それでも良ければ読んでください。2500字程度です。
追記:誤字脱字の報告ありがとうございます! ついでに、最低限読める小説になるよう、いい感じに修正しました。世に放ってはいけない怪文書から見るに堪えない怪文書ぐらいまでレベルアップしたと思います。
気が付くと、俺は謎の空間にいた。目の前にはタッチパネルと初期スキンみたいな服装の人。その表情は全く動いておらず、まるで機械か何かのようだ。
なんとなく手元のタッチパネルを眺める。それは設定画面らしく、いくつものスクロールできるバーが並んでいた。適当な1本を操作すると、目の前にいた人の髪が伸びた。
この状況に見覚えがある。
というかこれ、夢だわ。
だって下向いても自分の体ないし。なぜか手だけあるし。
それにこのタッチパネルだって、俺が今日ずっとにらめっこしていた『Nanka Sugoi MMORPG』、通称『NSM』のキャラクリ画面そのものだ。
NSMとは、『全てのMMORPGを過去のものに』という強気なキャッチコピーの新作MMORPGだ。制作会社も超大手で、SNSでも話題になっていた。
ゲーム好きの俺がそれを見逃すはずがなく、早速購入。そしてサービス開始と同時にプレイをした。
そこで驚かされたのが、キャラクリのバリエーションの豊富さだった。髪の1本1本まで変更出来るほど無駄に細かい設定、リアルと遜色ないほど綺麗な画質。めっちゃゆさゆさ動く揺れ物。
ここまで細かく設定できるのなら、魂を捧げないのはゲーマーの名が廃る。そう思った俺は、目に穴が空くほど画面と熱情的に見つめ合い、ついに理想のアバターを創り上げた。
だから、間違えるはずがない。俺の記憶が断言している。これはNSMのキャラクリ画面そのものだと。
いやあ、ついにゲームしすぎて夢の中まで出てきちゃったのか。かわいいやつめ。
しかしどうしようか。理想のアバターはもうリアルで作ってしまったし、さすがに本気でキャラクリするやる気はない。
ならいっそふざけてしまおうか。
俺は慣れた手つきでタッチパネルを操作していく。今日本気で作ったアバターはかなり制作が難航したのだが、なぜか今回はスムーズに進む。俺の本能が指を突き動かすのだ。
そして完成したのがこのアバター。
身長はだいたい170cm、そして体のボリュームは圧倒的。すれ違う人みな2度見する驚異的な胸囲だ!!! そして太ももが太い! 顔も良い! すばらしい!!!
そしてなにより1番のポイントが、この髪。絶対に邪魔なこの長い髪は虹色に光り輝いている。虹色に! まさにゲーミングヘアという名前が似合う、見た目がうるさい髪だ。ついでに発光もしていて、暗い夜道でも圧倒的な存在感を放つだろう。視線を釘付けにしてしまうな。
ふぅ、満足した。こいつは俺の欲望とおふざけを全て詰め込んだアバター。夢の中だからこそできる芸当だ。
もう少しこの余韻に浸っていたいが、さすがに疲れてきたな。明日はちゃんとゲームをやり込みたいし、夢の中ではしゃぎすぎて明日に影響が出た、なんてことになれば目も当てられない。キャラクリもここまでにしとこう。
このキャラクターにもう会えないのはすこひ勿体ないと感じる。明日俺の部屋にいてくれたりしないだろうか。
そんなことを考えつつも俺はゆっくりと意識を手放し、明日へと時間を進めた。
迎えた翌朝。寝起きだけは良い俺はベッドから飛び起き、最低限朝の支度を済ませようと歩き出す……ところで異変に気が付いた。
体……特に胸が重い。それに、いつもより目線の高さが若干低いような気もするし、部屋の電気が着いていないのに部屋が明るい。
何かがおかしい様に感じる。寝起きだからかな、病気だったら嫌だな、とか呑気に考えながらとりあえず洗面台へと向かう。
そしてついに対峙。鏡には例のおふざけ驚異的胸囲が突っ立っていた!
「えっ? ん? 声も高い!」
TSである。朝起きたら女の子になってた! というテンプレ中のテンプレ。逆に珍しいまである。
正直この状況がまず異常すぎて脳の処理が追いつかないのだが、ひとつ、あまりにも異常すぎて全てがどうでも良くなる点があった。
髪だ。この無駄に長く無駄に光り無駄に虹色なこの髪。まだ早朝で周りが暗いから、その存在感は奈良公園の鹿をも凌駕する。
確かにすれ違えば2度見するようなキャラだとは言ったけど、現実で見ると2度見で記憶に残るどころか、誰かに写真や動画を撮られて永遠に残ってしまう。
もしかしたら、私の写真や動画を添えたポストは大バズりしてリプがアラビア語だらけになるかもしれない。それくらいやばい。
そうなると私はどうなるだろうか。街を歩けば人を集め、家に居ても存在感を放つランドマークになってしまうのか。
生けるランドマーク。当然家は特定されるだろうし、私が発見された記念日には毎年知らん人が私の家の前に集まって謎のイベントが始まってしまうかもしれない。さすがに嫌すぎて萎えそう。
せっかく可愛い女の子になったんだから、もっとポジティブに考えるべきだろうか。いや、TSした事実よりも髪が光り輝いてるのが気になりすぎる。なんかだんだん気持ち悪くなってきたな。
だってラーメン屋とかで髪光ってるやつがズルズル麺啜ってたらウザイだろ! ラーメンを楽しみに来てるのに隣のヤツが視覚的にうるさすぎて集中出来ないし、ウザイことこの上ない。
この光り輝く髪さえなければ私好みの超可愛い女の子なのに! 声もいいし! なんでだよ夢の中の私! なんて余計なことをしてくれたんだ!
だんだんムカついてきた。この際、髪全部切ってハゲになってしまおうかな。
いやでも、この髪を切ってしまったら、髪を光らせてた分のエネルギーが行き場を失って、私の頭皮を光らせてしまったりしないだろうか。だとしたらやばい。例えば、体育大会で挨拶する校長先生の頭そのものが発光してたらどうする? それも白じゃなくて虹色に。
爆笑必至だろう。多分、伝説の体育大会になる。もしかしたら伝説すぎて『校長』という固有名詞を新たに塗り替える存在になれるかもしれない。あの平均値ぶっ壊し野郎じゃなくて、頭皮七光り女になる訳だ。すばらしいじゃないか……言うほどすばらしいか?
生徒の卒業アルバムにもこの頭皮七光り女がにっこり笑顔で写ってるんだろうな。最高じゃん……言うほど最高か?
というかこれから先、どうなってしまうのだろう。ここまで下らない妄想をしてきたが、前代未聞すぎてわからない。さっきまでの妄想は本当にクソの役にも立たないし、真面目に考えたところでどうにもならないと思う。
しかし、1つ分かっていることがある。私の人生はこれから先明るいだろうということだ。
どういう意味で明るいのかは、言わずもがな分かるだろう。
個人的にTSした後の一人称が『俺』から『私』になってる所がこだわりポイントです。
深夜テンションの癖に変な所こだわっててきしょいぞ七光り。