ヴィンセント逆行   作:キザキすい

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Ⅵ グレン

 

 

 

 

「ハカセ、これからどうするよ」

「とりあえず、この辺にはいなかったと報告したが」

 

 マットは言いにくそうに言葉を切ってから、言いにくそうに続けた。

 

「追手が、増やされるそうだ」

「マジかよ」

 

 グレンは舌打ちしながら、進行方向を180度変えた。

 

「おい、グレン」

「放っておけるかよ」

 

 引き留めようとするマットの声を無視して、グレンはセフィロスたちが潜伏している集落の方角へと足を進める。

 その背中にハアとため息一つはいて、ルティアもグレンに続いた。

 

「ごめん、マット。私も放っておけない! 言い訳考えておいて」

「おい、二人とも!」

 

 ルティアに続いてグレンの後に続くマットを、グレンは睨んだ。

 

「止めたって、無駄だぞ」

「止める気は無い。乗り掛かった舟だ。一緒に沈んでやる」

 

 マットの言葉にグレンは白い歯を見せて笑った。

 

「そうこなくっちゃな!」

 

 

 

 

 翌朝。

 神羅に居場所を嗅ぎつけられるのも時間の問題だと言うことで、ヴィンセントは『拠点を変える』と言ってこの集落を出る準備をしていた。

 彼を手伝いながら、セフィロスはどこか心ここにあらずといった風に、ぼんやりとしている。

 

「どうした?」

「追手、まだ、来ますよね」

「大丈夫だ。何が来ても、私が君を守ろう」

 

 そう言われ、セフィロスの頭をなでると、彼は『子供じゃありません』と言いながら、はにかんだ。

 集落を出て、チョコボに乗り、一時間ほど走った時、見慣れた人影が見えた。

 

「よお」

 

 事前に先回りをしていたらしいグレンたちの姿に、ヴィンセントは顔をしかめる

 

「私たちを追うのはやめるんじゃなかったのか?」

「ああ、そうだ。だから、一つ情報をやろうと思ってな」

 

 グレンの後に、マットが続けた。

 

「神羅から追手が増やされた」

「そうか」

 

 ヴィンセントのあまりにも淡々とした様子に、グレンは『それだけかよ』と文句を言い、ルティアが呆れたようになだめている。

 さっさと道を進もうとするヴィンセントの後ろを歩いていたセフィロスは、ふと何か思いついたようにグレンの袖を引っ張った。

 

「ん?」

 

 なにかあるのだろうか? グレンがセフィロスに近づいた瞬間、セフィロスが小声で何かを言う。それにグレンが答える間もなく、ヴィンセントが声をかける。

 

「セフィロス、先を急ぐぞ」

「はい!」

 

 彼らの背を、グレンはじっと眺めていた。

 

 

 

 グレンの言った通り、その後何人かの追手と遭遇した。しかし、グレンたちほどの腕を持つものはおらず、拍子抜けするほどに簡単にまくことができた。

 野宿や適当な宿屋への宿泊を繰り返し、ヴィンセントは神羅から隠れるように逃げ続ける。いつまでこうしていればいいのか……ヴィンセントはぼんやりと考えた。

 

 ――いっそ、ウータイあたりに渡るか?

 

 ヴィンセントはちらりとセフィロスを見る。ここ最近、彼は口数が少ないように思う。自分もセフィロスも話をする方ではないが、それにしても……。

 

「ヴィンス」

「どうした?」

「ごめんなさい」

 

 セフィロスの言葉を最後に、ヴィンセントの意識は途切れた。

 

 

 

 次に目を覚ましたのはどこかの研究所の医務室だ。

 

「おっと、うごくなよ」

 

 量産品の銃を突きつけた男は、自分たちを追っていたソルジャー――グレンだ。

 

「……お前は、私たちを追うのをやめると言っていなかったか?」

「そのつもりだったが、状況が変わったんだよ」

「セフィロスはどうした!」

「ああ、あいつは」

 

 グレンが話そうとしたとき、彼の背後にいたタークス――ヴェルドが口を開いた。

 

「まずは、君がここにいる理由を話そう」

 

 

 

 ヴィンセントを気絶させたセフィロスは背後に声をかけた。

 

「タークス、ですよね?」

 

 セフィロスはまっすぐに彼らが息をひそめている木の影を見た。そこから姿を現したのはヴェルドだ。お互いに顔と名前を知っているが、こうして直接顔を合わせるのは初めてである。

 

「気づいていたのか」

「ついさきほどからですけれどね」

 

 セフィロスはヴェルドとその背後に控える部下に、気絶したヴィンセントを渡した。

 

「神羅からは、逃げられないでしょう」

「……ヴィンセントの努力を無駄にするつもりか?」

 

 その問いに、セフィロスはあいまいな笑みを返す。

 

「意味はありました。母さんにも会えた。つかの間の、普通の人間らしい暮らしができた」

「……」

「これ以上、欲張ってしまったら、ヴィンスが居なくなってしまいそうな気がするんです」

 

 それは、ヴィンセントがセフィロスのために命を懸け、そして死んでしまうという未来があるということなのだろうか?

 

「本当に、いいのか?」

「ええ……」

「……ヴィンセントはこちらで預かろう」

 

 部下がヴィンセントをつれて行くのを確認すると、ヴェルドはセフィロスに背を向ける。

 

「あいにく、こちらには君を捕縛しろという命令は来ていない。気が変わって逃げるのも、止めはしない」

 

 そう言って近くに止めたヘリへ向かう。その背に、セフィロスは頭を下げていた。

 

 

 

「セフィロスは、一人で逃げたのか?」

 

 ヴィンセントの問いにヴェルドとグレンは顔を見合わせ――グレンは、首を横に振った。

 

「いいや、神羅に投降したよ」

 

 グレンの言葉にヴィンセントは目を見開く。

 

「なん、だと」

「丁重な扱いを受けているらしいが、今は科学班のフロアで軟禁状態。なんでも、ガストって博士と一緒にいるらしい。悪いが、俺が知っているのはこのくらいだ」

「ガスト博士が……?」

 

 なぜ、彼まで神羅に……? その問いにグレンは答えた。

 

「なんでも、妻子の無事を保障する代わりに……だそうだ」

「彼の妻子は、今はタークスの監視下にある」

 

 グレンとヴェルドの言葉に、ヴィンセントはうつむいた。

 

 ――ガスト博士やイファルナを生かしたことで、未来を変えることができると、思いあがっていたのか。

 

 これでは《前》と大して変わらないではないか。悔しさのあまり、唇を噛む。握りしめた手のひらから、血がにじんでいた。

 その様子に何を思ったのか、グレンがヴィンセントの胸倉をつかむ。

 

「ヴィンセント、責任を感じて自害なんて真似はするんじゃねえぞ。あいつは、お前のために戦ったんだ」

「……どういうことだ」

 

 ヴィンセントに、グレンはゆっくりと話し始めた。

 

 

 




神羅に逆戻り。
これからどうなるのか?
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