ローグライクなスタンド使いのキヴォトス新生活記録   作:enigma

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気が付けばまた一か月・・・社会人やってると、本当に時間が早く経っていきますわ・・・

【追記】:荒魂マサカド様、今話を含め、いつも誤字報告いただき誠にありがとうございます!


【初めての返済】と【生徒会の一幕】

===2月25日 アビドス高等学校校門前===

 

さて・・・あれから書類業務とか住民への補填とか戦利品の下取りとか、他にも公私ともにいろいろやっている内に、とうとう運命の日がやってきてしまった。

そう、このアビドス高校の定例イベント・・・即ち、利息の返済日だ。

 

「お待たせいたしました。今月のご返済分、変動金利等を諸々適用し、利息は801万6055円ですね。」

「こ、こちらになります・・・!」

「・・・なんて顔してるんですかユメ先輩。早く銀行員の人に渡してくださいよ。」

「だ、だってぇ~・・・」

 

まるで我が子を無理やり引きはがされていく親の様な泣き顔と、口惜しさたっぷりの緩慢な動きで両手に持ったお金の袋を出したり引っ込めたりする先輩。

まあ金額が金額だけに気持ちは分かるが、それを出さないとアビドス(ウチ)が潰れちゃうから早くしてほしい。

 

「あ、あの?こちらもあまり時間をかけていられるわけではないので、早くしていただきたいのですが・・・」

「あ、はいすみません。ほら先輩、いい加減にして早く渡してください。」

「うぅ・・・ふぐぅ~・・・!!うっ・・・うぅ・・・こ、これで、おねがいしま、す・・・!!」

「はい、では確認させていただきます。」

 

渋々と・・・本当に渋々とユメ先輩がお金の袋を差し出し、受け取ったアンドロイドの銀行員は現金輸送車まで行ってお金を取り出し、目の前で数えていく。

俺はその様子を横について確認する。

 

「お金・・・私達の一か月間の頑張り・・・」

「このやり取りもしかして毎回やってます?」

「・・・・・・」

『ヒヒヒヒヒヒッ!マジカヨコノ人!』

 

涙目を明後日の方向に向けてスッ・・・と顔を背けるユメ先輩の姿に、顔が引きつる俺と引き笑いしているアライブ。

そんなこんなとしていると、視界の端で銀行員のお金のカウントが終わりそうになっているため、そっちに目線を戻す。

 

「・・・はい、確認完了です。今月分の利息、801万6055円を確かに受領いたしました。こちらお取引の明細書になりますので、大事に保管なさってください。」

「はい、確認します・・・」

 

ユメ先輩が受け取ったそれを、俺も横から確認する。

明細に特に不審な所もないな。相変わらず金利の割合は暴利だが。

因みにこれは別に前の世界の価値観で語ってるのではなく、最近勉強して知ったこととして、業績不振という点を加味してもキヴォトスの法令で定められてる金利よりカイザーの金利は圧倒的に高いのだ。所感としてはサラ金以上闇金未満くらいの感じの、本当に法のギリギリを詰めたような割合である。逆に言うと、借金した当時はそんな状態で金を借りる宛しかなかったとも言うのだろうが・・・

 

「それでは、これにて失礼させていただきます。改めまして、カイザーローンとお取引いただき毎度ありがとうございます。来月もまたこの調子で、よろしくお願いいたします。」

「はひ・・・」

「どうも。」

 

頭部の液晶モニターに映った表情の表示を笑顔にしてそう言った銀行員は、背を向けるとそのまま集金車に乗り、砂煙を発たせながら砂漠に埋もれた路上の上を走っていってしまった。

それを見届けた俺は呼吸矯正マスクを着け直し、ユメ先輩の方へと向き直る。

 

「・・・何はともあれ、これであと一か月は持ちますね。」

「うん、後は普段の雑務をこなしながら住民の人達への補填と次の返済に向けたお仕事、後は・・・入学式の準備だね!!」

 

途中まで悲壮感を漂わせていたユメ先輩だったが、最後の入学式の部分で一気に笑顔になる。

 

「滅茶苦茶嬉しそうですね。」

「もっちろんだよ!入学予定の子がどんどん電話越しに入学を取消しちゃって、最後の一人からも取消のお願いが来るんじゃないかってこの2か月間ずっと冷や冷やしてたのに・・・最後の子、昨日入学に必要なことで問い合わせの電話をくれたんだよ!?これでちゃんと入学式が出来るって思ったら、もう居ても立っても居られないよ!」

 

両腕をぶんぶん振りながら可愛くそう言うユメ先輩。その姿に、マスクで隠れた口角が思わず上がってくるのを感じる。

 

「なら、その新入生を笑って迎えられるように頑張って準備しないといけませんね。差し当たってまずは今月の利息の調達と・・・住民の補償の算定ですか?お願いですから確認はちゃんとさせてくださいね?」

「う゛?!あ、あははぁ~~・・・」

 

後半ちょっと間を開け、半目で睨みながらそういう俺から目線を反らすユメ先輩。その姿を見ながら、ヘルメット団撃破からの今日までの十数日間を振り返る。

 

ある程度予想出来ていた事ではあったが、思っていたより被害補償の件はかなり難航していた。

事務処理の進行とかは未だ慣れるのに時間がかかってる俺の方が足を引っ張っているが、その代わりと言って良いのか、ユメ先輩と住民の間のやり取りに問題があった。

まずこの人、今回の被害調査の中で、発生した被害分を纏め上げてアビドス名義で補填することを馬鹿正直に広めてしまったのだ。

元々は住民から「こんなこと聞いてどうするのか?」と聞かれた折に日常会話のノリで話したことに端を発するらしいのだが、聞き込みをしていた時の住民の辛そうな様子とその後に話した補填の予定のことを聞いて嬉しそうにした住民の反応に気を良くしたことのダブルパンチで、とりあえず今回の事で出来ることがないか調査中とでも暈かした言い方にすりゃいいのに頑張って必ず補填するとはっきり明言してしまったんだと。さらに話はその場に留まらず、あちこちで似たようなことを聞かれては喜色満面でそれに同じく答えまくり、それを聞いた住民達が噂しまくった結果アビドスの至る所で補填の話が尾鰭付きまくりで広まってしまった。

そのことを知って本人を問い詰めるも時すでに遅く、案の定住民から上がってくる被害報告の中に明らかに桁が違う被害額の提示やその額での補填の請求を嘆願する内容がワラワラ出てくるようになったのだ。念のためにそれらの裏を取ってみれば、ほぼ全てが薄めすぎてほぼ水レベルの水増しや虚偽の被害報告、そもそも事業実態が存在しない架空の事業の被害報告だったりと・・・落ち目の学校の生徒会相手だからと、舐められているのが非常に良くわかる展開だった。

オマケにユメ先輩、嘆願書の文面や嘆願してきた人たちの様子が本当に必死そうに見えたからと、偶にその必死そうにしていたという連中の怪しい請求書類・嘆願書の類を精査する前に通してしまおうとするため、それを止める手間も相まって仕事は大分難航している。

 

「とりあえず対策室に戻りましょうか。被害補償の件は前にも言ったとおり、明らかに他と比べて金額がおかしい奴は別に避けておいてくださいね。後で俺が調査しときますので。」

「はい・・・ごめんなさい・・・」

 

しょんぼりするユメ先輩と共に、校内に戻った俺達は引き続き書類作業に戻った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

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――――――――――

 

 

 

「う゛ぁ゛あ゛あ゛~~~~~~、ちょっと休憩しない?ずっと下向きっぱなしでもう体がバッキバキだよぉ~・・・」

「あぁ~~~~・・・そっすね、そろそろお腹も減ってきましたしちょっと休みますか。」

 

声に疲労が滲み出るユメ先輩の呼びかけで一旦手を止めると、時刻は13時過ぎ。8時から作業を始め、途中銀行の集金で中断してその後再開してからの時間を纏めると、全体で4時間半以上ほとんど休みなくやり続けていることになる。

時間を意識したせいか気が抜けて空腹を感じるようになってきたし、ペンを置いて机に山のように置かれた書類を別の机に避け、空いたスペースには事前に用意した大き目の弁当を置く。

今日の昼飯は鰤大根、卵焼き、玄米、ブロッコリー、プチトマト、レタス、鶏ささみと各種野菜のサラダ、ウサギカットのリンゴ、ほうれん草と茄子の御浸し。デカ弁に入れてきたので実に食い甲斐のある量となっている。

ユメ先輩も同様に、持ってきていたコンビニのシャケ弁当と水筒を机の上に置く。

 

「はぁ~~~、もうおじさんも歳だねぇ~。色々と身体にガタが出てきていかんですよ。」

「二十歳にもなってない身の上でその発言はヤバいですよ先輩。ちゃんと休めてます?」

「勿論だよ!まだまだ道のりは長いからね、忙しくても休みだけはちゃんととる様にしてるから!」

「その割にはここ暫くいつ見ても疲れた顔してますし、体の動きがぎこちないですけどね。」

 

入学したばかりの頃まではあんまりよく見てなかったが、ここのところちゃんと見ていると朝の登校時から結構な疲労感を漂わせている姿ばかりが確認されている。

全体的な骨格のバランスの歪み、重心のブレ具合、肌荒れ、しょぼしょぼした目など、トニオさんじゃなくてもわかるくらい不健康な姿がデフォルトになっている感じだ。

 

「そ、そそそんなことにゃいよ!?ほら!この通り元気いっぱい!」

「ほんとかなぁ~?(ゴロリ並感) というか、さっきガタが出てきてるとかどうとか自分で言ってたような・・・」

「と、というか泰寛君もちゃんと休めてる!?ここのところ事務も外回りも凄く頑張ってるし、最近ようやくお仕事も見つかってもっと忙しくなったんでしょ?ご飯と人と会う時以外何時も変なマスク付けてるし、実は結構疲れとか溜まってるんじゃない!?」

「誤魔化し方強引ですよ・・・まあ、俺は全然問題ないです。マスクの付け具合はもう風邪用のマスクと大差ないくらいにはなってますし、疲れも毎日風呂にじっくり入って、寝る前の一時間のストレッチとマッサージ、ホットミルクの摂取で7~8時間ぐっすり熟睡して持ち越さないようにしてますんで。」

 

序でに、疲労回復に効果的なパール・ジャム入りの料理もな。どれだけの疲労が日中に積み重なろうと、これだけやってりゃ次の朝までには全快って寸法よ。

 

「う~~ん、すっごい健康的な感じ・・・確かに泰寛君なんだかんだ毎朝凄い運動してバテてる姿ばっかり見てるのに、一緒にお仕事する時にはもう元気ピンピンって感じなんだし・・・お昼ご飯も、毎日手作り感満載の美味しそうなのばっかりだし・・・」

「・・・よかったら少し食べてみます?」

「え!?いいの!?」

 

自分の食べてる薄っぺらいシャケがオカズのコンビニ弁当と俺の具材タップリの弁当を交互に見比べる内に、段々と物欲しそうな羨望交じりの目になってきたユメ先輩の様子にちょっと居た堪れなくなってきてそう提案すると、驚いた様子の先輩が聞き返してくる。

 

「歓迎会の時は手料理の弁当を振舞っていただいたんで、そのお返しのうちの一つということで、良ければ少しどうぞ。」

「そっかぁ~・・・うへぇ~~、やったぁ!ありがとう泰寛君!!じゃあじゃあ、これいっただっきまーす!!」

 

先輩はそう言うと、差し出した弁当箱からメインの鰤と大根をもとの量の3分の一ほど取っていき、自分の弁当箱の上に運んでから大根を一口齧る。

 

「~~~~~~~っ!おいっしぃーーーっ!!味はそんなに濃くないのに、旨味っていうのかなぁ?お醤油とお砂糖だけじゃなくて、生姜の風味とお出汁の優しい味が一緒に中までしっかり沁み込んでる感じがするッ!!こっちはどうだろ!?ハムッ・・・~~~~っ!!こっちも美味しいっ!!身がポロポロって口の中で解けて、魚の美味しさとお汁の味が凄い合ってていくらでも食べられそう!!ハムハムッ・・・ん~~~~~!!ごはんにも凄く合うよこれ!!」

 

唐突に食レポを始めたユメ先輩は、一通り言った後弁当の白米と一緒に口に運んだりして、あっという間に上げたおかずを食べ尽くす。

気が付けば弁当のトレーの上には、食い残していた鮭の切れ端と付け合わせの沢庵だけが残っていて、それを見たユメ先輩は、幸せそうな表情から一転して残念そうにした。

 

「あ、もうなくなっちゃった・・・・・・や、泰寛君?」

「もう流石にこの弁当は上げられませんよ。また色々作ってくるんでそれまではお待ちください。」

「やったぁ~~~!約束だよ!絶対だからね!よぉーしっ!やる気も出て来たし、残りもパパっと済ませちゃうぞー!」

(俺もちょっとずつ仕事をするか。アライブ。)

『リョーカイ、ケッケケケ!』

 

さっきよりは元気が出てきた様子のユメ先輩は、残った飯を口に放り込んでコップに入れたお茶を飲み干すと書類の山の用意をして仕事を再開する。

俺はそれを見て、食事をとりながらアライブと事前に装備していたキング・クリムゾン、スタープラチナの3体に仕事の書類を持たせ、命令して少しずつ書類を片付けていった。

 

 

――――――――――――――――――――――

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――――――――――

 

 

「・・・ひぃん!?いっけない!もうこんな時間!?」

 

食事の開始からまた2時間ほど経った頃、不意に時計に目を向けたユメ先輩が突然焦りの声を上げて立ち上がり、傍に置いていた愛用の携帯型折りたたみシールドとハンドガン、その他荷物を急いで抱え始める。

 

「何か予定有ったんですか?」

「うん!実は昨日お金になりそうなバイトが見つかって、今日が初出勤なんだ!いけないいけない!!初日から遅刻なんてシャレになってないよぉ~~!!」

「どんなバイトなんです?」

「運送業のバイトだよ!その日の内に運ばないといけないお荷物を急いで運ぶんだって!・・・よしっ!ごめん泰寛君!後の事とか戸締りとかよろしくね!!」

「分かりました、お気をつけて。」

「ありがとぉ~~~~・・・」

 

「ありがとう」の言葉にドップラー効果を利かせながら廊下の向こうへと消えていくユメ先輩。

それを見届け、俺も残る仕事を一通り片付けたら戸締りを始める。

 

「アライブ。」

『ヒヒヒッ、御用ノ品ハコチラデ?』

 

戸締りの最中、この後の仕事の為に声をかけたアライブが倉庫から2枚のディスクと書類の束を取り出す。

受け取ったディスクを事前に装備していたスター・プラチナとエアロスミスの2枚と入れ替え、書類の束・・・昨日調べた目ぼしい賞金首の手配書と標的の所在地の情報、その他諸々に目を通していく。

 

「・・・よし、今日はこいつ・・・と、時間があればこいつも当たるか。」

 

束の中から取り出したのは、【詐欺師 ロボ平】と書かれた手配書と、【めらめらヘルメット団】と書かれた手配書。

 

---ガチャガチャガチャッ!

 

「戸締りOK、と・・・よし、やるか。」

 

一人でそう呟きながら、一人トイレの姿見の前に佇んだ俺は・・・

 

この世から消えてなくなった。

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