高校2年の夏。
テーマパーク、フェニックスワンダーランドで宣伝大使として軌道に乗りだしたショーユニット、ワンダーランズ×ショウタイムの座長こと天馬司。
いつものように休館中のワンダーステージでショーの練習を終え、家につきベッドで寝たのだが……
暇していたところ久々にペンが動きましたので上げました!
恐らく続きません。
プロセカについてはまだ歴1年にも満たしてないのでいくつか変な部分はあるかもです。
なるべくキャラに違和感を感じないよう、解釈不一致にならないようにはしておりますが変な部分があればご指摘宜しくです。
pixivにも掲載しております。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21335041
夢と認識できたのはその場所が現実では考えられないような場所だったからだろう。
気がつくとそこはあたり一面、白で出来た世界だった。
何もモノがなく、白以外何もない。
地に足がついている感覚があるが足元に影はなく、ってもまるで浮いているような気さえするほどに白い世界で出来ていた。
歩こうにも足は動かず言葉も発することができない。
その状態でいること数分だろうか。
……っ。
意識が少しずつはっきりしてきたところで何処からか声が聞こえてきた。
だがまるで脳内に直接語りかけてくるように聞こえるため声の発生源がわからない。
仕方なく声の主を探すことは諦め、聞こえてきた声に意識を傾ける。
すると少しずつだが声がはっきり聞こえるようになる。
……を……て……。
女性……いや、男性とも受け取れるような声色。
エコーのように聞こえ、その声自体もモザイクにかけられているような感じがして性別や年齢の判断もつかない。
俺に呼びかけているような声はやがて少しづつだが形となり、伝えたかった言葉がようやく聞こえた。
だが、それと同時に俺の意識は夢から覚めるようにこの世界から切り離された。
『助けて』
―――――――――――――――――――――
目が覚め、上体をゆっくりと起こす。
……夢?
つい先程までいた空間や出来事は夢であったはずなのに現実世界で過ごしたかのように記憶にしっかりと残っている。
白い空間も、不気味とさえ思える感覚も。
そして何より自身に呼びかける声についても。
最近はショーや練習を行う頻度が増えてきたからかもしかしたら気が付かないうちに疲れが出てるのかもしれない。
現に睡眠を取ったにも関わらず少し体が重い気さえする。
「変な夢を見るのも仕方ない、な」
寝起きというのもあるだろうが、普段より気怠い体に鞭を打つようにベッドから抜け出す。
固まった関節を解すようストレッチを少し行いながら時間を確認すると、時刻はちょうど7時になる前だった。
まだ少し眠気が残っている気がするので、冷水で顔を洗おうと洗面所へと向かう。
洗面所に向かうためリビングを通るが父や母、咲希もまだ起きていないようだ。
「まったく、咲希のマイペースぶりもそろそろ直してほしいものだ」
それもまた咲希らしいのだが、と甘い部分を出し洗面台に立つ。
冷水を出し両手に溜めて顔を洗う動作を数度繰り返し眠気を飛ばす。
顔もスッキリしたところで冷水を止め、手探りに横に置いてあるフェイスタオルを掴み取って顔や前髪に付いた水分を拭き取る。
どこか鈍かった頭もクリアになりいつも通りの状態に戻った。
そしていつも通りの自身の顔を見ようとタオルから顔を離し鏡を見る。
「……は?」
間抜けな声が自身の口から漏れる。
その声と比例するように鏡に映る自分の顔もショーどころかクラスメイトにも見せられないような顔をしている。
「な、ななな……」
少しずつ自分の状態を理解していくと同時にゆっくりと驚いた原因でもあるモノに腕が向かう。
そしてそれを両手で掴むと腹の底から叫ぶように声が出る。
「何故髪が黒いんだぁぁぁぁぁッッ!?」
両親から遺伝し、咲希と同じく綺麗に輝くような髪は見る影もなく、鏡に映る俺の髪は墨のように真っ黒に染められていた。
あれから何度も確かめるように髪を触ったり、本物とわかって更に頭を抱えたりと色々あり時間が経過し、今は制服に着替えて学校へ向かっている。
髪色の変化に一頻り驚いた後、まず初めに咲希の部屋に駆け込んだ。
ただ、部屋には咲希はいなく既に家を出ていたため髪について聞くことはできなかった。
父と母にも確認しようとした咲希同様既に家を出ておりいなかった。
急な仕事で家をよく離れる父と母なら兎も角咲希があの時間帯にいないことは珍しかったが、そういえば昨日作曲のことで一歌たちと早く話がしたいと話していたから早くに家を出たのだろう。
学校を休むわけにもいかず、ひとまずは学校に行くことにした。
そして登校中、先程から考えているのはこの髪色にした犯人について。
自然に髪色が変わるといった事例はあれど1日で丸々変わるなんてものは聞いたことがない。
ともすれば髪色を変えた犯人がいる。
しかもスプレー缶で一時的に変えたのではなくご丁寧にブリーチで色を抜いてから染めるという工程で。
寝ている間に染められれば、というか染めるためにベタベタと触れられたらどんな人でも起きる。
咲希からは忘れっぽいとか同じワンダショのショーキャストの寧々からは直球でバカとまで言われているが、そんな俺でも途中で起きる。
……そもそもバカではないが。
そうなると犯人は誰かということになる。
勿論有力候補は類だ。
毎度の如く実験と称しなにかの賞が取れるのではないかというぐらいの様々なギミックや発明の被検体にしてくる。
今回についても寝ている間に染めるという鮮やかな手口が出来るのは類以外に考えられない。
咲希や父、母はドッキリにしてもこんなことはしない。
バンドの反省会で家によく来る一歌に穂波、志歩も候補には上がるがここまでのことはしないし、やろうとしても咲希が止めるだろう。
他に家に来ることがあるえむに寧々、冬弥もいるが一歌たち同様染めるような真似はしない。
つまり今考えられる容疑者は類ということになる。
無論、流石に類もここまでのことをするとは考えにくいが他に考えられる犯人に覚えがない。
……ひとまずやつに聞いてみないことにはわからん。
犯人でなかったとしても類の手を借りれば犯人を暴くこともできる。
これまでも何かとこういったときは幅広い知識や知恵、手段を用いて解決してくれる頼もしい仲間だ。
どちらかといえば犯人の容疑よりも協力してもらうといった側面のほうが今回は強い。
そこまで学校から離れていないためあっという間に学校につく。
時間はまだ8時前、朝に少し聞くぐらいの時間はありそうだ。
自身の教室まで行く道中、髪についてイジられることを想定し気落ちしながらも教室の前までたどり着く。
だがしかし、未来のスターたるもの悪戯程度で落ち込んで入られない。
「おはよう!」
いつものように元気に挨拶をし教室に入る。
予想通り、先程まで会話が飛び交っていた教室内は俺を見て静まり返った。
自分の机の前まで歩き荷物を置くまで、視線は向けてきているが誰も話しかけてこない。
何か思っていたのと違うな……。
髪色の変化に騒騒と遠巻きで話すか直接聞いてくるかすると思っていたのに、今のクラスのリアクションは沈黙。
もしやまた爆発騒ぎ同様いつもの類との凶行だから関わらないほうがいいと思われているのではなかろうか。
向けられた視線をそれぞれ見ると、関わり合いたくないという意思の現れかすぐに視線を逸らされる。
誤解を解きたいところだがそうなると類に聞く時間がなくなる。
放置することでより誤解に尾びれ背びれがつく気がしてならないが噂についてはいつものことだと泣く泣く諦める。
そそくさと教室を立ち去りすぐ隣の教室へと入る。
流石に隣のクラスということもあって面識がない人が多いからか教室に入ってきた俺をクラスの一部がチラリ見るが特に何もリアクションを起こさずに近くの友人と会話を続けていた。
「すまない、神代類はいるだろうか」
パッと見では見当たらないが一応確認のため近くにいた男子生徒に訊ねる。
「え、神代?んー今日は見てないな。机に物も置いてないし休みかもしれないよ」
どうやら今日は教室には来ていないようだ。
「……そうか、教えてくれて感謝する」
これ以上いる意味もないため、男子生徒に礼を言い教室を後にする。
教室にいないことについても一応予想はしていた。
ワンダショでショーをする以前は新しい演出や機械の作成でよく遅刻や無断欠席はあったと寧々から聞いていたし、ショーをともにするようになってからも偶にではあるがサボっていることもあったからだ。
できれば朝早くに聞ければよかったのだがな。
スマホでメッセージを飛ばせばすぐに返信は来るだろうが生憎と髪の件で慌てて家を出たために家に置いてきてしまった。
自身の忘れっぽさにため息をつき自分の教室まで戻り席につく。
相変わらず普段と違う周りの視線が痛いが気にしないように目線を下に落とす。
「…………」
……気まずい。
いくら普段類の危ない実験に付き合っているから巻き込まれたくないとはいえ普通誰か一人ぐらいは聞いてきてもいいはずだろう。
どれだけ関わりたくないんだ。
再度ため息を付き頭を抱える。
授業が終わったらまた隣の教室に行こう。
休み時間や昼休憩に行けば流石にいるだろう。
『神代君は来てないよ。授業も欠席だったし』
『今日は欠席じゃないか?いつものことだけど』
『そういえばいないね。気づかなかったなぁ』
何故、なぜいない!!
予想に反し、授業終わりに数度確認しに向かったが昼休みに至るまで類は教室にいなかった。
つい先程も確認を取ったがいないと返答、もしやと思い屋上に行くが見つからなかったことからいよいよ学校に来ていない線が濃くなった。
となるといつも通りサボりか、それかもしかしたら体調を崩しているのかもしれない。
こういうときにスマホがないのが悔やまれる。
しょうがない、直接寧々に聞きにいくか。
本当は寧々の教室に行く気はなかった。
『悪目立ちするから教室に来ないでよね』
以前、貸した劇団のDVDについて早く感想を聞きたかったため伺ったところ本当に嫌そうな顔で言われていたからだ。
そのため極力寧々に用があるときは教室外やスマホでやり取りしていたが、今回については緊急事態に近しいためしょうがない。
後で小言を言われそうだが甘んじて受けよう。
自分の教室へ向かっていた足はそのまま1年生のフロアへ。
昼休み時間というのもあり、ちらほら廊下に出て会話をしている下級生たちがいる。
中学の頃は上級生が下級生の階にいるだけで多少は見られるが、高校にもなると上級生がいても興味が映らないのか一瞥してくる生徒はいても注視されない。
そもそも学年が違うのだから面識のない俺が注視されることはないのだが。
例外として類に巻き込まれる形で問題行動を起こすと注目せざるを得ないが。
考え事をしているうちに寧々のクラスまでたどり着く。
教室の中を覗くと半分以上の生徒が席に座っており、中には次の授業の教材を置いて予習している生徒もいる。
一人ひとり見ていくと教室の一番うしろ、窓際の席に目的の人物を見つけた。
腰まで伸ばした少々癖っ毛のある薄い緑髪、小柄な部類だが猫背になっていることから余計に小さく見える体格に無気力な雰囲気を与える瞳。
我らが歌姫、草薙寧々だ。
そのアメシストのような綺麗な紫色の瞳は手元にあるスマホに向けられ、片耳にイヤホンを付けイジっていた。
わざわざ呼び出してもらうのも面倒をかけるため、後ろの扉から静かに入りスマホから視線を離さない寧々に声をかける。
「すまない寧々、少しいいか」
「……っ」
周りの生徒にも配慮しいつもより声量を抑え声をかけたつもりだが、スマホに集中していたためか急に呼びかけられた寧々は驚いたように肩を跳ねこちらを向く。
そして俺を見ると少し困惑した表情を浮かべていた。
それはそうだ、類や寧々が急に髪色を変えられれば俺だって同じリアクションをする。
「あぁ、髪のことについて少々訳があってだな、話が長くなるからそれは後で説明させてもらう。ちょっと類について聞きたいのだが……」
髪については残りの昼休み時間では説明に時間がかかるため、事情があるからと後回しにし、学校に来ていない類について聞こうとした。
そのタイミングで話しかけたときからどこか落ち着かない様子の寧々は恐る恐る口を開いた。
「あ、あの……誰ですか?」
「急に来たのは申し訳ないと思うが酷くないか!?」
返ってきた返事は予想していなかったものだった。
拒絶というよりは他人として扱おうという態度に、ついいつものように大きな声でツッコミを入れたが仕方ないだろう。
いつもならここから寧々の毒舌か、今の寧々の第一声について抗議をして話を展開するのだが昼休憩の時間も残り少ないため一旦スルーする。
「今回は緊急でな、今日類が欠席してることについて」
「すみません……本当にあなたが誰か知らないんですけど、類の知り合いですか?」
……流石に徹底し過ぎではないだろうか。
引き続き他人行儀な様子に流石に突っ込まずにはいられず指摘する。
「急に来たことは申し訳ないがそこまで露骨に他人のふりをされると流石のオレも傷つくぞ寧々」
「……さっきからよくわからないんですけど、なんですか急に」
「わからないのはこっちなんだが!?」
敬語はそのままではあるが、どこかいつものような刺々しい態度になってきている。現に今もなにか言葉をかけるたびに眉が下がり目が鋭くなっている。
ただ何故だろう、普段の態度に近づいているが今の寧々には違和感を感じる。
寧々だけではない。朝から今に至るまでちょっとした違和感を感じていた。
「それにさっきから寧々って……類に聞いたんだと思いますけど気安く呼ばないでもらえますか」
「今日はいつにもまして辛辣ではないか」
「今日はって……よくも知らないのに知ってるふうなこと言うのやめてください、馴れ馴れしいです」
「……」
少しずつ、感じていた違和感が浮き彫りになってくるのを感じた。気の所為からいつものちょっとした悪戯、そして今はもしかしたらという考えが浮かぶ。
違和感の正体を確かめるため、ある質問を投げた。
「寧々、【ワンダーランズ×ショウタイム】は知ってるか?」
自分たちが所属するショーユニット名。
知っていて当たり前、知っているかどうか聞くこと自体変ではある。
そんな当たり前の質問に対して寧々の口から放たれた言葉は、
「なんですか、それ?」
知らない、という信じられない返答だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
年末年始の暇な時間にふわふわなまま書き上げました。
続かないとは思いますが万が一、億が一にでも意欲が出て書く気なったらサイレント上げします。
ここまでお読みいただきありがとうございました。