今日も今日とて…『仮面と彩りの狂騒曲』を更新しようと思います(火、水、木、土って週4更新出来てるのはめちゃくちゃ凄いんだよ)。
それでは、本編スタートです。
最後までごゆっくりとお楽しみください。
「この辺りに来るのは久しぶりだね」
sumimiのお仕事も無く、急な呼び出しも無くて大学もお休みの今日この日……僕は気分転換も兼ねて、高校時代の時によく通っていた場所まで徒歩で来ていた。この通りは花咲川商店街もあり、常日頃からご贔屓にしている『羽沢珈琲店』もそこに存在していた。
通りを進んで行くと、最近はめっきり行く機会が減ってしまった『やまぶきベーカリー』も見えたり、色々懐かしい思い出が込み上げる事になった。
「ほんと、どれもこれも変わらないね……何だか高校を卒業したのが昨日の様に思えて来るよ。……っと、ここだね」
僕はマップ確認の為に見ていたスマホを確認し、表示されている内容と目の前にある建物を見比べて、正しい事を確認した後にポケットの中に仕舞った。そこには『ライブハウス CiRCLE』と書かれていて、高校の時にはそこでパスパレやそれ以外のバンドとも関わる事が多かった。
例えば、本格的な演奏と音楽で人気も高く、実力派揃いのガールズバンド──
世間一般で言えば、お嬢様学校と名高い月ノ森女子学院で結成された──
そして……幼少期に見た夜空に輝く星の煌めき。その輝きを追いかけて誕生した、演奏を見たり音楽を聴いている者に元気を与えるガールズバンド──
どのバンドも一癖も二癖もある者たちだったが、その中に関わると少し疲れこそあるものの、かなり充実していたのをよく覚えている。実はパスパレのメンバー以外にも、今年から大学に進んだ者が何人か居るのだが……その話はまたの機会にしようか。
「さて、久しぶりに来たら先ずは挨拶だよね」
僕はそう言って階段を登ってカフェスペースを通過し、自動ドアを通ってCiRCLEの中へと入った。
「いらっしゃいませ! おっ、これはこれは颯樹くん。元気にしてた?」
「お久しぶりです、まりなさん。と言っても少しですが」
「あはは……そうだね。ここに前回来たのって、三月だったから」
「ええ、高校卒業前に一度」
そんな事を話しながら、僕は受付に立っていた女性スタッフと談笑をしていた。
この女性は
性格はとても明るく気さくで、初めてCiRCLEに来た人であってもこの様に自分から声をかける事が常になっている。それ故にここの利用客と仲良くなる事も必然的に多かったりするのだ。
「そう言えば、今日はどうしてここに?」
「久しぶりにここに来たくなったんです。まりなさんの元気そうな顔を見たら安心しました」
「それは嬉しい事を言ってくれるね〜。ふふっ、私はいつも通りだよ」
「ですね」
そんな事を話していると……。
「こんにちにゃむにゃむ〜!」
……ん、何だろこれ。随分特徴的な言葉だけど……。
「ああ、にゃむちさんだね」
「『にゃむち』……? それって本名ですか?」
「ううん、ハンドルネームだよ。颯樹くんは知ってたりするのかな? 色んなメイク動画とかを挙げてて、今女の子の間で人気が高い動画配信者さんなんだ〜」
「なるほど……」
僕たちの会話を他所に、先程『にゃむち』と呼ばれた人は周りなどお構い無しに撮影を続けていた。見た目からすると瑠唯やかおちゃんにレイと同じくらいの背丈で、パッと見ただけで年齢とかを察するのは失礼に当たるけれど……第一印象だけだと、僕と同じ大学生か社会人くらいだろうと思えた。
それでメイク動画等の配信者となると、多少とは言え流行に敏感な所なども持ち合わせていないと行けない為……甘く見積っても20歳かその位だろうか、と思ったのはここだけの話だ。
「今日はガールズバンドの聖地と言われているここ……
……てか、すごいテンションだなおい。
それとまりなさん、さっきの説明で嬉しくなる気持ちはわかりますけど、今現在動画に写ってるかもしれないんですから、表情筋をどうにかしないと怪しまれますって。……て、え?
「ねーねー、ここで何やってるのー?」
「ん?」
「げっ、あ、あこっ!」
先程からフロントが騒がしいのを聞きつけたのか、紫色の髪をツインテール(先っぽがくるくるとカールしてる)にした少女──自らを漆黒の大魔姫と称する厨二病で、Roseliaのドラマー……
当然にゃむちと言う人と僕は驚くので、先の反応にも納得が行くのだが……僕に関して見れば、こう言うのは非常に不味かったりする。あこはガールズバンド(MyGO!!!!! を除く)のメンバー内でも最年少と言う位置付けで、この手の事は興味本位でしか触れる機会の無い事案だ。
だからこそ、この撮影に映り込む事自体危険視するのが普通だったりするのだが……。
「あ、颯兄! やっほー! 最近めっきり連絡寄越さないから心配したよー!」
「おまっ、バカ! それをここで言うな!」
「ほほぉ……?」
あっ、あのバカ。こんな時になんて事を。
「もしかして、貴方って……盛谷 颯樹さんだったり?」
「……そうだと言ったら?」
「うっわぁ、すっごい偶然! ねーねー、あたしと一緒に動画撮影でも」
「いえ結構です」
「そんな事言わずにさ〜」
そう言われながらにゃむちさんに詰め寄られ、次第にはまりなさんの顔が直ぐ横に見えるくらいまで来てしまった。こ、後輩も見てるし何ならまりなさんも横から中睦まじそうに見てるし!?
だ、誰か何とかしてくれ────!
「……っ、あこちゃんっ!」
「あっ、おーいりんりーん!」
「すみません、でした……直ぐに退散します、ので……。友希那さん達も待ってるし、戻ろう……ね?」
「えーっ」
た、助かった……。
先程あこを軽く制止して止めた女性は……名を
ちなみに僕は燐子とは
「り、燐子……助けてくれて……え?」
「颯樹くん、今の今まで何を……していたの? わたしや、今井さんに何の報告も無く……」
「え、いや、何の事だか」
「……お説教、ですっ」
「あーあ、残念……」
せっかく
「そうだにゃむさん、せっかくだから見学していきます?」
「えっ! いいんですか⁉︎あと動画撮影もOKですか⁉︎」
「いいよ。でも私はいいけど、他の子を撮影する時はちゃんと許可を取ってね?」
でもなんとッ! さっきの受付のお姉さん(まりなさんって言ってたね……)がCiRCLEの見学をOKしてくれた! これは嬉しい誤算だけど、動画再生数を上げるチャンスだから棒に振るうわけにはいかないッ!
「(そうだ……。ここにはRoseliaのあこちゃんと燐子ちゃんもいるから、もしかしたら他のRoseliaのメンバーも来ていたりするかも……? そうすれば再生数も更に鰻登りの如く跳ね上がるぞ〜)」
そうなれば即決行ッ! あたしはまりなさんにRoseliaが練習してる番号の部屋を教えて貰うと同時にさっきの諸注意の確認をしてきた。そしてそれが漸く終わると、さっき教えてくれた部屋の前まで行って扉をノックしたんだけど、返事すらなかった……はて?
「おっかしーな、此処だって言ってたんだけどなー」
仕方ない、こうなったら無断で……というよりコッソリと入って適当に挨拶回りとか言ってあとは言いくるめて撮影しちゃおう、っと♪ そう決心したあたしは扉のノブを掴んで中に入った。
「……はにゃ?」
しかしあたしが部屋に入ると、そこにはあたしが想像していた光景じゃなかった。何故なら……。
「「「…………」」」
入って直ぐに一際目立っていた、Roseliaの燐子ちゃんとリサちゃんの二人と……何故か2人の前で正座させられている盛谷 颯樹がいたのであった。その光景にあたしは空いた口が塞がらず、入り口付近に立っていた紗夜ちゃんから小言を貰っちゃった。
えー、何がどうしてどうなればそうなるの……。
そんな事を思いながらも、あたしは事情を説明してこっそりと状況を伺わせてもらう事にした。ただ、その発端を見かけた立場ではあったので。
「あ、あのー。一体何を……」
「「?」」
「アッ、ゴメンナサイテッタイシマス」
こ、怖っ! 何あれ、触れただけで人をも○せるくらい殺気立ってるんだけど! いやー、これが乙女の怒りって言うのか……いやいや、あたしも立派な女だし、その気になればそう言う事もできるんだろうけど……でもそれを鑑みたって、あれはヤバいって。
……あ、この状況に見かねた紗夜ちゃんが規則正しい靴音を鳴らして動き出した。やっぱ、メンバーから見ててもあれは異常と言う事なんだよね……うんうん、間違ってなくて良かった。
「なぁに紗夜。今、アタシたちは颯樹にお説教…っ!?」
「白金さん、気持ちを一旦落ち着けてください。そうしなければ今後の練習に影響が出るかもしれません」
「は、はい…」
「さて今井さん。貴女にはみっちりとお説教をする必要性がありそうですね。高校を卒業して一皮剥けたのかと思ったら、全くの変化無し……その根性、私が直に叩き直します」
「ちょっ、引っ張らないで! てか、助けて三人ともー、いやぁぁぁぁぁぁぁ!」
そんな断末魔と共に、リサちゃんは紗夜ちゃんにスタジオの外へ連行されて行った。自分から見学したい、と言っておいてなんだけど……これ、どうしよう……。
「……祐天寺さん、だったかしら。つまらない物を見せてごめんなさい。颯樹の事になると、あの二人はいつもああなの」
「あ、いいえ……お構い無くで……って、どうしてあたしの名前を?」
「貴女確かドラムを叩いていたでしょう? 曲の作曲をする時に見かけた動画で知ったのよ。素晴らしい演奏だわ」
うそっ、友希那ちゃんから褒められたっ!?
そう言うのを聞くと、頑張ってよかった────!
友希那ちゃんのイメージって、ちょっと怖いとかその手の類が多いけど、音楽に対しては真摯に向き合っていて、それで居て一切妥協せず常に前を向いている……そう言うのって、簡単に出来るようだけど実際は難しいんだよね〜。
「……良いわ、撮影しても大丈夫よ」
「ホントにッ!?」
「ええ、良いわよ。紗夜には後で確認を取って貰えたら、私から言う事は無いわ」
やった、ラッキー!
それを聞いたあたしは撮影に使うスマホを取り出して、準備を進めた。こんな絶好の機会……逃す手は無いッ! そんな事を思っていたら、正座をした影響の硬直から立ち直った盛谷 颯樹が、あたしの所に向かって来ていた。
「すみません、お恥ずかしい所を見せてしまって……」
「あたしは全然大丈夫ー。それよりも、何かあったの? もし良ければその様子を撮影でも!」
「あ、ごめんなさい。撮影に関してはNGなんですが、何があったのかはお教えします」
そう言って彼から語られたのは、次の通りだ。
・三月に高校を卒業してから、ひと月近くも連絡が無かったのは何故か。
・その連絡を寄越さなかったひと月近く、その間は何をしていたのか。
・対バンライブが間近に控えていると聞いたが、それはどう言う経緯でそうなったのか。
この三点に当たるらしい。
正直なところで言えば、一つ目と二つ目はあの二人が怒るのも無理は無いと思うんだよねー。でも、最後のに関しては何故?
「……そう言えば、紗夜から聞いたわ。近く行なわれるそのライブで、颯樹の今後を決めるのだとか。まあ、これを言っていたのは日菜からだから、私は間接的に聞いただけなのだけど」
「な、なるほど……」
「颯樹を勧誘する程のバンド。そんな人たちが、
「でも、颯樹くんは……高校の頃、一緒に居たというだけですけど、わたしの事も、手伝って…くれてました……。同じ生徒会の一員でもあったので、よく分かります」
はっはーん。この盛谷 颯樹と言う男……もしかしてとんでもない大当たりッ!? そうだったら凄く良いところに出会えた!
「ねねっ、物は相談なんだけど…良いかな」
「……何の御用でしょう」
「あたしと一緒に撮影しよう! キミがもし出てくれたらあたしとしてもすごく助かるし!」
「動画撮影に、ですか? うーん、一応僕は事務所の所属でもあるので、其方に先ずは許可を取らないと……」
あちゃー、そう来たかぁー。
確かに事務所に所属してる人なら、先ずはそこの上層部に話をつけないといけないもんね……この分だと撮影はお預けかなー。せっかく再生回数が鰻登りになりつつ、チャンネル登録者数ももっともっと増えたかもしれないのにー。
「でも、動画撮影じゃない目的での歓談なら、僕は喜んでお受けしますよ。祐天寺さん」
「にゃむで良いよ〜。迷惑かけちゃったし、この位はね。あたしの方は『さっきー』って呼ばせて貰おうかなー? あと、敬語は無しで良いから!」
「……なるほど。わかった。それじゃあ、よろしく」
「こちらこそー!」
そうしてあたしは、盛谷 颯樹──改め、さっきーとそんな言葉を交わしつつ、彼と一緒にRoseliaの練習を見学する事となった。その途中で紗夜ちゃんやリサちゃんが戻って来て(後者は少しげっそりしてた)、練習中の輪の中に直ぐに馴染んでいた。
さっきーと動画を撮影出来なかったのは残念だけれど、これはこれでアリかなー。
今回はここまでです。如何でしたか?
次回の更新日は未定としておりますが、筆が乗ればまた日をそこまで空ける事無く更新できそうですので……また更新をする前にはお知らせをしようと思いますので、お楽しみにお待ち下さい。
それではまた次回の更新にてお会いしましょう。
……近日中にバレンタイン記念回……もしかしたら投稿する、かもね?