プロトマーリンに褒められたい男……スパイダーマッ!!   作:妖精狩りの男……スパイダーマッ!!

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ヒロインXオルタを小説で書いたら10連で来てくれた件
かいたら出るって小説を書くのでもいけるんだね。


あの日見た剣とあの日の声

 

サーヴァントセイバー(バーサーカー)である、えっちゃんは夢を見る。

これは本来あり得ないことだ。夢とは脳内に溜まった過去の記憶や直近の記憶が結びつき、それらが睡眠時に処理され、ストーリーとなって映像化したものが夢であるからだ。

 

 

「大丈夫だったか?」

 

 

蜘蛛のヒーローが紛争地帯で銃の脅威から救った子供の頭を撫でている。その手は優しく強い手であった。

 

一瞬の暗転が起こり、場面が変わる。

 

先ほどまでの紛争地帯と同じ光景。違いがあるとすれば大人になった子供が銃を持っていたことだろう。

無惨に残酷に慈悲もなく銃から発射された鉄の弾丸は強者に立ち向かうための武器ではなく、以前の自分たちのような子供を殺す虐殺道具となっていた。

 

 

「どう…して……どうして!!君たちが!!!銃を子供に向けているんだ!!!!」

 

 

撃たれた子供を蜘蛛は抱きしめる。肌から伝わる温度は生き物としてと死を告げていた。

 

彼は学んだ。救われた弱者はいずれ強者となったとき、弱者を殺すことを。

 

 

 

また同じような暗転が起きた。次は普通の町村。金髪の少女と蜘蛛は楽しそうに会話をする。

 

 

「君は大人になったら何になりたい?」

 

「わたしはね!みんなをしあわせにしたい!!」

 

「そっか……いい願いだね」

 

 

蜘蛛の顔はマスクに隠されているが笑っていることが簡単にわかった。とても優しい笑顔だ。

 

 

暗転が起きる。金色に輝いていた小麦畑から人々が群がり怒号が飛び交う場面へと変わった。

 

 

「魔女に死を!!」

 

「今まで俺たちを騙しやがって!!」

 

 

民衆の罵倒は磔にされた聖女に送られたものだった。聖女の足元は燃えており、聖女が死ぬのはわかりきったことだった。

蜘蛛は走る。邪魔をする国の兵士や教会の人間を薙ぎ倒しながら処刑されている聖女の元へと駆け寄る。

磔になっている聖女を引き剥がし、炎という全ての生物が本能的に恐れる死から遠ざけたはずだった。

 

 

「そんな………かお………し…な………いで……ださ…い」

 

 

聖女は見えないはずの蜘蛛の顔を見えているかのように蜘蛛の頬を撫でた。指に入る力は僅かであり、誰であろうと容易くその手を弾けるだろう。

時はすでに終わっていた。聖女の死へのカウントダウンは止まらない。この世界の不条理を味合わされた。

雨が降ってきた。透明で塩辛い雨だ。

 

 

また暗転を繰り返す。

 

一度見逃した悪人が数百人を殺してしまった。蜘蛛は無我夢中でその悪人を捕らえた。

自分の甘さが人を殺したという事実に込み上がる吐き気を抑えつけ、何度も自分を殴りつける蜘蛛に民衆は感謝の言葉……ではなく罵倒を送った。

 

 

「あんたが一度見逃したからだろうが!!」

 

「あの時殺していれば私の息子は死ななかった!!」

 

「なんで今更現れて捕まえたんだよ!!前回許さなければ俺の母親と父親は死ぬことはなかった!!!」

 

 

彼らは蜘蛛に報酬を払ったわけでも雇っているわけでもない。蜘蛛が守ったはずの一般人だ。人とは本当に醜い。守られた幸せの意味を理解せずにヒーローを批判するのだから。

 

 

暗転する。

 

全ての人を助けると言っている青年がいた。

 

 

「君は……どうして戦う?」

 

「スパイダーマン……俺は正義の味方になりたいんだ」

 

「正義の味方か……正義の反対が別の正義だとしたら君はどうするんだ?」

 

「その時はなんとかして解決するさ。どちらも正義であり争っているのなら解決方法はきっとある」

 

「そうか……眩しいな、君は」

 

 

 

暗転する。絞首台の上には先ほどの青年が立っていた。

 

 

「衛宮!!衛宮!!!どうしてお前が!!!!!」

 

「後は頼んだ……ヒーロー」

 

 

正義の味方は助けたはずの民衆に首を吊られて殺された。その姿は笑顔で誰一人恨んでいない正義の味方であった。

 

 

 

何度も何度も何度も繰り返して似たような光景ばかりだ。

蜘蛛は無くした光を求めるように傷だらけの腕を伸ばす。しかし掴みたいものは霧のように不定形でいつも掴めていない。

流した涙はすでに枯れ果てた。歩くための足は壊れた。前へ進むための勇気は消えた。

それでも彼は終わりのない旅路を続けていた。一つの花を探して。

その姿は地獄を歩く惨めな子供。他人と関わるのが怖いくせに他人と関わらずにはいられない寂しがりや。人の醜さを知って人の美しさを信じる異常者。

 

ガラスの心は砕けてしまう。鉄の心は腐ってしまう。

彼の心は水晶だった。砕けにくく腐らない。誰から見ても美しいと思える輝きを放って、数百年かけて作られたピカピカの心。

その透明で綺麗な水晶の中心がモリオンのように黒くなっていることを誰も知らない。

 

 

 

 

あまりの夢にえっちゃんは目覚めてしまう。

隣のベッドで眠るマスターの服の下を覗く。すると無数の傷跡が残っていた。

刺し傷、切り傷、打撲、裂傷、熱傷、凍傷、銃創、火傷、電撃傷、擦過傷、咬傷

ありとあらゆる傷跡が残っており何十年、いいや何百年以上も戦い続けていたことが察せられた。

 

その体は何かに怯えるように震える。悪魔に魘されている。えっちゃんはそっとマスターの手を握る。なぜこの行動をしたのかは彼女自身にもわかっていない。しかし手を握られたマスターの顔色は若干マシになった。これではまるで子供のようだと思ってしまう。

 

えっちゃんは知り得ないことだがマスターがこうして人前で眠るのは稀だ。いつも何かを警戒して人前で眠ることはしない。しかしえっちゃんの前では睡眠を取れていた。

 

 

「マスターさんは……」

 

「……どうして俺の手を握っている」

 

 

先ほどまで眠っていたマスターの目が開き、話しかけられたことで心臓が飛び跳ねるように驚いてしまう。しかし平常心を保ちサーヴァントとしてマスターと会話をする。

 

 

「もうすぐ日も沈んでくる時間帯です。聖杯戦争に参加するというのなら夜に探索をしましょう」

 

「そうか……ありがとう。今すぐ行こうか」

 

 

傷だらけの体を動かしていることに不安を覚える。しかしそれを自分の口から言うものではないと考え何も言わない。

 

 

「無関係な人を巻き込まない限りはどんな闘い方をしてくれてもいい。宝具やスキルも自由に使ってくれ」

 

「わかりました」

 

 

 

 

 

 

俺と彼女は人が少なくなった京都の街を練り歩く。静寂が夜の街を不気味に思わせる。こんな気分は久々だった。蜘蛛の力を手に入れてからは闇が怖いと思ったことはない。しかし今の俺は蜘蛛の力を失って無力だ。魔術師に襲われていつものように返り討ちにできる自信がない。スパイダーセンスがない俺では奇襲に対応できずに簡単に殺される。

 

 

「人通りが少なくなってきたな……不自然なほどに」

 

「そうですね……次の報酬は和菓子と本でいいですよ」

 

 

俺を殺すために音速を超えた何かが発射された。今の俺の動体視力ではそれが何かを捉えることはできない。避けるための反射神経もない。

直立不動を貫いたが俺の体にその物体が当たることはなかった。

彼女が紫色に光る剣で逸らした物体は地面に落とされる。飛んできたものは矢のようだ。

 

 

「アーチャーですか……少し面倒ですね」

 

「人払いの結界は相手がしてくれているようだし戦おうか。それに弓兵相手に背を向けて逃げるのは命取りだ」

 

「では正面戦闘ですね」

 

 

矢が飛んできた方向を考えて射線を遮るように街の中を進む。幸い障害物となる建物は多い。鬼門となる場所は川を渡るための橋だろう。あの場所ではどの方向から矢が飛んできても回避するための障害物がない。

 

 

「川をどうやって渡る?」

 

「……橋を渡らずに空をから行きましょう。私のオルトリアクターがあれば可能です」

 

「タイミングは任せた」

 

「わかりました。オルトリアクター…起動!」

 

 

その瞬間、彼女の周りに赤い雷が現れる。俺はその赤い雷に既視感を覚えた。

 

 

「モードレッド……」

 

 

あの色や音がアーサーの息子であるモードレッドにとてもよく似ていた。赤雷の騎士と言われ……作られたモードレッドに。

彼女も作られた存在なのか。そんな考えが頭の中を支配する。しかし今は戦闘中だ、そんなことを気にしていてはいつ死ぬかわからない。

 

 

「行きます……少し我慢してくださいマスターさん」

 

 

超高速。そう言っても過言ではない速度でレールガンのように彼女の体は発射された。それと同時に俺の体も掴まれとてつもない風圧が体にかかる。

屋根の位置を考えれば20メートル以上空にいるだろう。こんな上空にいればアーチャーの矢が俺たちを貫くのは容易である。しかし俺は腕輪に魔力を流し、ロープのような太さの糸を建物に引っ掛け、速度を変化させながら地面に着地することで矢を避けた。途中で糸は切られてしまったが彼女に着地を任せていたおかげでダメージを負わずに着地ができた。

 

 

「矢が飛んできた場所は見えたか?」

 

「バッチリと見えました。逃げられる前に仕掛けるので魔力を回してください」

 

 

大きく息を吸い、大きく波打つ心臓の枷を外した。流れ出るのはこの時代にあってはならない竜の魔力。莫大な量の魔力が彼女に流れ出した。

 

正直に言うのなら俺に回すだけの魔力は持っていない。魔術回路2本なんてそんなものだ。本来ならば英霊1人を維持するほどの魔力もない。

 

いつもならこの分の魔力は蜘蛛の進行を抑えるために使っている。力に飲まれてしまうと蜘蛛の怪物になってしまうからだ。しかし今の俺には蜘蛛の力は無い。ならば抑える必要もない。

 

魔術回路を必要とせず、ただ血液を巡らせ息をするだけで魔力を生成する。魔術師たちとは次元の違う『魔術炉心』

この魔術炉心は俺のではない。1人の親友から託された()()()

 

 

「オルトリアクター、臨界突破!」

 

 

赤色の雷と赤いオーラが視界いっぱいに広がる。彼女から溢れ出る大量の魔力はこれまでの彼女とは打って変わって英雄としての強さを見せる。赤紫色の光で構成された両剣を取り出し構えると魔力という燃料をブースターのように使い加速し始める。

 

 

「我が暗黒の光芒で、素粒子に還れ!」

 

 

地上からアーチャーがあるであろうビルの上に宇宙空間を進み続けるロケットのように飛んでいく。臨界状態を突破し溢れ出た魔力の奔流を剣にして殴りつけアーチャーを上空に打ち上げる。

両剣を豪快ながらも繊細に振り回して敵の体を壊していく。行動を許さないほどの攻撃の嵐。上空にいるアーチャーが無力に思えてしまうがアーチャーが弱いのではない。彼女が強すぎるのだ。

 

空中で自由に駆け回るその姿は鳥を……いいや、翼の生えたドラゴンを思わせるような自由さと強さがあった。

 

 

黒竜双剋勝利剣(クロス・カリバー)』!!」

 

 

はるか上空にいるアーチャーは彼女のXを描くような一撃を前に消滅した。彼女はこの町で1番高いビルの上に月を背にしながら華麗に着地した。小さいはずのその背中はアーサーの背中と見間違えるほど強く大きいものに見えた。

 

 

俺はあの技に見惚れていた。こんな気分は遠い昔……アーサーのエクスカリバーを初めて見た時以来だ。色も規模も威力も全てが違う。それでもあの日見た英雄の一撃が彼女の光と重なってしまった。

幾度となく経験した夜が、何度も見てきた満月がこんなにも愛おしく思えた。

マフラーを冬の夜風に靡かせながらこちらを見つめる眼鏡越しの瞳は恐ろしくも美しく思えた。

 

彼女に思い出を重ねるのは失礼なことだと理解している。それでも俺は何かに縋りつくように満月に手を伸ばした。握ってもそこにあったのは空だけだ。それで良かった。一緒に月を見上げて誓ったあの夜に…一歩だけ近づけた気がしたからだ。

 

 

「だからこそ、ある意味1番の地獄は今かもしれないな。

……地獄からの使者になれない俺が地獄を体験するなんて皮肉な話だ」

 

 

竜の心臓に黒い槍が刺さったと勘違いするほどに心が…苦しい。

 

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