馬乗りされて体力がなくなるまでやられる悪役〜今度は主人公の好感度を上げまくっていたら全員に惚れられた件〜   作:陽波ゆうい

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第70話 悪役とおっぱいぱい②

「うおっ。さすがに並んでるなぁ……」

 

 ウォータースライダーへ続く階段で、俺とりいなの足は止まった。何故なら、そこまで列は並んでいたから。

 

 すぐ横には、パネルがあり……。『身長130cm以上じゃないと利用できない』的な注意書きが書かれていた。

 

 ウォータースライダーは他にもいくつか種類があるが、俺たちが来たところは他のところより高さがあり、落ちるスピードもありそうだ。小学生でも上級学年ぐらい身長がないと危ないかもだな。

 

「俺とりいなさんは身長は余裕でクリアだな」

 

 高校生となればウォータースライダーなど余裕で乗れるが、並んでいる間暇なのでその話題を振る。

 

「まあ胸のcmは超えられなかったけど」

「………いや、それ。俺とか絶対無理なんだけど……。てか、りいなさんも無理だろ」  

「そうだね。でも100ならいけないこともないかも」

「ひゃっ……!?」

「冗談に決まっているでしょ。……変態。ガン見しちゃって。やっぱりおっぱいが好きなんだ」

「え、いや、その……はい、ごめんなさい……」

 

 ガン見していたことを素直に謝る。だって100cmいけるかもって言われたら思わず見たくなるじゃん!!

 

 てか、りいなの浮き輪を引いていた時にもおっぱいが好きかみたいなこと聞いてきたが……おっぱい好きだよ! 男なんだからおっぱい好きだよ!!

 

「別にいいよ。視線には慣れたし」

 

 視線……。

 周囲を見れば、メインはウォータースライダーというのに、並んでいる客(男)のほとんどは、りいなの方に視線を向けていた。中にはわざわざ顔を覗かせてまで見る人も……。

 

 美少女でおっぱいでかいとか、ゲームのキャラとしては一見勝ち組要素しかない気がするが、今は現実。画面で見ているだけと違って、現実では色々と大変そうなのが伝わってくる。

 

「笠島も視線浴びてるね」

「俺は強面顔だからな。あとヤリチン顔でもあるらしい」

 

 俺も相変わらず視線を浴びていた。この強面顔……俺ももう慣れてきたな。使い方によっては便利だし。特にナンパ男には効果的面。あっちが逃げていくもんな。

 

「なんか私たち、似てるかもね」

 

 りいなが独り言のように、小声で言う。

 

「まあそうだな。見た目で勘違いされやすいってところだろ? ……勘違いエピソード大会でもする?」

「する」

 

 暇だったので、その話題を振ってみたが……意外と乗ってくれた。

 

「じゃあまず、言い出しっぺの俺からだな。童貞のはずなのに、ヤリチン笠島と言われた。どうやら俺は中学の頃、都内の中学生女子を食い散らしていたらしい」

「最低な男だね。じゃあ次、私。友達の彼氏を寝取りまくっているビッチ」

「悪趣味な女だな〜。次、俺。ドラッグの密輸とか買い占めとかに金出してるらしい」

「ただでさえ最低なのにそっちまで。もう捕まっちゃえばいいのに。次、私。万年発情期のチンポ媚び媚びビッチ」

「ビッチシリーズ多そうだなぁ……」

 

 俺とりいな。時よりツッコミつつも、交互に言い合っていく。

 

「財布を拾って渡そうとしただけなのに、近くにいたポリスメンにカツアゲしていたんじゃないかと職質されそうになった」

「迷子になった男の子を迷子センターに連れて行こうと手を握っただけなのに、周りの男たちがソワソワしていた」

「全国の不良たちを取り纏めているらしい」

「触らずに童貞卒業させたことがあるとか」

 

 会話はどんどん盛り上がる。

 しかもなんだが周りの男たちが申し訳なさそうな顔をし始めたぞ。

 

 最後の方は肩書き選手権みたいになった。もはやカオスだが……お互いに相当勘違いされる過去を持っているようだ。

 

「はぁ、はぁ……もう一生分の勘違いエピソード言った気がするわ……」

「私も……。はぁ。勘違いされるのってめんどくさい」

「……でも案外悪くないのかもな」

「勘違いされるのが……? 笠島って変態だったの……?」

「勘違いされたり、嫌な視線を向けられるのに興奮するとかじゃねーからな!? てか最初の頃はそれでかなりメンタルやられたし!」

 

 最初……笠島雄二という人物に転生した時。それはもう絶望したし、周りの印象も予想通り、良くないし……。

 

 初対面からの印象はこれからも変わらないだろう。それが悪いとは言わない。人は見た目である程度決めつけてしまうものだから。

 

 でも。

 

「でも、全員が勘違いしたままじゃない。ちゃんと中身見てくれて、理解してくれて……そういう人と出会えたとき、めっっっっっちゃ嬉しくないか?」

 

 今の俺は笑っている。

 だって、嬉しいから。

 雲雀や結斗。田嶋や里島も。そして……。

 

「りいなさんやまひろさんも。なんだかんだでこうやって接してくれるし、俺は嬉しいよ」

「っ………」

 

 恐れていた美人姉妹。まだ地雷を踏んでいないだけかもしれないが、強面顔の俺にも普通に接してくれるし。

 

「強面顔になって良かったって、心からは思えないかもしれないけど……他人より少し、ありがたみってやつが分かるから。みんなと一緒にいるの楽しいって人一倍思える」

 

 それに、笠島雄二だからこそ出会えたみんなかもしれない。

 

「ふーん……ふーん……っ」

「ん? どうしたりいなさん?」

 

 何やらブツブツ言っているような気がするのだが。

 

「なんでもないっ。ばーか! あーほ!」

「なんで!?」

 

 今の発言のどこに、顔を少し赤くしてちょっとした暴言を言われる要素が!?

 

 

 

 

 しばらく並んでいると、ようやくウォータースライダーの順番がきた。

 

 滑り口は3つに分かれてる。順番的に俺とりいなは、同時に滑れそうだ。

 

「じゃあ、生きて帰ってきてね」

「ウォータースライダーはそんなフラグが立つところじゃねーだろ」

 

 ピ!と係員さんが笛を鳴らし、GOサインが出た。

 俺は仰向けに寝そべり、フチを掴んで身体を滑らす。勢いよくスタート。

 背中に冷たい水が当たるのが気持ちいいと思ったのも束の間。

 

「おおおおお、おーーーっ!!」

 

 スピードがついて、そのままの勢いで左右に振られた。見える景色も日差しが当たったものから、真っ暗。さらにカラフルな色にも。途中、ちょっとした落下もあった。

 最後らへんのカーブは、ぐんぐんスピードを上げて……背中が少し浮くぐらいスピードが乗ったとき、一気に視界が明るくなったと思えば——勢いよく着水。

 

 バシャーン!!と派手な水飛沫が上がる。

 

「ぷはぁーー!! はぁ……あー、最高っっっ!!」

 

 顔の水を腕拭いながら思わず笑顔になる。

 やっぱりウォータースライダーは最高だなっ!!

 

「はぁ……ん、勢い凄い……」

 

 りいなも勢いよく着水したようで……口を拭いながらちょっと疲れたような表情をしていた。

 

 仕草と言動がちょっとエロい方向に見えるのは、俺がむしろ、ちゃんと健全な男だからと思いたい。

 

「もう一回行くか?」

「うん。もう一回いく。暇だし」

「へいへい」

 

 言っとくが、ウォータースライダーにもう一回滑るって意味だからな!

 

 ふと、横目に濡れた髪を絞るりいなが映った。

 そして……その瞬間も。

 ウォータースライダーの影響で紐が緩んだのか。それとも揺れる爆乳で紐が緩んだのか。

 

 りいなのビキニがゆっくりとズレて落ち——

 

「おっと!!」

「ひゃッ」

 

 俺は慌ててビキニが落ちないように両手で支えた。

 ふぅ、危ない危ない……。ただでさえりいなは、今にも溢れ落ちそうなその爆乳で男たちの視線を独占しているというのに、本当に溢れたら……歓声が湧くぞ。

 

「ふぅ……」

「……笠島ぁ……っ」

「………? あっ」

 

 りいなの何やら怒ったような、恥ずかしそうな。そんな声が聞こえてきて……俺は視線を下げた。

 

 りいなのビキニが落ちないように抑えるということは同時に、りいなの胸に触れるということ。

 

 俺はりいなの爆乳に。それこそ、抑えるためにガッツリ鷲掴みにしていた。

 

「あ、いや、その……」

 

 絶対怒られるにしで、何か言い訳を……。

 

「や……やっぱり俺はおっぱい好きだわ!!」

「〜〜〜っ! 変態っ!!」

「ごめんなさ——ぶっふっ!?」

 

 思いっきりビンタされた。

 俺はもう、申し訳なくてビンタの勢いに身を任せて水へ沈……ブクブクブクブク〜〜。

 

「……早く上がってきて」

「はい……」

 

 水から上がる。

 りいなの顔は不機嫌そうだ。

 

「……あとで何か奢ってもらうから」

「よ、喜んで……」

 

 これは仕方ない。むしろ奢って済むなら安いものではないか。

 

「なに奢ればいいんだ?」

「……かき氷」

「かき氷でいいのか」

 

 意外。もっと高いものを奢らせられるとか思っていた。

 

「じゃあ次にいくよ」

 

 そう言うりいなの顔は、ほんのり赤かった。りいなとはいえ、胸を触られるのは恥ずかしかったのだろう。そりゃ恥ずかしいか。

 

 結斗に触られるのはまだしも、俺なんかアイツにとっては、部外者だしな。

 

 

 

 バッシャァァァァン!!

 勢いよく水飛沫が上がる。

 

 ウォータースライダーで遊んでいたのはなにも、雄二とりいなだけではない。

 

「ぷはぁ! ははっ。ウォータースライダー楽しいね、まひろちゃんっ」

「そうだね、結斗」

 

 雄二とりいながもう一度列に並んでいる頃。結斗とまひろは、ウォータースライダーを滑り終えていた。

 

「あと一回滑りたいなっ。いいかな、まひろちゃん?」

「もちろん。私は結斗に喜んで付き合うよ」

「やったぁ! ありがとう!!」

 

 結斗は満面の笑みを浮かべた。と思えば、視線をまひろから逸らし、

 

「今滑ったのもいいけど、あそこのウォータスライダーは二人乗りの浮き輪で乗るみたいだし……雄二くんとも乗ってみたいなっ」

 

 結斗の口から出たのは雄二のこと。まひろと遊んでいる時にもちょくちょく名前は出ていた。

 

 まひろは微笑み。

 

「結斗は笠島くんのことが本当に好きなんだね」

 

 "男友達"として。

 そんな分かりきった言葉はわざわざ入れる必要がない。

 

「うんっ。好きだよ!」

 

 結斗は笑顔で。それこそ、先ほどよりもずっと満面の笑みではっきり言った。

 

「そっか。それは良かったよ」

「うん。じゃあ行こうかっ」

 

 結斗は笑顔で先を行く、後ろのまひろの表情は……一瞬、暗くなった。

 


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