ローグライクなスタンド使いのキヴォトス新生活記録   作:enigma

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|・ω・`)コッショリ
|・ω・`)ノ ヤァ
(っ´∀`)╮ =͟͟͞͞
|)彡サッ


始まる【学生生活】

===学園都市キヴォトス 某学区の病院にて===

 

 

「・・・はい、じゃあこれで検査終了。まだ細かい傷とかは完全には治りきってないけど、栄養状態や体力は概ね問題ない範囲だよ。」

「はい、ありがとうございます。」

 

俺の胸から聴診器のチェストピースを離し、イヤーチップ(耳の穴に差し込む部分)を外して首にかけ直す目の前の医師・・・二足歩行スタイルの骨格になった人間大の三毛猫としか言いようのないその人に、俺は礼をしながら衣服を整える。

 

「・・・今更こう言っては何だけど、もう少し大人しくしていってもいいんじゃないかな?日常生活に支障がない程度にはなってると思うけど、それでもまだ万全とは言いづらいわけだし・・・君みたいな【キヴォトス】の外から来た人にはここは結構危ないことも多い。お金の方も生活に余裕が出るまでは待ってあげるから、せめて怪我が治りきるまでは・・・なんだったっけ?あのアビドスの子のお世話になってゆっくりしていった方がいいよ?」

「・・・お気遣いありがとうございます。けど大丈夫ですよ、入院中色々と聞いたり調べたりしましたけど、今ぐらいの状態なら治りきっててもそうでなくても、これからの生活の難易度はあんまり変わらなそうなんで・・・それなら早い所動き出して、生活基盤の確立とか入院費用とか、あの人への借りを返したりとか、少しでも早めにしたいんです。後、せっかくあの人が色々準備してくれてるみたいですし、梃子外すような真似も今更となると・・・」

「そうかい?うーーん・・・まあ決心も固そうだしそう言う事なら仕方がないか。けど気を付けなよ、ここじゃ銃撃戦は町の環境音とか日常風景みたいなものだからね。まずは自分の身を守れるようにならないと。」

「はい、少なくとも普通に老いぼれて死ぬ以外の人生の締め方は考えて無いんで、まずは安全第一で堅実にいかせてもらいます。」

「ははは!うん、その調子だ。それじゃあ今日までの費用は纏めて出しておくから、ちょっと受付の方で待っててね。」

「はい、ありがとうございました。」

 

もう一度礼をした後、鉄球の入ったガンベルトや脱いでいた上着など数少ない荷物を纏め、先生の指示通り受付前で待機した。

それから少し時間を置き、受付で人型ロボットの事務員から今日までに掛かった医療費用の明細を受け取って内容を見るが・・・受診時にどこの保険にも加入できていなかった俺に相応しい、6桁の請求金額が見事に記載されている。

とんだマイナススタートだと苦笑いしながらとりあえず残りの手続きを終えて、お世話になった病院の外に出た。

 

「{ウィーンッ}!さっむ・・・!まだまだ外はこんな感じなんだなぁ・・・」

『ウゥーン、肌ヲ刺ス冬ノ風・・・暫クノ道行ノ暗示デスカナ?』

「嫌なことを言うんじゃねえよ・・・」

 

ガラスのドアを踏み出した先では、冬らしい冷たい風が俺の肌を撫でていく。

傷に障ったのか絆創膏を張ってる部分に引き釣るような感覚があるが、無視して頭に響く声に適当にコメントを返しつつ、寒さに少し身を震わせながら病院の敷地に設置されているベンチの一つに座り、溜息を吐いてぼんやりと眼前の光景を眺める。

敷地の外では、ここ最近すっかり見慣れてしまった人の波・・・外を練り歩くさっきの医師の様な猫型獣人や、多種多様な種類の犬型獣人、人型ロボット、頭上に天使の輪のような光輪が浮いた銃火器を引っ提げている美少女達などが各々のペースで我が道を行っていた。

 

「はぁ・・・どぉ~~~~してこうなった・・・」

 

 

 

 

唐突ですがこんにちは。自分、梶原(かじはら) 泰寛(やすひろ)と申します。

・・・さて、突拍子もない話だが【異世界転移】という言葉は御存じだろうか?

字面だけだとただ違う世界に転移した、というそれだけの意味だが、俺の生きていた時代だと現代人や様々な人物などが何らかの理由で元々存在していた世界と違う世界に転移させられ、転移した世界で様々な冒険や生活をするという創作の物語を構成する一大ジャンルとして、広く親しまれていた。

・・・なんで俺がこんな事を態々説明しているかというと、何の因果か俺自身が【異世界転移】の体験を実際にした人間だからだ。それも、一般人が生身で放り出されるには余りにウルトラハードな世界に2度もだ。

一度目の道程は過去かどこかの世界線で語った気がするから置いておくとして、まず目下の問題である、2度目の体験として迷い込んだこの【キヴォトス】という世界。

何故か末期癌塗れの老いぼれた爺の状態から15歳前後の時の肉体になって放り込まれたここは、大小数千の教育機関である【学園】とどういうわけか学園が各々保有する【自治区】が文明圏の殆どを占め、生徒会を中心とした学生が実権を握る超巨大学園都市らしい。

文明・文化の発展度合いは自治区によって様々だが概ねは西暦2000年代の先進国の都市圏レベル、凄い所だとSF映画の未来都市みたいなところもあるそうだ。また、金銭の単位はなぜか【円】で物価もそう大きな違いはなく、住民は今見えている道行く人達の様なのが基本だが、どういうわけか日本語が通じるから前提となる知識・経験の差はあるもののコミュニケーションに関する苦労はあまりない。

 

さて、ここまで聞くと高望みせず死ぬ気で溶け込む努力をすれば何とかなりそうな気がしなくもないが、そんなことならウルトラハードな世界なんて表現はしない。どういうことかと言えば・・・

 

 

「さっきからなにやってんですかユメさん。」

「ひゃう!?」

 

モノローグ中に背後をとって忍び寄ろうとしていた人にノールックで声をかけると、甲高い声で返答がきた。

首を回してベンチの後ろに体を向けると、俺の待ち人・・・ここ数週間ですっかり打ち解けた頭上に光輪を頂く制服姿の美少女が、色々と荷物を持ったまま間抜けな顔と格好で固まっている姿が視界に入る。

 

―――この人は【ユメ】さん・・・俺がこの世界に放り出されて大体一月位たった頃、諸事情あって死にかけていた俺を助けてくれた命の恩人であり、現在色々とハイレベルな問題を抱えていてある意味今の俺よりよっぽどハードモードな人生を絶賛難航中の人でもある。

 

「うへぇ~~、あっさりばれちゃったよぉ~~。ちゃんと隠れてたつもりだったんだけどなぁ~。」

「病院出る前に担当医から忠告を受けてたんで、周囲の警戒を怠らないようにしてるんですよ。」

「なるほど・・・うんうん、感心感心♪あ!これ退院祝い!後で一緒に食べようね!」

 

そう言うとユメさんは、持っていた荷物の中からそこそこ大きめの袋を一つ俺に突き出す。

このサイズ・・・それに袋から漂ってくる唾液腺を刺激するような匂いは・・・!

 

「これ、ひょっとして手作りの弁当ですか!?この大きさ・・・結構時間かかったんじゃ?」

「ううん!大体は多めに作っちゃった余り物とかだからそんなに手間はかかってないよ。どうせ作るなら一人分も二人分もそこまで手間じゃないし。」

「マジか・・・これが本物のJKの手作り弁当!ありがたやありがたや・・・」

「も、もう!恥ずかしいからやめてよぉ~~!ほら!早く行こう!」

 

元の世界ではついに一度として手にすることが出来なかった伝説の【JKの手作り弁当】・・・それも発育の暴力としか言いようがない魅力的な美少女の作ったそれに両手を合わせて心から拝んでいると、恥ずかしがったユメさんに背中を押されてその場を後にする。

 

「~~♪~~~♪」

「滅茶苦茶ご機嫌ですね、ユメさん。」

 

2階~4階くらいの高さのビルや商店などが立ち並ぶ街路を歩きつつ、先導するユメさんにそう聞くと、彼女は膝まで届きそうな緑がかった水色の長髪を靡かせながら振り返り、本当に嬉しそうな表情を向けた。

 

「うへへぇ~~♪そりゃあ勿論!今まで私一人だった学校に新しく仲間が加わってくれるんだから!これで来月からはまた新しい子も入ってくれる予定だし、そりゃあもう嬉しくってご機嫌にもなるよぉ~~、うへへへぇ~♪」

「前々から話には聞いてましたけど、今まで本当に崖っぷちだったんですね・・・」

「まぁねぇ~~~。今月も実は頑張らないと結構厳しいし・・・あ!ごめんね!こんな時に暗い話しちゃって!」

「いえ、俺から振った話なんでそこは別に・・・それに、それくらいでやる気が折れるほど柔でも無いんで。」

「そっか、それならいいんだけど・・・」

 

うへぇ(>_<)、と苦笑しながらまた前を向いて彼女は歩いていく。

本当に大丈夫なんだろうかと内心不安になり、前にこの人から聞いたこれから行くところの情報が改めて脳内を過ぎる。

 

―――これから俺が入学する学校・・・【アビドス高等学校】という目の前のこの人が生徒会長を務める学校なのだが、広大な砂漠地帯に存在していて数十年前から度々発生する砂嵐に自治区を破壊され続けているらしい。で、一番の問題としてこの学校、過去に災害被害を立て直すための資金を消費者金融から借り過ぎて莫大な借金がある。その額はなんと9億6235万円!加えて金利は年間約10%(場合により変動有り)で、月の利息分の支払いが一度でも滞れば速攻で廃校手続きを取らされた上で学校と自治区を接収されてしまうそうだ。

さらにこういう時必要なマンパワーも、俺がこの人に助けられた日の少し前くらいからこの人一人しかいないため、現状授業時間も休日も返上して馬車馬のごとく働いてなんとかするしかない有様らしい。

命の恩人の母校で俺自身のこれからにも非常に大きくかかわる問題なんだが・・・いやほんと、どうしたものか・・・

 

 

『オットット?コイツハチョイト急イダ方ガイイデスネェ・・・ケケケケケッ!』

 

唐突に頭の中に自分と同じ声が警戒を促すように響く。

それに危機感を刺激され、手のひらを額の前に翳して集中すると、俺の歩く姿を後ろから見た映像が映り、今の俺と違ってユメさんに先を急ぐよう呼び掛けていた。

そしてそこから数秒時間を置き、映像の中で銃撃音と悲鳴、怒号が聞こえ始め、手のひらに映る俺はユメさんの手を引いて急いでその場から離れていく。

その映像を視界の端に置き、目の前のユメさんに話しかける。

 

「ユメさん、これから行くのって駅の方ですよね?ちょっと急ぎませんか?」

「え?うん、良いけどなんで?」

「まあちょっと面倒を避けたいというか、これから起こるっていうか・・・」

「??」

 

要領を得ず疑問符が浮かんでそうな顔をしている彼女。そのまま、さっき手のひらに映っていた映像と同じように状況は進んでいて・・・

 

---タァーンッ ダダダダッダダッ ダンッダァーンッ

---行け行けッ!ありったけ奪ってずらかるぞ!!

---うわぁああああっ!

 

映像に映っていた通り、辺りに銃声と誰かの叫び声が響く。

 

「やばい、ほら!早く行きましょう!」

「え!?う、うん!」

 

見える範囲ではないが、恐らく建物を一つ二つ向こうに超えたあたりから聞こえていると思われる火薬の破裂音や何かの破壊音、様々な怒号と悲鳴に一層危機感が高まり、いまいち状況への反応が俺と違うユメさんの手を引いて面倒事を避けるために先を急ぐ。

 

「あ!着いたよ泰寛君!あそこで一緒に切符買って向こうの改札に行けばアビドス中央線に乗れるから!」

「あ、はい。了解です。」

 

全力で離れて鉄火場から幾分か距離を取れたあたりでどうやら駅に着いたらしく、ユメさんと一緒に電車で移動をする。

元居た世界の電車のように駅で入れ替わっていく人の波を眺めたり、道行く景色に心奪われたり、二人で仲良く談笑したり・・・目の前で自動小銃を抱えた奴がいつ暴れださないか冷や冷やしたり、唐突なテロで発生した遅延に顔を引きつらせたりしていると、段々と乗っている人たちが少なくなって景色も人通りの盛んな綺麗な街並みから至る所が砂塗れになった廃墟みたいなものに移り変わっていく。

 

そうして最終的に目的の駅に降りた俺達を持っていたのは・・・至る所が砂まみれになった構内の姿だった。

整備が碌に追い付いていないのかそこかしこにサラッサラの砂が厚く積もっていて、一歩踏み出すごとにジャリジャリと靴底で砂が擦れる音が発生する。

 

「これまた凄い光景ですね・・・」

「利用する人がどんどん減っちゃって、整備に来てくれる人もほとんどいないからね~。まだ私以外に生徒がいた頃は、ボランティアでこういうところの掃除をすることもあったんだよ?」

「追いついてたんですか、それ?」

「あはは・・・いやぁ、それが全然。」

(だろうな。)

 

それから、話をしながらユメさんの案内で駅の外に出てみれば、車窓から見えていた砂まみれで人通りがさっきまでと段違いに少ない街並みが辺りに広がっていた。

ただ、俺が知っているような砂漠地帯の気候とは違い、多少の空気の乾燥はあるがじっとしているとカラッカラに干からびそうになる、という感じでもない。日本人の俺の感覚でも人が住む分にはそれほど気になる感じではないと思う。

 

「私達の学校は向こうの方ね。もう少しで着くから頑張って!」

「はい。」

 

駅からまた、簡単に砂まみれの街の解説も交えて歩くこと30分・・・街並みと同じく砂まみれになった、今や懐かしき様式の校舎らしき建物に到着する。

 

「着いたぁ~!ここが私達の学校だよ!」

「おぉ・・・話に聞いていた通りの感じですね。」

 

砂塗れな点を除けば、よくある学校のイメージそのまんまな構造と見た目の校舎だ。昔通っていた学校とは構造は違うが、本当に懐かしい気持ちにさせられる。

・・・まあ、校舎や学校の敷地を囲う壁に所々刻まれた弾痕があまりよろしくない印象を与えてくれるが。

 

「でしょ~?校舎の玄関はあそこね!」

 

【アビドス高等学校】と書かれた表札が横に掛かっている校門をくぐり、

正面玄関を通って階段で2階から3階の踊り場まで上がると、ユメさんにそこで少し待つように言われ、一旦待機することになる。

暫くして呼びに来たユメさんと一緒に移動を再開すると、【アビドス廃校対策委員会】と書かれた張り紙がある部屋まで連れてこられた。

 

「さっ!中に入って入って!」

「失礼しまーす・・・おぉ~~~~!!」

 

入ってみると、中は砂だらけの道中とは打って変わってしっかりと清掃の行き届いた部屋があった。部屋の中央は合体させた大きな長机が占めていて、その上にさっき持ってきていたお弁当を含めたご飯やお菓子が用意されており、細やかだがいかにもな歓迎パーティーといった状況が作られている。

 

「うへへぇ~~~、改めて入学おめでとう!アビドス高等学校の生徒会長兼、アビドス廃校対策委員会会長として、改めて歓迎させてもらうね!」

「ありがとうございます!忙しいのにここまでしていただいて・・・至らない点が多くてお手数おかけすることが多々あるかもしれませんが、力になれるよう頑張ります。」

「こちらこそよろしくね!あ、でもまだ万全じゃないんだから無茶はし過ぎないようにね!・・・うへへへぇ~~~、これで私も今日から先輩かぁ~~♪」

「あ、じゃあ俺も今日からは【ユメ先輩】って呼ばないといけませんね。」

「!うへへぇ~・・・ユメ先輩、ユメ先輩かぁ~♪」

 

にへらぁ、と満面の笑みで小躍りしだしそうなほど喜んでいるユメ・・・先輩の姿に、俺もなんだか現状を忘れて嬉しくなってくる。

 

「うへぇ~~・・・あ!じゃあそろそろ食べよっか!」

「はい、いただきます!」

 

二人で席について、まずは件のお弁当を眺める。

中身はお弁当の定番で、タコさんウィンナー、卵焼き、レタスとマッシュポテトと数種の千切りカットされた野菜のサラダ、プチトマト、他にもヒジキと千切り人参のサラダ、ミニハンバーグやホウレン草、ウサギカットのリンゴ、海苔が上に乗った白米。

ありがたやありがたや。ではまずは、この綺麗に出来てる卵焼きを・・・

 

 

 

 

「出てこい!アビドスの会長!今日こそここはウチが頂くぜぇッ!!」

 

口に運ぼうとした時、ノイズとハウリングが混じった喧しい音と火薬の炸裂音が外から聞こえてきた。

 

 

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