【仮面と彩りの狂騒曲】の更新……前回更新からひと月以上も期間が空いてしまい、大変申し訳ありませんでした!遅れた原因は挙げればキリがないのですが、一重に己の未熟さが招いた結果だと反省致す所存です。
今回のお話なのですが、出て来るヒロイン達がいつものメンバーと違っております。やる内容は今の時期にピッタリな物であるのは間違い無いのですが、作者である私自身も右左が分からぬ状態で書いております故、多少の誤差がありましてもお許し頂けると幸いです。
それでは、本編スタートです。
最後までごゆっくりとお楽しみください。
「おはようございます、先輩」
「颯樹さん、おはようございます♪」
「おはよう、二人とも。もう準備は出来てるのかな?」
僕が初華とまなにそう質問すると、二人はそれぞれ万端な旨を伝える様に僕に荷物を見せて来た。やっぱり女の子にとって海や水着の関連の話が出ると、誰でもはしゃぎたくなって来る物らしい。普段は大人びたクールな雰囲気が売りの初華ですら、この話が来た時は眼を輝かせていたのは記憶に新しい所だ。
花音たちとのお出かけを終えて、その数日後……sumimiのマネージャーとして活動していた僕の元に届いたのは、なんと水着のグラビア撮影をさせて欲しいと言う物だった。今の時期はその手の話題がとても多く、仕事の内容もそれに紐付いた物になるのはごく自然な所だろう。
ただ、僕の場合は直近で海に行った経験があるので……今回は少し遠慮しようかと思った矢先、プロデューサーからこんな言葉を貰ってしまった。
『盛谷くん、キミは確かに……たくさんの女の子から言い寄られ易い存在だろうから、この手の話題に忌避感を感じるのは道理と言うモノ。でもね……我々としてはこの事務所に所属して間も無いキミには、積極的に仕事に参加して欲しいんだ』
『は、はぁ……』
『それに、三角くんや純田くんだって、キミが付き添ってあげれば喜ぶと思うが……。どうせなら、キミも混じって撮影に参加して来ると良いさ。撮影を担当する主任とは旧くからの仲なんだ、僕から一つ話しておくから、気楽にやっておいで』
……と、言う事である。
プロデューサーの顔見知りで、尚且つ旧知の仲の方が担当されるのなら、尚更今回の事案を取り下げる事だって出来ただろう、と考えたのはもうタラレバになってしまうのだが。
先方からの話に拠れば、撮影を行う期間は二日間を見ているらしいのだが、雑誌掲載に使えそうな物が豊作であったなら、二日目を待たずして終了の流れを考えてるとの事で。向こうとしても猛暑日が連日して続くこの状況下で、あまり一つの事象に手をかけ過ぎるのは悪手と判断したのだろう。
「(まあ、僕の考えすぎならそれで良いんだけど……)」
そう思った僕は、信号に停められた隙を見計らって談笑中の
……まあ、本人たちにとって楽しい仕事になるならば、僕一人程度の犠牲はそこまででも無いだろうが。
「そう言えば颯樹さんって」
「ん、運転しながらの応答になるけど、そこはごめんね。どうしたの?」
「颯樹さんって私たちの前にも、マネージャーのお仕事をしてたんですよね? もしかして、その人たちともこう言う事してたんですか?」
んー、どうだろう……あの時は結局、ズルズルと引き摺られるままだったからなぁ。そう言う関連のお仕事こそ来た事はあるけど、あまり平穏無事に終わった試しは無かった気がするね。今でも虎視眈々と僕の様子を伺ってる面子が居るし。
僕は運転してる車のハンドルを器用に動かしつつ、まなからの問い掛けに答える事にした。
「まあ、無い訳じゃないよ。ただ……自分の運転する車で何処かへいつものメンバー以外を連れて行く、ってのは初めてなだけ」
「そうじゃなくてっ」
「ん、ああ……ごめん。事ある毎に誘われて渋々引っ張り出されるもんだから、正直対応するのに疲れるのが本音と言った所かな。……多分、初華は薄々気づいただろうとは思うけど」
僕の最後にボソッと言った言葉が聞き取れたのか、終始困惑するまなを他所に初華はこくこくと頷いていた。彼女としては、対バンライブの終わり際に聞こえて来た……傍から見れば見苦しいまでの縋り様に、心底呆れていたのだと後に察する事が出来た。
「でも今回は別。二人とも真面目に頑張ってるし、レッスンの取り組み様だって文句無し……もしかしたら、何処かでリフレッシュさせて貰えるかもね」
「そうですね。だけど、そうする為には」
「よくわかってるじゃん、初華」
……ほんと、よく出来た後輩だよ……。
まなに関して言えば、さっきの小声で言った言葉を聞き取っていないにしても、初華と同じ様にキチンと自分のやるべき事を見据えてる。この様にユニットメンバー全員が同じ方向を向いている、と言うのは、サポートする側から見たらこれほど頼もしいと思える事は無い。
前任の所だとやれ海に着くなり駆け出したり、やれ厳しく窘めた傍から甘えて来るなんて……もう僕からしてみれば、日常茶飯事だったのだ。
それを考えれば、この二人のサポートに就けている今この状況が本当に心地好い物だと実感させてくれる。
そうして暫く車を走らせていると、駐車予定の場所の近くに一人の男性が立っていた。その人は車が自分の方を向いてると分かった途端、右手を軽く上げて合図をして来たのだ。
……なるほど、あの人か。
恐らく撮影の担当スタッフさん達は、撮影機材を載せた車内で待機してるだろうから、主任を担う人だけ出て対応すると言う形式らしいな。
そこまで考え付いた僕は、先ず駐車場に車を停めた後……二人に車内で待機する様に伝えてから、先程手を振っていた男性と合流する事にした。
「すみません、お待たせしました」
「いやいや、こっちこそ無理を言ってごめんね。道中は大丈夫だったかい?」
「ええ、何事も支障無く。改めて……sumimiのマネージャーをしてます、盛谷 颯樹です。担当のアイドル共々、よろしくお願いします」
「こちらこそ。僕は
僕は濱瀬さんと手を取り合い、固い握手を交わした。
後々聞く所によると……彼は当初、この件の担当では無かったそうで。だが、先の話にもあった様に、ウチのプロデューサーが対応したと言う事で彼に話が伝わり、面識があるのであれば色々と都合が良い旨らしく引き受けたとの事だ。
「それにしても武文から聞いてた通りだよ。まさか、キミの受け持つアイドル達を担当できるなんてツイてるね」
「……と、言いますと?」
「あれ、知らないのかい? 僕たち編集者の間ではかなり話題になっていてね、キミが受け持った担当は口を揃えて好評を述べていたんだ……それに白鷺 千聖のお気に入りとなれば、尚更と言う物だよ」
あー、なるほど……それなら納得が行く。
その様に何処か納得した様な僕を気遣ったのか、濱瀬さんはその後に自分はそこまで気にはしてない、と添えて来たので、僕の懸念事項は一旦区切る事が出来た。
「さて、当初の予定では今から更衣を済ませてから撮影との事ですが……」
「お、よく覚えていたね。さすがと言いたい所だけど……今日は予定を変更して、海で遊んで来ると良いよ」
「……え?」
僕が頭に疑問符を浮かべていると、濱瀬さんの口からこの状況になった理由が伝えられた。
「昨今の天気とそれが齎す異常事態は、キミも話を聞いてる通りだろう。そんな中で来て早々にお仕事……と言うのは、キミや僕たち撮影陣は良いかもしれないが、それはアイドルたちの立場になればイイ顔はしないはずだ」
「え、ええ……仰る通りですね」
「そこで、だ。せっかく二日間に渡って仕事を組んだし、今日一日は思いっきり遊んでくると良いさ。キミにしてみれば、少々予想外だろうけど」
……まるで心の内を言い当てられた気分だ。
未だにこう言う感覚はむず痒く、慣れない人からするとあまり良い気分では無いのは確かだ。まあ此方の状況にも配慮して貰ってる都合上、あまり意見出来たものでは無いのだが。
「無論、翌日は確り撮影に臨んで貰う。宿泊先は良い所を僕が押さえているし、アイドル達とより親交を深める良い機会になる。それに……」
「それに、何ですか?」
濱瀬さんの言葉に、何処か含みを持たせる様な言い方が聞こえたので……僕は彼にその詳細を問いかけた。すると……。
「それに、もしかしたら……僕らにとって一大スクープネタを押さえられるかもしれないしね。キミの所の事務所は、恋愛に関しては個人の自由と聞いてるし」
……や、やられたッ! これが狙いか!
薄々何か裏がありそうだなーとか思っては居たけど、まさかこれが見たいがためにこの仕事を引き受けたんか! そこまで考えた上で行動に踏み切っているのなら、完全なる策士と言っても遜色無いほどだ。
……今更だけど、本当に今回の撮影って平穏無事に終わるんだろうか……。僕の考え過ぎならそこまでで良いけど、非常事態になった場合の事を考えると、一瞬たりとも気が抜けない始末になってしまう。
さあて、これからどうしたものか……。
そんな事を頭で考えながらも、僕は一度濱瀬さんと解散して自分の運転して来た車に戻り、中で待機していた二人に予定の変更が行なわれた旨を説明する事にした。二人の話を聞く様は至って真面目な物だったので、これから起こるであろう出来事の不安要素を取り除いてくれる様だった。
……ただ、先程僕が車の後部座席のドアを開けた時、二人とも何やら慌てている様子だったのが、僕としては少し気がかりではあったのだが。
「まなちゃん、少々予定がズレたけど……あとは予定通りに」
「うん。颯樹さんの驚く顔、早く見てみたいな♪」
「そうなるかどうかは私たちの頑張り次第……それじゃあ、決行しよっか」
「了解しました♪」
……ほんと、無事に二日間が終わるといいけどね……。
「ったく、何でこうなるかなぁ……」
僕は先程濱瀬さんから伝えられた言葉に、若干の悪態を吐きながらビーチパラソルを用意していた。撮影するモデル達の身体を痛めない様に……との配慮も考えてレジャーシートが敷かれていて、考えていた当初の予定では、全員が現地に来た段階で早速撮影に移るのだと予想が出来た。
ただまあ……連日の暑さやそれが齎す体調不良等が影響したのか、予定を少し変更して今日一日は思う存分遊ばせよう、と言う話になったのだ。
だけど僕としては、濱瀬さんから出て来たあの言葉が今でも脳裏を過ぎっており、一瞬の予断も許さない状況になっている。その為……着替えに行く前に初華たちからはすごく心配されたし、見かねたスタッフさんからもフォローが入る始末だった。
「全くもう……何でこう、僕が関わると穏便に事が終えられないのかな、って冷たっ! なになに、どしたのっ!」
「あっ……すみません、先輩。着替え終わったのでその序に飲み物も持って来ようと思ったんですけど……大丈夫ですか?」
「あ、ああ……初華か。ごめん、取り乱した」
「どうぞ、先輩の分です」
そう言われて僕は初華から飲み物を受け取り、プルトップを開けて一口流し込んだ。彼女が今渡してくれた物はどうやら、自販機で売られている麦茶の様で……炎天下の中で減りに減った水分を補ってくれる物だった。
本当によく出来た後輩だと心の中で思いつつ、僕は初華の方に改めて向き直る事にした。
「ありがとう、初華。少しだけ気分が落ち着いた」
「それなら良かったです。それと……どうですか、私の水着の感想は」
「えっ、水着……って、あぁ」
僕は初華からその言葉を受けて、彼女が一体何を求めているのかを瞬間で察する事が出来た。……初華の現在着ている水着は、黒と白のモノトーンで構成されたビキニで、上下共にチェック柄の着いた物だった。
アイドル活動をする時の衣装がこれに近い配色なので、普段見慣れた姿の彼女の一面と同時に……身体のラインが確り整って、道行く誰もが振り返る程の美少女の姿も見せていた。
「似合ってるよ、初華。とてもキレイだ」
「お褒めに預かり光栄です。もうじき、まなちゃんも」
「まな? そう言えばさっきから……うわっ!」
「ふふっ、だーれだ♪」
初華の相手をしている傍らで、彼女の相方を探している途中でふと視界が遮られる感覚があった。目の前に居る初華の仕業では無いので、この状況から察するにその件の彼女だと分かる。
……まあ、こう言うのは何度もやられ慣れてるけど……ここは一つ
「さあ、誰だろ。視界が塞がれていて見えないよ?」
「じゃあ……ヒントをあげます。と言っても、颯樹さんならもうわかると思いますけど♪」
「え?」
そう答えるや否や、視界が開けて周囲の様子を確認できる状態になったと同時に……背中から何か柔らかい感覚が伝わって来るのが分かった。その感覚を伝えて来ている人物は、もう僕に答えて欲しいとばかりに急かしている様だった。
……だったら、いい加減に答えてあげますか。
ここで長ったらしく時間稼ぎをする謂れは無いし、せっかくのお休みを無駄にしたくないからね。
「もしかして、これをやったのって……まな?」
「はい、私です♪」
そう言ってまなは僕からするりと離れて、初華の隣に移動して自らの水着を僕に見える様にした。その際に少し前屈みになり、手を後ろで組んでいる為……男性を堕とす技術を何処かで身に付けているのだと察する事になった。
まなの着ている水着は……色とりどりの花々がプリントされた暖色系のフレアビキニで、胸元と下に
そして二人が並んだ光景を見た時に分かったのは、初華は黒の落ち着いた色合いをしたサンダルだったのだが……まなは自分の着ている水着と、そこまで変わらない同系色の物を履いていた。
各自が選んだ履き物であっても、個々の性格がその時に色濃く出る為……こう言うのは見ていて新鮮だと感じたりする。
「さて、私たちの水着姿を堪能して貰った後は……」
「次は……これ♪」
初華が言い出した後にまなが取り出したのは、ごく一般的な何処でも見かけるタイプの日焼け止めクリーム。この場合だと、サンオイルとかの類を想像する人も多いだろうが……そこは各々の想像力で補って欲しい所だ。
……え、日焼け止めなら二人で塗れば……。
と思っていたのは、どうやら僕だけだったらしく……二人は僕の両腕にそれぞれ絡み付いて、片方は手に持った日焼け止めを一緒に見せびらかす様に、僕へと強請って来た。
……あー、結局こうなる運命なんですね……。
心の中でこれからの事に不安を抱きつつも、僕は欲しがりモードになった二人を宥めながら、事前に設置したビーチパラソルの方へ向かう事になった。
今回はここまでです。如何でしたか?
本編にてお届けしました内容は、今回を含めて3話ほどを計画しております。その後は1話だけ幕間を挟みながら、次章となる第2章へと突入して行きたいと考えています。
ちなみに次回は、今回の続きとなります。
それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。