ローグライクなスタンド使いのキヴォトス新生活記録   作:enigma

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新生活に向けた【課題】

「出てこい!アビドスの会長!今日こそここはウチが頂くぜぇッ!!」

 

「「・・・・・・・」」

 

凄い一体感を感じる。今までにない何か冷め切った一体感を。

(白け切った)風・・・なんだろう吹いてきてる確実に、着実に、俺達の方に。いい加減にしろよキヴォトス。

冗談はさておき、折角の歓迎会ムードをぶち壊す怒号と火薬の炸裂音に水を差されたせいで、室内は神妙な空気が流れ、目の前のユメさんは物凄くわかりやすく落ち込んでいた。

 

「えっと・・・どうします?ほっといて大丈夫なんですか、あれ?」

「う、ううん・・・さっきの声、多分来てるのっていつもウチを襲撃してくるヘルメット団だと思うの。ほっといたらここを占拠しようとしてくるから、早めに追い払わないと。」

 

ユメさんはそう言うと持っていた箸を置き、立てかけていた【IRON HORUS】の文字と三角形のエンブレムがある金属製の鞄を手に取り、仕掛けを作動することで鞄をシールドに変形させた。

 

「泰寛君はここで待ってて!まだ怪我も治ってないし、万が一ってこともあるからね!」

「分かりました。気を付けてくださいね。」

「うん!じゃあ行ってくる!」

 

そういうと、ユメさんは勢い良く廊下に飛び出していった。

足音は見る見るうちに遠ざかっていき・・・そう時間を置かずこの学校は、彼女と襲撃者達によって戦場となるだろう。

ただでさえ廃墟と見紛うほど寂れたこの学校が、そんな環境に置かれ続ければどうなるか・・・流れ弾などで校舎が壊され、より一層廃墟感漂う状態になること間違いなしだ。

 

「・・・やるしかねえな。」

 

 

『イヤァ、話ニハ聞イテイマシタケド、マサカコンナクソミテエナタイミングデ来ルトハ思ワナイデスヨネェ、ヒヒヒヒヒッ!』

「全くだ。」

 

隣からかけられた俺と同じ声のセリフに同意し、声の方に視線を向ける。

 

まず目に着くのは、黒地に白文字の“KEEP OUT”の帯を使って作られたようなロングコート。

次いで各所のプロテクターやコートのボタンなどになっている、恒星の爆縮を表すような外向きの白矢印・内向きの黒矢印・中心の銀色の球体で出来たエンブレム。

それらを身に着けた身長2メートルの人型は、白と黒の矢印を縦に並べて作ったような仮面から覗く4つの目を俺に向け、骸骨の様な口をカタカタと鳴らしながら肩を竦めていた。

そいつ・・・一度目の転移からの帰還後手に入れた俺自身の能力(スタンド)に指示を出す。

 

「【アライブ】、【エアロスミス】と【ホワイトアルバム】を交換だ。恩人がここでの待機をご所望だからな。」

『深層探索用?ソレトモタダノ強化値MAX?』

「MAXの方で。」

『ソウ言ウト思ッテハイコチラ。』

「後ろ手に隠してるそれがなければ本当に分かってる感が出てよかったな。」

『ソリャア仕方ガナイデショウ。貴方ガドッチニスルカ内心迷ッテルンデスカラ、ソレニ合ワセテ私ハドチラモ出シタニ過ギナイワケデ、ギヒヒヒヒヒ・・・』

「・・・そりゃそうか。」

 

軽口風の返答に納得し、差し出された一枚のCD・・・表面に懐かしい逆ガル翼型プロペラ戦闘機のおもちゃのようなデザインが浮かび上がったそれを受け取り、内心で自分の内にある4つの異物の一つに体外に出てくるよう念じる。

直後、頭の左側面からCDプレイヤーの挿入口から出てくるように受け取ったディスクと同じものが出てきて、それを無造作に抜き取ってアライブに渡しながら渡された方を自分の頭に突き刺す。

出ていったディスクと逆の流れですんなりとこのディスクも頭に入ってなくなり・・・俺は入ってきたそれを意識して、アライブが明けた部屋の窓に左腕を突き出しながらその名前を呼ぶ。

 

「【エアロスミス】ッ!!」

 

---ブゥルルルォォオオオンッ!!

 

 

直後、唸りを上げるような激しいエンジン音と共に、背中から左腕を滑走路にしてディスクに映っていたプロペラ戦闘機の【スタンド】・・・【エアロスミス】が開け放たれた窓から飛び出していった。

それを見届け、俺は右目の前に出現したプロペラで宙に浮くレーダー画面に注目する。

画面上には今いる部屋の外直ぐ近くでホバリングしている【エアロスミス】を中心に、ざっと20個前後の光で示された二酸化炭素の発生反応があり、それぞれが正面入り口のあたりで独立した動きを見せている。

ユメさんは・・・さっき通ってきた道や地形、他の反応の動きに有利を取れるような立ち回りをしてる所を考えると、正面玄関近くのこの反応の奴だな。

とりあえずそれぞれの反応を取り違えない様に注目しながら成り行きを見守っていると、外で複数人の怒鳴り声がした後に銃撃音が立て続けに鳴り響き、ユメさんと当りを付けていた反応を追い立てる様に20個前後の反応が動き回るのが見える。ユメさんに協力するような動きを見せる反応はその中に一つもない。

 

「よし、此奴ら全員敵だな。アタック開始。」

 

激しくエンジンを吹かし、先端のプロペラを回転させた【エアロスミス】がレーダーに反応のある校門前の方角に飛んでいく。

距離は20メートル、15、7と急速に縮まって・・・

 

「捉えた。」

 

1メートル以内の距離に反応の一つを捉えたと同時に攻撃を指示すると、捕らえたレーダーの反応の一つが消え、数秒して開けた窓から悲鳴と困惑するような怒鳴り声が聞こえてきた。

機銃掃射の成功を確信して、後は敵の反応がある場所にエアロスミスを寄せては攻撃、を繰り返して次々に反応を消していくと、残りの反応が10個くらいになったところで反応を表す点が急速に学校を離れていった。周辺でこのあたりにとどまっているのは、ユメさんの反応だけだ。

 

「逃げたか・・・まあいい、安全は確保できた。」

 

【エアロスミス】に帰還の指示を出し、椅子に座り直して卵焼きを一つ口に入れる。

・・・旨いな、これ。ユメさんの趣向か砂糖が少し多めの甘い味だが、一緒に入ってる塩と醤油の味が程よくマッチしている。形も綺麗で、他の具材と合わさって見た目もGOOD!遠い昔に口にすることが叶わなかった青春の形の一つに、目頭が刺激されて熱さを覚える。

生き地獄に来てしまったことを思わず忘れてしまいそうだ・・・

 

 

---・・・・・・ドタドタドタドタッ バァンッ!

 

「泰寛くぅううううんッ!?いったい何やったの!?襲撃してきたヘルメット団が!急に皆吹っ飛んじゃって・・・!!」

「あ、お疲れ様です。御先頂いてます。いやぁ、この卵焼き上手いっすね。焼き目も綺麗で見た目良いですし。」

「え?そ、そう?いやぁ~、実は昨日何度も緊張して失敗したんだけど、それは偶々上手くいって・・・って違う!」

「次はどれ食べようかなぁ・・・ユメ先輩、どれから食べたらいいとかおすすめあったりします?」

「え?う~ん・・・そうだなぁ、私的にはどれも頑張ったけど、ポテトサラダがいい出来だったかな?」

「なるほど、では・・・うん、旨い。」

 

マッシュポテトに短冊切りのハム、輪切りのキュウリ、薄切りの玉ねぎと銀杏切りの人参と.コンキリエ(貝の形をしたショートパスタ)を混ぜたスタンダードなポテトサラダで、基本をちゃんと抑えた定番の安定した味わいが口の中に広がる。

 

「これも旨いですね。いやぁ、この分だと他のメニューも期待せざるを得ませんよ。」

「そ、そう?いやぁ、そんなに言われちゃうとなんだか照れちゃうなぁ~♪」

 

お弁当の出来を心から褒めていると、照れているのか恥ずかしがって両手で頬を押さえてくねくねと動くユメ先輩を尻目に、俺は注がれていた麦茶を一口飲んで口の中をリセットしてからミニハンバーグを口にする。

豚肉の肉汁と繋ぎの玉ねぎの甘み、黒コショウの程良い風味と辛みが俺の食欲をさらに増進させ、白米を掻き込む手が止まらない!

うおォン!俺はまるで人間火力発電所だッ!

 

「・・・って!そうじゃ!無くて!さっきのヘルメット団の事だよ!」

「ング、ング・・・どうしたんです?俺はずっと言われたとおりここで待機してましたし、俺が危険にさらされるようなことはしてなかったと思いますけど。」

「いや、その、うん・・・え?そうなの?実はこっそり抜けてきてたとか・・・」

「いや、ここにいましたよ。怪我してて万全じゃないのは事実ですし、折角の先輩の心配を無碍にするのもどうかと思ったんで(スタンドは出したけど)顔を覗かせたりするようなこともしてません。」

「そ、そっか・・・あ!もしかして前に何度か見せてくれた超能力!?あれでここから援護してくれてたとか・・・」

「まあそんなところです。」

 

能力に対する指摘にそう軽く返す。普段なら誤魔化すなり隠すなりところだが、この人には不覚にも初対面の時に既に能力の片鱗を俺が使っていると分かる状況で見られてるからな。勿論詳細に語るようなことは決してないけど。

 

「なるほど~、そっかぁ~・・・ねえねえ!病院じゃあんまり聞けなかったけど、実は他にもいろいろと出来たりするの!?どんなことできるの!?」

「それよりほら、折角の温かいご飯が冷えたら勿体無いですし、早く食べましょうよ。」

「ねえねえってばぁ~!どんなことできるの~?」

「まあまあまあまあ・・・」

 

今日ほど遠隔から使って見せたことがなかったせいで改めて色々と興味を持たれてしまったが、その後は気を取り直したユメ先輩が席に着き、能力への言及を全力で誤魔化しながら俺がキヴォトスに来る前の世界の事とか、ユメ先輩の先輩方がいた頃の話とか、アビドスを復興してどんなふうに盛り上げていきたいとか、そんな話にスライドして盛り上がりながら楽しく過ごしていった。

 

 

 

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気づけば時間はあっという間に過ぎ去り、時刻が5時目前になった頃ユメ先輩のバイト時間が近づいてきたということで今日はお開きになった。今は駅で彼女の見送りをしにいっている。

 

「それじゃあユメ先輩、御疲れ様です。今日は本当にありがとうございました。」

「ううん!私の方こそ、今日はありがとう!明日からまた色々大変だとは思うけど、お互い頑張っていこうね!」

「はい、改めてよろしくお願いします。」

 

電車が来て手を振りながら改札口の向こうへ消えていった彼女を見送り・・・俺はその場から立ち去ってアビドス高校校舎へ戻る。

なんで学校かって?ユメ先輩があれこれと頑張ってくれていたらしいが、残念ながら基本暇がないあの人に現状できたのは入学手続きまでで、俺は現在家無しなんだよね。

ただ、こんな冬の気候の中で路上や廃墟で寝泊りは命に係わるわけで、住居が決まるまでの暫くはユメ先輩の提案でここの宿直室を間借りして過ごすことになった。本当は別に問題なかったりするわけだが・・・まあ恩があるとはいえ流石に手の内をホイホイ晒すのは色々まずいので、下手な事は言わずに好意に甘んじている形である。

 

「・・・何度見てもひでぇ有り様だな。」

 

閉じられた正門を飛び越え、辺りを懐中電灯で照らすと、日中新たについた弾痕の数々に改めてこの世界の物騒さを実感させられる。

因みに日中倒した連中についてだが、パーティー中に目覚めていたのか先輩の見送りの時には既にいなくなっていた。

装備中のディスクの一つの能力で自分の周囲にだけ気を配っていた俺は、その時になって気づいて先輩に逃げた連中の事を聞いたが、基本負けた奴はある程度時間を置いてからじゃないとまた来るようなことはないし、連邦生徒会に引き渡す時間や余力さえ無い時は基本放置しているからあまり気にしなくてもいいと返された。まあ今現在俺が入って漸く二人になったからな、この学校の人手。見張りに使う労力も時間もないからこうするしかないんだろう、とその時は納得した。

とりあえず何とも言えない気分になりつつも、校舎に入って仮宿として勧められていた宿直室に入る。

寝る時は一応ここのベッドとエアコンを使っていいとは言われていたが・・・清潔さが大事な医療用ベッドを汚すのも忍びないから、基本的には自分の部屋で寝させてもらおう。

 

「アライブ。」

『ハイハイドウモ。』

 

応答して隣に現れたアライブが左手に持っていたものを差し出す。それは金色で中心に赤い半球状の石が嵌まった六角形の持ち手がある鍵で、本来反射して俺の顔や部屋の天井が映り込むはずのそれには、見える範囲だと洋風の床板が貼られた床や、一組のスリッパが傍にある少し土埃が付いた一メートル四方のプラ板、ソファー・ベッド・冷蔵庫等ビジネスホテルによくある一通りの家具、それ以外の床面積の殆どを占める膨大な量のファイルが収納された本棚、ミイラの腕や壺や誰かの死体にCDケースなど知らないものが見れば奇妙にしか思えない物品が並べられた物置台、などといったものの一部が映り込んでいる。

その赤い石の部分に触れると浮遊感と共に、周囲の景色が保健室から瞬時に赤石に映り込んでいた場所へと一変し、俺は土埃が付着したプラ板の上に降り立つ。

周りを見渡せば、赤い石に映って見えていた面積よりも何倍も広いスペースとその殆どを埋め尽くす本棚や物置台、他にも壁に存在する押し入れや他の部屋への入り口などが幾つか存在している。もはや第二の我が家と言っても過言じゃないほど利用している不思議なダンジョンの倉庫の空気のお陰で、今日あった襲撃や流れ弾の様な脅威への警戒で入っていた肩の力が漸く抜けた気がする。

 

「ふう・・・改めてヤバすぎだろ、キヴォトス。今日だけでどんだけ犯罪が起こってんだよ。」

 

靴をスリッパに履き替え、ソファーの一つに腰を下ろし、今日起きたことを振り返って愚痴が不意に零れる。

・・・入院中暇だったから調べたが、この世界、保育園児すら玩具に本物の銃火器を持ち歩いているくらいの【超銃器社会】で、些細な諍い一つですら鉛玉や爆弾が飛び交うらしい。おまけに住民の殆どが手榴弾の直撃すら軽傷と気絶程度で済む驚異の耐久度を持っているため余程のことにならないと死人はまず出ないことや、倫理教育などの社会性を育む教育体制が未熟なこと、社会保障制度の未熟・不足などの要素からホームレスレベルの貧困層が大人・子供問わず表で普通に散見される状態等々・・・数え上げるともっとあるが、とにかくあらゆる要因から犯罪がいつどこで起こっても当然な環境がこのキヴォトスの平常運転だそうだ。【学園都市】というより【犯罪都市】だろここ。ゴッサムシティやロアナプラと同レベルだよ。

 

・・・とはいえ文句ばかりでは何も始まらず、まずは身を守れるよう最善を尽くさなければならない。

とりあえずこうして入学が出来たことで、学籍という前の世界での国籍にも等しい社会的な証明を得られた。(学籍のない未成年は無国籍の人間と同等の扱いらしいからな)

これで何とか銀行の口座開設や携帯電話の契約、単独での医療機関の受診、一般的な行政手続きといった最低限必要な社会的サービスをちゃんと受けられるようになり、真面な日雇いバイトにも行く選択肢もできた・・・真面な仕事だけだと学校の借金との兼ね合いで確実に詰むから、バイトの申し込みと並行して何かしらハイリスク・ハイリターンな仕事にも手を出さんといかんけどな。まあこんだけ治安が悪ければ、法治国家の日本でもあった対犯罪者の特別報奨金制度とか、ファンタジー物でよくある懸賞金的なものくらいあるだろ。

衣食住は、【衣】と【住】はこの環境があれば気にする必要はないし、【食】も入院中にこっそり能力を駆使して今月いっぱいを乗り切る程度には資金の持ち合わせがあるからOK。

他には・・・やっぱ錆び落としだな。ここ一月半なんだかんだあってそれなりに修羅場は潜ったが、そもそもこの世界に来るまでの約60年間、年のせいで戦えなくなってから全盛期より戦闘能力も勘もすっかり衰えていた。まずは基礎トレーニングと【パール・ジャム】入りの飯での肉体作り、瓶詰めしている連中での戦闘トレーニングをしてから、ダンジョンでの修行で一刻も早く全盛期に近づかないと・・・

探索・・・素振りミス・・・ロードローラー・・・うっ頭が・・・

 

---グゥ~~~~~

 

「・・・いろいろ考えすぎて腹が減ってきたな。そろそろ残りの怪我も治しときたいし、さっさと飯にするか。」

 

今日の為に作っておいた特製の長ネギと生姜たっぷりつみれ鍋が俺を待っている・・・!

某漫画を入院中に読んで食べたくなったんだよね!ヤッフゥ~~~!!

 

 

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