歴史を修正可能になった未来において、悪人が犯罪を犯す前に止めるお仕事────始まります。

1 / 1
歴史改変して、理想の国作り

 俺は歴史修正官の襟糸(えりいと)(すぐる)だ。

 順当に進学校に通って、順当に有名大学を卒業して、順当に公務員試験を受けて、晴れて歴史修正官になった。

 

 この仕事は、過去に戻って日本をより良くする事を目的にしている。

 元の歴史は最早分からないが、今では世界の半分は日本の領土になっていて、もう半分は実質的な植民地になっている。

 絶滅した動物を保護したり、恐竜を上手く生き残らせて植民地の人間が襲われるショーをやったりしている。

 

 世界の半分を支配した理由は、主に環境保護と平和活動の為であり、当時の現地人だとどうやっても特定の動物を絶滅させてしまう&どうやっても戦争になるという状況を考えて、その地域に入ってくる最初の人間を殺し続ける事が必要だった訳だ。

 そうなると自然と領地になる。

 また、歴史改変にケチを付けて日本を滅ぼそうとする国が存在する前、若しくはまだ弱い内に最新の科学技術の粋を詰め込んだ兵器で消滅させたのも理由となる。

 国の始まり(元金)を破壊するのだから、積み上げられた未来(利子)が残るハズもない。

 

 そういった国際部門や、超古代部門は一級歴史修正官の仕事であり、俺の様な三級歴史修正官は国内の重大事件を未然に防ぐといった事しかやらない。

 

 所詮は有名大学程度。

 東大首席で入った人達とは違う。

 

 

 俺の大学では、三級が身の丈だった。

 年収は五千万円程貰えるが、過去に戻れる職務上、親族も含めて投資やギャンブルは禁止されている。

 これでは割に合わない。

 高卒の十倍しかないのなら、どうして有名大学に合格したのかわからなくなる。

 

 それでも俺は真剣に働いている。

 本当はもっと貰えても良い筈なのに。

 過去の自分や親族に競馬や株を教えることをしない代わりに五千万では、少し勿体ない。

 

 

 

 

 まあ…、それはおいておいて。

 主に凶悪犯罪者が事件を起こす前に死なせるのが仕事だ。

 未来から来た俺が人を殺しても、現行犯で捕まらない限りは過去の日本で犯人となる事もない。

 当時は未解決事件となるが、それは仕方無い。

 過去人が無能扱いされても、今の時代から見れば実際に過去人は無能なので構わない。

 

 

 

 今日は簡単そうなのを三人死なせて終わろう。

 

 昨日は三人も殺した。

 人を直接殺すのは初めてだったが、適性があったようで上手くいった。

 時間軸は令和5年3月。

 一人目は大学受験に失敗して、その大学で自爆テロを起こした、『巻毛組(まけぐみ) (むのう)』。

 爆弾は微妙なものであったが、それでも二人程亡くなっている。

 こいつは中学生時代に一人で帰っている所を、ナイフで刺して崖から突き落とした。

 でも、途中で邪魔する奴もいたから、そいつも一緒に崖から突き落とした。

 

 

 

 二人目は堂佛(どうぶつ)藍子(あいこ)

 時間軸は令和15年3月

 スーパーの前で試食として毒が入った自作料理を配っていた。

 その毒入りソーセージは、彼女の口の中に押し込んだ。

 

 三人目は八所(はっしょ)多久(たぐ)

 時間軸は令和6年1月。

 鉄道員に受からなかった事を理由に、罪もない乗客を殺してSNSに上げていた。

 コイツは夜間に耳から銛を刺してサクッと殺した。

 

 

 

 

 

 

 さて、今日は薬田(やくた)田鶴那(たずな)と、士根馬(しねば)詠汰(ええた)困難藻(こなも)出禁(でき)をそれぞれ保育園の頃に車道に投げたり、刺したり、首を絞めて殺す事としよう。

 

 

 

 

 

 

 

 はあ、サクッと終わった。

 楽勝楽勝。

 殺しやすい時期に、スパッと殺すのが一番。

 相手が二十歳になる日に素手で殺す事にポリシーを持つ先輩もいるけれど、俺はそこまで難易度を上げたくない。

 

 

 昨日の三人と比べて、今日の三人は余りにも上手く行ったので、序でに後一人殺すことにした。

 伊自良(いじら)暦矢(れきや)

 時間軸は平成16年3月。

 中学高校と虐められていた結果、卒業式で同級生五人を刺し殺し、止めようとした二名も殺してしまい、自暴自棄になって更に二人殺した。

 彼が中学生の時代に時間移動すると、丁度自殺を迷っている場面だったので、「死んだほうが良いよ。誰も生きていて欲しいとか頼んで無いでしょ?」とか言い続けたら自分から飛び降りた。

 今回は手を汚さなかったし、割りと楽に終わった。

 

 

 

 

 

 さて、本部に戻ると上司が何とも言えぬ顔をしていた。

 

「襟糸君、ある殺人鬼がいるのだが。

ソイツは本来別の殺人犯に殺されていた。

しかし、その殺人犯が殺された事で、殺人鬼が生き延びてしまったのだよ。

急ぎ処理してくれるかね?」

 

 上司にそう言われれば仕方が無い。

 折角自主的に多目に仕事をしたのに、その後に追加の仕事を振られると損した気持ちになる。

 

 政治家のパーティ会場に爆弾を仕掛けた森宛(もりあて)井治(いじ)

 本来彼を殺していた殺人犯は死んでしまい、結果井治は生き延びたということだ。

 

 

 私は森宛を殺した犯人を止めるべく、上司の指定した時間軸に跳んだ。

 時間軸は令和5年3月。

 

 何か覚えがあるなと思ったら、着いた先には巻毛組(まけぐみ)がいた。

 えっ、嘘だろ。

 俺が殺しちゃったせい…なのか?

 

 やばい。

 止めないと。

 

 そう思って駆け出すと、急に現れた男が俺を崖に投げ飛ばした。

 その男は、俺だった。

 この後の結末は知っている。

 知っているはずだったのに………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「襟糸君は、この後歴史を好き勝手にして利益を得る犯罪者になっちゃうから、ここらで処分しておく必要があったんですね」

 襟糸の上司は溜息をついて、そう独り言を呟いた。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:15文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。