誤字脱字報告助かります。
閲覧数がいつの間にか五桁になっていて驚きました!
たくさんの方に読んでもらえてうれしいです。
武器は没収されたが、あっさりと拘束は解かれた。どうやら、殺す気は無いようだ。
黒い仕事ばかりしているイメージのタークスらしくないとぼやくグレンを、ルティアが小突いた。
「ヴィンスは、優しい人です」
言いながらセフィロスは撃たれたマットの手にケアルをかけていた。
グレンたちが余計なことをしないか見張っている無表情な男が優しいと言われても、納得はできない。
あの齢の少年にしては異質な身体能力を発揮したセフィロスだが、話してみるといたって普通の少年だ。戦闘用に改造を施されているという割には、穏やかな性格をしている。
「そもそも、俺たちはガキを殺す趣味は無いんだ」
グレンの言葉に、マットもルティアも頷く。
「俺たちは、正直神羅のやり方に賛同できないと思っている。逃げ出したわけを話してくれないか?」
マットの言葉に、ヴィンセントは淡々とした口調で経緯を語った。
「セフィロスは神羅の科学班で生まれたころから実験体として育った。そんな彼をあそこから逃がしてやりたくて、私は彼を連れて神羅から逃げたんだ」
「人間の能力を底上げする実験――お前たちは、ソルジャー計画の被検体か?」
マットの言葉にヴィンセントは『半分正解だ』と答える。
「私は神羅の実験体だが、ソルジャーではない。死にかけた体を無理矢理生かすために少々弄られただけだ」
魔獣の姿になることができるなど、少々弄られただけと言うことはないだろう。そう思ったが、マットは言葉をつぐんだ。そんな彼にヴィンセントは続ける。
「セフィロスは、ソルジャーになるために魔晄を浴びせられ、戦闘訓練を受けている。神羅の英雄として作り上げられた存在――それがセフィロスだ」
ヴィンセントの言葉に、セフィロスは暗い顔をする。
「英雄なんて、なりたくはありません」
傷のふさがったマットの手を離しながら、セフィロスはうつむいた。
「そうだよな~。人々を引っ張る英雄様! って割には押しが弱そうだもんな」
能天気な声を出すグレンを、マットとルティアが同時に睨む。
「もっとほかの言い方ができないのか」
「グレン、サイテー」
彼らの様子を見ながら、ヴィンセントは考える。
――想像以上に人がいい奴らを寄こしてきたな。
思いのほかあっさりとセフィロスにほだされている彼らを見ながら、ヴィンセントは考える。こちらを油断させるための作戦かとも考えたが、それにしては、気を抜きすぎているように思う。
特にあのグレンと言う男は、腹芸が得意そうに思えない。
武器を取り上げたこの場で一番警戒すべきは、この面子の頭脳担当らしきマットと呼ばれていた男か。
彼は治療してもらった手を動かしながら『ありがとう』とセフィロスに礼を言っている。その視線は優しく、こちらに危害を加えるような人間に思えない。
――軍人としてはいかがなものか
そうは思うが、ヴィンセントは、彼らの甘さに好感を持った。
「私たちに危害を加えないなら見逃そう」
ヴィンセントの言葉に、マットは目を見開いた。
「いいのか? 俺たちはお前たちがここにいると報告するかもしれないぞ」
マットの言葉にグレンが『それを言っちゃ、この場から逃げられねえだろ』とヤジを飛ばす。しかし、ヴィンセントは奪った武器を返しながら言う。
「お前たちはそういうことをしない人間の目をしている」
その言葉に自分の武器を手に持った三人は互いに顔を見合わせていた。
グレンたちを見送った後、ヴィンセント達は元居た集落へと戻っていった。
「セフィロス」
「なんですか?」
「私の姿を見ただろう?」
ヴィンセントの言葉に、セフィロスは首をかしげる。
「すがた?」
「人ではない、化け物の姿だ」
「……ええ」
「恐ろしくはなかったか?」
ヴィンセントの言葉にセフィロスは『いいえ』と首を横に振る。
「どんな姿でも、ヴィンスはヴィンスです。俺にとって、大切な人だってことは、かわりません」
その言葉に、ヴィンセントは肩の力を抜き、セフィロスを抱きしめた。
「そうか。ありがとう」
少しゆっくりとした足取りで集落に戻ると、宿屋のおかみさんが笑顔で迎えてくれた。親切で、こちらに深く入り込み過ぎないこの集落の人々の気質は心地いいが、居場所が神羅にバレている以上、長居はできない。明日、朝にはこの集落を離れようと、ヴィンセントは考えた
その夜のこと――。
セフィロスは夢を見ていた。
もっと強くなりたいと願うセフィロスに誰かが囁く。
――誰よりも、強い力をあげましょうか?
甘く優しい声にうなずこうとした瞬間、世界が壊れるような感覚がした。
突然、ぼんやりと霧がかかっていたような世界が、街中へと変わる。ガラガラと音を立てて崩れていく建物、ひび割れた地面。暗い空から、雷鳴がとどろいている。
――これは……なんで? ……どうして? …………《誰》が?
唐突に恐ろしくなるセフィロスに、甘い声は囁く。
――あなたは特別な子なの
特別なんて望んでいない。
――人間と共に生きることはできない。あなたもわかっているでしょう
その言葉にセフィロスは首を横に振る。そんなことはない。ヴィンセントやガスト博士、エアリスにイファルナ。自分を受け入れてくれる人間はちゃんといる。
――ほんとうに、そうかしら?
世界にノイズが走る。血を流して倒れる、ガスト博士にイファルナ――エアリス。
そして……
「セフィロス」
こちらに、銃口を向けるヴィンセント。
「私は、間違っていた」
悲しい瞳をするヴィンセントから目をそらす。
――ほら、セフィロス、こちらへ
甘い声の方へ行こうとしたとき、何者かに腕を掴まれた。革手袋の感触だと気づいた瞬間、パリンと薄い飴細工が壊れるような音と共に世界がまた崩れ落ちる。
もといた、深い霧の中のような世界に戻った
「お前は、間違えるな」
低い、男の声だ。
「?」
「お前を想う者はたくさんいる。それを決して忘れるな」
「……」
「すべてを見て、知ったうえで、あの手を取るなら止めはしない。今は、選択の時ではない」
黒い革手袋の主が黒いロングコートを着ていることだけを確認した瞬間、意識が遠ざかった。
そして、目を覚ます。
黒いコートの男はいったい誰なのか?