ローグライクなスタンド使いのキヴォトス新生活記録 作:enigma
追記:第三話なのですが、最後の方でウェザー・リポートで何やったのか読み返して分かりにくいと思ったので、もうちょっとわかりやすいようにちょっとだけ書き直しました。大筋は変わっていないので、最初の投稿の内容で強盗が銃を撃てなくなった理由を察している方はあんまり気にしなくても大丈夫な程度の変更です。
「よし、これで今日も絶好調!!」
ユメ先輩から逃げた後、空いてた部屋の一つで食事を済ませた俺は、全身に力が漲る様な快適な気持ちで廊下を歩いていた。
運動のし過ぎでパンプアップしていた全身の筋肉はさらに強靭に発達し、足取りは羽のように軽い。
これも、鶏ささみ・各種野菜・ひよこ豆のサラダ(オリーブとバジルと各種ハーブ・スパイスのドレッシング付き)と、香草たっぷりビーフシチューの栄養が思ってた通りの効果を発揮してくれたおかげだ。
・・・さて、とりあえずこのまま対策室の方に顔を出すか。
逃げた後に先輩らしき電話番号から鬼電がきまくってたし、このまま顔出しせずにバイト探しっていうのもよろしくない。それに、何かあの人の方でも予定を立ててたりする可能性もあるし。
「{コンコンッ}ユメ先輩、いらっしゃいますかー?」
校内を移動して【アビドス廃校対策委員会】の張り紙が付いた扉の前に立ち、扉をノックしながら呼び掛ける。
「あ!泰寛君?入ってきていいよー!」
「失礼しまーす。」
中から聞こえてきたユメ先輩の声に返事をしながら、扉を開けて中に入る。
部屋の中は昨日の歓迎会の時とは打って変わり、様々な資料や書類が机の上に横に縦にと並べられていて、丁度それらの書類の山相手に奮闘していたであろう、ペンと書類の束を持つユメ先輩の姿があった。
既に仕事モードに切り替わっているのか、もうこっちを問い詰めようとか、そんな雰囲気ではなさそうだ。
「お疲れ様です。来て早々なんか大変そうですね。」
「まぁねぇ~~~。ほら、私ってばこう見えてここの生徒会長だから、借金だけじゃなくて自治区内の問題解決も仕事の内っていうか・・・ほら、これは自治区内から寄せられてくる陳情のまとめでしょう?こういう問題が起こってたらそれに駆け付けたり解決のためのプランを考えたり・・・後空いてる時間でパトロールとか人を集めるためのアイデア考えてやってみたりとか、他にも借金返済の為に出来そうなことや使えそうなものを色々探したりもするし・・・後、昔のアビドスの書類でまだ表に出てないけど必要なモノとか探し出したりも・・・」
「・・・マジで大変じゃないですか。」
『聞イテルダケデ目ガ回リソウナ数デスネェ・・・』
どうやら今朝のやり取りはいったん頭の片隅に追いやられているのか、指を曲げて仕事の数を数えながら表情がどんどん萎びていくユメ先輩の姿と話の内容に思わずそんな言葉が漏れる。
「そうなんだよぉ~~~~~!私ってば本当は頭悪い方なのに、こうしていろんな問題がどんどん積み重なっちゃってさぁ、もうまいっちゃうよぉ~~!!」
思わず顔を引きつらせていると、それにユメ先輩が目と眉毛をハの字型にしながらそんな返答をする。
予想はしていたが、やはり仮にも自治をしているだけあって手を付けないといけないのは借金問題だけじゃなかった。
そして先輩が今並べた問題だけでも、通常の学校なら教職員とか事務員も含めて何人かに役割を分けて各々やったり、時に協力して解決したりとやっていくものだが、この人はそれを今まで(どのくらいの期間かは知らないが)たった一人でこなしていたというわけだ。口ではこういうが案外能力はある方なのでは?少なくとも俺なら一月と経たず胃がもげそうになる負担だろう。
「なるほど・・・因みに俺の方で今から何か手伝えそうな案件とかあります?」
「・・・え!?いいの!?暫くは生活のための準備が色々あるって言ってたのに・・・」
「はい、流石にこの仕事量を見て放置していくわけにはいかないんで。一応携帯電話の契約と銀行口座の開設という最低限は終わってますし。」
・・・本当は仕事探しの方を優先した方がいいのだが、流石に少しは問題共有と手伝いくらいした方がいいと思う。いつかは書類仕事もある程度覚えないといけないし、先輩が仕事量の前にパンクした拍子に妙なことになっても困るし。
まあ、金の事は最悪当面の分だけなら何とかならなくもない。治安レベルが下水のドブの底に沈んでいるようなキヴォトスだからこその手っ取り早い稼ぎ方があるのは、昨日の帰宅の道中でネットを通じて確認済みだ。
「・・・{ジワッ}うううううう!!ありがとぉ~~~~やすひろくぅ~~~~んっ!!」
『“マジ”ノ涙目デスネェ。』
「恐縮です。さて、とりあえずどれか俺に振れそうな仕事はあります?」
「・・・うん!えっとね、今だったら確か・・・」
目元を潤ませたユメ先輩が書類の山を漁っていき、少しして書類の束をいくつか取り出す。
「あった!・・・実は自治区内で不良集団にカツアゲされて困ってるって人達がいて、泰寛君には被害に遭ったっていう人たちの話を聞いたり、話にある不良集団の特定をしてほしいの。」
「なるほど。」
「被害は82-65区画・・・地図だとこのあたりね。このあたりは商業区域なんだけど、最近よそからやってきた不良がこのあたり一帯を縄張りにするって言って、不意に現れてはお金とか商品を無断で持っていこうとするんだって。」
「ふむ・・・資料を拝見します。」
資料の束を受け取り、問題の地域と被害を受けた人間の情報、加害者側と思われる連中の情報に目を通していく。
大半は時間がなかったのか、メモの走り書きの様な読みにくい字面で情報量もそこまでではないようだが・・・『シャバシャバヘルメット団』か。集団名と、後大体の武装くらいは一応判明してるわけね。
「私も何度かここに行ってカツアゲに来た不良の撃退をしてるんだけど、毎度相手に上手く逃げられてなかなか解決してないんだよね・・・早く何とかしないと、折角今もアビドスに残ってくれてる人たちがこの先もっといなくなっちゃうかもしれないし・・・」
「なるほど・・・OKです。じゃあさっそく行ってきますね。」
「うん!よろしくね!もしカツアゲ犯の拠点のこととか分かったら、合流して一緒に対処するからいったん連絡してね!」
「はい、わかりました。」
ユメ先輩にそう言って、俺は対策室を去っていった。
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さて、あれからいくらか時間をかけて10時半くらいに目的の商業区域に到着した。
アビドス高校周囲の空き家だらけの寂れたところと違い、ある程度路上の砂が掃除された商店街や商業ビルが立ち並ぶ街並みが広がっている。
・・・高校通ってた頃の家の近所の商店街みたいなところだな。
地方の県庁所在地周囲の地域の、あの閉店している店の割合が若干多くて人もちらほらと疎らに通っているあの感じ。
とりあえず、資料にあった直近の被害者らしき人・・・暇を持て余してそうな八百屋の従業員(チェシャ猫)のところに近寄っていく。
「あのぉ~、すみません。」
「お?なんだい兄ちゃん。買い物かい?」
「それはまた後程。自分、アビドス高等学校に新しく入学しました梶原 泰寛といいます。今アビドス廃校対策委員会の活動で、最近この辺りでカツアゲをしているという不良集団についての調査をしています。」
「・・・お、おおおおっ!兄ちゃんアビドスの生徒かい!?あの生徒会長の娘、漸く新入生が入ってきたのか!!いやぁ!そうかそうか!そりゃあよかった!あのお嬢ちゃん、毎度いい所まではいくんだがなぁ~いかんせん一人なせいか、肝心なところで足止め食らって結局逃げられちまってたんだよ。相手もその辺分かってんのか、手を変え場所を変えいろんなところで散発的に問題を起こしやがってよぉ~~・・・けど人手が増えたんなら何とかなるってもんだ!な!?」
「恐縮です。それでは、不良集団の対処の為に改めてお話をお聞かせ願えたらと考えているのですが、今はお時間よろしいでしょうか?」
「おうよ!どんどん聞いてくれや!」
「それでは、ここ最近で起こった被害についてなんですが・・・」
自分用のメモ帳を取り出し、ここに来るまでにまとめていた質問リストを上から順番に聞いていく。
被害の場所、時間帯、相手はどの程度の人数と装備を持ってきていたのか、相手は当時どの方向からきて何をして、知っている範囲ではどこに向かっていったのか、などなど・・・
「・・・・・・なるほど、じゃあ最後に見た不良集団は北の方に向かって逃げる様に走っていったと。」
「おうよ。まあ銃撃戦中は店の中に隠れてたから、窓からちらっと覗いて見たことだけなんだがよ。」
「ふむ・・・{パタンッ}ご協力ありがとうございます。ユメ先輩は現状手を放しにくい状況にありますので、もし何かありましたらまずはこちらの電話番号にご連絡ください。もし喫緊の状況で電話が満足に出来ない場合は、ワンコール入れて頂くだけでも十分ですので。その場合は今回の問題に関することと捉えて動かせていただきます。」
「おう!頼んだぜ兄ちゃん!」
俺の連絡先を書いた大きめの付箋を渡しながら最後にやり取りを交わし、俺は八百屋を出ていった。
さて、これでまずは一件目。次は・・・八百屋の店主に聞いたガンショップがここからだと一番近いか。えっと方向は・・・
「お時間頂きありがとうございました。また何かあればそちらの番号にご連絡ください。」
「ああ、よろしく頼むよ。」
あれからまた暫く時間を置き、時刻は19時。電化製品店のブルドッグの人から話を聞き終わった俺は、別れの挨拶をして店を離れた。そして、すっかり暗くなった空の元で道の片隅を照らす街灯の下に移動してから一息つき、聞き出せた情報とユメ先輩からもらった走り書きの資料の内容を纏めていた。
まず不良集団の外見的特徴は、スカジャンやスケバンスタイルなどばらつきはあるものの、水玉模様の入ったフルフェイスのヘルメットがトレードマークとして統一されているとのこと。確認されている基本的な装備はアサルトライフル、ショットガン、手榴弾、自動式拳銃といった小火器のみ。
襲来するタイミングはまばららしく、ユメ先輩の資料では襲撃日とその日ごとの大まかな被害の分布くらいしかわからなかったが、今日聞いた被害者たちの話を合わせて考えてみると、不良集団の動きのおおよその出だしと流れらしきものが見えてきた。
襲う店こそ巧妙に分散し、一回一回の騒ぎの起こり始めも日によって違うが、商業区域全体で見ると、おおよそ北方向・・・さらに言うと、町の中心から北北東方向くらいの区域の外縁から騒ぎがスタートし、そこから被害が広がっていく。そしてユメ先輩の襲撃に対して撤退する時は様々な方向に散り散りになって去っていくが、周辺住民の連中の目撃情報を時系列順に纏めてみると騒ぎが起こり始めた北方向で足取りが途絶えていることが分かってくる。
このことからわかるのは、不良軍団がどこからやってきているのか。この商業区域から北北東方向のどこかに拠点ないし中継地点のようなものがある可能性がある。
まだまだ裏取りが不足している感じがあって断言はできないが、不良集団のおおよその来る方向と逃げていく方向はもうちょっと手広く住民の話を聞いて情報の確度を上げた方がいいだろう。
・・・さて、そろそろ遅い時間だし、一度帰らせてもらおう。とりあえず地域住民に顔は繋げたし、何かあれば俺か先輩に連絡が来るはずだ。
帰ったら何をするか・・・飯と風呂の前に鉄球を上手く回す練習をしておこうか。アライブなどの人並み以上の精密動作性のあるスタンドなら意志の力だけで行うから問題ないけど、俺自身の手でやる場合はブランクと身体が戻ってしまってしまった影響なのかまだうまく回すのが難しいんだよね。
とりあえず両手それぞれでどの向きにも自在に回して投げられるようにならねば。
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さて、今日もまた朝がやってきた。
本日も元気に臨界行。この二日間のトレーニングと超回復で大分体力も付いてきたと思うため、今日から一つオプションを付けてトレーニングに励むことにする。
それは・・・テレレレテッテテ~~(だみ声)
波紋法呼吸矯正マスク~~~
昔【ボヘミアン・ラプソディ】*1で第二部に出てくるマスクを実体化し、構造を解析して複製したこれを付けながらトレーニングをすることにより、波紋法の練度と体力を同時に向上させていく。
さあ!レッツトレーニング!メニューはとりあえず昨日と同じで!
―――タッタッタッタッタッ・・・
「スゥ―――――・・・コォ――――――・・・スゥ―――――・・・コォ―――――・・・スゥ――っぐがっ!?しまった、また・・・!」
案の定というか、体力的には余裕が出来ても呼吸のリズムが少しでも乱れればマスクの作用でちょくちょく呼吸に支障をきたし、そのたびにペースと呼吸を整え直しては運動再開、乱れればまた整え直して再開・・・といった一種のサイクルに陥っていた。
そんな状態で、8時半までいつものように4時間ちょっとぶっ通しでランニングと各種運動をつづけた後には、結局昨日・一昨日と同じくまたしても満身創痍の状態となる始末。
やっぱり、全盛期の状態に到達するにもまだまだ時間がかかりそうだなこりゃ。
「おはよー!今日も頑張ってるー?」
「ズゥ―――――、ヒュゴォ――――――・・・おはようございます、ズゥ―――――、ヒュゴォ―――――・・・」
「ひぃん!?何事!?」
結局ユメ先輩が登校する頃にはまた校門前で満身創痍の姿で鉢合わせ、さらに謎のマスクを着けている姿と呼吸音にビビって先輩が腰を抜かす姿が見られた。
「泰寛君、ひょっとしたらなんだけど、私の事おどかす為にやってないよね?」
飯とシャワーでのリフレッシュが終わり、対策室に立ち寄ったところ突然ユメ先輩に問い詰められていた。
「そんなわけないじゃないですか。今のところそんなことしてるほど暇じゃないですよ。」
「だって、今回で3回目だよ?バテバテの状態で校門に入った瞬間にばったり鉢合わせるの。おまけに今日は折角身構えてたのに、変なマスク姿と息の音が加わってて結局ビックリしちゃったし・・・もうこれは、狙ってたとしか思えないよね!」
『マア偶然ニシチャア出来過ギタ話デハアリマスネェ・・・ヒヒヒヒヒッ!全ク誤解デスガ。』
「・・・そう言われると否定しにくいですけど、とにかくマジでワザとじゃないんですって。」
ズビシィッ!と効果音でも付きそうな勢いで人差し指を向けながらそういうユメ先輩に、後頭部をかきながらそう否定しておく。
「うう・・・流石に私も学んで、同じパターンが来ても先輩らしく堂々と挨拶しようと思ったのに・・・」
「なんかすみません・・・というか、疲弊した状態の俺ってそんなに驚かれる程の状態なんですか?」
「えっと・・・いやぁ~~~、その・・・えっと、ねぇ~~~・・・」
・・・どうやら自分で思っているより相当見苦しい姿だったらしい。ちょっとショック・・・
「あ、そうそう先輩。ちょっと昨日調べたことで聞きたかったことがあったんですけどいいです?」
話題を変えるため、昨日調べてみて気になったことを先輩に聞いてみることにする。
「えっと・・・昨日って言うと、お願いしてたこと?いいよ!私にわかることなら何でも聞いて!」
「ありがとうございます。実は昨日の聞き込みで聞いた範囲なんですけど、情報を纏めてみると商業区域に襲撃を駆けてくるヘルメット団が大体北北東の外縁辺りから騒ぎを起こし始めて、逃げる方向もそっちに偏っているように思えて・・・その方向の先に、何か拠点か中継地点に使えそうな場所とかがないか知りませんか?」
「う~~~ん、どうだったかな?ちょっと待って、あのあたりの地図を出してみるから。」
ユメ先輩はそう言うと、書類が大量に積まれた机の上や壁際に置かれた本棚などを探し始める。
途中、雪崩れてきそうな書類の山を支えて補助したりしながら捜査に協力していると、目的のものが出て来たのか「あった!」と言いながら一冊の本を取り出し、地図が書かれたページの中から該当する箇所を探していく。
「えぇ~~~~と・・・あった!ここが商業地区で・・・」
―――トゥルルルルルルルッ
「あ、すみません。電話出ま{プツッ}・・・切れちまった。」
唐突になりだした自分の電話にすぐ出ようとするも、取り出す前にワンコールで切られてしまった。
突然のワン切りを不可解に思うが、とりあえずズボンのポケットから電話を取り出して相手を確認する。
・・・身に覚えのない番号だが・・・そういえば、緊急時はワンコールでもういいから連絡くれって事情を聴いた人たちに言っておいたな。もしかしてそれか?
「・・・ユメ先輩、ちょっと商業区域の方に行ってきていいです?もしかしたら緊急の要件かもしれないんで。」
「え?緊急・・・」
---トゥルルルルルルルッ・・・トゥルルルルルルルッ・・・
「あ、ちょっと待って・・・はい!こちらアビドス廃校・・・え?なんです?え・・・はい・・・はい!!分かりました!すぐに向かいますので落ち着いて避難していてください!はい!失礼します!」
「商業区域ですか?」
「うん!そうだよ!今すぐ行くから準備して!」
「俺はいつだって準備万端ですよ。」
「オッケー!それじゃあ行こっか!」
何やら一波乱起きてそうな商業区域に、俺とユメ先輩は急いで向かった。
「・・・ところでそのマスク付けたまま行くの?」
「・・・援護は任せてくださいね!」
「答えになってなくない!?」