Ab06(アビドスぜろろく) 生徒名 レイヴン   作:sepa0

23 / 23
勢いで始めたこの物語も、なんとか一つの結末に辿り着けました。
それも、感想やここすきで私を焚き付けてくれた皆様のおかげです。
今回のお話も、楽しんでいただけたら幸いです。


第22話 それでも拾いなおせたもの。(2)

あの日から、ずっと同じ夢を見る。

何度削除しようとしても消えないあの記憶が原因だ。

4つの銃声が響き、私の腹部に一拍置いて痛みが走る。

私はその痛みに耐えられずその場にうずくまる。

その私の胸ぐらを掴み上げ、悪魔が私の顔を覗き見る。

 

『あなたのかんがえていること、わかりますよ。』

 

何の感情も読み取れない、空虚で恐ろしい瞳が私を見つめる。

真っ赤に爛々と輝きながら、冷め切った瞳が。

 

『このじょうきょうをどうにかできればそれでいい。 くちやくそくなんて、まもるひつようなんてない、とね。』

 

私は今の地位に着くまで様々な危機があった

が、その度に私は自身の経験と才能、そして運でその危機を乗り切ってきた。

しかし、私の思考を完全に読み切ったその悪魔からは、今まで経験したことのない恐怖を感じた。

メリットもデメリットも関係ない。

この後どんなことが起きるか、どの様な影響を残すのか、そんなことは関係ない。

ただ、一つの目的。

このアビドスを脅かした者を、消す。

今でもカメラアイを閉じるだけで、あの真っ赤な瞳がシャッターの裏に浮かび上がる。

その後の事は、よく覚えていない。

が、私は屈辱に塗れた敗北をし、その事はきっと今の地位を維持することに対してマイナスに働くだろう。

既に私の部下達の何名かはその時の様子を上層部に報告し私を失脚させるためのネタにしている。

だが、そんな事はどうでもいい。

あの娘を、悪魔を、黒羽レイヴンを消さなければ、私の人生はずっと暗闇の中のままになるだろう。

恐ろしい、恐ろしい。

だからこそ、消さなければならない。

私の存在を賭けて、消してやる!!

この4脚のロボットは、レイヴンの、アビドスの最終兵器であるローダー4のスペックを基準に作られてある。

装甲も、火力もこちらが上だ。

そして私自身が戦う前に安物の方で消耗させ、狙い通りもうレイヴンは丸腰だ。

この瞬間のために、私はこいつを動かす訓練を続けた。

どうせ寝られないのだ、朝も、昼も、夜も、ずっとローダー4の断片的な情報を解析して作り上げたシミュレーターをやり続けた。

殺す算段は出来ている。

奇襲も成功した。

あとは、実行するだけだ。

ロケット砲が直撃しよろめいているローダー4をFCSが捉え、照準が赤く光ると同時に私はペダルを踏み込み飛び上がる。

 

『消えろ、イレギュラー!!!』

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

『リペアキット、残数2。』

「……まいったね……。」

『ビジター、装備が無い状態では分が悪い。 回避に専念してくれ。』

 

カイザー理事の4脚MTが飛び上がり、放ったロケット砲の一斉射を下をくぐり抜けて躱しリペアキットを使用する。

機体の各部から一定の電圧で瞬時に硬化する特殊なジェルが流れ出て、欠損した装甲部位を補填する。

半分ほど削られていたAPが元通りになった事を確認して改めて理事へ向き合う。

 

『消えろ、消えろ消えろ、消えろ消えろ消えろ!!』

『……強い戦闘ストレス反応を検知。 話し合いは通じないだろうな。』

「だろうね。……まさか、こんなあつりょくをだせるほどのやつだったとは、おもってなかったよ。」

 

だが、分かっている。

彼に私を殺すという選択肢を選ばせたのは、紛れもない私だ。

……ノノミ先輩があの時止めてくれなかったら、きっと私もああなっていた。

アビドスを脅かすものを全て消すまで止まらない、化け物に。

4脚MTはルビコンでもよく相手にしてきたが、これほどの殺意を向けられるのは、久しぶりだ。

急に耳鳴りがして、飼い主の声が聞こえる。

 

『……やれ、621。 さもなくばお前が死ぬことになる。』

 

そうだ、殺さなければ、殺される。

今までずっとそうやってきたんだ。

相手はもう私と同じ土俵に、命のやり取りの場に、自分から上がってきたのだ。

殺されるのは、普通のことだ。

 

「……りょうかいです、はんどらー……」

 

いつものように返答し、レバーを握る手に力を込めた瞬間、他の人の声が聞こえた。

 

「"大丈夫、レイヴンは変われるよ。"」

 

あの公園で、先生が私に言ってくれた言葉。

今までそうしてきた様にホシノ先輩を捨てた私に、変われなかった私に、それでも先生が投げかけてくれた言葉。

熱くなった頭が急に冷えて、あの時先生とした約束が思い出される。

 

「"ここで捨ててしまったものなら、私が探して、拾ってきてあげる。"」

「"大丈夫、君は私の生徒だから。"」

 

先生は言ってくれた通り、ホシノ先輩を探しだして、また会わせてくれた。

私の捨ててしまったものを、拾ってきてくれた。

ならば今度は私が、先生との約束を果たす時だ。

……ごめんなさい、ウォルター。

初めて貴方の指示に、声に背きます。

 

「……わかりました、せんせい。」

『"……えっ、どうしたの?"』

 

何か策を講じていたのか、少し反応が遅れて先生が聞き返す。

 

「ぜったい、ころしません。 しょうこに、かいざーりじをもちかえってせんせいにみせてあげます。」

『"……そんな猫みたいなことしなくていいよ。 それよりも、あと少しだけ耐えて。"』

「なにか、さくが?」

『"エンジニア部の子達から数日前に連絡があってね。 ローダー4用の武器を作ってみたから試させて欲しいって要請があったんだ。 今座標を伝え終わった頃で"』

『先生! 何か巨大なものが飛んできます!!』

『"……さすが、仕事が早いね。"』

 

アヤネ先輩の報告と同時に見覚えのある箱が空の向こうから飛んできた。

エンジニア部の皆さんが作り上げた特殊運搬車両『コウノトリ』のコンテナと同じものが……側面と下部に付けられたジェットエンジンで空を飛んできている。

空力を無視し推力のみで飛んでくるコンテナを見て、ルビコンで何度もお世話になった補給シェルパを思い出す。

カイザー理事はそれを撃ち落とそうとするが、そうなる前にコンテナから何かが放出され4脚MTの周囲に落下し、爆発する。

 

『ECMだと!? おのれ、ロックオンが……。』

 

カイザー理事の4脚MTの周囲が煙幕とチャフで埋め尽くされ動揺している間に私の目の前にコンテナが突き刺さる。

 

『"レイヴン、今のうちに補給物資を!!"』

「りょうかいです!」

 

コンテナは自動で開き始めていたが、今は時間が惜しい。

扉を掴み、無理やりこじ開ける。

中にはエンジニア部のコトリさんが持っていた物をそのまま巨大化させた様な青色の塗装がされたガトリングと、メリニット製を思わせる無骨なバズーカ、そして振り回しやすそうな棒の様なものが入っていた。

 

「これは……。」

『どうやら解説が必要な様ですね!!』

「!? ことりさん?」

 

急に無線に聞き覚えのある明るい声が聞こえてきた。

さらにコトリさんに続いて他の二人の声も聞こえてくる。

 

『やぁ、久しぶりだねレイヴン。 先生から詳しい話は聞いているし、今ゆっくりと解説している時間はないことも知っているよ。』

『……ガトリングとバズーカは見ればわかると思うから、その棒について説明するね……。』

「うたはさん、ひびきさんも、おひさしぶりです。 かいせつをおねがいします。」

 

背中につけたままになっていたアタッシュをパージし、右手にガトリングを、バズーカを空いた左ハンガーに付け、警棒を思わせる棒状の物を左手に持つ。

 

『その棒は通称「電磁警棒」!! 人気ロボットアニメ、「機動警察ヴァリュキュレイバー」に登場する主人公のロボットが持っている近接武器をモデルに作ってみた物です!!

棒の先端から高圧の電流を流し、相手のロボットの内装機器をショートさせ行動不能にさせることを想定して作ってみた物です!!』

『……他にも色々説明したいけど、まずは目の前のそれを何とかして……。』

『託したよ、レイヴン。』

「……りょうかいです。 ありがとうございます。」

 

何とも、今一番欲しいものが出てきてくれた。

格闘戦こそ、ACの真骨頂だ。

武器の使用モーションの適用が終了すると同時に、私はカイザー理事の4脚MTへ向かって突撃した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

『ええい、小賢しい!!』

 

私の周囲を取り巻く鬱陶しい煙を、ガトリングとロケットで払う。

すると、目の前には弾切れになった奇妙な見た目とマガジンではなくバレルを交換するという異質なマシンガンを捨て、ガトリングと謎の棒を装備したローダー4がこちらへまっすぐ突っ込んできていた。

 

『馬鹿め、そちらから来てくれるとはな!!』

 

ロケット砲のリロードが終わると同時に、一斉に撃ち出す。

しかし、ローダー4は高速で前進しながら左へ瞬時に移動し、直撃寸前で砲弾を交わし私の機体へ体当たりを仕掛けてきた。

 

『……このきょりでは、どのぶそうもつかえませんね。』

『お……のれぇ!!』

 

ブゥーン……という音と共にローダー4の持つガトリングが回転し、私の機体の装甲へ銃身を押し当て射撃を始める。

 

ガガガガガガガガガガガ!!!

 

というやかましい射撃音と、ACSという自動で装甲を最適な位置へ動かしてくれる制御システムが弾丸を弾いてくれている音が聞こえる。

しかし機体の情報を知らせるコンピューターは胸部の装甲が少しずつ削られていることと、ACSへの負荷が限界に近づいていることを知らせてくる。

私は距離を取り負荷を回復させるため高く飛び上がった。

 

『まぁ、そうするしかありませんよね。』

 

レイヴンは落ち着き払った声で、目にも止まらぬ速さで棒からバズーカへ持ち変え射撃し、飛び上がってすぐの私の機体はそれ以上機体を動かすことはできず直撃した。

 

『ACSが……ヒィッ!!』

 

ACSがエラーを起こしたアラート音と共に機体の制御が効かなくなり、体勢を崩しながら地面へ着地する。

メインモニターのノイズが晴れると、画面いっぱいに左手に黄色い光を纏った棒を持っているローダー4が映り悲鳴を上げてしまう。

 

ガツンガツンガツンガツン!!

 

とローダー4が凄まじい勢いで打ち据える度に機体が、コックピットが揺れる。

馬鹿な、これほどの体格差があるのに、なぜ押されている?

火力も装甲もパワーも、こちらが上だというのに……!!

ACSのエラーが収まり、機体の制御が復活すると私の震える腕を無理やり動かし、こちらも体当たりを繰り出す……が、その動きを読んでいたのか、ローダー4はこちらが前に出るより一瞬早く後ろへ下がり躱される。

 

『たしかに、いぜんとはちがうようですね。……でも、まだせおってはいない。』

『えらんだだけでは、わたしは……わたしたちは、たおせませんよ!!』

 

その後は、一方的な戦闘だった。

私の周囲を上も含めた立体的な機動で動き回るローダー4にガトリングの照準が追いつかなくなり、ロケット砲も全て紙一重で躱されていく。

あれが、人が乗っている兵器の動きなのか?

あんなものに、人間が耐えられるのか?

本当に同じ技術で作られているものなのか?

だとしたら、私が今乗っているものは何だ?

 

『貴様は……一体何者だぁ!!』

『……しっているでしょう?』

 

ローダー4のキックによりACSが再びエラーを起こし体勢が崩れたところへ、メインカメラ付近に激しく発光している棒が深く突き刺される。

 

『わたしは、あびどすこうこういちねんせい。 くろはねれいゔんです。』

 

その言葉と同時に激しい閃光が走り、メインディスプレイも他のパネルも消えた。

レバーを動かしても、ペダルを踏んでも、何も起きない!!

暗闇の中で必死に機体の再起動を試みていると、バリッ……バリッ……と何かを剥がす様な音が聞こえ、少しずつコックピットの中が明るくなっていく。

……装甲を、コックピットハッチをローダー4がむしり取っているのだ。

このままでは、私は、トドメを刺される!

惨たらしく殺される!!

 

『うわぁぁあぁぁあぁあああ!!!』

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

アビドス高校旧本館内

空き教室

 

「……やったの!?」

「その様です! カイザー理事のACは機能を停止しました!!」

「やりましたね!レイヴンちゃん☆」

「ん……さすがだね。」

「うへぇ……レイヴンちゃんが居なかったら、私達終わってたかもね。」

 

アヤネのノートPCに映されているローダー4からの映像に皆見入っていた。

激しい攻防の末、レイヴンの駆るローダー4が勝った事に私達は喜ぶ。

だがその歓喜は、次の瞬間聞こえてきた異音によってかき消えた。

 

バリッ……バリッ……

 

と、硬い金属を毟るような音が、ノートPCから聞こえてきた。

急いで映像を確認すると、ローダー4がカイザー理事のACの胴体部分の装甲を引き剥がしていた。

 

「……まさか、とどめを?」

「お、落ち着いてください!レイヴンちゃん!!もう決着はついたんです!」

「まずい……レイヴンちゃん、熱くなっちゃってるのかも……!!」

"……レイヴン!!"

 

私達の声が聞こえてくれたのか、ローダー4の手が止まった。

そして、いつも通りの少し舌足らずな声が聞こえてきた。

 

『……あの、みなさん、わたしをなんだとおもってるんですか?』

 

少し残念な感情が乗った声が返ってきた。

 

「い、いや、その、と、とどめを刺すのかなって……。」

『……ふぅ。 だっしゅつするまえに、きのうていししたので、さばくのねつでむしやきにならないように、こっくぴっとはっちをあけてあげてるだけです。』

『それともせんせい。 やっぱりかいざーりじをみせてほしいですか? きぜつしていますが。』

『恐怖に耐えられず気絶とは、随分人間らしいロボットだな。』

"い、いや、いいよ。"

「ん、日頃の行いが悪かったね。」

『……かえりましょうか。 みなさん。』

 

Ab06、生徒名レイヴン。普通に不貞腐れる。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

アビドス砂漠での決戦から、1週間後。

 

アビドス高校

廊下

 

「こんにちは、先生。」

"こんにちは、アヤネ。 最近どう?"

 

しばらく放置していたシャーレでの業務をなんとか片付け、久々に訪れたアビドス高校の廊下をアヤネと一緒に歩く。

 

「そうですね……。 今日もまた慌ただしいです。」

 

色々報告することがあるのか、手元のリストを捲りながらアヤネは話し始める。

 

「あの後、対策委員会は先生の公的な認証により正式な委員会として承認されました。

お陰さまで対策委員会は、正式にアビドス生徒会としての役割も担う事になりました。」

「個人的には、ホシノ先輩に生徒会長になっていただきたかったのですが、断固として拒否されまして……。 新しい生徒会長は、まだ決まっていません。」

 

「アビドスの借金は、レイヴンちゃんが稼いでくれた3億円と、セイント・ネフティス社から曖昧な情報で依頼を出した事に対しての謝意として送られてきた1億円のおかげで、5億円まで減りました。」

「まだまだ返済しなくてはいけない金額は多いですが、それでも死ぬまで返せないと思っていた借金に対して希望が見えた事で、皆活気付いています。」

 

「カイザーコーポレーションの理事はあの後、生徒誘拐事件の主な容疑者として指名手配されています。

さらに会社の資金を横領し、私設部隊や独自の兵器開発に利用したとして即座に解雇処分となったそうです。」

「それから、無理に上げられた利子についても返済能力があると認められたおかげで以前より遥かに少ない利子の支払いで済む形になったので、助かりました。……レイヴンちゃんには、頭が上がりませんね。」

 

「便利屋68の方々はまたどこかに事務所を設けたようです。 ただ、それがゲヘナの自治区なのか、それとも別のところなのかは詳しく分かっていません。」

「ですが、レイヴンちゃんと個人的な交流や、派遣社員として雇い協働したりなど友好な関係は続いているようです。」

 

「それから、最近ミレニアムサイエンススクールからのお客様が来るようになりました。

どうやらローダー4の噂が広まっているようで、一目見ようと観光に来てくれているようです。」

「ホシノ先輩はそれに目をつけて、有料でローダー4とのツーショットや手のひらに乗せての記念撮影などをやってみたところ、無視できない収益が生まれています。」

 

「……最後に、レイヴンちゃんの傭兵稼業についてです。」

「匿名性を保つため『ナイトフォール』として活動は続けるようですが、これから受ける依頼は個人の生徒や学園からの依頼のみに絞るそうです。」

「ただ、例外として『シャーレ』を通した依頼については受託するとのことです。」

 

アヤネの報告が終わると同時に、アビドス対策委員会の教室の前に着く。

扉を開けると、中にはいつものメンバーが、明るい表情で待っていた。

 

「……それでは、アビドス対策委員会の定例会議をはじめます!」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

アビドス高校2F

レイヴンの部屋

 

『……貴方ですか? ナイトフォールとか言う独立傭兵の代理人は。』

『ゲヘナ風紀委員会行政官、天雨アコ。 知己を得て光栄だ。』

 

私はアビドス高校1年生、黒羽レイヴン。

今は独立傭兵ナイトフォールの営業指針の転換の第一歩として、新しいお得意様をチャティに見つけてもらっているところだ。

これからは企業ではなく学園に所属している生徒か、あるいはシャーレ(先生)を通しての依頼のみを受ける事にした。

既に何度か便利屋68の皆さんとは仕事をしたが、更に顧客を増やすために様々な学園の治安組織に営業をかけて回っている。

……もちろん、全てチャティにやってもらっているが。

今回は因縁があるといわれればあるゲヘナの風紀委員会に営業をかけているようだ。

相変わらずムカつく喋り方をするアコについ奥歯を噛み締めてしまう。

 

『ゲヘナ風紀委員会の作戦に参加したいという事でしたね?』

『ブラックマーケットのガードを潰したそうですが、それが何だというのです?』

『どこの馬の骨ともわからないものが、厚かましいにも程がありますね。 お断りです。』

 

我慢の限界に達し、通信を切ろうとするがそれよりも、早くチャティが返答した。

 

『今回も風紀委員長が出ると聞いているが……頼れる人材が他にないとは、不幸なことだな。』

『ほう……貴方の飼い犬に、ヒナ委員長の代わりが務ま『アコ、誰と通話してるの?』

『ひ、ヒナ委員長!?』

 

電話先から、ゲヘナ風紀委員会とアビドス対策委員会が衝突した時に相対したヒナ風紀委員長の声が割り込んできた。

アコの動揺した声に少し機嫌を直しながら、チャティとヒナ委員長の会話を聞く。

 

『あんたがヒナ委員長か、話をするのは初めてだな。 単刀直入に言おう。今度の作戦、独立傭兵ナイトフォールを雇わないか?』

『ナイトフォール……ああ、あのアビドスの。 分かったわ、雇いましょう。』

『い、委員長!? いくらなんでも、それは……』

 

聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするが、あっという間に雇用が決まった。

 

『はぁ……アコ。貴方もナイトフォールの実力は調べてあるでしょう。』

『し、しかし風紀委員会の作戦に部外者を入れるなんて……』

『考えてみて、アコ。 ここでナイトフォールを雇わなかったら、彼らは次にどこに営業をかけると思う?』

『……次の作戦のターゲット……でしょうか?』

『そう。 それで、私は間違いなくナイトフォールに時間を取られる事になる。それこそターゲットが逃げるには十分な時間をね。』

『そもそも、次の作戦の情報を、どういうことか彼らは察知してる。 それを売られるだけでも充分面倒な事になるわ。』

『……そ、その通りです……。』

『わかってくれたようね。……さて、長くなったけど、今度は報酬の話をしましょうか。』

 

何としても私を雇いたくなかったアコだが、ヒナ委員長に丸め込まれてしまった。

やはり、ヒナ委員長は話が早くて助かる。

 

『……黒羽レイヴン?』

 

……どうやら、情報戦が得意なのは、私たちだけではないらしい。

今思えば、割とルビコンにいた頃でも私が本物のレイヴンではないことはバレていた気がするし、正体がバレていることは気にしない方が良いのかもしれない。

チャティに合図を送り、端末のマイクへ語りかける。

 

「やすくしておきますよ、ひなふうきいいんちょう。」

 

Ab06、生徒名レイヴン。

独立傭兵、ナイトフォール。普通に営業中。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

おまけ

バレンタインの約束 レイヴン編

『IMAGE EDIT』

 

 

 

「おつかれさまです、せんせい。」

 

今日も様々な学園へ用事を片付けに行き、シャーレのオフィスへ戻ってくると入り口に包みを持ったレイヴンが立っていた。

 

"おつかれさま、レイヴン。 仕事の調子はどう?"

「けんちょうです。……さて、こんかいはせんせいに『おくりもの』があります。」

 

レイヴンの言うやけに強調された『贈り物』につい警戒してしまうが、その様子を見てレイヴンは肩を落とす。

 

「……せんせい。 たしかにわたしやちゃてぃのいう『おくりもの』はぶっそうなことがおおいですが……」

「きょうがなんのひか、しっていてそのはんのうなら、さすがにざんねんですよ。」

"今日?……ああ、ということはもしかして?"

 

私が今日はバレンタインデーだということを思い出し、贈り物の中身を推察できたことを確認すると、レイヴンは再び話し始めた。

 

「そう、ばれんたいんでー……ひごろおせわになっているひとに、ちょこをぷれぜんとするひ……と、ほんにかいてありました。」

「……わたしがいたところでは、そういうぎょうじにふれることはありませんでしたからね。 しっていれば、うぉるたーにも……いえ、なんでもないです。」

 

少し悲しげな顔をした後、レイヴンは首を振るい再び笑顔になると包みを手渡してくれた。

 

"ありがとう、レイヴン。"

「そうそう、おくるちょこはとくべつなものであればあるほど、よろこばれるそうなので、すこししゅこうをこらしてみました。」

「よろしければ、かくにんしてみてください。」

 

そう言われて、包みを開けてチョコを確かめる。

 

"おお……。"

 

そこには夕暮れの紅い空と、そこに羽ばたくカラスのイラスト。

そして、羽根で隠れてはいるが『NIGHT FALL』と読めるアルファベットがデザインされていた。

 

"す、すごいね……いまにも動き出しそうなカラスだね。"

「ふふふ……どうやら、さぷらいずはせいこうのようですね。 じかんをかけたかいがあります。」

「ちょこのきれはしでくみたてるのは、たいへんでしたよ。」

"……え?"

 

改めて、レイヴンのくれたチョコを見てみる。

てっきり、チョコの包み紙にイラストが描いてあると思ったが、違った。

とてつもなく細かくされたチョコ達……直線の黒色のチョコ、曲線の白いチョコ、オレンジ色の薄い四角形のチョコ……それらが集まり、一つのイラストとなっていたのだ。

 

「……ないとふぉーるは、せんせいからのいらいを、こころまちにしています。」

「せんせい、これからも、よろしくおねがいしますね。」

 

その後、レイヴンから貰ったチョコは写真に撮って保存してから美味しくいただいた。




最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
更新頻度は落ちましたが、失踪せずに書ききれて良かったです。
色々書こうと思いましたが、もはや言葉は不要ですね。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

追記:AI製ですがイメージ画像を作ってみました。
第1話の最後に挿絵として乗せましたので、機会があれば立ち戻ってみてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

シャーレ所属傭兵レイヴン(作者:猫又提督)(原作:ブルーアーカイブ)

コーラルの爆発から逃げた先は知らない土地でした。▼AC6×ブルアカのクロスオーバーです。本編にはAC6のエンディング(レイヴンの火、ルビコンの解放者、賽は投げられた)のネタバレが含まれる場合があります。本編はレイヴンの火ルートです。なお621は女の子です。異論は一部認めます。▼お話は原作準拠、ゲーム開発部の話から始まります。ストーリーの一部を改変する場合があ…


総合評価:1634/評価:7.41/完結:76話/更新日時:2024年04月10日(水) 12:27 小説情報

ハンドラー・ウォルター先生概念。(作者:ヤマ)(原作:ブルーアーカイブ)

 Q.どうしてソシャゲの主人公はサポートしかしてないのにモテるの?▼ A.ハンドラー・ウォルター。▼ アーマードコア6のネタバレを含みます。▼ ストーリーを知らない方は買ってきてプレイしよう!▼ n番煎じかつ既出概念ですが、ウォルターの猟犬になった(脳を焼かれた)記念+どうしてもウォルターの心情を自分で書きたかったので書きました。みんなの解釈と違ったらごめん…


総合評価:27271/評価:9.3/連載:71話/更新日時:2026年04月21日(火) 11:15 小説情報

Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─(作者:タロ芋)(原作:ブルーアーカイブ)

渡り鴉よ。透き通った世界にようこそ▼殆どお話を投稿した告知に使うくらいしか使っていませんが一応のTwitter垢です。▼https://x.com/t1w1jAL869JZ3Sz?t=t4q9NaJ6v8P8AevEdopumA&s=09▼活動報告などで出して欲しい、絡みの欲しいキャラや展開などの要望など適当に投げてもらえれば幸いです▼https:/…


総合評価:6323/評価:8.3/連載:66話/更新日時:2025年05月11日(日) 23:57 小説情報

BLUE ARCHIVE -SONG OF CORAL-(作者:Soburero)(原作:ブルーアーカイブ)

コーラルに脳を焼かれたので初投稿です。▼n版煎じですが見てくれると嬉しいです。▼ストーリーは履修中なので解像度低いのはユルシテ・・・。▼※!AC6の重大なネタバレを含みます!▼―追記―▼祝!最終章完結!やったぜ!▼―2025/9/24追記―▼本小説の外伝『Hounds Den』を別ページに移植いたしました。▼感想、ここすきなどを送ってくださった方々に感謝を申…


総合評価:5268/評価:8.26/連載:71話/更新日時:2026年03月23日(月) 21:12 小説情報

青空の下、猟犬は求め流浪する(作者:灰ネズミ)(原作:ブルーアーカイブ)

三周回って諦めた621が半獣人+αとなってキヴォトスで目覚めるお話です。▼※本作はブルーアーカイブ、及びAC6のネタバレが含まれます▼※ループもの、獣要素高めが苦手な方もご注意下さい。▼他人から見た621は無口(?)です。まだまだエミュレートも甘い荒削りでの初投稿ですが、一例として楽しんで貰えれば幸いです。▼2025/05/25-追記:タグ整備しました。追加…


総合評価:873/評価:8.35/連載:44話/更新日時:2026年05月03日(日) 20:55 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>