誤字脱字報告助かります。
今回からP0ソルジャーの三人が出張ります。
グレンと言う男はおおざっぱな性格ではあるが、基本的に仲間想いで気のいい男である。しかし、それ以上に厄介ごとを拾ってくる才能に長けており、彼を扱える人間は限られていた。
そのため、彼が起こす騒動に巻き込まれる人間はいつも決まった顔ぶれとなる。
グレン・マット・ルティアの三人は突然上層部に呼び出され、困惑した。
――なにかやらかしたかなあ。それとも、過去に起こした色々がバレたか
などと考えているのはグレン。
――この馬鹿のやらかしたあれこれに、巻き込まれてしまったのだろうか?
そう考えているのはマットとルティア。
上層部への上手い言い訳を考えているグレンとは対照的に、マットとルティアはグレンをどう始末してやろうかと、恨みのこもった視線を向けている。
そんな視線をどこ吹く風と受け流したグレンは『ま、何とかなるさ』と明るく言う。それに対し、マットとルティアは大きなため息を吐いた。
まきこまれる方はたまったものではないのだ。
案内された部屋には、治安維持部門統括のハイデッカーと科学部門の宝条がいた。なぜか怪我をしている宝条について質問する間もなく、彼らは淡々とグレンたちを呼んだ理由を語る。
曰く、神羅にいた《実験体》を持って脱走したタークスの抹殺もしくは捕縛・《実験体》の奪還。
任務を告げられて、グレンは分かりやすく肩の力を抜いた。処分されるわけではなかったからだ。その態度に気づいたマットが、グレンを小突く。
そんな彼らのことなど完全に無視して、ハイデッカーは任務について説明をした。
「あー、処分じゃなくて良かったな」
エレベーター内でのグレンの言葉に、マットはため息を吐く。
「これからは処分されそうな行動をするな」
「それは、無理な相談だ」
「おい」
そんな二人を見て、ルティアは呆れたような声を出す。
「マット、そこのバカに何言っても無駄よ」
「……それはそうか」
グレンに文句を言うのはあきらめ、マットはルティアの持つ写真を見た。今回《抹殺もしくは捕縛》しろと上に言われた、脱走タークスの写真だ。
名前はヴィンセント・ヴァレンタイン。タークス試験を首席で卒業した男。年齢は三十台後半となっているが、最近撮られたらしい写真を見ると、ずいぶん若く見える。見た目は二十代後半くらいだ。
ヴィンセントの詳細な情報はある反面、《実験体》の情報はない。一体《実験体》とは《何》なのか?
――俺たちは軍人だ。上から与えられた任務をこなすだけ
マットはそう言い聞かせ、神羅に抱いた疑念を押し込める。
「上の話じゃ、そいつらはスラムへ向かったらしい。グレン、出番だ」
「ああ」
スラム出身であちらの事情に詳しいグレンにまずは情報収集を任せ、マットが作戦を組み立て、目標がどこにいるかわかったらルティアが索敵――場合によってはこちらに気づかれる前に目標を射殺。
マットの立てた作戦にグレンはうなずき、神羅ビルから出てすぐにスラムへと向かう。その間にマットはミッドガルから外へ出る道の監視カメラの確認。
万が一対象と接触することになった際、女性であるルティアが一番油断させることができると判断し、なるべく向こうに《脱走したタークス達の情報を集めている神羅関係者》として情報が渡らないようにするため、彼女は一旦ミッドガル内に作った拠点で待機させ、マットが集めた映像や資料の確認を任せた。
丸一日、グレンがスラムの人間と話をして情報を集めたところ、どうやらヴィンセント達は五番街スラムに一晩潜伏していて、今朝ミッドガルを出たらしい。マットが調べた監視カメラにも、ミッドガルを出るヴィンセントらしき男が写っている。気になるのは彼が連れている人物だ。身長からして女性か、十代の少年ぐらいと思われる。
「なんでも、白衣を着た男と女と子供二人をつれていたらしい。どこの家に厄介になっていたかまでは分からなかった」
グレンの言葉にマットは考える。少年か女性と思われる人物は、グレンの話す女か子供二人のどちらかだろう。
マットは地図を取り出し、ヴィンセントが写った監視カメラのあった場所に印をつけた。
「ここから出るならおそらく向かった先は――だが、気になることがある」
「なんだ?」
「この道の先にも監視カメラがいくつかある。だが、それらしき人影が写っていない。そのことを考えるとこれはブラフ。おそらくわざと監視カメラに映った後、この辺りを通れば、監視カメラの目を潜り抜けて行動できる。ミッドガルを出ることが目的であると仮定すると、向かった先は――」
「西ね」
ミッドガルの西。
「向かった先はコレルかニブルヘイムか……ゴールドソーサーってことは無いでしょうね」
「さすがにそれは考えられないが、可能性の一つとして考えよう」
ルティアの言葉にマットは答えながら地図の西側を睨んだ。
ルクレツィアと話を終えたヴィンセント達は、しばらく近くの集落に身を寄せることにした。どこからか流れ着いたはぐれ者や、戦争で家族を失った人たちが身を寄せ合うように暮らしている集落である。ちょうど大きな道の近くということもあり、旅人が時折泊まりに来るようで、小さな宿屋が一軒ある。
友人の忘れ形見と共に旅をしているという設定で、宿をとることにする。気のよさそうな女将は『大変でしょう』と言いながら、心配そうな顔をしてヴィンセントに鍵を渡す。
鍵を受け取ると、二階へ進み、鍵についたキーホルダーと同じ番号の書かれた扉の部屋へ入る。
装備を外し、ベッドに腰を掛けてようやく人心地ついた。
「セフィロス、疲れていないか?」
セフィロスが底なしの体力を持っていると言っても、外に出るのはほとんど初めての経験だ。ヴィンセントの問いに、セフィロスは首を横に振ろうとして――少し迷ってからうなずいた。
「すこしだけ」
「そうか。では夕食は少し早めに持ってきてもらおう。今日は早めに寝なさい」
「はい」
頷いてから、セフィロスはベッドに横になり、ぼんやりと天井をながめている。
外から、子供の声が聞こえると、セフィロスは少しだけ窓の方に視線を向けてから、ゆっくりと目を閉じ、開けた。
どこかぼんやりした彼の様子に、ヴィンセントは『本当はすごく疲れているんじゃないのか?』と問えば、セフィロスはあいまいな笑みのみを返した。
そんな彼を残し、ヴィンセントは部屋を出ると従業員を捕まえて、今日は早く寝たいから夕食を早めに用意して欲しいと頼む。従業員は笑顔で『かしこまりました』と返事をすると奥へ引っ込んでいった。
そのとき、外から甲高い声が聞こえた。何があったのかと宿屋の窓から様子をうかがうと、数人の子供たちがふざけ合っているのが見えた。
年齢はセフィロスと同じくらいか少し下くらいの子供たちだ。
――普通に過ごせたのなら、セフィロスもあの中に混ざっているのだろうか
それとも、屋内で本を読んでいるおとなしいタイプなのか。
ヴィンセントは、セフィロスの望む普通の生活を考えながら、窓から目をそらした。
グレンは今まで何をやらかしていたのか?