突っ込み属性気質の魔王様と、眼鏡を外すと視界がボヤけて何も見えなくなる勇者がお送りする、バトルを全然しない漫才風ギャグ小説です。

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Twitter見てたら「眼鏡キャラが眼鏡を外すのは許せない」ってツイート見て「よしネタ思い付いた!」って書きました。


本気出すと眼鏡を外す視力悪い系勇者

「フハハ、よく来たな勇者よ」

 

 城中に響き渡る魔王の笑い声を、書き消すように扉を蹴り破り、勇者は魔王城の最奥で魔王と対峙する。

 腰には1本の剣を携え、掛けている眼鏡をクイッと上げる。目の前に居る敵から目を離さないように。

 

「お前が魔王か、魔王!」

 

「そうだ、我が魔王だ。あと魔王って二回も言う必要なくない? もしかして我の事、職業が魔王で名前も魔王だと思ってる?」

 

 そんな勘違いをするのなら、職業人間の名前人間が居るんじゃないかと変な事を考える魔王であるが、今は戦いに集中しようと考えるのは後回しにした。

 

「なぁ勇者。簡単に戦いが終わってはつまらないだろう? 全力で来い、最初からな」

 

 たかが人間に魔族が負けるなんて事はない。今まで無事に魔王城まで来れたのは運が良かったのだろうと慢心をし、勇者へ向かってある提案をする。

 

「後悔するなよ、魔王!」

 

 勇者は剣を構えて掛けていた眼鏡を放り投げた。するとどうだろうか、パリンとレンズが割れる音と共に、勇者の身体から魔力が溢れだした。それは魔王の持つモノよりも、数十倍はあるものであった。

 

「なん、だと……!?」

 

「喰らえ魔王ー!」

 

 そうして勇者は明後日の方向へと剣を振りかざした。その攻撃が魔王に当たることは無かったが、魔王城を豆腐のように切り刻んだ。例え魔王と言えど、あの攻撃に当たったら一撃で死に至るだろう。

 

「くっ、やるな魔王。まさか影分身を使うとはな」

 

「え???」

 

 勇者は今放った攻撃をかわされたと何故か判断しているが、魔王からすれば一歩も動いてないのに、影分身などと意味不明な言葉を言っている状態である。

 幻術など使っていないし、魔王足るもの正面から戦った方がなんかこう、カッコいいからって理由で小細工を使われるのは兎も角、使うのは嫌っているのだ。

 

「勇者、まさか貴様……目が悪いな?」

 

「流石は魔王だな。俺の視界がボヤけているのを、こうも簡単に見破るとは」

 

「いや、そんな攻撃してたら誰でも気付くんだが。てかなんで眼鏡外した!? 確かに眼鏡キャラが本気出すときは眼鏡外すのが定番だけどさ!」

 

 天然と呼ぶべきか、バカと呼ぶべきか。本気出す時に眼鏡を外すのは鉄板ネタではあるが、それが原因で戦えないのなら元も子も無い。

 

「さっき掛けていた眼鏡は俺の強大すぎる力を封印するためのモノなんだ。だから眼鏡を外さないと本気が出せない」

 

「あぁ、うん。それは本気出せと言った我のせいだな」

 

「取り敢えず眼鏡掛け直せ。勝負にならん」

 

 決して、決して自分が足元に及ばないほどの力量差を見てビビり散らかした訳ではないと、内心言い訳をしながら眼鏡を掛ける事を提案した。

 

「投げた時に割れた」

 

「お前ここに何しに来たの!?」

 

「魔王退治だ!」

 

「何が『魔王退治だ!』だよ。お前がやったのは、ここに来て眼鏡割っただけじゃねーか!」

 

 魔王は溜め息を付いて、無駄に豪華な王座に腰を降ろす。魔王の力を越える人間の勇者は、魔王城へと攻め込み眼鏡を割りました。なんて末代までの恥だ。

 それどころか人間からしても、魔族からしても消したい歴史である。コイツ放っておいて家に帰りたい、ここ家だけど。と、現実逃避をしたけなった魔王。ふと、ある事を思い出した。

 

「つーかアレだアレ。確か人間の世界ではコンタクト?とやらでも視力を補強出来るのだろう。それはどうした」

 

 コンタクトの存在である。さっきから勇者に突っ込んでいるだけで、何一つ威厳を感じない魔王ではあるが、こう見えても人間についてはそれなりに調べている。その中で、視力を補強するコンタクトの存在を知ったのである。

 

「いや、目が悪すぎて眼鏡とコンタクト両方付けてるから、片方でも無くなると視界がボヤけて何も見えなくなる」

 

「あぁうん、そうなんだ。取り敢えず今日の所は見逃すから。早く帰れ」

 

「断る! 俺は、俺には村のみんなの復讐をするためにここに居るんだ!」

 

「復讐だと?」

 

 相手をするのが疲れたので勇者を帰そうとしたが、魔王は『復讐』と言う言葉に興味を持った。どんな思いで魔王城まで来たのかは分からないが、もしその復讐心を操れれば、強力な部下が手に入ると。

 

「あぁ。あれは俺がまだ子どもの頃、まだ眼鏡だけを使っていた時の話だ。平和に暮らしていたある日、魔族が攻めて来たんだ。あの時の俺は唯一の家族である妹を守るために必死に戦ったが、戦いの最中に眼鏡が割れてしまった。もう駄目だと思ったが、突然現れた眼鏡の女神が『眼鏡を愛する貴方に眼鏡を外すと、力が増す加護を預けました。ただし私は眼鏡キャラが眼鏡を外すのが嫌いなので、代償として貴方の視力を下げました』と、邪神もドン引きなほど身勝手な加護を受け取り、魔族を倒した。だが、その強大すぎる力をコントロールする事が出来ず、魔族と一緒に妹や村のみんなを一緒にぶっ飛ばしてしまった。その経験から俺は誓ったんだ、女神から変な加護を貰ったのも、村のみんな、そして妹が居なくなったのは魔族が、そして魔族の王である魔王のせいだと…………だから攻撃じゃ隙ありィ!」

 

「ギャアアア!」

 

 先程までのシリアス口調は眼鏡のように放り投げてしまったのだろうか。王座へと座っている魔王目掛けて一瞬にして近付き、剣で一刀両断した。

 油断していた魔王はその攻撃をかわす事が出来ず、マトモに喰らい真っ二つとなった。

 

「ふっ、油断したな魔王」

 

「ぐ……き、貴様ァ!」

 

 こんな長ったらしい話を聞いて、油断している間に倒される結末であろうが、魔王は素直に敗けを受け入れる。魔王足るもの潔く勝敗を受け入れる方が、生涯語り継がれる時になんこう、カッコいいからと言う理由で魔王は死を受け入れることにした。

 

「魔王。お前の命もあと数分だろう。その前に一つ、質問して良いか?」

 

「なんだ」

 

 質問とはなんだろうか。魔族と人間が争っている理由だろうか、それとも魔王になった理由だろうか。どれもこれも話せば長くなる。それでも、語れと言われればこの命が果てるまで語るとしよう。

 

「魔王城からの帰り道どっち? 視力悪くて視界にあるもの全てがボヤけてよく分からないんだけど」

 

 しかし魔王の思い虚しく、勇者が知りたいのは帰り道であった。実はこの勇者、魔王がペラペラと喋っている(突っ込んでいる)間に、魔王の居る場所を聴力で確認して、その場所向かって剣を振るっただけなのである。

 そのため魔王を退治したのは良いものの、視力はボヤけたままなので帰り道が分からないのである。

 

「視力悪いのは本当かよ!?」

 

 魔王は死に際まで律儀に突っ込み、勇者に道を教えてから息絶えるのであった。




【魔王】
 魔族の王
 特に詳しい設定は考えてないから、勇者に対して突っ込みをしてくれれば良いや程度のキャラ設定になった。

【勇者】
 凄い強い人間
 眼鏡外せば強くなるキャラとして設定した。ただし視力は落ちる。過去の出来事により、八つ当たりに近い形で魔族に復讐を誓った。

【女神】
 作品書いてたら唐突に生えてきた人
 眼鏡キャラが眼鏡を外すのは許さない系女神
 元々は女神の存在を除けば、勇者の過去は最初から考えていたもの。ただ回想込みで進めると話がズレるので、魔王を油断させるための長話として簡略化させた。

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