今回は仮面と彩りの方を更新して行きたいと思います。そして本日の投稿話より……主人公の所属陣営が変更となります(パス病みとかでは変わらないが)!
それと後半には、お久しぶりなあの子や……初登場となるメンバーも出て来ますので、楽しみにして頂けると幸いです。
それでは……本編スタートです。
最後までごゆっくりとお楽しみください。
「……それで千歌さん。お話とは何でしょうか」
「私に名前を下さい。颯樹の傍に……彼と共に、在る為に」
Pastel*PalettesとAve Mujicaの対バンライブが集計作業も含めて滞り無く終了し、帰宅する準備を終えて控え室までやって来たのだが……そこに飛び込んで来た光景はと言うと、千歌が祥子に何かを頼んでいる様子だった。
ここまでして何かを頼んでる彼女は初めて見る為、僕は驚きが隠せなかった。それもそのはずで、千歌は余程の事が無い限りは誰かに膝を着いてでも頼み事をするなど、天地がひっくり返っても有り得なかったからだ。
恐らく対バンライブ実施前に話した、僕のパスパレからの移籍に関連する事なのだろうが、彼女にはそこまでする理由が見当たらないのだ。
だからこそ、この光景に疑問を覚えているのだが……。
「千歌さん、貴女の事は存じ上げています。有名なソプラノ歌手である
「私など、母に比べればまだまだ未熟者です。幼少期から音楽の英才教育を受けて来てもなお、自分にはまだ足りないと思えてしまうのですから」
「その精神は、実に謙虚で素晴らしい物ですわ。自らの力を過信せず、現状に甘える事無く常に上を目指す……正しく
……やっぱり、千歌の事も知っていたか。
祥子がそこまでの情報通だと言う事は、つい先日の話し合いの際にも分かっていた事だが、改めてその話を聞くと関心より驚愕が先に来てしまう。自分の事では無いはずなのに、知る必要性など皆無だと言うのに……彼女は千歌の事も耳に挟んでいた。
……これはとんでもない事だ。
何が祥子の心を動かし、その手の情報を隅々まで掴むに至ったのか……今度はそこが気になる所だ。
「ですが……貴女が私たちの中に加わる理由は無いはず。それを理解出来ていても尚、Ave Mujicaの末席に加わりたい……その理由をお聞きしても構いませんか?」
祥子は千歌にそう問いかけた。
それを聞いた千歌は、祥子に一言断りを入れてから……話し始めた。
「貴女もご存知の通り、私は音楽の家系に産まれました。時間が空いた時はいつもお稽古事が大半を占めていて、気の許せる学友と何も考えずにただ遊ぶ事など……私とは縁遠い世界なのだと諦めかけていました。ですが、そんな私に光をくれたのは……颯樹なのです」
「……つまり、貴女は颯樹さんに恩を感じてるのですね?」
「はい。狭い窮屈な世界から解き放ってくれた彼は、私にとっての太陽でした。彼と一緒に居ると、私が今まで知り得なかった物を知る事ができたのです。……ですが、彼には秘密があった」
……あっ、そこまで言うとはさすがに聞いてない。
「お止めなさい」
「……しかし」
「貴女にとってそれは禁忌の領域。そして……思い出したくない過去のはずです。無闇矢鱈に口を割っては行けませんわ」
「……」
「思い出したくない物を、理性を押し殺して無理に思い出す必要はありません。これから私たちは同じ穴の狢……貴女にはこう言い替えた方が分かりやすいでしょうか」
祥子はそう言った後、その場に膝を折って千歌と真っ直ぐに視線を合わせ……彼女の瞳を見つめながら片手を取り、優しく握った後に諭す様な口調でこう続けた。
「私たちはそう……共犯者なのですわ。例えるなら、罪知らぬ、無尽の貪欲……貴女は過去に一切甘える事無く未来を見据えている。しかし、その内には心の底から慕う彼に対しての偏愛が覗く。そしてそれは、今も尽きる事無く貴女自身を満たし、彼に危害を成す者に対しての憎しみが取り巻いている」
……遠巻きに聞いている身だが、彼女の言葉は女神だとすら思えてしまった。傍から見れば悪魔だとも取れそうな物だが、僕自身は千歌のこれまでを知っている立場の為、祥子の言った事に少なからず心当たりがあるのが事実だった。
思えば……千歌が要所要所で不機嫌になっていたのは、自分自身に対して害を齎す行為の他に、僕が関わる所もあったのだと思う。その都度彼女に対しては精神を落ち着ける様に宥め、気分をあまり損ねない様にしていたのだが……どうやら千歌自身に関してはその限りでは無かったらしい。
自らの障害となりかねない存在に対しては……冷徹で、尚且つ狡猾に。そして自らの利益になり得る者には、心優しく素直な自分で。
……これ程までに自然な、第一印象だけ見ればお淑やかで優等生だと思われやすい彼女は……僕と言う存在と出会った事で、いい意味でも悪い意味でも成長を遂げたのだと理解出来る。
「……オディウミス」
「……えっ?」
「憎悪に囚われ、悲しみを背負いし哀れな操り人形……バンド活動の際は、そう名乗るのです。ヴァニタスの指揮の元、望むがままに踊り唄う……仮初に破滅を齎す歌い手として」
「オディウミス……それが、私の名前」
千歌が今し方自分に与えられた
「強く気高く、凛と咲き誇る穢れ無き一輪の華よ……貴女の残りの人生、全て私に下さいませんか? 私たちには貴女の力が必要なのです」
「……分かりました。そのお誘い、私で良ければ謹んでお受けいたします」
これでまた一つ、仮初の命を宿した人形が名を持ち……その産声を上げた。
「その言葉を待っていましたわ」
「……少し質問を良いでしょうか」
「ええ、構いません。どうなさいましたか?」
「先程聞いた中に、私の聞き慣れない名がありましたが、それは一体?」
「……お答えしましょう。その方は貴女をここへ招いて、生まれ変わるべくしてこの場にいる。そしてその名に相応しい方は、今私たちの近くに」
……あっ、千歌と目が合った。マズイ。
「まさか!」
「はい、そのまさかですわ。……そこで私たちの会話を盗み聞きして立ち去ろうなどと、随分良い趣味をしていらっしゃるのですね。私とした事が、一本取られましたわ……颯樹さん?」
あー、もうこれは観念して出て来る他無いか。
祥子からの呼び出しを受けた僕は、背に背負った荷物をそのままにして控え室の中に入った。千歌は驚いた顔をしていたが、祥子の方はと言うと……まるで全て予想通りと言わんばかりの表情だった。
「颯樹……全て、聞いていたのですか……」
「うん、バッチリと。この前の千歌の言動から察するに、これはもしかしてと思ったけど……案の定で納得したよ」
「申し訳ありません! 私は、颯樹に何の断りも無く!」
「良いよ。千歌に苦労をかけさせているのは僕だ、千歌が気にする事じゃない」
「ですがっ! ……すみません、出過ぎた真似を」
更なる発言をしようとした千歌は、自分の過失に気づいたのか直ぐに引き下がった。そして僕はその場にすくっと立ち直って毅然とした立ち姿になった祥子と向き合った。……対バンライブの結果はもう知っての通りだから、あとは事前に交わされた契約を果たすまでだ。
……獅音も来たか。
なら、心置き無く本題に入ろうかな。
「祥子、対バンライブの結果は……もう知ってるね?」
「存じて居ますわ。口ほどにもありませんでした」
「今の彩たちは、あれが限界と言う事だ。彼女たちも少しは考え直してくれると思うけど」
「買い被りすぎだと思いますが……そこは個人的な観点が混ざる所。今はそう言う話は無しにしましょう」
そんな話をして、やっと本題に入る。
「颯樹さん、今回の対バンライブの前にお話させて頂いた件について……改めて説明が必要ですか?」
「いや、不要だ」
「では……んんッ。貴方の残りの人生、全て私に下さいませんか? 私たちには貴方の力が必要なのです」
「……こんな僕で良ければ」
僕は一度
若干やり方が結婚を誓う時のそれと同じだが……この際そんな事は言っていられない。……何か後ろががやがやと鳴りだしたけど、もうなるようになれだ!
「仰せのままに、お嬢様」
「……あら、そんな言い方をして良いんですの? 私は構いませんが、初華たちが気にしますわよ?」
「あとで僕の方から弁明はする。問題無い」
「そうですか……では。ようこそ、
こうして、僕はヴァニタス……千歌はオディウミスと言う名を
……そして、そんな直後。
「ん、颯樹先輩。スマホが鳴ってますよ?」
「……あ、本当だ。ありがとう初華。誰からだ……あっ」
「颯樹さん、どうしたんですか一体……えっ」
着信が入った事を報せるアラームが鳴り、僕はディスプレイの電源を着けて確認した。それを聞いた獅音も気になって見に来たのだが……。
「「そよ(さん)からだ……」」
「はぁ……」
Ave Mujicaとパスパレの対バンライブが無事に終わったと思いきや、今度は
「何もため息つかなくてもいいだろ……」
「つきたくもなりますよ……」
それはそうだ。颯樹さん宛ての電話には愛音さんが出るし、その愛音さん(の一方的)呼び出しだから余計に心配になってくる……。それ以前に僕と
「すみません、やっぱり僕だけ帰ってもいいですか?」
「もし帰ったら学校で色々追求されるから止めとけ」
……痛いところ突いてくるなぁ。しかし颯樹さんの指摘も
そう思い腹を括った僕は颯樹さんと一緒にRiNGの中に入った。そして中に入るとすぐに受付付近でスマホを弄りながら待っていたそよさんを見つけたのだ。そして僕たちはそよさんに近づいた。
「待ってたよ。颯樹さんと……獅音くん」
「お待たせ、そよ」
そよさんは僕たちの存在に気づくと、スマホを仕舞って声を掛けてきた。颯樹さんには普段通りだけど、僕を見るなり『何でいるの?』って言いたげな表情で見てきたので、颯樹さんは軽く彼女に経緯を説明した。
「そう……。何かごめんね」
颯樹さんから説明を聞いたそよさん何処か疲れた表情をして僕に謝りながらため息をついた。うん、謝りたいのは僕の方だからね?
「……早く本題に入ろう。そよ、案内頼む」
此処で時間を使うのは無駄だと判断した颯樹さんは他のメンバーの所に案内するよう促した。それを受けてそよさんは『ついて来て』と一言言って歩き始める。僕たちもそれを受けてそよさんの後を追いかける。
そしてそよさん案内の元、到着したのはRiNG内のスタジオ前であった。なるほど……どうやら練習の最中に呼び出したのか。でもいいのかな、練習中に……と思ったけど愛音さんのことだ。どうせ思い付きで即行動に移したんだろう。
僕がそう考えているのを尻目にそよさんはスタジオの扉のノブに手に持って、そのまま扉を開けてスタジオ内に入った。それに追うかのように僕たちも後から続いた。
「愛音ちゃん、颯樹さんと獅音くんが『それもこれも全部そよ(りん)が!』……何やってるの2人とも?」
僕たちがスタジオ内に入って一番目立ったのが、椎名さんと桃色の髪を長めに伸ばしている少女……
「あっ、そよりんやっと来たー!」
「ついさっき来たんだけど……あとそよりんはやめてって言ってるでしょ?」
愛音さんが僕ら……主にそよさんの存在に気づいたけど……そのそよりんって何? 僕の知らぬ間にまた変なあだ名を付けてたの?
「……君が愛音か。僕は盛谷 颯樹、よろしくな愛音」
「
これ以上時間を無駄にするわけにはいかないと感じた颯樹さんは、無理矢理愛音さんと自己紹介をした。
「オイ愛音。ホントにコイツを呼び出したのか? 私はアレだけ反対したじゃないか!」
しかし……そこに割り込むかの様に、椎名さんが僕たちの存在に漸く気づいたらしい……。僕たち(というより僕)に指を差しながら追及してきた。
「りっきー酷くない? 一時期とはいえ一緒にいた仲じゃん」
「私は仲間だって認めてないからな!」
愛音さんが僕を擁護したけど、その言葉は勝手にメンバーから抜けた僕にとって結構効くから止めてほしいんだけど……。
「ん? 立希……1回キミには人に対しての口の利き方から教えを説くべきかな? かな?」
そこに颯樹さんが怒りに満ちた目をしながら愛音さんと椎名さんの間に割り込んできた。今も目は笑ってないけど指を鳴らして2人を威嚇している。
「やーい! りっきー怒られてやん「愛音、お前もな」えっ! 何で私もー⁉︎」
いや、貴女が文句を言える立場じゃありませんよ? だって、僕たちはそよさんを経由して、無理矢理貴女に呼び出されたのだから。
「愛音ちゃん? 私を介して颯樹さん達をここに呼び出したんだよ? 文句を言える立場じゃないよね……?」
そよさん、その怒りはごもっともです。どうやら彼女は僕と同じ事を考えていたようだ。
「颯樹さん、これは良い機会です……二人纏めてお説教しちゃいましょう。構いませんよね?」
「無論だ。寧ろそうするつもりだったから、問題無いよ」
颯樹さんとそよさんのそんなやりとりを聞いた愛音さんと椎名さんは、血の気が引いたように顔が真っ青に染まった。そして次の瞬間……颯樹さんは椎名さんを、そよさんは愛音さんの首根っこを掴んで、そのまま二人を引き摺る形でスタジオを出た。
数秒間唖然と……それと同時に呆れながらも、その場にいた灰色の髪をショートカットにした少女……
今回はここまでです。如何でしたか?
次回はこの続きより始めたいと思いますので、更新通知をお待ち下さいます様お願い申し上げます。
それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。