【書籍化決定】馬乗りされて体力がなくなるまでやられる悪役〜今度は主人公の好感度を上げまくっていたら全員に惚れられた件〜   作:陽波ゆうい

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第93話 悪役はメイドに嫌われたくない

「今日は……一緒に寝てもらえませんか?」

 

 雲雀その一言に、思わず息を呑んだ。

 

 冗談でも軽口でもない。

 

 そんな雲雀の真剣な表情を前に、断るなんて選択肢は浮かばなかったし……。

 

 何よりも、雲雀の頼みだからな。

 

「ああ、いいよ」

 

 俺は小さく笑みを浮かべて頷いた。

 

 その後、お互いにシャワーを済ませてから、再びリビングへと戻ってきた。

 

 けれど、いざ一緒に寝るなると……妙にソワソワしてしまって、言葉が詰まるし、どうにも視線は落ち着かない。

 

 って、いかんいかん!

 

 雲雀は雷が怖くて、一緒に寝る提案をしたんだ。

 俺がちゃんと安心させる役割をしないと!!

 

「えと……リビングで寝る? それとも……どっちかの部屋だと困るよな……?」

「っ……」

 

 俺が探るように問いかけると、雲雀は瞬きをしてから、ゆっくり口を開いた。

 

()()()()()()、リビングが無難かと思いますが……」

「だ、だよな! よし、じゃあ布団準備しようぜ!」

 

 妙に焦って、逃げるように部屋へ向かった。

 

 落ち着きたいのに、鼓動は速さを増すばかりだ。

 

「……なんで俺はこんなに落ち着いていられないんだ。いや、落ち着ける状況じゃないけど……」

 

 雲雀と一緒に寝るんだぞ?

 揶揄われているわけじゃない。

 本当に……。

 

 いやいや、やっぱり落ち着くべきだろっ。

 

 雲雀は雷が怖いから俺を頼っているんだ。

 だから俺がしっかりしないと。

 

 それに、一緒に寝ると言ってもさすがに距離を取ってだろう。

 

 俺たちは悪役とメイドである前に、異性なわけだし、配慮がないと……。

 

 きっと、何かテーブルを挟んでとかで……。

 

「雄二様」

「は、はいっ」

 

 声を掛けられ、慌てて振り向く。

 すぐ背後に雲雀が立って、俺を見つめていた。

 

「す、すまんっ。布団持ってくるの、遅かったか?」

「いえ……まだ続きがあるのですが」

「つ、続き?」

「はい」

 

 雲雀はひと呼吸おいて、ほんの少し視線を伏せから口を開いた。

 

「本来であればリビングが無難かと思いますが……今日は、雄二様の部屋で一緒に寝てもいいでしょうか?」

「俺の部屋……?」

 

 確かに、雲雀の部屋に入るわけにはいかないな。

 俺の部屋なら雲雀が掃除してくれているし、問題はない、けれど――

 

 その時、窓の外が一瞬白く光って……また雷が鳴った。

 

「っ……」

 

 雲雀がびくっと体を震わせたのも見えた。

 

 俺が……迷っている暇はないみたいだな。

 

「ああ、いいよ。ただ……分かってると思うけど、俺は変なことなんて絶対しないからな!」

 

 そう宣言して、自分に言い聞かせる。

 

 よし、今からは雲雀を安心させることに集中だ!

 

「……」

 

 雲雀は何も言わない。

 

 どこか不満げな……ジッとした目を向けられている気もする。

 

 よく分からないけど、その沈黙が逆に胸をざわつかせて……。

 

「なんというか……俺は、雲雀に嫌われたくないんだよな」

「……え?」

 

 不意に口から溢れた。

 

 自分でもなんで急に、そんなことを言ったのか分からない。

 ただ、胸の奥にあるもやもやを形にしたら、そんな言葉になった。

 

「俺が今、こうして楽しく過ごせているのは……俺のことを外見で判断せず、ちゃんと見てくれて、接してくれた雲雀のおかげでさ……」

 

 ある日突然、悪役に転生して……。

 それが馬乗りされて体力がやられるまでというバッドエンド持ちで、強面で勘違いされがちで……色々な不安要素があった。

 

 でも今はそれが無くなりつつある。

 今が凄く楽しいって思えている。

 

 それは、気さくな性格の結斗のおかげでもあるげど、やっぱり1番は……。

 

 1番最初に出会ったのは……雲雀だ。

 

「雲雀と仲良くなるにつれて、会話も増えて、笑顔を見せてもらえるようになって……。でもその反面で、嫌われたくないって気持ちも大きくなっていく。……なんでだろうな」

 

 なんだか言葉に詰まってきて、視線を上げる。

 

「……私が雄二様を嫌うなど、ありません」

 

 小さく、けれど確かな声色で雲雀は言ってくれた。

 その言葉に、胸が温かくなる。

 

「……そっか。ありがとな。って、俺の方が励まされてるな。ほんとは俺が安心させなきゃいけないのに。雲雀はほんと優しいよな!」

 

 明るく言った俺に、雲雀は静かに首を振って……。

 

「しかしながら裏を返せば、雄二様は……私が望むことにあまり拒否をしないということ、ですよね?」

「え?」

 

 その言葉と同時に、雲雀がゆっくりと両手を差し伸べてきた。

 

「私を……抱きしめることだってできますよね?」

 

 雲雀のその表情は、雷の音よりもずっと胸を高鳴らせるものだった。

 




【お知らせ】

 この度、馬乗り悪役の書籍化が決定しました。
 遂にやりました!!

 皆さま、長い間本当に応援ありがとうございます!
 
 荒削りなところもありますが、もっといい作品にできるよう作業頑張ります。

 ゆっくりにはなりますが、こちらの更新も続けますので、WEB版も書籍版もよろしくお願いしますm(_ _)m
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