【書籍化決定】馬乗りされて体力がなくなるまでやられる悪役〜今度は主人公の好感度を上げまくっていたら全員に惚れられた件〜   作:陽波ゆうい

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第13話 悪役は休日をゆっくりできそうにない

「っあ!? 眩しぃぃぃいい!!」

 

 意識が冴えて3秒で目がやられた。色々な意味で最悪な朝が多すぎる……。

 

 視界が眩しくなり、芋虫のように体縮める。カーテンを容赦なく開ける音がしたのできっと雲雀だろう。

 

「おはようございます、雄二様」

「なんだよ雲雀ぃ………」

「朝です。私がわざわざ起こしに来たのですから察してください」

「はっ! まさか遅刻か!?」

「今日は土曜日なので学園はお休みです」

「なんだよ……じゃあ起こすなよ……」

「せっかくの休日なのに夕方まで寝るおつもりですか?」

「それもそうだな」

 

 雲雀の言葉を聞きスッとベッドから起き上がる。

 

 ゲームの世界に転生してきて初めての休日……寝ていられない!!!

 

「よしっ! 街を探索してくる!」

「ナンパしにいくの聞き間違えでしょうか?」

「……もう掠りもしてねぇじゃん」

「失礼しました。お出かけですね」

 

 最近よくいじってくるなぁ。まあお堅い態度よりはこっちの方がいいけど。

 

 

 

 

「さぁて。どこから行くかなぁ」

 

 1人街中に出てきた。

 画面越しにしか風景を見たことがないので迷子になってしまうかもしれないが、雲雀に連絡したらなんとかなるだろう。

 そういえば今日はリムジンで送るって言わなかったなー。

 

「朝飯抜いてきたし、まずはお洒落なところで腹ごしらえでも……」

 

 スマホで検索でもしようとした時だった。

 

「私、待ち人がいると先程から言っております。あまりしつこいと……タマ蹴り飛ばしますよ?」

「………」

 

 あまりにも聞き覚えのありまくりな声がして足が止まる。

 

「き、聞き間違えだよな……うん」

 

 足を進める。

 

「それともちゃんと金玉と言わないと分からないでしょうか?」

 

 また足が止まる。うん、こりゃ知り合いですわ。さっき玄関で見送ってもらった人ですわ。

 

 ……え、どうしよう。無視しちゃダメ?

 

 頭ではそう思っていても顔がそちらに向く。

 

「綺麗な顔でそんな物騒なこと言っちゃダメだよお姉さん」

「………」

 

 チャラチャラした金髪の大学生くらいの男に雲雀はナンパされていた。

 雲雀の格好はメイド服ではなく、私服。大人っぽいコーデに加え、髪は緩い巻き髪にしていて、女性らしさが一段と引き立って見える。

 ナンパしたい気持ちも……うーん、俺は普段から接しているからそういう目では見れてないけど。

 

「ちょっとだけでいいからっ。そこで5分くらいお茶するだけだからさ〜」

 

 カフェで5分でお茶できるわけないだろう。逆に店に失礼だわ。

 

「………」

 

 男に話しかけられても雲雀は無言を通し始めた。相変わらずの真顔……しかし不機嫌になっていることは分かる。

 

 このままでは埒があかない気がする。ここは俺が助けに……。

 

「お姉さんってばっ。無視しないでよ——ひんぎッ!?」 

「ひっ!」

 

 俺まで思わず悲鳴と股間を押さえてしまった。

 雲雀が何をしたかというと、男の股間を思いっきり蹴り上げたのだ。

 

「次は切りますか?」

 

 切るってどこを!? 何を!?

 

 股間を押さえて地べたに這いつくばる男を冷たい瞳で見下ろす雲雀。

 

 男もさすがにやばいと思ったようで、

 

「ひ、ひぃぃぃ!! すみませんでしたぁぁぁ!!」

 

 股間を押さえながら怯えるように逃げていった。

 

「怖ぇぇ………あっ」

 

 雲雀と視線が合った。彼女は俺の方に近づいてきて、

 

「雄二様遅刻ですよ」

「誰も現地集合とは言ってなくない!?」

 

 しかも15分前にマンションで見送っていたのに来るの早くない!? てか、どうして俺の居場所が知られてるの!?

 

「雄二様のスマホにはGPSが付いているので」

「人の心を読むな! じ、GPS!?」

「旦那様から入れるようにと言われているので」

 

 そういや、雄二は両親からは厄介者として扱われていたってゲームでちょっと話してたな。

 

「つまり、雲雀は監視役でここに来たってことか? はぁ、俺ってどんだけ信用されてないんだよ……」

「そうですね。少し前の雄二様ならそれが目的でしたね」

「ん? てことは今は違う目的なのか?」

「………」

 

 黙り込んでしまった。似たようなことが前にもあったような……。

 

『僕が雄二くんと一緒にいたいようにメイドさんも雄二くんと一緒にいたいんだよ』

 

 ふと、結斗の言葉が頭を過ぎる。

 

 いや……まさかな……?

 

「なぁ雲雀」

「はい」

 

 もしかして俺と一緒にいたいのか?

 

 そう聞こうとしたがやめた。

 かと言って、ここで置いていくわけにもいかない。

 

「一緒に行くか」

「はい」

 

 2人揃って歩き出す。

 

「朝飯まだだったからどこかで食べてから行くとこ決めよう」

「承知致しました」

「ああそれと」

「はい」

「その……私服似合ってるぞ」

 

 女性の私服は褒めた方がいいってばあちゃんが言っていた。

 

「ありがとうございます」

 

 まあ雲雀は褒めたって真顔だけど。

 

 もう少し具体的に誉めた方が良かったかなぁ……。

 

 なんて考えながら隣の雲雀を見ると、一瞬だけ。ほんのり頬を染め、微かに口角が上がって見えたのが……見間違いじゃなければ俺も嬉しい。

 

 

 

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