ヴィンセント逆行   作:キザキすい

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今回から三章。[μ]-εγλ 1991になります。
エアリスは6歳くらいです。

お気に入り登録数がいつの間にか三桁まで行っていてびっくりしました!
たくさんの方に読んでいただけてうれしいです!



三章 [μ]-εγλ 1991
Ⅰ エルミナ


[μ]-εγλ 1982 神羅屋敷

 

 

「宝条君、君は何を考えているんだ!」

 

 ガストの言葉に、宝条は呆れたような視線を向けた。

 

「何って? あのサンプルの使い道以外に何があります?」

「サンプル……だと」

「ガスト博士も承知の上でしょう。彼は、我々の《実験》で産み出された《サンプル》だと」

「君が、それを言うのか! 君は、セフィロスの父親だろう!」

 

 ガストの言葉に宝条は『ただ、遺伝子を提供したにすぎませんよ』と、吐き捨てた。

 

 

 

[μ]-εγλ 1991 神羅ビル

 

 

 片手で小脇に抱えられるくらいだった子供は数年でずいぶんと成長した。セフィロスの身長がずいぶんと伸びたことに気づいたヴィンセントは、『時がたつのは早いな』などと年寄りのようなことを言っている。

 そんなヴィンセントの視線の先にいるセフィロスは、割れたマテリアのかけらをいくつか集めて、手のひらでもてあそんでいた。

 最近、割れたマテリアのかけらでも魔法を発動することができるということが分かったのだ。その練習のために集められたものである。

 割れたマテリアのかけらの近くに、いくつかヒビの入ったマテリアがある。それは何に使うのかとヴィンセントが問えば、セフィロスは『使い捨てのマテリアにします』と返した。以前、ヒビの入ったマテリアで魔法を暴発させて怪我をしていたことを思い出したヴィンセントは、今すぐにでもそれを取り上げたい気持ちで、セフィロスが手に持っているマテリアたちを睨んでいた。

 ヴィンセント達は、近く神羅ビルを脱走するつもりだ。エアリスには知られていないが、ガストとイファルナ、そしてセフィロスはその計画について知っている。

 セフィロスが研究員たちの気を引いている間にビルを脱出するという計画ではあるが、どうやって気を引く気でいるのか、セフィロスは教えてくれなかった。

 テーブルの上で転がしていたマテリアを箱にしまうと、セフィロスは研究員に呼ばれ、マテリアの入った箱を手に訓練ルームへと向かう。

 セフィロスの持っている箱のなかにあるマテリアの欠片たち。そのなかに押し込まれるようにしてヒビの入っていたマテリアが入っていることに、研究員たちは気づかなかった。

 

 

 脱出する計画はリーブにも伝えてある。すると、彼は『前回は言い忘れましたが』と前置きをしてから、バレットにも記憶があることを伝えた。彼はある計画のために各地を周っているらしい。

 

 ――私の方も、そろそろ動かなければならないな

 

 セフィロスと出会ってから何年もたった。小さな子供だった彼はまずイファルナの身長を抜き、次はガスト博士と並ぶくらいになった。ガスト博士は『この調子ならヴィンセントの身長も抜くかもしれませんね』と話している。未来を知っているヴィンセントはそれに対し、苦笑いの身を返した。

 ヴィンセントの髪も随分とのびた。あの時、旅をしていたころに比べればまだ短いが、男性の中ではずいぶんと長い部類だ。

 カレンダーを見る。決行の日は近い。

 

 

 

 そして迎えた決行の日。

 シミュレーションルームから大きな音がしてヴィンセントはサッと顔を青ざめさせる。

 

 ――まさか……!?

 

 ヴィンセントが慌ててそちらへ向かう。研究員たちは皆気絶しているようだ。

 

「ヴィンス、今のうちです。早く――」

「セフィロス! どうしてこんな危ないことをするんだ!」

 

 セフィロスの手にはヒビの入ったマテリア。以前魔法を暴発させたものだ。

 

「これが一番簡単で確実だからですよ。怪我をしないように魔力は、調整しました。急ぎましょう」

 

 いろいろ言いたいことはあるが、今は時間が惜しい。ヴィンセントは事前に気絶させて縛り上げておいたタークスのいる部屋へと戻る。そこにはガスト博士たちがいた。

 

「ヴィンセント、さっきの音は」

 

 驚くガスト博士。それに対し『説明は後で』と言って彼らつれて外へと向かう。眠そうに眼をこすっているエアリスが、イファルナに連れられて出てきた。母と手をつないでいる彼女は状況がよくわかっていない様子で頭にクエスチョンマークを出していた。

 

「なにがあったの?」

 

 エアリスに、イファルナは言う。

 

「エアリス、お母さんたちと、冒険しない?」

 

 イファルナの言葉に、エアリスは目を輝かせる。

 

「ぼうけん?!」

「そう、ハラハラドキドキだよ」

「ハラハラドキドキ……? うん、行きたい!」

 

 まさか、このビルを脱出するとは考えていないだろう。エアリスはすっかり目が醒めた様子で、イファルナを見上げている。そんな彼女にガスト博士は『隠れて移動するから、声を出さないように』とエアリスに言う。彼女はイファルナとつながれていない方の手で自分の口を押えた。

 事前にリーブの手によって、この日のこの時間の一部のセキュリティシステムの電源が切られている。セキュリティシステムに接触しない道順を通り、ヴィンセント達は神羅ビルを脱出した。

 ここから先のことについてはガスト博士たちには断片的にしか伝えていない。

 協力者の元へ向かうというヴィンセントの言葉に従い、ワザと二手に分かれて電車に乗り、スラムの駅で落ち合った。

 

「協力者とは、いったい誰ですか?」

「元神羅の雇われ兵と、その奥方だ。話はつけてある」

 

 スラムのとある二階建ての家。そこの扉を開けると、一人の女性が姿を現した。

 

「早く入りな」

 

 彼女――エルミナ・ゲインズブールは、とある事情でガスト博士ら親子をかくまうために、ヴィンセントに協力しているのだと、かいつまんで説明した。その話を聞きながら、イファルナは『おや?』と思う。

 

 ――私と、あの人と、エアリス。……なら

 

 その疑問を口にしようとしたところで、『ところで』とエルミナが口を開く。

 

「あれはいったい何だい?」

 

 エルミナが指をさした先には、ヴィンセントにこんこんと説教をされているセフィロスの姿。

 それに対しガスト博士は『ここにくるまでに彼がちょっと危険な行動をしたようで』と苦笑いを浮かべている。

 それに対し、エルミナの夫は『男の子ならちょっと危険なことをしたがるのは当然のことだ』と笑い、エルミナはそんな夫にあきれた視線を向けながら『子供が危ないことをしたら叱るのが親の役目だし、危ないことをしてほしくないと思うのも当然だよ』と言った。

 人の好さを感じさせる夫婦の様子にイファルナは肩から力を抜く。それと同時に、一気に眠気が襲ってきた。エアリスはすでにほとんど眠っている状態だ。

 

「今日はもう休みなさい」

 

 エルミナの言葉に甘え、イファルナとエアリスは客間へ通され、そこで眠った。

 

 

 

 

 




説教されるセフィロスというのもなかなかにシュールな光景かもしれないと書いている途中で思いましたが、
よく考えてみればCCでアンジールに説教されていたと話していましたね。
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