【書籍化決定】馬乗りされて体力がなくなるまでやられる悪役〜今度は主人公の好感度を上げまくっていたら全員に惚れられた件〜 作:陽波ゆうい
【×月×日】
前世の記憶が戻った。
また何かの拍子に忘れてしまうかもしれないから日記を綴ろうと思う。
おい、よく聞け俺っ!!
ここはお前のいた世界じゃない。いつの日かの夜にプレイしていた成人指定のエロゲーの世界だ。
今のお前の体は別人のもの。
名前は
お前が注意する点はただ一つ。
あの
【×月×日】
やっばっ。美人姉妹超可愛いんだが。画面越しよりやっぱりリアルだよな。
近づくといい香りだし、おっぱいでかいし、いい声だし……。
いやいや。騙されてはいけない。姉妹は危険人物なのだ。
主人公、そのまま姉妹を引きつけていてくれよ。あ、でも……羨ましすぎる……。
【×月×日】
主人公と仲良くなってしまった。
美人姉妹に近づいてしまった。
でも、美人姉妹には冷たくあしらわれた。
セーフ
【×月△日】
林間学校が始まった。
俺には仲良くなった主人公がいるし、楽しめるだろう。
休憩で立ち寄ったサービスエリアで、美人姉妹の妹の方がなにやら痴話喧嘩──とは違うと思うが、なにやらちょっとした揉め事が起きている。というか、一方的に女子生徒に文句を言われていた。
【×月◇日】
林間学校2日目で最終日。
ゲームのイベントでもあった、プレゼント代金紛失事件が起きたようだ。
今回の犯人は、美人姉妹の妹に罪を被せようとしていた。恨みを持っていたようだ。
色々と面倒なことがあったが、形上だけなら一旦丸く収まったのであった。
【×月◇◇日】
美人姉妹の妹がなにやらお礼をしたいと言ってきた。別に俺は林間学校したことを助けたとは思ってないが……。
と、まあ断ろうとしたがダメだった。
【×月△日】
休日。主人公が他の女の子と街を歩いていた。
俺の隣には美人姉妹の姉がいて……。
反応が怖すぎて視線を合わせられないわ……。
【×月〇日】
主人公が美人姉妹以外で好きな人ができたらしい。
………マジか。
恋は応援するが、美人姉妹は黙っていないだろう。
と、早速。美人姉妹から相談に乗ってほしいときた。きっと主人公を奪い返すに違いない。
それと今度はちゃんとお礼をしたいと言ってきた。
よし、胸くらい揉ませてもらうか………なんて。
【×月〇〇日】
た、、、、、、、、す、、、けて、、、、、、
どんな物語にも悪役がいる。
何故なら主人公とヒロインの距離が縮まる最短かつ最高の脇役だから。……人間的には最低だけど。
主人公たちの成長や恋を一番押すのに嫌われ者……それが悪役。
悪役はやっつけられてスカッとするが悪役になってみたいとは思わない。
それがプレイしたことあるエロゲでその残酷なまでのやられ方を知っているならなおさら。
「っ!!!!!!!!!」
ある日、俺は思い出した。馬乗りされて体力がなくなるまでやられた前世の自分を。いいや、プレイしていたエロゲの——悪役の記憶を。
『ふふふ……次はどの指の爪を剥ぎ取ろうかぁ』
『お姉ちゃん。私、親指がいいなぁ』
手足を拘束され、周りにはあらゆる道具がある。なにより馬乗りされ、身体は全く動かない。もう何時間もこの状態で
『や、やめてくれ……お願い、だ……』
『やめてくれ? おかしなことを言い出したね。頭が変になったのかい?』
『お姉ちゃんってば、こわーい。まあ? 私たちに喧嘩売っといて、やめてくれなんてふざけたことを言ってるとは思うけど〜〜』
『お、俺は! おおお前らには喧嘩なんて売ってないだろッ!! 俺はただ、
ギロリッ
『ッッ……』
4つの鋭い眼光が俺を見下ろす。言葉も出ない。息すらするのもしんどい。
………この姉妹はイカれている。解放されるなんて望む方が地獄。俺の体力がなくなるまで。下手したら死ぬまで……。
『無駄話はここまでだ。さぁ続けようじゃないか』
『そうだね。なにも死にはしないんだから……』
『ああ………あああああああああああああーーーーっ!!!』
「あああああーーーっ!!!」
思わず頭を抱えベッドに転げ回る。
頭の中で一連の映像が鮮明にフラッシュバックしたが、トラウマものである。
ふと、鏡を見ればいつの日かの夜にプレイしていた成人指定のエロゲーの悪役、馬乗りされて体力がなくなるまでやられる悪役、笠島雄二が映っていた。
「俺が笠島雄二……最悪だ……」
頭を抱えるのもここまで。次に心配するのは、今はどういう状況か。
「俺は、笠島は、美人姉妹と接触したのか!? 主人公に絡んだのか!? やられる前日だったりして! あああ!!」
笠島雄二になったというだけで後は何もわからない。
手がかりを探そうと部屋を見渡す。勉強机の上のプリントに注目する。
「……入学式の案内」
保護者用のプリントそうだな……てことは、美人姉妹とも会ってないし、主人公とも会ってない……。
と、なれば……今なら原作みたいに壮絶なバッドエンドを迎えることなく……。
「こ、今度こそは……俺は……安全に過ごしてやるからな……!!」
あんな一生トラウマになりそうなバッドエンドはごめんである。