今回は先日行ないましたアンケートの結果を反映して、対バンライブのその後をお届けしようと思います。本当はパスパレの様子も書いてから結果を書こうかと思ったのですが……ただでさえメイン作品は最近の更新頻度が少ないうえで、同じ様なネタを擦りながら進んでいるので、此方の方はテンポ良く進めて行きたいと思っております。
また内容が思い付きましたら、少し時間はかかるかもしれませんが……執筆をしてから投稿したいと考えておりますので、更新通知をお待ちくださいませ。
それでは、本編スタートです。
最後までごゆっくりとお楽しみください。
「そ、そんな…っ」
「こんな結果……有り得ません…っ!」
日が暮れても気温の高い日が続く様になったこの頃……私たちは、武道館でAve Mujicaとの対バンライブを行なっていた。事の発端となったのは、約一か月前に颯樹くんから間接的に叩き付けられた挑戦状なんだけど……私たちは、自分たちが勝つと信じて疑わなかった。
だって……私は勿論の事、みんなもそれに相応しい程まで練習をして来たし、颯樹くんの元で積んで来た時間は無駄なんかじゃないと……そう言い返す為にここまで頑張って来た。
……でも、目の前にある結果表は……。
「私たちPastel*Palettesが1500票で……」
「祥子ちゃん達Ave Mujicaが28500票……私たちの実力は3万人のお客さんのうち、ほんの1割にも満たない人たちにしか通用していない、と言う事なの…っ!?」
「有り得ません! これは何か大きな陰謀が動いているに違いありませんっ!」
「……イヴさん。その点に関して言えばジブンも同じ気持ちですが、これは……」
電光掲示板に表示されているその表には、デカデカと私たちとその対戦したバンド各々の得票数が数字で現れていて……全体の中でも1割に満たしてすら居なかったのだ。それが私たちの心中を否応無く曇らせ、この後の展開すら不安気になってしまう。
暫し私たちが立ち竦んでいる所に、コツコツと規則正しいヒールの音が響き渡った。確か……ライブで、自身の事をリーダーだと名乗っていた……。
「オブリビオニス…ッ!」
「
「……貴女ね、彩ちゃんを可愛がってくれたのは!」
「ええ、その通りですわ。
……やっぱり、私たちの事をある程度知ってる。
なら、私たちにとって彼がどれだけ大切な存在かは……対バンライブをしなければ分からない、そう言う訳じゃないはずっ。
「……ですが、何と無様な負け姿でしょう」
「……クッ!」
「これでは颯樹さんの活躍も、山の中に立ち込める霧の様に霞んでしまいます。彼自身は立派な才能の原石だと言うのに、それを引き立たせる貴女方がこの程度……話になりませんわ」
……悔しいけど、数字だけを見ればその通りだ。
彼の施しを受けていても尚、私たちは所詮
「彩さん、貴女は本当によく顔に出ますわね?」
「……うっ!」
「それが彩ちゃんだからねー!」
「茶化さないでよ日菜ちゃんッ!」
「あははっ、やっぱり彩ちゃんっておもしろーい!」
そう言われた私は、日菜ちゃんからの追撃を受けて……思わず怒ってしまった。武道館の玄関ホール前は、広々と作られている事もあり、多少の大声ですらもかなり響き渡ってしまう。心の中で颯樹くん達に申し訳ないなと思いつつも、私は目の前の彼女に再び向き直った。
そして先程まで私を揶揄していた日菜ちゃんも……いつものおチャラけた雰囲気から、突き刺す様な視線に切り替わった。日菜ちゃんだって……許せないのは一緒の様だ。
「祥子ちゃんって言ったっけー?」
「オブリビオニス、ですわ。私の事はそう呼んで」
「あーあー、きっこえなーい! ねー、あたしたちのリーダーを
「……それがどうしましたの?」
日菜ちゃんはそう言うと、祥子ちゃんの元に歩いて行って彼女と一体一になる様な形になった。……こんなに日菜ちゃんが誰かの為に怒るのなんて、あまり見た事が無いから、すごく新鮮だ。
「思い上がるのもいい加減にしなよ。あたしたちにとってさっくんはかけがえのない大切な存在なんだよ……それを奪おうなんて、いい度胸してるよねー?」
「ふん、そんなの負け犬の遠吠えにしか聞こえませんわ」
「……もう一回言ってみてよ?」
「お望みとあらば何度でも。
……許せない……こんな人たちに、私たちが…っ!
「ごめんなさい、ここは私が出るわ」
「えっ?」
「……なに、するんですの…っ!」
「千聖、ちゃん……」
「千聖さん……」
聞いていてスカッとする様な音が聞こえたと思ったら、祥子ちゃんの付けていた仮面が勢い良く外れて、床に転がっていた。そしてその当人の左頬は、真っ赤に腫れ上がっていた。
「言い過ぎよ。これがもし私以外だったらどうするつもりだったの」
「やって、くれましたわね……っ!」
「良いかしら?
私が言い返すよりも先に、千聖ちゃんが祥子ちゃんに向けて手を上げていた。そして私の言いたかった事を全てこの場で代弁してくれた。……最初は何処か冷たくて、私に与えられた機会を尽く情け容赦無く摘んで来た……あの千聖ちゃんが。
確かに祥子ちゃんが言い過ぎていた部分はあるけど……態々手を出して、自分たちが後手に回る必要なんて無い。普段の千聖ちゃんなら絶対にしない愚策だ。
……それくらい、嫌だったんだ。
自分の信じて来た物が、偽りで無いと……。自分の行動に間違い等存在し得ないのだと。信じて疑わなかったからこそ、祥子ちゃんを叩いたんだ。
「愚かですね」
「……あら、どう言う意味かしら。千歌ちゃん」
そう言う千聖ちゃんの視線の先には……よく見慣れた服装に身を包んだ、千歌ちゃんが立っていた。その傍らには知らない男の子が立っていて、さっきの頬を引っ叩いた音に釣られて来たのだと察することができた。
「貴女は気付かないのですね。その行ないは颯樹の望む所では無いと。彼が何で今の性格になったか……貴女なら言わずとも分かっていると思いますが」
「……そうね」
「えっ、千聖ちゃんどう言う……」
「ならば、私が叩き返してあげましょうか。颯樹の手など煩わせず、貴女のその強がりを一気に絶望に堕ちさせてあげますが?」
千歌ちゃんから放たれた言葉に、千聖ちゃんは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて後ろへ下がった。……確かに、これ以上相手に付け入る隙を与えちゃいけないから、この提案自体には賛成だ。
賛成、だけど……。
「丸山さん。リーダーであるならば、仲間の過失は貴女が叱責をするのが道理……でも、貴女はしない。脆弱な貴女では、到底できない事だからです」
「オブリビオニス、仮面を」
「ありがとうございます、ソリトゥス。助かりましたわ」
……許せない……。祥子ちゃんに馬鹿にされるならまだ良いけど、千歌ちゃんに馬鹿にされるのは、納得できない!
「じゃあ……千歌ちゃんは、千歌ちゃんは私たちが颯樹くんの力に頼りっきりでここまで来たと思っているの!? 二年も一緒に居たんだよ、わかんない訳じゃ」
「ええ、非常に残念ですが」
「チカさん……」
「千歌ちゃん、それはあんまりじゃなーい? さっくんさえ良ければ、あたしたちの事なんてどうでも良いって意味?」
「おや、そう言う意味を込めて言ったのですが……聞こえませんでしたか?」
千歌ちゃんの視線はいつも厳しくて、何処か私たちの事を品定めしている様な雰囲気があるけど……時には優しくて、女の私でも思わず見惚れる事だって一度や二度じゃない。でも……今回の千歌ちゃんの眼からは、そんな優しさも厳しさも無い。
……軽蔑してるんだ。私たちの愚かな負け姿を、高みの見物でもする様に嘲笑いながら。
「千歌さん、お手数をお掛けして申し訳ありません。私ならもう大丈夫ですわ」
「……そうですか。それと、これが終わり次第お話が」
「分かりました。颯樹さんも立ち会わせますか?」
「其方がお望みとあらば」
「交渉成立ですわね」
私たちの間でそんな話をした後、千歌ちゃんは何処かに去って行く。恐らく颯樹くんの所に行くつもりなんだろうけど……そんな事、私がさせないっ!
「待って、千歌ちゃん!」
「あら、私とのお話がまだ終わっておりませんことよ?」
「くっ……!」
「では、得票数の確認をしましょうか」
そう言って祥子ちゃんは、腕を組み直して私たちの前に立ち直った。その場には緊張感が張り詰めていて、少しでも気を抜かれたらやられるくらいだ。
「私たちの得票数は28500票で、対して貴女方は1500票。百分率に直せば……其方は全体の5%しか獲得していない事になりますわ。先ずはここまで、よろしいですか?」
「……うん」
「次に。颯樹さんから伝わっていると思いますし、事前に私からお話させて頂いた通り……其方が負けた場合は、颯樹さんを私たちが貰い受ける。それで間違いはありませんわね?」
……すごく悔しいけど、祥子ちゃんの言う事は正しい。
元々その条件で対バンライブを受けていたし、万が一にでも私たちが負けたらそう言う代償を払うのも話をしていた通りだ。でも、私の中では納得がまだ行っていない……そんな人たちの所に、颯樹くんを預けるなんて絶対に嫌だ!
「祥子ちゃん、私たちは絶対認めないからね。祥子ちゃんみたいな……自分勝手な人たちの所に、颯樹くんを預けたままで引き下がるなんて!」
「預ける、ですか。まるで颯樹さんは元から貴女方の物、そう言わんばかりの物言いですわね?」
「……だったら、何が言いたいのかしら?」
「……では。私たちの仲間になった時点で、もう貴女方の知る颯樹さんは」
祥子ちゃんはその言葉の後に、少し深呼吸をした後……こう言い放った。
「死んでいるのですわ」
……ッッッッ!?!?!?!?!?!?
「そ、そんな……颯樹くんが、死んだ……? 嘘だよね、そんなの……ありえ、ないよ…っ!」
「そ、それって……本当に、颯樹さんは……」
「言葉通りの意味です」
「そ、そんな……」
「う、嘘だよ……さっくんが……?」
私たちが絶句している中で、ある一点から規則正しい音が聞こえて来た。……え…っ。
「そ、それは……なにかの、まちがいじゃ……」
「全て事実を申し上げただけに過ぎませんわ。貴女方のよく知る颯樹さんはもう死んでいるのです。この世には存在しませんのよ」
涙を流し始めた千聖ちゃんが、途切れ途切れになりながらも祥子ちゃんに事実を確認していたけど……彼女は真っ直ぐ迷いの無い瞳でそう答えた。それを聞いた千聖ちゃんは何かに絶望したのか、その場に膝を折って泣き始めた。
私だって泣きたい気持ちだけど……千聖ちゃんがあんな有様だと、泣くんじゃなくてすごく心が苦しくなって来る。
「颯樹くん……死んじゃ嫌だよ……。そんなのって、有り得ないよ……有り得ない、嫌だ……っ」
……颯樹くん……っ!
「愉快愉快! 矜持も未来も、
「しんじゃった、なんて……そんなの、いやだよ……いや……いやぁ…っ」
「惨め……この上無く惨めですわね、丸山さん? くっ、あはははははははっ!!!!」
颯樹くんが死んだなんて、そんなの嘘だと思いたいし、いやだよ……有り得ないよ……っ! もう、私も……自分に正直になっても、良い、よね……。
そうして少しした頃、
「……それで、千歌さん。貴女の望みは何ですの?」
「……私に、名を下さい。颯樹の傍に、共に居る為に」
今回はここまでです。如何でしたか?
次回は今回の続きより進めて参りますが、その中でここ暫く出番の当たっていないキャラにスポットを当てて話を進めたいと思いますので、更新をお待ちくださいます様お願い申し上げます。
それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。
最後に……このお話の投稿日である3月20日は、サッドネスメトロノームの二つ名を持つ、Roseliaのギタリスト……
誕生日回は執筆できませんでしたが、この場を借りてお祝いさせてください。