見滝原に魔法少女(幻想体)が居るのはおかしくないよね?   作:黒月天星

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 注意! 今回独自設定が大いに働きます。


乱入 そして王は根城へと帰還する

 

『アッハッハッハッハ!』

 

 ムシャリと音を立て、お菓子の魔女のどてっ腹を食いちぎった黄金の魚は、数度咀嚼して飲み込んだ後狂気染みた笑い声を響かせる。

 

「な、何なのよアレっ!?」

(……どういう事? これまでの周回であんな魔女見た事は……)

 

 思いもよらぬ乱入者の蛮行に、さやかは怯えほむらは何事か考察し、マミは何も言わず油断なく銃を展開したまま。

 

 しかし腹を食いちぎられたお菓子の魔女としては悠長に構えていられない。先ほどと同じく脱皮して身体の傷を癒すのだが、

 

 ガブリっ!

 

 たちまち脱皮した抜け殻を平らげた黄金の魚は、完全にお菓子の魔女を獲物と判断したのか再度食らいつきを敢行。今度は尾に食らいつかれ、お菓子の魔女はたまらず顔を歪ませ悲鳴を上げる。

 

 しかし孵化したばかりとはいえお菓子の魔女もここの主。やられっぱなしではないとばかりに自分も黄金の魚の尾に食らいつく。それだけ見ればまるで互いの尾を喰らい合うウロボロスの如き様相だったが、

 

「これは……」

「ええ。後から来た方が優勢ね。なんて鱗の硬さ」

 

 文字通り歯が立っていなかった。マミ達の見立て通り、お菓子の魔女の牙は黄金の魚の鱗を突破出来ず、黄金の魚の牙は一噛みごとにお菓子の魔女を食い進んでいく。

 

 慌てて脱皮しようと試みるお菓子の魔女だが、マズい事に自分の牙が鱗に食い込んで抜けず口から脱皮する隙間がない。

 

 ネズミ使い魔達もこれにはさやかを取り囲んでいる場合ではなく、主を守るべく黄金の魚に殺到。しかし主に突破出来ない鱗が使い魔に突破出来る筈もなく、食らい合いの余波で次々勝手に潰れて消滅していく。そして、

 

 

 ムシャムシャムシャムシャムシャムシャ…………ゴックン。

 

 

『……アハっ! アッハッハッハッハ!』

 

 お菓子の魔女の尾から腹、腹から胸、胸から首に食い進み、最後に頭とほんの少しの自分の尾ごとバクリと一呑み。黄金の魚はぺろりと舌で口周りを舐めて勝利の高笑いを上げる。

 

 勿論その隙を突いて、マミ達が攻撃を仕掛ける事も出来た。しかし、

 

(あの鱗。見立てが確かならティロ・フィナーレなら貫ける。でも一撃で倒すのは難しいし、下手に長引かせては最悪さやかさんが巻き添えに)

(あのイレギュラー。出来ればここで仕留めておきたいけど……その為には火力がネックね。ここで切り札を切る訳にもいかないし)

(どうしよう。あんな化け物この剣だけじゃ……せめて先生みたいに沢山出せれば)

 

 下手な攻撃で注意を引く訳にも行かず、それぞれ別の理由で攻撃を躊躇していた。その結果、

 

 クンクン…………ニィっ!

 

「あいつ、何を……マミさんっ!?」

 

 ブオンっ!

 

 黄金の魚が何かを嗅ぎ取って笑ったのと、その直下に魔法陣らしきものが展開したのをさやかが確認したのはほぼ同時。ハッとしたマミが銀の大砲を出現させた時には、黄金の魚は魔法陣に沈み込んでその姿を消していた。

 

(空間移動っ!? あの魔女頑丈なだけじゃなくてそんな技まで使えるなんて)

 

 マミが内心驚きながらも油断せず周囲を警戒していると、結界の主が居なくなった為か魔女の結界が急激に崩壊を始める。そして、

 

「……っ!? 逃げなさい美樹さやかっ!?」

「へっ!? わわわっ!?」

 

 珍しくほむらが声を荒げる。それはさやかの後ろから巨大なクッキーが倒れ込んできたためだ。気づいて走り出したが避けきれないさやかを助けるべくほむらが盾を構え、

 

 

 ヒュンヒュンヒュンっ! ストトトンっ!

 

 

 突如飛来した数本の細剣がクッキーの正中線を貫き、丁度さやかを避けるようにぱっかりと真ん中から割れていく。ズズンと音を立てて崩れるクッキーの隙間で、さやかは細剣の持ち主が来た事が分かり明るい声を上げた。

 

「先生っ!」

『まったく。すぐに退避しろと言ったのに困った弟子ね。そして』

 

 この崩壊する結界内であっても静かに、そして優雅に降り立ったセイは、さやかが無事なのを見届けるとマミとほむらをその隻眼で一瞥する。

 

『アナタ達が、()()()()()()()ね』

「ええ。そういうあなたはさやかちゃんの言う先生さんで良かったかしら? 出来ればゆっくりとお話ししたい所だけど」

『そうも言っていられない……という所ね。さあっ! 脱出するわよ我が弟子』

 

 小さく断続的な地鳴り。ぱらぱらと崩れてくる小さな菓子の破片。いつの間にか使い魔達も消え失せたこの状況はもうこの結界の寿命が近い事を示し、セイはサッとさやかの手を取る。

 

「待って先生っ!? まだこの中にはまどかとマミさんの友達が」

『既にまどかなら外に出て待っているわ。おそらくはその友達もね。だから早く。……そこのアナタも』

「……そうね。行きましょう」

 

 最初から油断なくセイを見つめていたほむらだったが、流石にこの状況では同意せざるを得ない。

 

 こうして、魔法少女達はセイの先導の下崩落する結界から脱出した。そしてその先で待っていたのは、

 

「さやかちゃんっ! ほむらちゃんもっ!」

「まどかっ! 無事でよかっ……あわっ!?」

「……っ!?」

 

 ぎゅっ!

 

「わたし、もう皆に会えないんじゃないかって……本当に……本当に無事で……良かった。良かったよぉ」

「……うん。うん。ごめんねまどか。あたしのせいで……ごめ、ごめんねぇ。まどかぁ」

 

 ぼろぼろと涙を流しながら二人に抱き着くまどかの姿を見て、さやかも少し嗚咽を滲ませながら抱き返し、ほむらはどこか困ったような優し気な目で何も言わずに抱き着かれるまま。

 

 少女達がわんわんと互いの無事を涙ながらに喜ぶ中、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そして、

 

(中に漂っていたあの残滓。普段の姿ならともかく、暴走状態になったのなら一目で分かる。……あそこに居たのね。まったく一人で何をやっているの? ()()()()?)

 

 セイは一人静かにこの混沌とした状況を黙考し、

 

 

『お疲れ様。無事全員を連れ帰ってくれたんだな! ありがとう』

『いえ。仕える主の命をこなすのは騎士として当然の事。ただいま戻りました。我が主様』

 

 

 ぽよんぽよんと跳ねて近寄りながら礼を言うロボットに対し、黙考を中断してそっと片膝を突いて一礼した。

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 風見野市。見滝原の隣にある町。しかしながら直線距離にしてそれなりの距離がある町の片隅に、

 

『アッハッハッハッハ!』

 

 一息で、黄金の魚は跳んでいた。

 

 それの得意とする魔法は()()()()。俗に言うワープである。予め設定していた場所にならどこへでも一瞬で移動出来るし、短距離なら連続でワープして相手を攪乱する事も出来る。それなりに制限もあるが極めて汎用性の高い能力だった。

 

 当然見滝原であろうが風見野であろうが、巨大な黄金の魚的化け物が出れば騒動間違いなしなのだが、

 

『アッハッハッ…………ふぅ。やはり街中ではこちらの姿の方が落ち着くな』

 

 黄金の魚はゴキゴキと音を立ててその姿を縮め、一瞬白い光に包まれたかと思うとその姿を変じていた。

 

 褐色の肌に白い長髪。黄色をメインカラーとし、裾にスリットのある動きやすさを重視したドレスに身を包み、髪と同じく白いネックレスとブレスレットが褐色の肌に合う美少女に。

 

 しかしその腕には、その美しさをある意味丸ごと消し飛ばすようなゴツい黄金のガントレットが装着されており、はめ込まれた琥珀のような宝石がきらりと輝く。

 

 そんな黄金の魚スタイルとはまた違う目立つ格好だが彼女は特に気にした様子もなく、機嫌よく鼻歌など歌いながらぶらりと歩いて目的地にたどり着く。

 

 それは、すっかりくたびれボロボロになった廃教会。最低限の手入れこそされているが、ほとんど人など寄り付かなくなった神の家。

 

 彼女は畏れや敬いや信心の欠片もなさそうに少し蝶番が錆び付いた扉を開け、

 

 

『よぉ! 居るか杏子? 私様が手土産を手に今日も泊まりに来てやったぞ!』

「来んじゃねえよバカっ! ここは教会で宿屋じゃねぇっての。手土産だけ置いてさっさと帰んな()()!」

 

 

 ここのただ一人の住人に()()()()()()()()()()()を意気揚々と掲げながら、コウと呼ばれた元黄金の魚は楽しげに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

『みぃつけた!』

 

 そしてその様子を、白い獣はニヤニヤと面白そうに覗いていた。

 




 誰とは言いませんが四人目ですはい。名前の由来は『幸福』の魔法少女から。サチと迷ったんですがちょっと男前な雰囲気もあるのでコウの方になりました。

 空間移動系は原作での描写から可能だと判断しました。まあ無条件は強すぎるので色々と制限付きですが。




 それと私事で申し訳ないのですが、次話はしばらく先になります。読者様には少々お待ちいただければと思います。
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