天与の暴君(偽)、王女のヒモになる   作:ツーカーさん

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マジで誤字報告して下さる方々ありがとうございます…。

アニメこのすば遂に動き出しましたね。と言う事で、こっちも動きます。(ま、毎日投稿はもう出来る気がしないのでご勘弁を…)


2025年3月22日 追記

全体的にこの小説の加筆修正を行い。いらない文とか言い回し変なところとかの編集してました。
そんな部分でも特に活かしきれないなと思った天与呪縛云々の設定は消し去りました。
大きな設定変更はここだけで後は特に大きな変更点はありません。


(アニメ終わっちゃったぁぁぁ)


門番

 

 寝起き故に眠気が残り、欠伸をする伏黒甚爾。

 まるで長閑な朝を享受する平和な男そのもの。

 

 場所は王城内部ではなくベルゼルグ郊外だ。空には青が澄んで見える程の快晴。

 今日は何か良いことありそうなどと、ちらほら考える輩も居るだろう。

 

 

 対峙するのは禍々しいオーラを放ちながら伏黒甚爾を凝視する最上級のアンデット。

 首なし騎士(デュラハン)、魔王軍幹部が1人ベルディアだ。既に愛馬からは降りている。

 甚爾が朝に叩き起こされた原因である。

 

 どちらも並ではない偉丈夫、ベルディアは首より上が存在していないというのに、甚爾と同等の身体を誇っていた。

 とはいえ、首は腰の横に抱えられており、甚爾に見下される形で睨み合っている。

 

 2人の間の空気が歪んで見えるのは気のせいではないだろう。

 

 「血の雨が降るな…」

 

 誰かの呟きはこの場に存在する冒険者たちの心を団結させた。

 

 ある春の朝の一幕である。

 

 

 

 

 

 

 最初に口を開いたのはベルディアからだった。

 

 「貴様か、報告にあったニホンジンの男とは」

 

 「そういうお前は誰だよ」

 

 「ほう…この俺に向かって傲慢不遜な態度、余程肝が座っているな。…貴様の事はオグリッドの部下から聞いているぞ。異常な身体能力で我々の軍に殺戮の限りを尽くしたとな」

 

 (昨日逃したもう一匹の方か…)

 

 「…そして、オグリッドが貴様の手によって殺されたことは既に魔王城の占い師から聞いている」

 

 「そりゃどうも」

 

 甚爾が相槌を打つと、ベルディアは突然過去を懐かしむように語り出した。

 

 「オグリッドは俺の腹心だった。…魔王様に忠実であり、優秀で…俺の稽古にもよく参加していた」

 

 「そうかい」

 

 「最近、俺の稽古が厳しいとかで何かと稽古に参加しない部下が増えるのに対し、アイツだけはひたむきに俺の稽古に付き合ってくれた。あんな部下を持って俺はなんて幸せ者なんだと思ったものだ…。実力も充分あった。魔王軍幹部になり、俺の横で戦う事を本気で願っていた…」

 

 「いい部下を持ってたんだな」

 

 頭を掻きながら欠伸をして、まるで関心のないように応えると、ワナワナとベルディアが震えだし、口を開いた。

 

 「それを貴様が!貴様が、オグリッドを殺したせいでッ!!……ッ……ウィズの下着を簡単に知れなくなったではないかァァ!!!」

 

 「悪かっ……は?」

 

 悪かったな…と続けようとしたところ、なにかとんでもなく場違いな単語が聞こえたようで、素っ頓狂な声を上げてしまう。

 聞こえはしたが理解はあまりしたくないようで、無限に思考がぐるぐるしてくる。

 成る程、これが『無量空処』か…などと現実逃避しているこっちの気も知らずに、元凶であるベルディアは怒りに身を任せて叫び出した。

 

 「悪かったでは済まさんぞ貴様!!アイツの能力がどれほど価値があるか知ってるか!?アイツは上位悪魔の中でも特殊な存在だった!物体を透視することは勿論!魂の足跡を辿る事で未来視の様な事まで…!お陰で、()()()()お風呂に入っているウィズに()()()()やってきた俺が一緒に入るなんていう事も出来たのに!!あんな優秀で忠実で俺の()()()()()()ストレス発散に付き合ってくれる部下なんてアイツだけだ!!」

 

 本当に…こいつは部下を大事に思っていたのか…?

 急に、しょうもない話に聞こえてきた。

 

 「……なぁ、帰っていいか?」

 

 「待て、まだ帰るな」

 

 「………」

 

 甚爾及び、淘悉はこんな状況で一体どうすれば甚爾らしい解答をすべきか答えを持っていなかった。

 後ろを振り返れば、大量の冒険者と騎士団の面々が困った様な顔をしている。

 …どうやら、このベルディアの真の正体(セクハラ野郎)は把握していなかったらしい。

 

 「まだ貴様には言うべき事が沢山あるんだからな!?いいか!彼奴はなにも特殊な能力を持っていたが故に可愛がっていたわけでは無い!彼奴は変人集う幹部どものストッパーである役割も持ち合わせ、俺の心に平穏を保ってくれたんだ!特にあの憎き悪魔の嫌がらせから──」

 

 (こいつ、何しに来たんだろう)

 

 一応…仇を取りに来たんだよな?…多分。

 なんで、仇の前で殺した奴の自慢なんてしてるんだろう。

 

 暫く聞き流していると、朝の眠気が再来し、少しずつコクリコクリと自分の意思に関係なく頭が垂れてきた。もう少しで夢の世界へと落ちるところでベルディアに叩き起こされる。…デジャブか?

 

 「──い。おい!真面目に聞いているのか!?」

 

 「おーおー。聞いてる聞いてる。だから早く終わらせてくれ」

 

 「いや絶対聞いてないな貴様!?完全に目瞑ってたの見てたからな!?」

 

 (面倒くさいなコイツ)

 

 このままではコイツの愚痴聞き大会の様になってしまう。

 それだけは阻止せねば…と口を開いた。

 

 「つうか、お前は何しに来たんだよ」

 

 「見て分からんか?」

 

 「分かんねぇよ」

 

 「貴様との一騎打ちをしに…」

 

 「明らかにそういう流れじゃなかっただろ今まで。最初だけだぞ」

 

 「ぐっ!?」

 

 (自覚はしてたのか…本当に、なんなんだコイツ)

 

 「確かに…貴様の言う通りだ。敵を前にして懐古するなど…失礼であったな。あまりに惜しい存在だったが故に俺も取り乱していた様だ」

 

 (それだけで片付けられる様なものじゃなかったぞ)

 

 ベルディアが気を取り直したように此方を見据える。先程まで身振り手振りを大袈裟にして騒いでいたのが嘘のようだ。

 

 

 

 「ここからは真面目に行くとしよう」

 

 

 

 ベルディアが剣を構え、雰囲気を変える。先程までコミカルだった存在が急に異形の化け物に姿を変えた様な変化だ。

 さしもの天与の暴君も臨戦態勢に移行する…かと思ったが、先程とはなんら変化はない。相変わらず棒立ちで、自身の腰にぶら下げてる武器に手を掛けてもいない。

 リラックス状態と言えばいいだろう。魔王軍幹部が敵として認め、対峙し、注意を注いでる中でもこの男は動じない。

 

 「余裕を持っているな。ニホンジンの男よ」

 

 「そう見えるか?」

 

 「あぁ。貴様の様なニホンジンは幾度となく見てきた。全員が全員、そうだと言うわけではないが…絶対の自信を持ち、俺に挑んできていた。……だが、貴様はその中でも特殊だ。なにせ、力への溺れがない」

 

 「力に溺れてどうすんだよ」

 

 「最もだ…」

 

 暫しの沈黙…見つめあった強者2人は互いの隙を探っている様にも見えた。

 冒険者たちは固唾を飲む。

 片や、チート持ちを幾多となく殺した首なし騎士(デュラハン)

 片や、突如として現れ地獄を形成した天与の暴君。

 

 始まりは唐突に。

 

 ドッ!!!

 

 暴君の姿が掻き消え、その場には振り下ろされた大剣が地面にめり込んでいる。

 余程の力を込めたのかそれだけで地面が陥没していた。

 

 行き場を失った力に多少のズレはあったものの甚爾はこれを即座に修正、()()()()崩れた体勢を整え、横に飛び上がり、すぐさま敵の背後へと回った。反則的な物理移動をフィジギフの身体に物を言わせて可能にし、己が得物である魂穿刀*1を敵の背中に向けて振るう。

 

 「グゥ…!?」

 

 強襲は成功。ベルディアの背後には小さくない傷が出来た。

 アンデット故に痛みは無いものとばかり思っていたが、魂を切られると流石に痛みを感じるのだろうか。

 反射的に振られた斬撃を躱し距離を取る。

 

 「流石は魔王様が改造したと言う神々の武器…あらゆる耐性を高めたこの鎧をも切るか」

 

 「なんだ、たった一度切られただけでビビったか?」

 

 「抜かせ」

 

 またもや甚爾の姿が消える。

 

 

 

 

 

 

 

 (報告にあった通りだが…なんだこの男は、速すぎるぞ…?)

 

 魔王軍幹部であり、歴戦の猛者でもあるベルディアは伏黒甚爾の驚異的なスピードに翻弄されていた。

 魔力によって視力を強化しているにもかかわらずに…だ。

 

 己が視認できないほどの速度と意図的に意識を逸らしこちらを欺く歩法。直線的な動きを繰り返し、力を持て余した過去の者とはまるで格が違う。

 何より無に近い気配。さっきの背後を取られた時もそうだが、奴の気配は極端に小さ過ぎる。この俺が全く感知できなかった。アンデットになり、生命の気配を捉える事には敏感になっているこの俺が…。

 

 (本当にただのチート持ちか?)

 

 だが、相手せねばならない。ここでこの危険因子を確実に殺さなければ、こちら(魔王軍)にとって明らかな不利になる。

 こういった速度が極端に早いものを相手する時の対抗手段は限られている。

 宙に自分の頭を投げ、全体を俯瞰できる己のスキルを使うか、部下を召喚し手数で攻めるか、感覚(センス)に頼るか…。

 

 宙に投げるのは…やめておいた方が良いだろう。あれは更なる視力の向上と視覚範囲の拡大を見込めるが、投げた途端奴の刀に切り刻まれる運命しか見えない。あれ程の身体能力を持つ者だ。恐らく投げる事に成功し、固定したとしても…奴の跳躍であっという間に距離が縮められ、同様の運命をたどる事に違いない。

 部下達を利用するのも手だが…が、悪手だ。あの刀を所持している以上、部下達は悉く一撃でやられる可能性が高い。何より、あの剛腕に加えて有り得ない速度…入り乱れた戦場で奴1人を捉えるのは逆に難しくなる。それが原因で今回は俺1人という人数で出陣となったのだ。部下達も無駄死にしてしまう事だろう。アンデットだけど。

 ならば頼るのは己の感覚(センス)

 

 ギンッ!!

 

 己の感じるままに奴の剣を防ぐ。

 …さて、どう攻めようか。…俺の大剣は長く持ちそうにない。

 とすると…やはり……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勝負が始まり未だ数秒。

 

 けたたましい金属音が辺りに響き渡り、戦いの激しさを物語っていた。

 

 今回眺めているのは、冒険者達だけではない。

 噂の『暴君』が魔王軍幹部と対峙している。その情報を聞きつけ、安全な場所から今回の戦闘を貴族達が閲覧しているのだ。

 

 『暴君』とは貴族達が考えた伏黒甚爾の二つ名であり、魔王軍の軍勢を無慈悲にねじ伏せていく様を又聞きしたところから始まる。因みに、情報提供者は酒に酔った冒険者達である。

 

 本来であれば、貴族がここまで前線に出る事はない。

 しかし、今回は興味を惹かれる存在があまりに大きく、また、魔王軍幹部がたった一人で襲いに来たというのも重なり、噂の『暴君』の戦いぶりを一目見ようとしたのである。

 

 その中にはこの国の第一王女アイリスまでも存在しており、付き人のレインとクレアが側に控えていた。

 駄々をこねた第一王女の2度目の暴挙であり、レインとクレアは仕方なく折れたのだ。

 

 どさくさに紛れて加勢に行こうとしたのは…流石武闘国家きっての王女故か…。

 勿論、クレアにより阻止された。

 因みに、甚爾が空を蹴り方向転換する場面を見た時は貴族と共に驚きを露わにして、今度教えて貰えたらいいなぁ…と考えていた。流石武闘派王女。

 

 当の戦っている本人は何やってるんだアイツら?と、戦闘中にも関わらずしっかりと貴族とアイリス達を視認していた。

 

 

 

 

 

 戦場は相変わらず甚爾が攻め、ベルディアが受けるの繰り返しだ。

 魔王軍幹部がたった一人の男によって追い詰められる。

 これまであらゆる勇者候補が奴に呪い殺されて来た。しかし、今回こそは…呪う隙も与えずに殺せるのではないか…そんな希望を冒険者達は抱き。貴族達はショーを見るかの様に楽しんでいた。

 

 実際にその通りである。

 ベルディア自身は己の切り札である『死の宣告』を繰り出そうとするのだが、甚爾はそれを許さない。只ならぬ勘を働かせているのか発動する素振りを見せると直ぐに反応してその隙を潰してくる。

 感覚に頼ることによって斬撃を防ぐ事は出来ても、全てというわけではない。確実に少しずつ魂は削られ、ダメージを蓄積させているのだ。

 

 だが伏黒甚爾とて目にも留まらぬ速さを長時間維持するのは困難、必ず視認できる瞬間が生まれ、少しずつだが、剣は見切られつつある。

 何もこの伏黒甚爾は剣の達人ではない。圧倒的な身体能力と己のセンスに身を任せて剣を振ってるだけに過ぎないのだ。

 技を磨く剣士や戦士とは違う。どちらかというなら、研ぎ澄まされた一撃必殺を放つ暗殺者(アサシン)側の人間であり、本来ならば真正面から戦闘する事自体間違っている。

 彼の真骨頂は魔力0という恩恵で得た魔力感知スキルの無効化と希薄すぎる存在感を利用した一撃必殺なのだ。

 ……とは言っても、一番強い戦法がそうなだけであって、強い者はどんな状況であれ強い。

 

 依然として、甚爾が有利なまま戦闘は進む。

 

 

 

 

 

 

 

 (この俺が防戦一方とはな…だが…久しいぞ。この感覚…強者への挑戦)

 

 まだ見習い騎士だった生前を彷彿とさせる戦い…流石にここまで容赦なく四方八方から魂削りにくる暴君程では無かったが。それでも一方的に打ちのめされていた当時を思い出す。かつては、何がなんでも勝ってやるぞと無鉄砲に剣を振っていたものだが……。

 

 ……やめだ。

 懐古するのは失礼だと、さっき自分で言ったではないか。

 

 (貴様の正体が何がなどこの際はどうでもいい…ただ今は、この男に俺の全てをぶつけたくなった!!)

 

 大剣と刀がぶつかり合うのを感じ取った瞬間、衝撃など物ともせずに全力の力を持って弾き返す。ようやく視認出来た相手は、地面を滑りながら、構え直していた。

 

 「やっと止まったか…配下達よ!目の前にいる男を殺せ!!」

 

 体勢を立て直される前に自身の配下を召喚する。

 正直、自分でも悪手だと思っているが…奴は疲弊している。ついさっきまで見えていなかった攻撃も少しではあるが見えつつある。それに、これ以上傷を増やすわけにもいかん。

 盾がわりに使うのは心苦しいが…それでもやり通さなければ成らない。

 

 「足止めのつもりか?」

 

 ニヤニヤとムカつく笑みを浮かべて、奴はまた疾走する。

 

 奴の姿がまた掻き消えたと思ったが、配下達の相手をしている様だ。攻撃の瞬間には姿が現れ、移動すると姿が一瞬見えなくなる。

 部下達も相当な手練れ…上級冒険者は厳しいとしても、中級冒険者ならば苦労する相手だというのに、この男は意に介さずに切り裂いて行く。

 

 奴も馬鹿正直に全ての配下達を相手する訳ではなく、合間を縫って撹乱しながらこちらに近づいてきている様だ。最大限奴に警戒していないとまた見失いそうだな…。

 だが、近づいてくる瞬間こそ最大の好機。

 この身体は犠牲にしてもいい。奴に俺の『死の宣告』をぶち当てねば……魔王軍はこの男に滅ぼされてしまう。

 しかし、奴に『死の宣告』を当てたとしても、奴には神叛刃がある為すぐに無力化されるだろう。『死の宣告』は大量の魔力を消費する。神叛刃の無力化対象だ。…奴の場合、飛ばした瞬間に切り刻まれ呪いが消失しそうだな…たがどちらでもいい。奴はその瞬間、()()が生じる。大事なのは、最大の切り札を破られたと思わせる事だ。

 

 突然、配下が放り投げられる。思わず目で追ってしまったが…それが正解だった様だ。

 奴は自分で投げた配下を足場に、こちらに跳んでくる瞬間が見えた。空を蹴るより速い!!

 

 だが、今だ!

 

 「汝に死の宣告を!!」

 

 黒き怨霊が甚爾に向かう。

 

 (さぁ!お前はどうする!)

 

 回避か!直撃してでも来るか!呪いを切るか!どれだ!?

 

 「!」

 

 なっ!?

 

 突如として俺と奴の間に魔法陣が浮かび上がり、そして一気に拡がった。

 

 (これは爆裂魔ほッッ───!!!?)

 

 ドォォォォォオン!!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冒険者と貴族達から同時に困惑した声が上がった。

 

 戦闘を続けていた暴君とベルディアを巻き込んでの大爆発。それも互いの生死が決まるのではという刹那のタイミングでだ。

 あの規模の爆発は爆裂魔法で間違いないというのは魔法に秀でた者達が最初に気づいた。レインもその1人だ。

 

 「アイリス様、クレア様、恐らくあれは爆裂魔法の爆発だと思われます」

 

 「…爆裂魔法…ですか。それならばあの威力にも納得します…でも一体誰が…?」

 

 「爆裂魔法だと?そんな酔狂なもの一体誰が…」

 

 「我々の陣営の誰か…というのはないでしょう。ここ数年で爆裂魔法を駆使して戦うアークウィザードなど聞いていません。それに、態々甚爾様が有利な状況で撃つ必要性が皆無です。…恐らくアレは第三者の介入、それも凄腕の魔法使いである事は間違いないでしょう…」

 

 「ではお父様は…」

 

 「我々が感知できる範囲から離れての完全な不意打ち爆撃でしたから…最上級のアンデットである首なし騎士(デュラハン)はともかく、トウジ様は…」

 

 「そ、そんな…」

 

 クレアはこの際、甚爾がお父様呼びされている事についての言及はやめた。ただ今は、アイリスに寄り添い彼女の心の痛みを和らげることに専念し始めた。

 

 だがクレアとしても、この呆気ない幕の閉じ方に納得はしていなかった。

 

 (トウジ殿…すまない…)

 

 奴とは短期間でしか交流はしていないし、その思い出も無礼な態度ばかりで散々だったが、思っていたよりもずっと情が移っていたようだ。……いや、同情していたのだろうか?本人が聞けばやめろと言われそうだな…。

 奴の出生は酷いものだった。私では想像つかない程の苦痛を与えられていたはずだ。…彼の境遇を聞き、私のしたことと言えば、帰る宿もない状態の彼を軍事利用しようと雇っただけ。そこに打算しかなかったというのは流石にないが…アイリス様の父を求める尊くも儚い感情を利用したのは事実だ。

 …はぁ。駄目だな、私は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………グゥ…一体なぜ爆裂魔法が…。

 

 (クッ…身体が動かせん…攻撃を食らいすぎた…)

 

 奴は…居ないようだ。流石の奴もあの爆破で木っ端微塵になったのか…?

 そう考えていると足音が近づいてくる。一瞬奴かと思ったが、足音から推測できる重心の置き方が全く違う事で奴ではないと判断した。

 

 「流石ね。手加減したとはいえあの爆裂魔法を耐えるなんて。かなり負傷していたように思うけど…これもアンデッドの体特有の不死性かしら」

 

 「貴様…騎士の決闘を邪魔をしておいて、無事で居られると思っているのか…ウォルバク…」

 

 俺たちの戦いに水を差した下手人は俺と同じく魔王軍幹部のウォルバクだった様だ。

 

 「それにしては随分と一方的な決闘だったわね。…イジメっていうのよアレは」

 

 「…クッ……」

 

 ぐうの音も出ないとはこの事だ。確かに俺は奴にまともな攻撃を浴びせられていない。決闘と称するのも烏滸がましい。

 次は当然の質問を投げかける。

 

 「何故、貴様がここに来たんだ?突然現れたニホンジンの対処は俺に任命された筈だが…」

 

 「魔王様から他の命令が下ったわ。アクセルの街で謎の聖なる光の柱が突然現れたそうよ。その調査を貴方に依頼したいみたい」

 

 「では王都侵攻作戦の代わりは一体誰がやると言うんだ?」

 

 「私よ」

 

 「……そうか」

 

 「貴方の武人としてのプライドを傷つける様で悪いけど…あのままやっていたら貴方は細切れになっていたわ。彼は…私以上に暴虐の神様に相応しいわよ」

 

 「俺の腕が足りなかったか……フハハ、だが神より相応しい暴虐の神と相対したならば…騎士の誉れだ…」

 

 「…そう。…ともかく一旦引きましょう。私も手加減して撃ったとはいえ、相当な魔力を消費したわ。魔王軍幹部が2人が揃ってるとはいえ、魂が摩耗してロクに動けない貴方を守りながら王都の冒険者達を相手するのは厳しいもの」

 

 「……奴はどうなった?」

 

 「…それなら…」

 

 

 「よぉ、久しぶり」

 

 

 『ッ!?』

 

 ウォルバクが振り返る。そこに立っていたのは、先程爆撃に呑まれた筈の男だった。

 

 「神叛刃ッ!!」

 

 ウォルバクは即座に理解する。彼が五体満足な体で生きている訳を。

 

 「正っ解っ!!マジで危なかったぜ、さっきの不意打ちはよぉ」

 

 「でも、一体どうやったっていうの!?神叛刃に解除される前に、爆裂魔法は発動していたのよ!」

 

 「ンなもん気合いに決まってんだろ。あと

 

 「…ここまで理不尽だなんてっ。私の名前の半分を彼にあげたいわね」

 

 「暴虐の神って奴か?神も魔王軍側たぁ、この世界も中々終わってんな」

 

 「…ウォルバク、どうするつもりだ。こんなに近くては貴様のお得意の魔法も発動する前に奴に殺されてしまうぞ」

 

 「…決まってるじゃない。逃げるのよ!『テレポート』!」

 

 

 

 

 「…行っちまいやがった」

 

 空ぶった魂穿刀を肩に乗せるよう取り回し、あっけらかんと言い放つ。

 魔法で空間移動した以上、匂いも足跡も残らないので追跡することは不可能だ。

 

 まあ、逃げられたんならしょうがない。今回は諦めるか。

 今後はウォルバクってやつがこの王都に侵攻するとは聞いたし、ベルディアの行き先もアクセルという街なのも分かった。

 戦った感じベルディアは問題なく殺せる事が分かった。ウォルバクの切り札がさっきの爆裂魔法というのなら、大したことはない。連発されたら疲れるが。先程聞いた限りでは大分発動コストは高いらしい。連発出来ても2回だろう。ならば問題ない。

 金に困った時にでも殺りに行くかね。

 

 

 「取り敢えず、朝風呂にでも入るかな」

 

 適度に運動した後の風呂は良いって言うしな。

 

 

 

 爆煙を払いのけながら正門へ向かって歩くと、うるさいほどの歓声が上がった。

 

 

 

*1
正式名称はちゃんとレインとクレアから教えてもらった。




感想やお気に入り、評価の欄で私も読んでいる作品の作者様がこの小説を読んでいることを知ると何だか嬉しくなりますね。
憧れの人に認められたっ!!って感じがしてめっちゃ嬉しい。

ここで、1つ本編で語れなかった不思議な点を解消。

このすば世界の神器は所有者でないと真の効果を発揮できませんよね?
原作でもある例えを使うと、ミツルギキョウヤ君の『魔剣グラム』は簡単に言えば『なんでも切れる剣』ですが、カズマが持つと途端に『ちょっと切れ味の良い剣』になります。

では何故、オグリッドとパパ黒は効果を発揮して扱っていたのか。

オグリッドの場合、魔王の存在が関わっています。
神々の祝福がかかった神器を魔王が弄り回し、主人じゃない者を主人だと誤認させて、配下が扱えるよう細工してある訳です。流石魔王、戦力増強に余念がないね。
大体8割くらいの力は引き出していますね。魔王の力すげぇ、とこの小説では思ってください。

パパ黒の場合、刀おじさんと同様に無理矢理従わせました。
しっかりと神器が持ち主と認めている(服従している)ので10割力を発揮しています。パパ黒すげぇと思ってください。

聖鎧アイギスが神に指定されるでもなく、自らの意思で主人をアイリスと決め効果を発揮していたので、神が武器の主人を決めるのではなく、武器が主人をこの人だと決めるのもアリだなと思いこの様な設定にしました。


この小説を書いてる途中だけど、セシリーさんをメインで書いてた前垢の小説を復活させようか迷い中の作者です。可愛いセシリーさんが見たい…。めっちゃセシリーさんに貢いで甘やかしたい…。(作者の最推しはセシリーです)
あと、透き通った世界(ブルアカ)で相変わらずイケメンムーブかましてるラスティを見てみたい。(先生のことを戦友と呼ぶ)(因みに私の推しはアルちゃんとヒマリです)(アルちゃんはもう言わずもがな。ヒマリのあの自信満々っぷりやイタズラっ気のある性格が大好き)



あとこの小説書いてるうちにまた妙案が思い浮かんだ。

『呪術廻戦の世界に水の女神ぶっ込んでみた』というネタです。
タイトルは『この水の女神アクア様が居れば全て解決よ!!』です。
シリアスと呪術の負の極致が宿儺様であるなら、クソボケ(ギャグ)と(一応持った)()の極致がアクア様という見解。
1発ネタにしかならねぇ……。世界に干渉する時止めを喰らってもモノホンの女神であるアクア様は弾きましたからね、世界を断つ斬撃なんて『いったぁぃ!!?』で済ませてくれる事間違いないですよ。宴会芸の神だし(適当)。しかも即座にヒールで回復、ゴリラ並みのパワーと幼稚園児並みの思考で殴ってくる事間違いない。

宿儺「あの姦しい女か…面倒の一言に限る」
羂索「なまじ能力が高いから対処に困るよね。阿保なのに。しかも彼女、呪物を完全に浄化しちゃうんだもん。こっちの身にもなって欲しいよ。封印通じないし」

アクア「ターンアンデッド!」
真人「ほげぇぇぇ!?」

なんつってね。ガハハ!!
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