【書籍化決定】馬乗りされて体力がなくなるまでやられる悪役〜今度は主人公の好感度を上げまくっていたら全員に惚れられた件〜   作:陽波ゆうい

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第96話 王子様も動き出す

 まひろとの昼飯を断るわけにもいかず……。

 

 屋上で俺とまひろは売店で買ったパンを食べ始めた。

 

「うん! このメロンパン美味しいよ。人気なのも分かるね。ホイップクリームはしつこい甘さではなくて、何よりもこのメロンパン自体が美味しい。冷やしてあるのがもっと良い。最高だよ」

 

 感想を口にしながら、頬を緩めるまひろの姿がすぐ視界に入る。

 

 ただ食べているだけというのに、なんかこう……絵になるな。

 これを眺めるのが、まひろのファンたちにとってのご褒美なんだろうなー。

 

「うん? 笠島くんも食べたくなったかい? 悪いけど、この特製メロンパンは一口も譲れないよ?」

「いやいや……! 譲ってもらうつもりなんてないよっ。俺は俺でパン買っているしな」

  

 メンチカツサンドに焼きそばパン。チョココロネ、あんぱんにコーヒー牛乳。

 こんだけあれば目移りしない。しかもどれも美味いし。

 

 それに、どっちかといえばまひろの姿を見ていたわけだし。

 

 昨日は、りいなと。

 今日はまひろと……。

  

 なんだこの展開? なんか大きなイベントの前触れか?

 夏以降のイベントって……。

 

「そういえば」

 

 まひろの声が聞こえて、俺は顔を上げてそちらを向く。

 

「いつもは美人メイドの雲雀さんお手製の美味しいお弁当だけど、今日は売店なんて珍しいこともあるんだね」

「ああ……。って、なんで雲雀に弁当作ってもらっているの知っているんだよ!?」

「知っているというより、話されたんだよ。そう……結斗にね」

 

 結斗か。なるほど。

 結斗なら俺と毎回、昼飯を一緒に食べているからな。

 

「それで、今日は雲雀さんお手製のお弁当じゃないんだね。喧嘩でもしたのかい?」

「喧嘩なんてしてないぞ。むしろ、逆で――」

「うん? 逆?」

「……あっ」

 

 昨夜の出来事を思い浮かべていたら、口から自然と出てしまった。

 

 いや、まだ一緒に寝たとかじゃなくて良かったものの……。

 今更、口を閉じたところでもう遅いだろう。

 

「ふーん……」

 

 現に、まひろが気なるといったように俺を見ている。

 

「……君、意外とやることやっているタイプ?」

「どういう意味だよっ」

「いやはや、ごめんね。少しからかいが過ぎた。何はともあれ、雲雀さんとの仲は良好のようだね」

「まあ……な。俺は、雲雀には嫌われたくないからな」

「ふーん、君の方はそういう感じの……」

 

 まひろが意味深な目で俺を見つめてくる。

 

 なんというか……妹のりいなと違って、まひろは結斗のことがたまらなく好きなこと以外、よく分からないんだよなぁ。

 

「しかし、笠島くん。嫌われたくないじゃ、関係は一向に変わらないんじゃないかい?」

 

 まひろはそう言いつつ、どこか遠くを眺めた。

 

「私も結斗に嫌われたくないさ。嫌な思いをしてほしくない。悲しい顔をしてほしくない。何よりも、私のことを嫌いにならないでほしい。でも……関係を進めるにあたって、相手の顔色を窺っている場合じゃない。待っているだけじゃ、他の誰かに取られてしまう。他の誰にも取られたくない。そういうものからくるのが恋心というものさ」

 

 まひろは間を置いてから、次に俺を見る。

 

「笠島くん……君にだって、同じことがいえるさ。雲雀さんがいつまでも君の隣にいてくれるとは限らない。彼女は大人で君は子供。何より彼女は、外見も内面も魅力的な女性だ。そんなの、周りが放っておくはずがないだろう?」

「……」

 

 まひろの言葉に……俺は黙って頷くしかなかった。

 

 雲雀は、今は俺の専属メイドだ。

 

 しかしながら、ゲームでもこの世界でも……雲雀の将来はどうなるかは分からない。

 

 雲雀の隣が、俺じゃない可能性だってあるわけで……。

 

 それを想像すると、胸がモヤッとした。

 

「ふふっ。そこで真剣な顔でだんまりするってことは、笠島くんは雲雀さんとこれからも一緒にいたいってことじゃない?」

「そりゃ、まあ……」

 

 雲雀と一緒にいるのは、楽しいからな。

 

「……なら、雲雀さんへの見方の答えも出ているとは思うんだけどねぇ」

「まひろ、さん……?」

 

 何かボソッと言ったような気がした。

 

「ううん。なんでもないさ」

 

 まひろは微笑んでから、特製メロンパンを食べることを再開した。

 

「……そうか」

 

 俺もパンを食べるのを再開。

 

 お互いに完食したところで……今度は、俺の方から口を開く。

 

「そういや、まひろさんもいつもならりいな……さんの手作り弁当じゃない? 今日は売店なんてそっちも珍しいな」

「そうだね。けれど、りいなにもお弁当作りをお休みしてもらう日があっていいと思ってね」

「そっか」

 

 まひろはそう言うが……俺は、昨日のりいなの弁当を知っている。

 

 この屋上で、一緒に弁当を食べたからな。

 

 そして、卵焼き作りに失敗していたことも実際に食べて知っている。

 理由は、結斗が熱出したことで動揺して、味付け失敗したんだよな。

 冗談で言ったけど、あの反応を見るに本当だったんだよなぁ。

 

 まひろもそれを分かっている上で、今日はりいなに弁当を作ってもらわなかったのだろう。

 

 それをわざわざ言わないあたり、やっぱりまひろはイケメンだよなぁ。

 

「笠島くんも、私がりいなにお弁当を作ってもらっていると知っているんだね。いや、結斗に聞いたのかな?」

「ああ、嬉しそうに話すからな」

 

 美少女の手作り弁当というよりも、りいなの弁当が美味しいからこそだな。

 

「そうかい。お互いに、結斗を挟んで情報が漏れているわけだ。そして、最近は結斗以外にりいなも……」

「まひろさん?」

 

 声が小さくなり、話が聞き取れない。

 

「やはり、君にはちょっと興味が湧いているんだ。だから……」

 

 まひろは一息ついてから、俺を見据えて。

 

「笠島くん。今日の放課後は、私に付き合ってほしいな」

 

 

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