ヴィンセント逆行   作:キザキすい

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FFECルティアさんのイースター衣装がお気に入りです(本編と関係ない報告)


Ⅳ ルティア

 

 

 三日ほど、ターゲットの動きを予測し、周囲の情報を集めた結果、彼らが身を寄せているであろう場所はある程度見当がついた。

 そのうちの一つ――マットが最も可能性が高い場所であると言っていた集落を探る。戦争から逃れてきた人々が暮らしているというそこは、訳アリの人間が身を隠すにはもってこいの場所だ。

 遠くから集落の様子をうかがっていると、黒い服に赤いマントを羽織った男が見えた。

 

「みつけた」

 

 スコープを覗き込んだルティアが口角をあげる。

 そこにはターゲットであるヴィンセント・ヴァレンタインの姿。幸いこちらに気づいていない様子。この引き金を引けば任務は終わる。そう思った瞬間、ヴィンセントの近くに寄ってきた人影を見てルティアは引き金から手を離した。

 子供だ。

 背景の物から予測した身長はルティアと同じか少し大きいくらい。あどけない顔立ちをした彼は見たところ十代の少年だ。

 おそらく、監視カメラに写っていた《ヴィンセントと共にいた小柄な人影》の正体だろう。子供に向けているヴィンセントの視線が優しいところを見ると、ヴィンセントにとって大切な存在であることがわかる。

 

 ――さすがに、子供がいるとやりにくいな

 

 ヴィンセントのみを打ち抜くことは可能だが、子供が予測できない動きをした場合、彼に当たってしまう可能性がある。どうしたものかと思案したその時――

 

 ――……!?

 

 ヴィンセントがこちらを見た。

 

 ――まさか、気づかれた。

 

 彼が懐の銃に手をかけることを確認した後、ルティアは慌てて物陰に隠れた。

 

「気づかれたかもしれない」

 

 無線で別場所に待機しているグレンとマットにそう伝えた。

 

 

 

 

 ――逃げたか

 

 こちらを狙っているらしい人影が、普通の人間では感知できないほど遠くにあることには気づいていた。危険察知能力はあるらしく、こちらが武器に手をかけようとした瞬間にそれは逃げ出した。

 

 ――おもったより、早く嗅ぎつけられたようだ。

 

 さてどうするかと考えていると、セフィロスが心配そうにこちらを見た。

 

「ヴィンス?」

「神羅の奴らが、私たちを連れ戻しに来たようだ」

「……」

「大丈夫だ。お前は、私が守ろう」

 

 優しく頭をなでるヴィンセントに、セフィロスは何かを言おうと口を開き、しかし何も音を発さないまま、閉じた。

 その時、甲高い泣き声が聞こえた。そこを見ると大きな声で鳴いているエアリスくらいの小さな女の子。その隣は女の子よりも少し年上に見える男の子。

 二人の頭上にある木の枝には、チョコボのぬいぐるみが引っ掛かっていた。どうやら男の子が女の子のぬいぐるみをふざけて投げたら、木の上に引っかかってしまったらしい。

 大人たちが仕方ないとばかりにはしごや踏み台を探しに行こうとしたとき、セフィロスは軽やかに跳躍し、ぬいぐるみをとった。

 

「どうぞ」

 

 優しく微笑みながら両手でぬいぐるみを差し出すセフィロスに、女の子は涙をひっこめて、少し照れくさそうにぬいぐるみを受け取った。

 

「ありがとう、おにいちゃん」

 

 じっとまっすぐセフィロスを見上げている女の子に、男の子は面白くなさそうな表情でセフィロスを見ていた。

 田舎の子供とは違う、洗練された雰囲気を持った、都会から来た少年は、この村の少女たちには、同じ村の少年よりも大人っぽくてかっこよく見えるようで、滞在を始めた時から、セフィロスが同年代の少年少女から注目されているのは気づいていた。

 周りでちらちらとセフィロスの様子をうかがっている少女たちの視線を気にすることなく、セフィロスはヴィンセントのもとに戻ってくる。

 

 ――あまり長くいると人間関係が面倒なことになりそうだ。

 

 などと考えながら、ヴィンセントは次の潜伏場所はどこにするかと頭の中に地図を浮かべていた。

 

 

 

 

 そのころ、ルティアはグレンと合流していた。

「近くに子供がいる。撃てない」

「人質か?」

 グレンの言葉にルティアは首を横に振る。

 

「多分、監視カメラに写っていた小柄な人物だと思う」

「ってなると、仲間か……。ヴィンセントはともかく、ガキ殺すのはなあ」

 

 スラムのクズと言われているグレンだが、未成年の子供を殺すことをためらうくらいの良識は持ち合わせている。ルティアも、子供は殺したくないと思っていた。

 

「ハカセは?」

「さっき私が子供のことを伝えたら、上に連絡するって……」

 

 ルティアがそう言ったところ、足音荒くマットが現れ、グレンの隣に座った。彼らしくない、荒っぽい態度に、グレンとルティアは目を見開く。

 

「ハカセ、どうしたよ? 報酬を減らされた?」

「その呼び方をするな」

 

 マットはグレンをにらみつけ、次いで不機嫌そうに舌打ちをした。

 尋常ではない様子にグレンはたじろぐ。

 

「わるかったって、そこまで怒ることねえだろ」

「違う!」

 

 普段の彼らしくない大声にグレンだけでなく、ルティアも身をひるませた。それにマットはしまったとばかりに目を見開き、『すまん』と頭を下げる。

 

「俺が怒っているのはそこのクズに対してではない。……神羅の上層部だ」

「何かあったの?」

 

 ルティアの言葉に、マットは携帯の画面を見せる。そこにはルティアが見た、ヴィンセントと共に行動をしていた少年が写っている。

 

「彼が《実験体》だ」

 

 マットの言葉に、グレンとルティアは息をのむ。彼が盗んだのはモンスターの幼体か何かだとばかり思っていたが。

 

「実験体って、どう見たって人間のガキじゃねえか」

「そうだ。人間の子供をつかって、人間の身体能力をあげる実験をしていたらしい」

 

 その言葉に、グレンとルティアは顔を青ざめさせる。そんな二人に、マットは感情を押し殺した声で言う。

 

「銃弾の数発当たったところで死にはしないから、好きに撃てと言われた」

「武器持っていない子供に銃を向けることなんてできないよ」

 

 ルティアの銃を握る手に力がこもる。その気持ちは、マットもグレンも同じだ。

 どうするべきか――考え込む彼らの近くに人影一つ。

 とっさに反応したのはグレンだ。しかし、武器を手に取ろうとした瞬間その武器を奪われる。武器を奪った小柄な人影は、グレンの武器を遠くへ投げ捨て、死角からグレンの頭へと蹴りを入れた。

 一瞬視界が暗くなるとともに、頭部への衝撃で頭がくらくらする。

 そんな中でも気をしっかりと持ち、グレンは隙をついて投げ飛ばされた武器を拾い、それを振りかぶった。それを真正面から受け止めたのは小柄な少年だ。

 びりびりとした衝撃に顔をゆがませながらも、引くつもりはないとばかりに刀でグレンの武器を受け止めている。

 次の瞬間、マットとルティアがはじかれたようにグレンの死角を撃った。そこから現れたのはヴィンセントだ。彼は銃で二人と応戦したのち、一気に距離を詰める。

 普通の人間なら、ここで銃弾を浴びて終わりだ。しかし彼は気にした風もなく、二人と距離を詰めた瞬間、その姿が魔獣のそれへと変わった。

 マットらが驚いた隙を狙い、彼を蹴り飛ばした。

 

「マット!」

「よそ見をする余裕があるんです、か!」

 

 グレンと鍔迫り合いをしていた少年が、一瞬力を抜く。そのせいでグレンが体勢を崩した。その一瞬の隙を狙い、少年がグレンの腹に蹴りを入れる。

 

「ぐうっ」

 

 吹っ飛ばされたグレンの武器を持つ手を、少年が押さえつけた。

一方、ヴィンセントは姿を人間に戻し、ルティアの後頭部に銃が突き付ける。人質とされた彼女を、グレンとマットが見る。

 

「ルティアを離しやがれ!」

 

 グレンが体を起こそうとした瞬間、強い力で地面に押さえつけられる。

 

「おとなしくしてください。手荒な真似はしたくありません」

 

 丁寧な物腰で忠告しながら、自分よりも体格が勝る男を簡単にねじ伏せる銀髪の少年を見て、マットは自分の不覚を呪った。

 子供であるからと侮って、彼への対策を考えていなかった。マットはどうにか隙を見てルティアを救出出来ないか考えながら銃を握る……瞬間彼の右手が撃たれた。

 

「そこの男、動くな。動いたらこの女の頭を打ち抜く」

 

 ヴィンセントの言葉に、マットは撃たれた右手を左手で止血しながらうなずいた。

 ルティアを人質に取っているヴィンセントに少年はのんきな声を出す。

 

「ヴィンス、悪役みたいです」

「セフィロス、少し黙っていてくれないか」

 

 セフィロスと呼ばれた少年は、グレンを拘束する手を緩めないまま、肩をすくめた。

 

 

 

 

 




セフィロスは宝条に聞かされてヴィンセントの身体のことはある程度知っています。
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