Ab06(アビドスぜろろく) 生徒名 レイヴン 作:sepa0
私はどちらも好きです。
かなり遅れてしまいましたが、見せても恥ずかしくない文が書けたと思っているので楽しんでいただけると幸いです。
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ミレニアムサイエンススクール
廃墟地帯
「てぎわがいいですね、ありすさん。 あいてがわがふびんになりますよ。」
「不憫ですか? ダメですよ、仲間になりたそうな目で見てくるモンスター以外に情けをかけてはいけません!」
「ふ、2人ともちょっと待ってぇ!!」
「ユズちゃんしっかり! 先生も!」
"……若いって……いいね……。"
「ぜひ……ぜひ……。」
私はゲーム開発部シナリオライター、才羽モモイ!
今は途中で現れたナイトフォール……じゃなくて、レイヴンを加えた6人パーティーで廃墟地帯から帰ってる途中!
なんだけど、先導してくれてるレイヴンとアリスの相性が良すぎて慣れないレイドバトルに参加してるプレイヤーみたいに置いてかれちゃいそう!
工場に辿り着くまで私たちがしていた、敵を誘導してアリスのスーパーノヴァで一掃する戦法の誘導役をレイヴンが1人でこなしているのを見せられると、私達との次元の違いを感じちゃう。
ゲーム開発部と先生だけで工場の内部までたどり着いた時は
『私達ってもしかして実はすごく強いんじゃない? C&Cとか、他の学校の戦闘集団と戦っても勝てちゃうかも!』
なんて言っちゃったけど、最近まで名前も聞いたことのなかった廃校寸前の学校の1生徒がここまで強いとなるとその考えは甘すぎるってよーく分かった。
オートマタ達もレイヴンとアリスの2人組を危険視したのか戦力をそちらに集中させてるけど、出てきた端から撃破され続けてる。
おかげで私とミドリは殿としての務めより今にも倒れてしまいそうなユズと先生のフォローに集中できてるけど……最初にやろうとしてたチームプレイは全然できてない!!
もちろん安心感はあるけど……このペースで走って、ヴェリタスに『G.bible』を届ける体力の余裕が残るかなぁ……。
そんな事を考えながら走っていたら、レイヴンの焦った声が聞こえた。
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ミレニアムサイエンススクール
廃墟地帯
「レイヴン! 残念なお知らせです!」
「どうしました?」
「マナがついに切れてしまいました!」
「……まな?」
私はアビドス高校1年生、黒羽レイヴン。
今は、廃墟地帯でたまたま鉢合わせたゲーム開発部と先生の援護をしている。
そんな中、アリスさんに聞いたことのない単語を言われて困っているとミドリさんが説明してくれた。
「えっと、スーパーノヴァを撃つためのエネルギーがもう無いって事だと思います。」
「ああ、なるほど。 こまりましたね。」
私がオートマタ達を誘導し、アリスさんが一網打尽にする。
囀り砲を持ってきていないこの状況では貴重な範囲攻撃だったが、ここからはもう出来ないようだ。
あの威力でジェネレーター直結ではなくバッテリー駆動という点で改めて驚くが、プランの変更をしなくてはいけない。
今は私とアリスさんでだいぶ削ったおかげかオートマタ達の増援が追いついていないが、ここからは片付けるスピードが落ちるので囲まれるのは時間の問題だ。
……仕方ない。
不本意だが、ローダー4に皆さんを乗せて歩いていくことにしよう。
コックピットには当然入りきらないし、手のひらに人を乗せた状態でブースト移動するわけにもいかない。
アサルトライフルやサブマシンガンなどの小火器はともかく、ロケットランチャーなどの爆発物を当てられればACSで多少は軽減できても装甲にダメージは入る。
破壊されることはないにしても修理が必要になるが、そうも言ってられない。
「あやねせんぱい。 ろーだーふぉーのおーとぱいろっとをきどうして、ざひょうをしじしてくれますか?」
『了解です。 しばらくお待ちを!』
"……えっ、まさか、またあれをするの?"
「あんしんしてください、あるいてかえりますから。 それと、せんせいにはこっくぴっとにすわってもらいますよ。」
"えっ、ほんと!?"
アビドス砂漠でカイザーPMCの包囲から抜け出す時に味わったアサルトブーストの事を思い出したのか先生の表情が曇るが、アサルトブーストは使わないこととコックピットに座ってもらう事を伝えるとすぐに晴れた。
落とすつもりは無いが、万が一先生がローダー4の手の高さから落ちたら取り返しのつかない事になる。
監視カメラやセキュリティを突破する必要のある封鎖地点までは回避行動などの複雑な動きはできないオートパイロットでも十分だろうし、コックピットに座ってもらうのが1番安心だろう。
とにかく、ローダー4が来るまで身を隠すことにしよう。
「ももいさん、ぷらんのへんこうを「レイヴン! 私に良い考えがあります!」
皆さんを安全に運べる乗り物を手配したと伝える前に、異様に目を輝かせたアリスさんが目の前に詰め寄ってくる。
おそらく私のプランの方が良いだろうが、せっかく提案してくれたのだから聞いてみよう。
「えっと、かんがえとはなんでしょうか?」
「はい! 私の光の剣は動かなくなってしまいましたが、ここにはもう1つ、光の剣があります!」
アリスは私の左手に付けられたパルスブレードを指差しながら言う。
確かに、私はアサルトライフルとブレードという2種類の武器を使っている。
武器が使えなくなってしまったアリスさんに片方を譲り戦力の低下を賄うというのは合理的だが……アリスさんにこのブレードを貸すのはまずいと私の直感が告げている。
せめてアサルトライフルの方を譲ろうと提案する前に、手を強く握り込まれる。
「レイヴン、今こそ力を合わせる時です! 合体技です!」
「……えっ? がったい?」
「はい! レイヴン……いえ、使い魔『黒い鳥』よ。 我が剣となり、共に戦場を駆けようではないか!」
「……みどりさん、せつめいしていただけますか?」
「すみません、今回はちょっと私にも……。」
アリスさんの発言の解読が得意なミドリさんに助けを求めたが、お手上げのようだ。
そうして戸惑っているうちに、なぜか私はアリスさんに担がれた。
「コマンド:魔物チェンジ! アリス、光の剣『レイヴン』を装備しました!」
「? ありすさん、それはわたしのなまえ……っ!!」
ようやく、アリスさんの考えている事が分かった。
そしてもう逃げられるタイミングではない。
というかそもそもアリスさんに捕まえられて抜け出せる人はおそらくいないだろう。
なんとかアリスさんに考えを改めてもらうしかない。
「ありすさん、おちついてください。 わたしは」
「敵の増援です! 行きますよ、魔剣『レイヴン』!」
「……アリスちゃん!?」
とんでもなく悪いタイミングでオートマタ達の増援が到着し、アリスさんは先ほどよりも輝いた目で敵の集団へ向かって走り出した。
ミドリさんも私の運び方を背負う形から足首を掴む形へ変えた辺りで察しがついて止めようとしてくれたが、間に合わなかった。
もうダメだろうが、言わずにはいられなかった。
「ひとのはなしは、さいごまできいてください! おそわらなかったんですか!?」
「大丈夫です! 銃の射程範囲把握に努めながら接近するテクニックは、TSCのプニプニ戦で履修済みです!」
「そういうことではなく……!!」
私はルビコンでも経験しなかった、武器として振り回されるという貴重な体験をすることになった。
この状況をカーラが見たら笑うだろうか?
それとも流石に止めてくれるだろうか?
……大陸間輸送用カーゴランチャーのコンテナに乗り込み、もう降りられない射出寸前のタイミングで
『有人で打ち出されるのは、あんたが初めてになるだろうね。』
なんて伝えるくらいだから、きっと笑うだろう。
そして今この瞬間だけは、感情も身体の感覚も無かったあの頃に戻りたくなった。
「行きます! モンスターに対して『秘剣! つばめ返し』!!」
「せんせ、たすけっ……おわーっ!?」
"レイヴーーン!!"
足首をがっしりと掴まれた状態で盾を構えているオートマタに向かって振り下ろされた私は、タイミングに合わせて大人しくパルスブレードを起動させるしかなかった。
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ミレニアムサイエンススクール
廃墟地帯近郊
「えっと……大丈夫ですか?」
「……すみません……もうちょっと……おぇっ……。」
『い、一体何が起こったんですか? すごい風を切るような音がずっと聞こえていたのですが……。』
私はゲーム開発部イラストレーターのミドリです。
今はアリスちゃんの提案で近接武器として振り回されて、最後に立ち塞がったゴリアテに向かって勢いよく投げつけられ撃破したものの、目を回してしまっているレイヴンさんの介抱をしています。
いつ戻してしまっても大丈夫な体勢で屈んでいるレイヴンさんの背中をさすっていると、こんな状態にした張本人のアリスちゃんが満足そうな顔で近づいてきました。
「レイヴン、ありがとうございました! 機会があればまたやりましょう!」
「っ……はぁ……。」
レイヴンさんはかなり引き攣った顔でアリスちゃんを見たあと、言っても仕方ないという諦めを感じる溜息を吐いてから私へ話しかけてきました。
「アリス……さんは、いったいどういうきょういくをうけてるんですか?」
「えっと、言葉の使い方を覚えてもらうために……じゃなくて、アリスちゃんはゲームが大好きなんです。」
一応レイヴンさんはナイトフォールとは別人だと通そうとしているのだから、こちらもアリスちゃんの正体を隠す体を保つべきと判断して訂正する。
「なのでアリスちゃんの話し方や行動のほとんどは、遊んできたゲームの中で出会ったキャラクター達の影響を受けているんです。」
レイヴンさんは私の回答に対してあまり理解できてない風な顔をしながら返します。
「……なるほど。 こんどは、ひとをふりまわしてはいけないと、おしえられるげーむをやらせておいてください。」
「は、はい……。」
そんなゲーム、あるのかな……。
なんて事を考えていると、ヴェリタスの皆から警備システムを機能停止させたという連絡が入る。
システムが復旧する前に移動しようとして初めて、もっと早く浮かぶべきだった疑問に気づく。
「あれ、そういえばレイヴンさんはどうやってこの廃墟地帯に侵入したんですか?」
ミレニアムサイエンススクールに近いだけあってここの警備システムは最新鋭で、専門家であるヴェリタスの力を借りなければ連邦生徒会の関係者でもない限り侵入できない筈だ。
そしてその疑問に、何故かお姉ちゃんが答える。
「それはナイトフォールの相方のおかげじゃないの? 私の……というより、ミレニアムサイエンススクールの生徒の個人情報を盗めるような技術の持ち主だし。」
「なるほど。 いいこうさつですが、こんかいは……あっ。」
またお姉ちゃんの空気を読まない鎌をかけるような発言に、レイヴンさんはあっさりと引っかかり目を大きく開きながら口に手をやり動揺する。
お姉ちゃんもしつこいけど、レイヴンさんも迂闊すぎると思う。
「えへへ。 もしかしてさぁ、レイヴンの言う『ある友人』って本当は居なくて……」
「お姉ちゃん、いい加減にして。」
「モモイ! ナイトフォールとレイヴンの一致率は確かに高いですが、まだ生き別れの双子の可能性があります!」
「……そ、そうです! そしてそんなことより……。」
アリスちゃんの雑なフォローに雑に乗っかりながら、レイヴンさんは空に向かって指を刺した。
「あれが、そのこたえですよ。」
先ほどの慌てようが嘘だったように静かにそう言われて一斉に上を見上げると、ずっと続いてる曇り空の隙間から、何かが出てきました。
それはこちらへ向かって降りてきて、だんだんと形がはっきりしてきます。
「えっ? あれって……。」
"あんな高度まで上がれるんだね。"
「大型モンスターですか!? レイヴン、もう一度合体です!」
「ちがいます。 わたしのあいぼうです。」
警戒したアリスちゃんが再びレイヴンさんを装備しようと掴み掛かりましたが今回はひらりとかわして跳び上がり、高めの瓦礫の上に着地すると同時にその背後に巨大な人型ロボットも着地しました。
確かにはるか上空から侵入するのなら、封鎖地点のバリケードや監視カメラは意味をなさなくなる。
「これが、ろーだーふぉーです。」
着地の衝撃で起きた風圧にスカートや髪を靡かせながらレイヴンさんが紹介してくれました。
「ろーだーふぉーは、ほんらいはわくせいたんさがもくてきのえーしー……ろぼっとです。 こういうなにがおきてもおかしくないみちのりょういきのたんさは、とくいぶんやなんですよ。」
『指定された座標へ到着、オートパイロットを解除。 システム、通常モード移行。』
出会ったばかりの頃のアリスちゃんみたいな喋り方の機械音声でそう言うと、写真で見るよりずっと大きく感じるそのロボットは主君に仕える騎士のようにレイヴンさんへ跪いた姿勢で停止した。
……小柄な姫に仕える、巨人の騎士。
とても絵になるその姿を見て、私はスケッチブックを部室に置いてきてしまった事を後悔していました。
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ミレニアムサイエンススクール
廃墟地帯近郊
「凄いです! レイヴンはパイロットでもあるんですね! いったい、いくつジョブを持っているのですか?」
「ねーお願い! 1枚だけでいいから写真撮らせて!」
「だめです。」
「なんでー!? まさか、タダでは撮らせないってこと?ケチ!」
私はアビドス高校1年生、黒羽レイヴン。
今は、何度も変更される座標に翻弄されながらも辿り着いてくれたローダー4と写真を撮りたいとゴネ出したモモイさんの相手をしている。
無許可で撮影しない倫理観は立派だが、どうやら私が撮影を許可しない理由までは行き着いていないようだ。
「けちなのはみとめますが……しんにゅうきんしのえりあでとったしゃしんを、もちかえってよいのですか?」
「……あっ、そっか。」
「そういうことです。 どうしてもとりたければ、あびどすへかんこうにきたときにしてください。」
危機は脱したとはいえ、まだ私達は本来居てはいけない場所にいる事を思い出してようやく納得してくれたモモイさんに宣伝も兼ねて説明する。
「にゅうじょうりょうはせんろっぴゃくごじゅうえん、でっきにあがってのつーしょっとはべっとで、さんぜんさんびゃくえんです。」
「……高いのか安いのか反応に困る!」
"うーん、得られる体験としては安い方なんじゃないかな。"
「まぁ、たいていのおきゃくさまはよろこんではらってくれますね。」
最近のアビドス対策委員会の定例会議の議題で1番長引いた料金設定だ。
ホシノ先輩はもう少し吊り上げようとしていたが、結果的にはこの値段に落ち着いた。
個人的な感想としては、ぎりぎり5000円を超えないところが良いと思う。
「モモイ! G.bibleの解析が終わってゲームが作れたら、必ず行きましょう!」
「……私も賛成。 良いインスピレーションが得られそう。」
「わ、わ、私は……やっぱり、やめとく。 外は、怖いから……。」
「えー!? まぁ、いきなり砂漠みたいなところに行くのはハードル高いかぁ。」
どうやらうまく宣伝出来たようだ。
帰る為にローダー4のコックピットを開くが、その前にもう一つ言いたいことがあったことを思い出す。
「そうだ、みなさん。」
「どうしました? レイヴンさん。」
「もし、はいぶがどうにかできなくて、みれにあむにいばしょがなくなってしまったときは、あびどすこうこうに」
「ちょ、ちょっと待ってストップ!!」
私のもしもの時はアビドス高校に転校するという提案をしている途中で、モモイさんに打ち切られる。
「すっごくありがたい提案だけど……今は聞けないよ。」
「ここまで追い詰められたのは私達の責任だけど……逃げ道があるって思っちゃったら、きっとG.bibleを見ても賞を取れるようなゲームは作れなくなっちゃう。」
モモイさんとの付き合いは長くないが、今までで1番真面目な雰囲気が出ている。
「それに私はあの学校で、部室で、証明しないといけないの。」
「ユウカに私が大好きな……私を幸せにしてくれたゲーム達がガラクタじゃない、大切な宝物なんだってことを!」
「……ふむ。」
今のモモイさんからは、ラスティやホシノ先輩ほどでは無いが良い圧力を感じる。
私が思っていたより、モモイさんの背負っているものは軽くはないらしい。
「……しつれいなていあんを、してしまいましたね。 わすれてください。」
「はい! アリスは何も聞いていません!」
アリスさんの元気な挨拶を聞きながらローダー4のコックピットシートへ座り、ハッチを閉める。
ディスプレイに光が灯り、周囲の映像が映る。
頭部のメインカメラを足元にいる先生とゲーム開発部に向けて、スピーカーをオンにする。
「それでは、みなさんおげんきで。 あびどすにかんこうにきたときは、おともだちかかくで、とらせてあげますよ。」
『ありがとー! あ、そうだ。貴方をモデルにしたキャラをゲームに登場させていいかなー!?』
「? よくわかりませんが、いいですよ。」
『ほんと!? じゃあ、楽しみにしててねー!!』
別れの挨拶をした後、アサルトブーストの余波に巻き込まない位置まで移動してから空へ飛び上がる。
宝探しの方は失敗に終わったが、先生やゲーム開発部を助けられたのは良かった。
廃墟地帯の上空を抜け、アビドスへ向かっているとアヤネ先輩から無線が入る。
『お疲れ様でした、レイヴンちゃん。……ところで、気になる話があったのですが。』
「? はい、なんでしょう。」
なんだか声色が少し怖い。
廃墟地帯からは約束通り何も持ち出していないし、怒られる様なことはしていないはずだが
『……他校の生徒の個人情報を盗んだというのは、本当ですか? 黒羽レイヴンさん。』
アヤネ先輩が怒っている時の特徴であるフルネーム呼びに、体が強張る。
「……あ、いや、ちゃてぃにおねがいしてれんらくさきをつきとめただけで」
『盗んだんですね?』
「……はい。」
『はぁ……チャティさん、これから何かする時は私にも一応話を通してください。 2人とも、やっていい事といけない事をしっかり学ぶ必要があります。』
「……はい。」
『了解した。 お手柔らかに頼む、奥空アヤネ。』
モモイさんに口止めの連絡をする為にチャティにお願いして連絡先を突き止めてもらった事がバレてしまった。
どうやら私もアリスさんを笑えるほど、まだ常識人ではないらしい。
アヤネ先輩に書かされるであろう反省文の内容を考えながら、私は帰り道を飛んだ。
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ミレニアムサイエンススクール
ヴェリタス部室
「依頼された『データ』について、結果が出たよ。」
「い、いよいよ……。」
「ドキドキ……。」
無事に廃墟地帯で得た『G.bible』のデータの解析をヴェリタスに頼んだ翌日、部室まで来てほしいと連絡が入ったのでお邪魔する。
大型のコンピューターが何機も並び、その機能を保全する為にかなり冷やされている室内で白髪のポニーテールが特徴のヴェリタス部員、小鈎ハレの話を聞く。
「知っての通り私たち『ヴェリタス』は、キヴォトス最高のハッカー集団だと自負してる。」
「システムやデータの復旧については、それこそ数えきれないほど解決をしてきた……。 その上で、単刀直入に言うね。」
いよいよ待ち望んだ答えに私とゲーム開発部の皆は集中する。
「モモイ、あなたのゲームのセーブデータを復活させるのは無理。」
予想外の答えに当事者であるモモイ以外はガクッと体勢を崩してしまう。
「うわぁぁぁん! もうダメだーーーー!」
「そっちじゃないでしょ!? G.bibleのパスワードの解除はどうしたのさ!?」
大きな声で泣き出したモモイを押し除け、ミドリがハレへ詰め寄る。
少し動揺したハレが答える前に、少し後ろで何かを聞いていたグレーの長髪でメガネを付けていて、盗聴が得意な音瀬コタマが半分ヘッドホンをずらして答える。
「それなら、マキが作業中ですよ。」
「マキちゃんが?」
そう言われてミドリが部屋の周囲を見回すと部室のドアが開けられ、赤髪のお団子ヘアーが特徴の小塗マキが入室してきた。
「あ、おはようミド!……モモはどうしてこんなに泣いてるの?」
「気にしないで大丈夫……それより、G.bibleはどうだった?」
部室の入り口近くでうずくまり、いまだに悔しそうに床を叩き続けているモモイをスルーさせてミドリがマキへ質問する。
「うん、ちゃんと分析できたよ。 あれはかの伝説のゲーム制作者が作った神ゲーマニュアル……G.bibleで間違いないね。」
「や、やっぱりそうなんだ!」
その後、あのデータが間違いなくオリジナルのG.bibleである事と、残念ながらファイルのパスワードを直接解析するのはほぼ不可能であること。
しかしセキュリティファイルを取り除いて中身のデータを直接見る方法なら可能性がある事と、その為には『Optimus Mirror System』通称、『鏡』と呼ばれるツールが必要であることを説明された。
「ぜ、全然話についていけない……。」
「つまり……G.bibleを見るためには、その『鏡』っていうプログラムが必要って事だよね? それはどこにあるの?」
ミドリの質問にマキは椅子にもたれかかりながら残念そうに答える。
「あたしたち、ヴェリタスが持って……た。」
「何だ、それなら今すぐ……ん、待って?過去形!?」
「……そう、今は持ってない。 生徒会に押収されちゃったの、もうっ!」
その後、『鏡』は危険なものではないがヴェリタスの部長であるヒマリが直々に制作した世界で1つしかないハッキングツールであり代替品は存在しない事。
それを使ってコタマが私のスマホのメッセージを確認しようとしていた事。
取り戻さなければ部長に怒られてしまうことを伝えられた。
「とにかく……私たちも『鏡』を取り戻したい。」
「それに、G.bibleのパスワードを解くためには、あなたたちにとっても『鏡』は必要……そうでしょ?」
ハレはモモイの目を見ながらそう問いかけてきた。
モモイはその発言の意図を汲み取り、腕を組んで頷く。
「なるほどね……呼び出された時点で、何かあるのかなとは思ってたけど。 だいたい分かったよ。」
「え、も、もしかして……?」
「ふふ、さすがモモ。 話が早いね。」
怪しい笑みをこぼしながらマキは立ち上がり、モモイは準備運動でもするように腕を回す。
「目的地が一緒なんだし、旅は道連れってね。」
「共にレイドバトルを始めるのであれば、私たちはパーティーメンバーです。」
既に乗り気なモモイとアリスに少し驚きながら、ミドリが一応の確認をする。
「あの、もしかてだけど……まさかヴェリタスと組んで、生徒会を襲撃するつもりじゃ……!?」
「そのまさかだよ、ミドリ。」
姉の何の動揺もない回答にミドリは肩をガックリと落とす。
……自分の学校の生徒会を襲撃するという計画に何の躊躇いもなく同意できるのは、流石にちょっと危ないかな?
マキはモモイの返答に嬉しそうにしながら、少し気まずそうに話し出す。
「参加表明ありがと、モモ。 ただ、この計画にはちょっとした問題があるんだよね。」
「問題?」
「『鏡』は生徒会の『差押品保管所』に保管されてるんだけど、そこを守ってるのが実は……」
マキは少し溜めて、作り笑いと感じられる笑みを浮かべながら言う。
「メイド部、なんだよね。」
「え? メイド部って、もしかして……。」
メイド部という名前が出てミドリの表情が固まる。
なるほど、あの子達が相手となると一気に話は難しくなる。
だがモモイはいつも通りの雰囲気で話し始めた。
「ああ、C&Cの事だよね? ミレニアムの武力集団、メイド服で優雅に相手を『清掃』しちゃうことで有名なあの……。」
「そうそう! まぁ些細な問題なんだけどさ〜。」
「そっか〜! そうだねー、うーんなるほど〜……。」
どうやら、いつも通りの雰囲気を演じようと努めていただけらしい。
マキとモモイにだんだんと笑みが無くなっていき、完全に無くなったと同時にモモイがこちらを見て叫ぶ。
「先生お願い!! 独立傭兵ナイトフォールを雇って!!!」
"……駄目だよ。"
「えええ!!? じゃあ諦めよう!!ゲーム開発部、回れ右!前進っ!」
「待って待って待って! 諦めちゃ駄目だよモモ!」
"落ち着いて、モモイ。"
私の返答にコミカルに倒れ込んだかと思えばすぐに立ち上がり、ミドリとアリスに指示を出して帰ろうとするが理由を説明する。
"私はシャーレの先生だからね。 困っている生徒を助けようとして、結果的に迷惑をかけてしまうのは許してもらえるけど。"
"ミレニアムサイエンススクールの運営を頑張ってるセミナーを襲撃するために、外部の傭兵を雇うなんてことはできないよ。"
「……そりゃ、そうだよね。」
モモイが肩を落とすが、私が本当に伝えたいことはこれだ。
"そう、『私』はナイトフォールを雇えないんだよ。 困ったね。"
「?……ああ、なるほど!」
どうやら私の意図が伝わったようで、モモイは早速スマホを取り出して何か文章を書き始める。
「……いやいや、こんな文章じゃ来てくれないよ。 大金は払えないんだから、それ以外の要素で受けたくなるようなテキストじゃなきゃ……。」
どうやらナイトフォールへ送るメッセージを書いているようだが、完成にはもう少し時間がかかりそうだ。
その間に作戦の話を進めようとヴェリタスの皆の方を向くと、マキを始めとしたヴェリタスのメンバーがポカンと口を開けていた。
「……えっ、ナイトフォールって、あのナイトフォール?」
「独立傭兵ナイトフォール……正確な年齢、所属、来歴が一切不明。 ただ分かっているのは、その圧倒的な強さだけ。」
「私達ですら突き止めることのできなかったナイトフォールの個人連絡先を、モモイが持っているとは驚きました。」
「え?……ふふん!すごいでしょ! 私とナイトフォールは友達だからね!」
まだレイヴンが来てくれると決まったわけでは無いが、もし来てくれるなら『鏡』の奪還作戦の成功率はかなり高くなる。
そう、あくまで高くなるだけという事は皆も分かっているようだ。
「ただ、強力な助っ人が1人いたところでどうにかなるほど、ミレニアムタワーの警備は甘く無い。」
「はい。 世界の滅亡を食い止めるための戦いには、まだ仲間が足りません!」
「その通り。 それに計画と、いくつかの準備が必要だね。」
"私にできることなら、任せて。"
私はハレにお願いされて、この作戦に必要な仲間……エンジニア部へ協力をお願いするために向かった。
そして彼女達の協力は、びっくりするくらいあっさりと取り付けることができた。
土下座して足を舐めるくらいは覚悟してたけど、すんなりいって良かった。
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アビドス高校
3F 空き教室
ポコン!
アヤネ先輩に見張られながら反省文を書いていると、触らないように遠ざけられたスマートフォンからモモトークの通知音が聞こえた。
それも私用のではなく、ナイトフォールとして活動しているときに使うものとして別に用意してもらった方だ。
「……あやねせんぱい、かくにんしてもいいですか?」
「ダメ、と言いたいところですが……仕事の連絡かもしれないのですよね? どうぞ。」
「ありがとうございます。」
原稿用紙とシャーペンを置いて、ナイトフォール用のスマートフォンを開く。
正直に言えばモモトークの通知音がした時点で送り主は誰か分かっている。
仕事中でも無いのにわざわざナイトフォール個人にモモトークを送ってくるのは、ゲーム開発部のモモイさんだけだ。
また何かやらかして、その後始末の依頼か愚痴を送ってきたのだろう。
どんな内容であれ、まだ半分以上も空白が残っている原稿用紙へ向き合うよりは楽しそうだ。
『独立傭兵ナイトフォール! 悪いけど、緊急の依頼を送らせてもらったよ!』
『何度も頼んで申し訳ないけど……多分、貴方にしか頼めない。 まずは、内容を確認してみて!』
……思っていた内容と違い、崩していた姿勢を立て直して真剣に向き合う。
「……ちゃてぃ。」
『了解した。……ミレニアムサイエンススクール、ゲーム開発部から依頼が来ている。』
少し時間を置いて、チャティの入っている端末の画面が切り替わりブリーフィングが始まる。
『……え? 私が読むの?』
『だって私が読んでもシリアスな感じにならないじゃん。 ユズはすぐに詰まっちゃって読み上げに向いてないし、アリスはどんどんアレンジしちゃうし。』
『台本は書いてあげたんだから。 さっ、先生と2人っきりの時くらいにしっとりとした感じで(パァン!)いだぁ!?』
既に録音が開始されていることに気づいていないようで、依頼に関係の無さそうな部分が続いたが、ミドリさんが咳払いをして改めて話し始めた。
『……依頼の内容を、説明させてください。』
ミドリさんの真面目な声色な挨拶から始まり、G.bible.exeと表示されている携帯ゲーム機とミレニアムタワーの最上階付近がマーキングされた画像が現れる。
『私達はヴェリタスとエンジニア部の皆さんと協力し、生徒会に押収されたハッキングツール「鏡」の奪還を決行します。』
『私達にはアリスという強力な切り札がありますが、それでもセミナーが本気となったとすれば、正面衝突を避けたとしても十全な戦力ではありません。』
作戦メンバーの顔写真と、大まかな作戦内容を示した画像が表示される。
どうやらエンジニア部とヴェリタスによりハッキングを仕掛けてミレニアムタワーの警備システムを麻痺させ、その混乱に乗じて最上階へ向かい目的の品を掠め取る作戦のようだ。
『……ですから、貴方にはもう1枚の切り札になっていただきたいのです。』
『もちろん、できる限りの謝礼は用意します。 貴方の力を私達に、私達の居場所を守るために貸してください。』
『……オッケー、ばっちり!』
『ふぅ、緊張した……ん? 待ってお姉ちゃん、なんで報酬欄に私のプライステ』
なんとも締まらない依頼内容ではあるが、なんだかこの必死さにルビコン解放戦線からの依頼の仲介人を思い出す。
彼らは重要拠点である『壁』を落とした張本人である私に対して、その実力を見込んで何度か依頼を送ってきていた。
しかし、配備されたての新型HCとLC2機の撃破だとか封鎖機構最強の地上兵器『カタフラクト』の撃破だとかアリーナ上位ランカーの独立傭兵2名の排除だとか依頼の内容の無謀さはアーキバスと良い勝負だった。
けれど、
『独立傭兵レイヴン、貴方に引き受けてもらいたい作戦がある。』
露払いや捨て駒としてでは無く、独立傭兵レイヴンならば頼めると言われるのは、今思い返すと気分が良い。
……あの頃は、ただ報酬額が良かったから受けただけだが。
あの優しい声のルビコニアンも、私の戦いぶりを賞賛してくれたミドル・フラットウェルもあの火で死んでしまっただろう。
これ以上気分が沈む前に思い出を振り返るのをやめ、席を立つ。
「あやねせんぱい、しごとのじかんです。」
「はい、お気をつけて。 帰ってきたら、反省文の続きをちゃんと書いてくださいね。」
「……もちろんです。」
アヤネ先輩に書きかけの反省文を回収されて逃げ道を無くされつつ、ナイトフォールの正装へ着替える。
「ところでチャティさん、報酬はどれくらいなんですか? あまりにも怪しい金額だったら払う気が無いという可能性もあります。」
『了解した、奥空アヤネ。 今回の報酬額は15,000円と、中古のゲーム機だな。』
「ふふっ、いままでうけてきたいらいで、いちばんかにばんにやすいね。」
初めから受けるつもりだったので見ていなかったが、高校生のお小遣いレベルの報酬額を聞かされつい笑ってしまう。
しかし、アヤネ先輩は険しい表情をしていた。
「……レイヴンちゃん。 報酬の支払いを踏み倒す気は無さそうですが……」
「どうしました?」
「ブリーフィングでは書かれていませんでしたが、間違いなくミレニアム最強の武装集団『C&C』と関わる事になります。 正直、この金額では割に合っていません。」
「もっともないけんです。 はっきりいっておくと、げーむかいはつぶのいらいでなかったら、うけてないですね。」
着替えが終わり、心配そうなアヤネ先輩へ振り返る。
「ですが、こまっているともだちがいたらたすけるのがとうぜんのことらしいので。……まぁ、あるしゃちょうとちがっておかねはいただきますが。」
「レイヴンちゃん……!」
Ab06、生徒名レイヴン。 普通に情に流される。
「……本当は?」
「いやですね、あやねせんぱい。 しーあんどしーとやりあえるようへいだとじつりょくをしめせば、あたらしいおとくいさまがふえるなんておもってませんよ。」
「……はぁ。」
『……ビジター。 口数が増えたのは良い事だが、発言する前にもう少し考えを巡らせるべきだ。』
「? あやねせんぱいがきにするとしたら、こういうことかとおもったのだけれど。」
「え!? 本当に思ってないんですか!?」
「……おもって、ないですよ。」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今回はレイヴンちゃんを酷い目に遭わせることが出来て楽しかったです。
私はお恥ずかしながら普段飄々としているキャラが本気で焦ったり取り乱すところを見るのが好きなのです。
どんどんブルアカのメインストーリーが更新されていますが、私は書くのに必要なところまでしか読んでいないので、矛盾が生まれたら笑って許してほしいです。
それでは、また。