というか、前回投下して寝るじゃん
朝起きたらお気に入りが400超えてたの見て、寝ぼけてるのかと思いました
ありがとうございます!感謝感謝です!
では、どぞ
「………にしても、こいつ、何なんだ?」
茅場が消えた後、現実世界に戻った俺は、彼から受け取ったプログラムを訝しげに見つめていた。
ユイやエギルがいれば、もっと専門的な解読もできると思うが、今はそんなことはできない。
≪ザ・シード≫の時もそうだったが、彼が遺したものなら、おそらくとんでもない何かというのは間違いないだろうが……
「吉となるか、凶となるか……」
暫く考えた後、俺はそのプログラムをタッチ。
【BB2039.exeを実行しますか? YES/NO】のホロ・ダイアログ
少し考えた後、YESのボタンをタップ
その瞬間、俺の視界周りに巨大な炎が噴き上がった。
炎は体の前に結束すると、ひとつのタイトルロゴが浮かび上がった。
≪BRAIN BURST≫
それを見た瞬間、何か、懐かしいものを見た感覚に襲われた。
燃えさかるタイトルロゴの下に、プログラムをインストールするであろうインジケータ・バーが現れた。
そしてそれが99%になった瞬間――――
「―――っ!?な、なんだ…?」
視界にノイズが走った。
周りはモノクロに変化し、ザ…ザッ……と音を立てながらノイズが大きくなる。
ノイズはドンドン大きくなっていき、ついにプツンと、旧型のテレビを消した時のように、視界が真っ暗になった――――――――
「――――はっ!?」
次に気づくと、そこは真っ暗な暗闇の中。
周りには何もない。
―――いや、あった。
視線の先に、鎧が、鎖に繋がれた鎧があった。
どこかで、見たような鎧。
力なくうなだれるようにして繋がれているソレはどこもかしこもボロボロで、鎧の形をしているのが奇跡のようなものだった。
一歩ずつ、近づいていき、やがてその鎧に触れた。
「―――!………そう…か…」
頭の中に感情が、記憶が、浮かび上がる。
これは
こいつは…自分の出生の秘密を知ってもなお、家族としての絆を求めたんだ。
自分は桐ヶ谷家の人間ではないということを知りながらも、逃げた俺とは違って、こいつは、向き合おうと。
俺がSAOから帰還してから始めたことを、こいつは真実を知った後から始めていたんだ。
―――強い
こんなに強い人物を、俺は消してしまったのか……
「…ごめん……ごめんな…」
涙がこぼれる。
鎧は、何も答えない。
だが――――――
「………え…?」
何か、語り掛けてきた。
喋ってもいない。だが、心でわかる。
――――――スグを―――妹を―――
その時、脳裏に一つの情景が浮かんだ。
周りには、何十体のロボットのような、アバターのようなもの。
その間を、高速で突き進む俺。いや、
そして目の前の、ピエロのような奴に斬りかかり、止められ、弾かれた。
地面に突き刺さった後、その剣の持ち主も吹き飛ばされてきた。
女性だ。しかも、見覚えのある。
金色の髪を、ポニーテールで結び、背中には、半透明な羽。
「リーファ…スグ!?」
彼女は満身創痍だった。黄色いピエロに挑みかかって吹き飛ばされ、その周りのアバターに蹂躙されている。
どこなんだあそこは…助けにいかないと。
妹を、助けなければ。
その時、鎧が淡く光った。
りいいいいん…と、数回、発光する。
「……お前が、連れていってくれるのか…?でも、俺は…」
――――――お前が―――行くんだ――――――俺はもう――戦えないから――――――
その言葉と共に、
そうだ…≪あの世界≫で≪全損≫した≪バーストリンカー≫は、もう戻ることができない
こいつは…≪ミッドナイト・フェンサー≫は、≪全損≫している。
だが、それは
俺は…≪黒の剣士≫キリトは、彼とはまた違う。
≪ブレイン・バースト≫がフラクトライトで人を判別するのなら、
つまり、もう一度…≪あの世界へ≫…≪加速世界≫へ行くことも不可能ではないのだろう。
効果音と共に、ホロ・ウィンドウが目の前に開かれる。
【NAME:Kirito】
【LEVEL:■】
見覚えのある名前が表示された後、その下に一つの文字列
【YOU GOT AN ENHANCED ARMAMENT≪THE MIDNIGHT FENCER≫】
ミッドナイト・フェンサー…真夜中の剣士…
「ミッドナイト・フェンサー…それがあんたの名前なのか…」
レベルの欄は、1と7の間で不規則に点滅している。
キリトのレベルと、ミッドナイト・フェンサーのレベルが入り乱れているのだろう。
恐らく、直葉がいるのは≪無制限中立フィールド≫。レベル1では到達することができない場所だ。
それを、ミッドナイト・フェンサーが、覆そうとシステムに抗っているのだろう。
恐らくこの奇跡は一度だけ。
ならば、彼の心意に応えるためにも…
「ミッドナイト・フェンサー……エンハンスト・アーマメント!」
彼の鎧を身にまとうコマンドを唱える。
SAOの服装であったキリトのアバター上に、彼の鎧が装着される。
細部は多少変わっているが、その姿はかつてのミッドナイト・フェンサーそのもの
そして…
【NAME:Midnight Fencer】
【LEVEL:7】
彼の名前を借りることでシステムに誤認させ、そこに≪ミッドナイト・フェンサー≫が存在すると見せかける。
一度だけの奇跡。この時だけ、俺は自分をミッドナイト・フェンサーと思い込む。
≪心意≫で名前を変えるとか、GMもお手上げだなと考えつつも、この非常事態だし、勘弁してほしい。
俺に≪あの世界≫を破壊する気なんてさらさらない。ただ、妹を救いたいだけなんだから。
「ありがとう、ミッドナイト・フェンサー。後は、任せてくれ」
そう呟くと、深く息を吸い、あの場へ向かうコマンドを唱える。
『アンリミテット・バースト!!』
重なるように、俺の声でいて俺の声でない響きが、同じ言葉を紡いだ――――――
*
「先輩!黒雪姫先輩!!!」
シルバー・クロウ、ハルユキは倒れ込み、自身の呼びかけに一切の反応を示さないブラック・ロータスの体を揺さぶっていた。
「くくくっく……ははははは!!!」
黄の王、イエローレディオが高笑いをあげる。
先ほど彼は、あるリプレイデータを再生していた。
黒の王、ブラック・ロータスが、先代赤の王、レッド・ライダーをその手にかける瞬間の映像だ。
それを見せられたブラック・ロータスは悲鳴をあげ、その場に倒れこみ、動かなくなってしまったのだ。
「≪零化現象≫…ロータス、あんたそこまで…」
スカーレット・レインの言葉に続きを問いかけようとしたハルユキの声は、別の声に掻き消された。
「よくも何度も汚い真似を………!!!」
リーファだ。怒りで体を震わしている彼女は、イエロー・レディオを睨みつける。
「んー?その姿…ああ、長らく姿を現してなかったから消えていたのかと思いましたよ!≪妖精≫リーフ・フェアリー。≪黒の剣士≫ミッドナイト・フェンサーが消えたのは残念でした。彼とは一度、正式な戦いをしてみたかったものですが…」
コイツは―――わかってて挑発してる!!
リーファの兄をこの世界から消した犯人のくせに…!!
「いい加減なことを…言うなぁ――――――ッ!!!」
そう言いながらリーファは腰の長刀を抜き放ち、空いた手を虚空に伸ばす。
「≪ソード・オブ・ミッドナイト≫―――!!」
瞬間、空から黒い雷がリーファの手に落ちた。
そして、その手には漆黒の剣。
「二刀…流……?」
ハルユキが呟いた瞬間、リーファは雄叫びをあげながらイエロー・レディオに向かって飛び出した。
それを皮切りに、周りにいたバーストリンカーたちも攻撃を始める。
「ちくしょうあのバカ…!!こい!強化外……」
「駄目です赤の王!ここであなたの武装を展開したら、機動力を失ってやられます!ここは一点突破でサンシャインシティのリーブポイントまで戻るべきだ!!ハル、キミはマスターを!!」
タクムの制止の声を聞いた二コは舌打ちすると。
「畜生…わかったよ…!」
そう言って走り出した。
*
「二刀流、ですか。かの≪グラファイト・エッジ≫を思い出しますが…あなたの相手をしている暇はないんですよ」
向かってくるリーファを見ながらイエロー・レディオを指を鳴らす。
その音と共に、彼の周りにいたアバターが、一斉にリーファに襲い掛かった。
一対多数、この絶望的な状況になっても、リーファの目は、ただイエロー・レディオだけを見ていた。
迫りくる斬撃を躱し、時には相手を盾にしてレーザー光線を防ぐ。
邪魔な障害は斬り捨て、ただただ目の前の相手へ…
「うあああ―――――ッ!!!」
包囲網を突破し、イエロー・レディオに肉薄したリーファは、ただ闇雲にその剣を振るった。
技もなにもない、その攻撃はあっさりと躱され―――
「ああもう、鬱陶しい!!雑魚は黙ってなさい!!」
兄の剣≪ソード・オブ・ミッドナイト≫を弾かれ、腹に重い衝撃を受けたと思うと、リーファの体は宙を舞っていた。
「が…げほっ……ッ!」
腹にくる激痛に顔をしかめる。
≪無制限中立フィールド≫で受ける攻撃による痛みは、≪通常対戦フィールド≫の約二倍だ。
「ち、逃がしません!≪
イエロー・レディオが必殺技を叫ぶと、クレーターの中のシルバー・クロウ達が、膝をついているのが見えた。
黄属性は幻覚などを得意とする…。幸い。リーファは効果範囲外だったようだ。
――私があいつの注意を引けば…!!
そう思いながら立ち上がり、踏み出そうとしたリーファの目の前に、斬撃。
「く…っ!!」
必死に回避するが、攻撃はリーファの体を浅く切り裂き、彼女の体力ゲージを削った。
反撃に剣を振ろうとするが、その前に小型ミサイルが飛んでくるのが見え、空中に飛び上る。
それを狙いすましたかのように一筋のレーザーが、リーファの足を掠めた。
「きゃあっ!!」
たまらず態勢を崩した彼女の前に、格闘型アバター。
必死に剣で防ごうとするが、そんな守りをあざ笑うように突き出された拳は、リーファの体を軽々と吹き飛ばした。
「…ぁ……あ…ぐっ………」
体力ゲージは残り三割と言ったところ。
しかし、リーファの体はもう動かなかった。
目の前には、漆黒の剣。兄が遺した剣。
立つんだ。立って、戦うんだ。
私は、兄の…桐ケ谷和人の妹なんだから…!
そう思っても、立てない。
体が戦うことを拒否したかのようだ。
…ああ、これが≪零化現象≫か……
デュエルアバターは、本体の闘志で動く。
つまり、その闘志が萎えてしまえば、動かないのだ。
目の前に、十数人のアバターが歩いてくる。
…これで、終わりだ。
自分も、兄と同じ末路を追うのだろうか…………
迫りくる敵を前に、直葉は、一つの言葉を呟いた。
「お兄ちゃん………」
その時、複数の事が起きた。
クレーターの内部で、それまで動きを止めていたブラック・ロータスが、その体を動かした。
イエロー・レディオの必殺技が終わるまでに、シアン・パイルという犠牲を出し、既に逃げることを諦めて交戦していたスカーレット・レインとシルバー・クロウを見て、状況を確認した後、彼らに襲い掛かっていたバーストリンカーを、一気に殲滅した。
そして、リーファと複数のバーストリンカーの間に、何者かが、鋭い衝撃と共に着地した。
「うそ…………」
その見覚えのある姿に、リーファは目を見開いた。
その体を包む、漆黒の鎧。龍の頭部を模したような、これまた漆黒の兜。
彼女の記憶と細部は違うが、そんなこと、リーファにはどうでもよかった。
彼は、その両腰に携えていた二振りのうち、漆黒の剣を抜き放つと、ぎゃりいん!とその場に突き刺した。
「女の子一人を、大勢で攻撃するのは、カッコ悪いなあ……」
その飄々とした口ぶり、その声に、彼女の目からは涙が流れおちるのを感じた。
「スグ、少しだけ待ってろ。こいつら倒して、直ぐ戻る」
「うん…!うん……!!」
加速世界から永久退場して、もう会うことはないと思っていた―――
「……さて、うちの妹を傷つけたお返し、あんたらのポイントで償ってもらうぜ?」
ミッドナイト・フェンサーが、そこにいた。
心意システム万能説
AWの心意は攻撃拡張とかたくさんあるけど、SAOの心意ってボロボロにされた花を復活させたり、不可視の刃放ったり、何でもありですよね
あ、でもレイカーさん車いす動かしてたか
あんまこんなご都合主義みたいなの使いたくないんですが…すみません
キリト君もとい強化外装≪ミッドナイト・フェンサー≫はアリシゼーションの整合騎士の鎧のような感じです。
これならリアル割れも問題ないね!!
リーファがレディオの必殺技に巻き込まれなかったのは、クレーターの外側にいたから…です
レディオの幻覚の中攻撃してた人は外側から普通に攻撃してましたし…
あ、でもあれの範囲が相手なら誰にでもって感じだったら駄目だよね
レディオの意識外にいましたしまあ…とりあえず巻き込まれなかったとしておいてください
では、また次回!