【書籍化決定】馬乗りされて体力がなくなるまでやられる悪役〜今度は主人公の好感度を上げまくっていたら全員に惚れられた件〜   作:陽波ゆうい

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第9話 初めまして。俺は悪い人ではございませんよー

「……最悪の目覚め」

 

 今回は悪夢を見たわけじゃない。

 ただ、目覚めてしまったことに後悔しているだけ。

 

 カーテンを開けると日差しが眩しい。

 ……朝が来てしまった。

 

「おはようございます雄二様」

「おはよう。なぁ雲雀」

「はい」

「学園を休むいい言い訳とかない?」

「もう学園に行きたくないのですか」

「理由があるんだよ……」

 

『僕の一番の友達のまひろちゃんとりいなちゃんに雄二くんのこと、話してみるね!!』

 

 昨夜。コンビニで偶然会ってしまった主人公に、にこやかな笑みでとんでもないことを言われた。優しさの暴力よ、こりゃ……。あの様子だと今日にでも美人姉妹と接触することになる。

 主人公の好感度あげも途中だしなぁ……。美人姉妹とはまだ距離を置いておきたい。

 

「雲雀頼む。いい言い訳考えてくれ」

「言い訳考えるのめんどくさいので学園に行ってください」

「ええ!? ちょっとは考えてくれたっていいじゃないか! 頭良さそうな感じだし!」

「第一、いい言い訳を考えても無駄だと思いますよ」

「無駄?」

「雄二様は感じが悪そうな顔しているので、休んでしまったところで『やっぱりアイツは不良だ。もう関わらないでおこう』と悪い印象になるだけです。その翌日からはまた冷たい眼差しで見られ……ついには居場所がなくなり3年間ぼっち確定——」

「ああああ! マジでそうなりそうだからそれ以上は言うなぁ!!!」

 

 雲雀の言う通り、俺が休めば美人姉妹との接触を回避できるが、周りの好感度は悪くなる一方。悪役は何をしても悪い印象になるからな。

 

「では車を用意しますね」

「えっ、徒歩でも良くない? 入学式は終わったんだし。そんなに過保護にならなくても俺は歩いて学園に行けるぞ?」

「………」

 

 雲雀は俺を数秒見つめてきたと思えば、何も言わずリビングを出た。

 

「無視された!? そんなに運転したいのかよ……」

 

 女性って分からない……。

 

 

 

 

「いってらっしゃいませ、雄二様」

「はぁい。はぁ……」

 

 リムジンで送ってもらい、学園に到着。

 学園生活2日目。昨日より今日の方が足取りが重い。

 

「うわぁアイツ。昨日に続いて高級車で登校だぜ……」

「金持ち見せびらかせやがって……金でなんでもできそうだと思ってるよな」

  

 陰口がよく聞こえる。

 相変わらず嫌われてるな、悪役は。

 

「雄二くーん!」

「っ!?」

 

 後ろから聞き覚えのありすぎる声で呼ばれる。聞こえないフリをして足を進めたが、俺を追い越して前に現れた。

 

「おはよう雄二くんっ!」

「お、おう。おはよー結斗……」

「〜〜〜! えへへ、僕たち友達になったんだよね! 昨日は嬉しすぎて眠れなかったよ!」

「そう、なのか……」

「うんっ」

 

 無垢な笑顔が眩しい。すぐ傍には闇を抱えている美少女がいるってのに……。

 

 つか、こんなに純粋で人を信じやすそうだと、主人公がメインヒロインじゃないかって錯覚しそう……。

 

「っ……」

「雄二くん?」

 

 結斗の後ろからきた2人に思わずごくりと唾を飲む。

 

 ——来たな。

 

「結斗。いきなり走り出すからビックリしたよ」

「そうだよゆいくん。女の子を置いてきぼりにするなんてダメだよっ」

「ご、ごめんまひろちゃん、りいなちゃん」

 

 ———美人姉妹。

 

 ゲームの悪役、笠島雄二が馬乗りにされて体力がなくなるまでやられた人物。

 

 それにしても……。

 

「走っている結斗もカッコよかったよ」

「ゆいくんはいつでもカッコいいよ〜♪」

 

 近くで見るとますます綺麗だし、いい香り……。相変わらず主人公にはベタベタだな。うっ、間近で見たらまた砂糖が口から出そうに……。

 

「……で、君は誰かな?」

「……私たちの間に入って」

「っ……」

 

 4つの冷たい目が俺を見る。びびって声って声が出せない。

 

 あ、あと間に入ってきたのはそっちだからな!!

 

(雄二くん任せて)

(お、おう)

 

 結斗がアイコンタクトをしてきた。

 

「まひろちゃんとりいなちゃんに紹介するね! こちら、僕の友達、男友達の笠島雄二くん!」

 

 嬉しそうに話す結斗とは対照的に俺と姉妹は暗い雰囲気。なんか明るいことでも言うか……。

 

「は、初めまして。俺は悪い人ではございませんよー」

「雄二くんはちょっと怖そうな顔をしているけどね、実は凄く優し———」

「興味ないわ」

「え」

「私も興味なーい」

「え」

 

 2人の興味ない発言に戸惑う主人公。腕を掴まれて連れられてしまう。

 

「2人とも〜! ご、ごめんね雄二くん! またちゃんと説明するから!」

「お、おー」

 

 緊張した割には案外早く終わったな……。

 

 よくよく考えれば主人公しか興味ない美人姉妹が俺なんかに興味を示すはずない。冷たくあしらわれて終わりで………。

 

「良かったぁぁぁ!!!」

 

 主人公の好感度上げだけ意識しとけば美人姉妹は何もしてこないじゃん!!

 

「うぉぉぉぉぉぉーーーー!!!」

 

 嬉しさで思わず走りたくなる。

 足取りがめっちゃ軽い! 学園毎日通いますよ!!!

 

 

 

「なぁ……アイツなんで叫んで走ってるんだ?」

「変な薬でも打ってきたんじゃない?」

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