テンプレのようにトラックに轢かれた男は女神に出会った。
「お詫びに私の管理する世界に転生しませんか? お望みの転生特典もあげますよ。」
要望したのは転生特典は「人を皮にする能力」。その皮を被ればその人の持つ全てを自分の物にできる。薄い本に出てくるような能力だった。
その要望が通り、男は転生した。
だが、転生して男は家族愛を知った。
ある日、興味本位から能力を使ってしまった男はただ一人の家族を殺してしまう。男は激しく後悔した。何故なら、男には邪な心があったが、無償の愛を知りどうでも良くなってしまったから。それから、男は心を入れ替え、以後数十年真面目に生きることになる。
「…さんは殺されました。」
彼女がいる幸せな暮らしを謳歌していた男は唐突に不幸を突きつけられた。彼女は自分の醜い能力を受け容れてくれた理解者だった。天涯孤独だった彼女の遺体を引き取った男は彼女が何故殺されなければならなかったのかを知るために能力を使った。
彼女だったものを被り、理解する。裏社会には異能力者は大勢いた。彼女は異能者達の抗争に巻き込まれて殺された。彼女の記憶は転生者を復讐へと駆り立てた。それが転生者への愛に満ちたものだったが故に。敵を皮にして被ってゆき、転生者は奪った姿と記憶と異能で彼女を殺した組織を内部から蝕んでいった。
「俺にもツケが回ってきたな… 逝くぜ、お前ら…」
復讐を果たした時、被った皮から転生者は知ってしまった。彼らの怒りを、憎しみを、悲しみを。
彼らの人生に物語があるなんて思いもしなかった。彼らにも、家族に幸せを願われた思い出、大切な人を失った時の慟哭、彼らにも十人十色の物語があったのだ。敵は同情の余地のない悪人で、自分は悲劇の主人公だなんて嘘は、とっくに付けなくなっていた。
だから転生者は自らの生きる世界のことを知ろうと思った。無知なまま二度目の人生を終えるなんて御免だった。
そして転生者は漸く理解したのだ。この世界は女神を楽しませるための舞台でしかなかった。自身の本来の役目は竿役なのだ。そう、この世界で起こる不幸は全て女神が望んだこと。
転生者は決意する。一度、女神の手を取った。その罪を贖うために、自分の手で理不尽を終わらせてやると。転生者は旅に出た。
「アンタにアタシの全てを託すよ。」
千里眼を持つ死に際の老婆は子供たちの未来を託して皮となった。
「そうか! 全てはクソ女神とやらの仕業か! 俺の能力を使え!」
読心の能力者は自ら皮となった。
「私も君の力になれるかな?」
アポートの能力を持った少女は転生者を凶弾から庇い散った。
贖罪の旅の終わりに待っていたのは、死を与える異能で世界を裏から支配するマフィアのボス、三文小説のような小悪党だった。
「苛立たせやがって… ああクソ、死ね。」
触れる全てに死を与える銃弾が転生者を貫いた。
「どうして生きてやがる! 死ねよ!」
執念か、死を与えられてもなお転生者は動き続ける。
全ての生物を殺す魔弾が通用しないことに小悪党は恐怖した。
「お、お前は何者だ!」
化け物を前に尻餅をつき、失禁しながら小悪党が後ずさる。
「縲?繝?繝だ。 覚えておけ。」
そして何も知らぬまま世界に不幸を撒きつづけた
そして、黒幕を倒すために「アポート」で女神のいる空間を引き寄せる。
「ここで終わりだぜ。 もう誰も不幸にはさせないよ。」
「ああ、あの時の汚い豚ですか? 改心した屑なんて面白みがないんですよ。 邪魔です。」
女神は現れた転生者に光の雨を降らせた。
聖なる光が転生者の皮を突き破り、焼却する。
貫かれた皮の内に覗く空洞が最早人間ではないことを雄弁に語っていた。
自律した異能。転生者ですらない空っぽの人形。被られた人々の
転生者が殺された時、幾層にも積み重ねられた
異能人形は「分身」の異能で幾千もの創り、突貫する。そして「発火」が、「電撃」が、「死」が女神を襲う。傷を負った女神は絶叫した。自らの玩具に反抗されるなんて、あり得ない話だ。おもちゃ屋で買ったぬいぐるみが持ち主を食い殺すなどと誰が思うのか。女神は油断も慢心もしていない。身体に纏わりつく
そして、女神はこの理解不能なナニカを排除しようと動き出す。女神は持てる力を余さず出した。だが、聖なる光も、宇宙を焼く雷霆も、人類が将来造り出す兵器でさえも、尽く通用しなかった。構成する異能が相乗効果を生み出し、その全てを無力化した。
「私はまだ死にたくないの…! ねえ、話を聞いて…!」
万策尽きた女神はみっともなく命乞いをした。
「知るか。」
そして、世界から
こういうの一回書きたかったんだよね。