【書籍化決定】馬乗りされて体力がなくなるまでやられる悪役〜今度は主人公の好感度を上げまくっていたら全員に惚れられた件〜   作:陽波ゆうい

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第64話 悪役。水着で戸惑う①

「今日やるべきことは終わりましたね」

 

 洗濯物を干し終えた雲雀が呟く。

 

 今日も今日とて、業務を早めに終わらせていた。

 時刻はまだ昼前。

 相変わらず、雄二がいなくてもダラダラすることなく、しっかり業務をこなす。

 

 一旦休憩ということで、雲雀は冷蔵庫から作り置きの麦茶を取り出して、座って飲む。

 

「それにしても、このメイド服は慣れませんね」

 

 雲雀は自分のメイド服を見た。

 

 少し前からいつもの長袖ロングのメイド服ではなく、夏用のメイド服に身を包んでいた。

 というのも……。

 

『雲雀。そのメイド服じゃそろそろ暑いだろ?』

『いえ。基本室内にいますし、クーラーの風がありますので大丈夫ですよ』

『クーラーの冷風ばっかり頼っていたら身体壊すぞ? 夏用のメイド服も一応、あるんだろ? 着替えよう』

『今のままでも特に問題は……』

『いいから着替えなさい』

『わかりました。雄二様の目の前でですよね……。雄二様も私の下着姿を見るために上手いこと考えましたね』

『誰もそんなこと言ってない!! つか、しれっとリボンを解くな! 心臓に悪い!!』

 

 雄二様に夏用のメイド服に着替えるよう、指示されたからである。

 

 デザインは白と黒を基調とした清楚な感じだが、違いといえばやはり袖部分が半袖になったことや足の丈部分が少し短くなったこと。

 いつも長袖で見えなかった、すらりと、日焼けを知らない白くてほっそりした腕が露わになっていた。

 また、膝上くらいまで丈が短くなったことにより、綺麗な足も露わになっている。

 

 肌を少し見せるようになっただけなのに、雲雀の素材の良さ、美人さが倍増しているように思える。

 

「雄二様は多分、メイド服なんて興味ないんでしょうね」

 

 夏用のメイド服に着替えるように指示したのは、単なる親切心から。

 

 決してやましい気持ちなどない。だって、

 

『美人で身体もすごく綺麗だし……そんな雲雀に、俺みたいな男はこれ以上されてしまうと、心臓が持たないのですよ……』

 

 意識したら恥ずかしがる人だから。

 

 麦茶を飲み終えた雲雀は、席を立つ。

 

「まだ時間もありますし、今日は細かいところも掃除しますか」

 

 お風呂場の掃除でもと思った雲雀だったが……ふと、雄二の部屋がある方へ視線を向ける。

 

 雄二は基本、部屋を散らかさないタイプであり、雲雀が部屋に入ってすることといえば、ゴミ箱に溜まったゴミの回収のみ。そしてたまに朝起こしに行く時に、雄二の部屋に入る。

 

「散らかってないとはいえ、雄二様のお部屋もたまには掃除した方がいいですよね」

 

 ホコリ掃除や軽く掃除機を掛けたり……。

 

 雲雀はそんなことを思いながら雄二の部屋に入った。  

 

「こうやってゆっくり雄二様のお部屋を見るのは初めてですね」

 

 白を基調とした広い部屋には、キングサイズのベッドに、備え付けの大型テレビ。本棚。勉強や食事も兼ねられるローテーブルに座椅子……シンプルかつ、過ごしやすそうな部屋だ。

 

 まずは掃除機を。と思った雲雀だったが……。

 

「……? なんでしょう?」

 

 キングサイズのベッドの下から何かが出ていた。雲雀は屈んで、手を伸ばして取る。

 

「これは……」

 

 

 

 

 プール施設に着くと、更衣室で着替える。もちろん、男女別々で。

 更衣室内は混雑しており、「ああ、夏だな。夏がきたなぁ」と、変なところで実感が湧く。

 

「男は全部脱いで下だけ穿けばいいから楽だなぁー!」

 

 元気にそう言う田嶋は、もう海パンに着替え終わっていた。シンプルに黒色の海パンであった。

 

「あれ? 入れたはずなんだが……」

 

 一方、俺はというと上半身裸で持ってきたスクールバッグを漁っていた。

 

「お? どうした笠島? 何か探しものか?」

「ま、まあな」

 

 ちょっとないとマズイものなんだが……。

 

「というか、佐伯はどこ行った? さっきから姿が見当たらないぞ?」

「結斗はトイレに行ってくると言っていたぞ。更衣室に入る前に俺に言ってきたからな」

 

 今思えば荷物は預かって、先に更衣室に持っていってやれば良かったな。どうせこっちで着替えるだろうし。

 

「ふーん。相変わらずお前ら仲いいんだな」

「どこで判断してるんだよ」

 

 今の会話のどこに仲良しエピソードがあるんだ。

 

「でも学園じゃいつも一緒だろ? 見た目じゃ絶対絡まなそうなのにな」

 

 そりゃゲームの世界じゃ、結斗と俺は主人公と悪役だからな。俺から執拗に絡んで、嫌がらせして、何かとイベントでは裏で手を引いて……。

 それが美人姉妹にバレて、怒りを買っての監禁馬乗りボコボコエンド……。ああ、絶対そのルートには行きたくねぇ……。

 

 最初は結斗に絡んで好感度上げておけば、バッドエンドを回避できるって思っていたけど……。

 

「結斗は、悪い噂や強面で避けられる俺なんかにも優しくしてくれる、いい奴なんだ。そんなの、友達になりたいだろ?」

 

 結斗の素の優しさと明るさに、キャラの設定とか、これからのこととか、あんまり気にしなくなった。

 ただ、結斗の()()として楽しく過ごしたい。そう思った。

 

「佐伯がいい奴って言うのは俺も分かるぜ。……ま、まあ? 笠島がいい奴ってことも分かっているけどなっ」

 

 ちょっと照れくさそうに、田嶋が言う。

 

「田嶋がそんなことを言うなんて、らしくないな」

「いや、その……林間学校での事で笠島の見方が180度変わったし……勉強会の時もそして今も。笠島といると悪い気はしないなと思って」

「悪い気はしないだけで、いい奴か」

「佐伯ほど俺は笠島と一緒にいないから、まだお前のことよくわかんねえんだよっ! だから俺は、笠島と友達として仲を深めたい思ってるよ。もちろん、里島だってそうだ」

 

 友達かぁ……。前世では自然と絡んでいくうちにいつの間にか友達になっていたけど……こうやって直接言われるのも悪くないな。

 

「俺が友達になったら厄介になるかもよ? なんたって悪い噂がありまくりな強面なんだからな」

「ふっ、上等だ。というか、厄介で言ったら俺の方が負けてないかもしれないぞ?」

「そりゃそうだな」

「少しは否定しろよ!!」

 

 全く、調子のいい奴め。

 

 

 

 中々帰ってこない結斗に、『先に外で待ってる』とメッセージに送り、俺と田嶋は先に更衣室から出ていた。

 

「うひょー! 広い! でかい!!」

 

 田嶋が興奮気味に手を広げながら言う。

 まあ気持ちは分かる。

 

 目の前には圧巻の光景。遊園地に併設してあるプール施設ということで、広々とした空間だし、何よりアトラクションが豊富。アトラクションで遊ぶ人達の楽しそうな声がさらに場を高める。

 

「俺も早く遊びてぇ〜〜!」

「他の3人もそろそろ来る頃だろ。それまでは大人しくしろよ、田嶋。あと、くれぐれも一目惚れした勢いでナンパとかするなよ?」

「お前は俺をなんだと思ってるんだよ……」

 

 俺がそんなことやるか、と腕組みしている田嶋だが……惚れっぽい体質なコイツならやりかねない……。

「雄二くん! 田嶋くん!」

 

 後ろから明るい男の声がした。

 次に来たのは結斗だったか。個人に結斗は最後に登場するかと思ったけど。

 

「まひろさんとりいなさんはまだ来てないからゆっくり来て……おお」

 

 俺は振り向いて……結斗の水着に注目した。

 

 

 

 

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