトに引っ掛かったりしないよ。」
「ほんとぉ?(hd並感)」
「ホントホント!心配しすぎだってば!」
「後、今日のお金のことを他所で話すのも無しですよ。唯でさえ普段から意味わからないくらいにチンピラがしょっちゅう押し寄せてくるのに、今ある金の話を聞かれてここからさらに増えられたら学校再建どころじゃなくなりますからね。」
「もう!流石に大丈夫だよ!ここに来る前にもうこれでもかってくらい聞いてるから!絶対にしないよ!」
「ほんとかなぁ?(grr並感)」
そんなこんなで、釘刺しついでの雑談をしながら俺たちは並んで歩いていき、俺は途中で彼女と別れた後、金を銀行口座に入金してそのまま学校に戻った。
「・・・・・・さて、それじゃあこっちはこっちでやっとくか。」
『ヒヒヒヒヒッ、レッツ残業タイム。』
・・・そして、時刻は19時。一通り奇麗にした教室の窓という窓に暗幕を取り付けてからライトをつけ、倉庫内で埃を被っていたホルマジオの瓶(リトル・フィートの能力が籠っていると思われる、投げつけた相手を小さくして内部に閉じ込めておけるガラス瓶。風来のシレンのやりすごしの壺的なもの)をアライブから受け取り、中からドノヴァン*1をいるだけ教室内に出す。
そして、教室に来るまでにホワイトスネイクの能力で作っておいたディスクを全員の頭に差し込む。
「では総員、今からこの書式に従って各自割り当てられた人数分の送付用書類を作成するように。」
「「「「「了解。」」」」」
ディスクに入力しておいた書類の作り方と書類作成の命令に従い、まったく同じ姿、同じ挙動の集団がそれぞれ作業に取り掛かっていく。知らない奴が見れば間違いなくパニックを起こすであろう光景を傍目に、俺もまた補償金送金の手続きを出来るだけ進めることにした。