※ガスト博士の暗殺について、年表見た感じヴィンセントの意識が戻った後にはもう亡くなっていたと思われましたが、テーマがハッピーエンドなので、エアリスの誕生日に意識を取り戻した設定にしました。
見ていることしかできなかった。
それが、私の罪。
目を覚めた時に感じたのは、激痛。そして頭に一瞬の霞が入り、自分が自分でないような感覚になる。手を見ると、それは人ではない、魔獣のもの。
寝ぼけてカオスになったのか。深呼吸を一つ。身体を落ち着かせて、人間のすがたに戻った後で、気づく。
――これは、タークスの制服?
もう何十年も袖を通した記憶がない黒いスーツ姿に困惑する。首の後ろあたりもスースーする。髪に触れると、それは眠る前の自分の記憶よりもずいぶんと短くなっていた。あたりを見回す。
――ここは、神羅屋敷?
診察台の上に寝かされていたヴィンセントは、猫のように足音を立てずそこから下り、部屋を見回す。頭がくらくらする。万全ではない視界の中、この部屋の情報を探る。
近くに脱ぎ捨てられた白衣が一着。そして、PCが一台。PCを操作するとパスワード入力画面が現れる。あいにくパスワードは分からないからパソコンの中身を見ることはできない。なにか情報はないか? 都合よく近くにパスワードの書かれた付箋など貼ってはいないか?
確認したが、そんなものはない。もう一度画面を見る。隅に表示された日付にヴィンセントの心臓が冷えた。
[μ]-εγλ 1985 2/7
エアリスが生まれた日だ。
ぐらりと世界が揺れる。ひどい貧血と乗り物酔いが一気に来たような症状に思わず膝をついた。
意識が遠のきそうになるのを必死にこらえる。こんなところで倒れているわけにはいかないのだ。
なにか――なにか、ないか
思わず、脱ぎ捨てられた白衣を掴む。そのポケットに、何か入っていることに気づき、それにポケット越しにふれた。
携帯電話だ。
ぼやける視界の中、それを取り出し、番号を押す。あっているかわからない。記憶の隅に残っていたその番号は、かつての同僚--いや、この時代なら、現在進行形で同僚である男のものだ。
コール音が鳴る。一回。二回。三回。
永遠にも感じる時間の中、四回目のコール音で相手が出た。
「クレシェント博士? あなたが何故こちらの携帯に?」
声の相手は、求めていた相手だ。
「ヴェルド」
「……ヴィンセント?」
「単刀直入に言う。ガスト博士は、古代種と共にいて、宝条博士に監視されているな?」
「……」
「なんとしても、古代種とガスト博士を傷つけるな。厳重に保護をしろ……」
それだけ伝えると、またぐらりと視界が回る。
携帯の向こうでヴェルドが何かを言っている。しかし、ヴィンセントの耳にはきこえなかった。
もし、あの時、見ているだけではなく、行動することができたら……
何か変わっただろうか?
その問いに、答える者はいない
セフィロスは次から