馬乗りされて体力がなくなるまでやられる悪役〜今度は主人公の好感度を上げまくっていたら全員に惚れられた件〜   作:陽波ゆうい

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第69話 「お似合いのカップル」

「あー、あー、じゃんけんに負けちゃった〜。私も午前中が良かったのに〜」

 

 ゆいくんと2人っきりでプールを回るじゃんけんに負けた私は、今暇である。

 

 暇だからと言って……。

 

「ねぇ君ひとり? 俺たちと遊ばない?」

「ちょっとだけでいいからさ。俺と遊んでよっ」

「ここの近くのホテルで一緒に休憩しない?」

 

「お断りで〜す」

 

 ナンパしてくる男たちの相手をするほどの軽さは持ってない。

 

 この見た目のせいか、ナンパにはよく遭う。昔からそうだ。

 そして周りからの目も軽そうだの、ビッチだの、誰でもヤりまくりなど……勝手に印象を決めつけられる。

 

 そういう視線には人一倍敏感である。でもいつしか自分でも処理できないほどの大量の視線に、否定することが面倒になり、受け流すようになった。それが印象を悪化させる要因になろうとも。

  

 でも最近はちょっと気持ち的に楽になったかもしれない。

 

『俺たちが必死こいてみんなと平等に関わろうとしてんのに、邪魔するんじゃねぇぇぇぇぇ!!!』

 

 笠島雄二。

 顔は強面。体型もがっしりしているせいか、見た目はヤンキーやヤバいやつとか悪人より。

 

 だが、またアイツも見た目で勘違いされやすい同じ境遇の人間。

 笠島は話せば、意外と悪くない人と分かる。

 

 気持ち的に楽になったというのは、同じ境遇で悩みが理解しあえる同士が増えたから。

 

 私にとって笠島はそれだけの印象。

 けれど、ゆいくんはアイツに夢中である。事あるごとに笑顔で笠島のことを話す。

 今日のプールだって本当は去年みたいに私とお姉ちゃん、ゆいくんの3人で行くはずだったのに。ゆいくんが笠島とあと……もう1人を誘ってきた。

 

 笠島め……私よりもゆいくんを虜にして……。

 

 

「あっ、笠島だ」

 

 フラフラと歩いて辿り着いたのは、食べ物の売店が並ぶエリア。その近くに備え付けてある、テーブルと椅子がセットになったところに、笠島が一人で座っていた。

 

「アイツ1人でどうしたんだろ? まさか水着が見つからなくて落ち込んでるとかっ。仕方ないなぁ〜。ちょっとだけなら私が話し相手になっても——」

 

 一歩足を出した時……次のもう一歩は出なかった。

 

「雄二様、お待たせしました」

「ありがとう。悪いな、持ってきてもらって」

 

 笠島の後ろから髪をポニーテールにしためっちゃ美人さんがきた。あの人は確か……笠島のメイドの雲雀さん。

 

 手に待っているのがかき氷であることから、今から2人で食べるのだろう。

 

 笠島と雲雀さんがかき氷を食べる。

 私からしたら他人事で、一目見たらそれで終わり。さらに遠くから見ているので会話など聞こえない。

 

 私になんて関係ないこと。

 だから立ち去ればいいのに。

 

 なのに……。

 

「いちご、マンゴー、メロン、桃、ぶどう&ブルーベリー、パイナップル味です」

「結構な種類のシロップがかかってるんだな。まあ自由でいいけどさ」

「はい、自由に選んでみました」

「マジで自由って感じでいいと思う」

 

 何故か、そこから目が離せなかった。

 

「雲雀。舌をべーって出してみて。べーっ、て」

「? べー……」

「ははっ、舌が赤くなってるぞ〜」

「面白いですか?」

「そんなに面白くないけども!!」

 

 相変わらず会話は聞こえないが、表情だけは分かる。

 笠島はその強面顔がコロコロ変わって、でも楽しそうで。雲雀さんはいつも通り真顔だけど……嫌とかそういう感情はない。むしろ表情に出にくいだけで内心は……という感じだろう。

 

 ……なんだろう。呆然と立って食い入るように眺める私って。

 

「ん? ……まさか俺の鼻についていたから笑ったのか?」

「さあ、どうでしょう」

「絶対そうだ! 真顔でも読み取れるぞ!!」

「早く食べてください」

「くっ、絶対そうだ……っつ! ああ!? またキーンときたっ」

 

 ただかき氷を食べるだけでこんなにも感情豊かになっている光景は初めて見た。

 

 笠島は強面だけど実は表情豊かで。

 雲雀さんは美人だけど常に真顔。

 

 顔立ちも見た目も違う2人。

 それなのに、どことなく一緒のような感じ。まるでお互いがお互いを深く信頼しているような。そんな気を許した2人だけの空間。

 

 これが——お似合いのカップル。

 

 なんだか腑に落ちたような感覚になる。

 

 私もいつかそうなりたい。

 誰と? 誰とってそりゃ……。

 

『別に話を聞くくらい、いつでもいいぞ。どうせ、結斗やまひろさんには話せないってことも俺を選んだ理由にあるだろうし』

『料理マジで美味かった。じゃあな』

 

『なぁ、りいな———』

 

 あわよくば、私が隣に———

 

「いやいやいや。何考えてるの私っ。笠島とかないないっ」

 

 ゆいくんのことを思い浮かべたはずなのに、なぜか笠島の声が脳裏に流れた。

 

 笠島とか全然タイプじゃないしっ。

 私は、かっこよくて優しいゆいくんが好きなんだしっ。私の彼氏はゆいくんがいいしっ。

 

「あー、もうっ。笠島せいでここのところ色々狂わされてない! アイツなんて別になんともないじゃんっ」

 

 そう。なんともない。その強面顔に水鉄砲の水をかけるくらいなんとも思わない。はず…………。

 

 

 

 

『笠島。次はあそこに行くよ』

 

 りいながそう言いながら、指差したのは——

 

「お前とここって一番ないと思ってたわ……」

「ただの気まぐれだから」

「それは分かってる」

 

 俺とりいなはとある場所に向けて歩いていた。その場所とは……。

 

「ウォータースライダーねぇ……」

 

 そう。ウォータースライダー。

 プール施設の醍醐味といっても過言ではない。

 俺も絶対に乗ろうと思っていたが、りいなの場合、てっきり結斗との時に取っとくと思った。

 

「ただの暇つぶしだから」

「へいへい」

 

 まあウォータースライダーに行くからって、りいなと別に何かあるわけでもないしな。

 

 田嶋はもう放っといて……まひろと結斗は楽しんでるのかなぁ。

 

 

 

 


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