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FF7EC FS編 CHAPTER 6までの情報をもとに書いています。ラディオル島任務についてはぼかしていますが、ゲームとは違う未来へ進みます。
以上のことを承知できる方のみどうぞ。
Ⅰ ラディオル島
[μ]-εγλ 1992 神羅ビル
ラディオル島への任務が決まった。魔晄炉の建設兼ラディオル兵の殲滅と言う任務は、最初は英雄を使うほどではないと判断された。しかし、精鋭ぞろいのラディオル兵にP0ソルジャーたちが苦戦していること、事故が起きたことなどを考慮され、《英雄》を投入すると上層部が判断したらしい。
ラディオル島に先行して向かったP0ソルジャーたちの信号を確認した神羅は、ただちに応援へ行けと、セフィロスに命令した。
「本当に、行くのですか?」
ガスト博士の言葉に、セフィロスは力強く頷いた。セフィロスの強さは知っている。同時に、彼の不安定さもよく理解しているガスト博士は不安そうにセフィロスを見た。自分がいない場所で、彼が追いつめられ、傷つくことが怖いのだ。
しかし、セフィロスはどこまでもまっすぐな瞳で、ガストを見る。
「安心してください。向こうには、心強い人たちがいます」
「そうですか……」
直接は会ったことはないが、セフィロスの口から《信頼できる人》として名前が出てくる三人だ。彼がそれだけ信頼しているなら、心強いが、それでも命と命のやり取りをする戦場へと、まだ十六歳にも満たない子供をおくりだすのだ。心配にもなる。
「セフィロス」
ガスト博士は、セフィロスを抱きしめた。
「絶対に、帰ってきてください」
「はい」
心強く頷いたセフィロスは、研究員にせかされ、神羅ビルの屋上にあるヘリポートへと向かった。
ところかわって――
再び神羅に連れ戻され、一年がたった。ヴィンセントは目の前にある雑誌を手に取る。何度も読んだそれの、内容が変わることはない。
英雄セフィロスについての記事だ。それによると、彼は今ラディオル島という島で任務にあたっているらしい。
敵兵を一瞬でなぎ倒しただとか、大型モンスターを一人で退治しただとか、そんな、年ごろの少年があこがれるような言葉が書かれた記事は、神羅の広報戦略によるものだ。
たしかに、それだけの力があるのは事実だが、この記事は多分に盛られているのだろう。
次いで、十歳のころから戦場にいた――なんて、嘘八百もいいところの文字を眺めて、大きなため息を吐く。
――神羅はあの子をどうしたいんだ……
神羅は《前》と同じように、セフィロスを人間として見ていないのだろう。ただ、英雄という名の偶像と、兵器としての役割を押し付けているに過ぎない。
――あの子は、大丈夫だろうか?
セフィロスは広告塔として使われることを嫌がっていた。『英雄になんかなりたくありません』と言ってうつむくセフィロスの姿が脳裏に浮かぶ。強い力を持っていると言っても、まだ十代の少年だ。
戦闘力に似合わず、どこか不安定な彼が、どんな思いで神羅の英雄という重荷を背負わされているのか……。
ため息をつきながら、ヴィンセントは机の上にあるものを見る。
雑誌の隣には数通の手紙。ヴェルドの部下であるタークスが、神羅の目を盗んで不定期に届けてくれるものだ。
差出人はリーブやヴェルド、ガスト博士やイファルナやエアリスだ。
リーブからの手紙には、セフィロスがラディオル島へ任務に行ったことが書かれている。そして、ヴィンセントにしかわからない特殊な暗号で、バレットが《前》の記憶を持っていて、こちらに協力をしていること、《前》は、グレンらはこのラディオル島任務後に神羅を裏切り、反神羅組織に入ったことや、ウータイへ行ったことなどが書かれていた。
彼らとの別れが、セフィロスの傷にならなければいいが――そう思っても、ヴィンセントにしてやれることはない。
――なんと歯がゆい
現在、セフィロスへの接触は禁止されている。その上、神羅ビルからも離されてしまった。
与えられた、生活するのに最低限の家具が用意された部屋で、ヴィンセントはこれからどうするべきか考えた。
手紙の中、この場に不釣り合いなほどかわいらしい封筒に入った手紙を手に取る。その中は、封筒に似合いのかわいらしい便箋が入っていた。エアリスからの手紙である。彼女の手紙には《セフィロスを狙っているなにか》の情報は入っていない。
最近セフィロスから贈り物をもらったのだということが書かれていた。とはいっても直接彼と会わせてもらったわけではなく、贈り物もガスト博士経由でエアリスに渡されたらしい。
かわいらしいチョコボのぬいぐるみをもらったのだと、はしゃいでいることがよくわかる。しかし、文面の最後は、お兄ちゃんに会いたいという言葉が消されていた跡がある。そこを指でなぞりながら、明るく前向きなのに、妙に本心を隠したがる彼女らしいと思う。
――どうにかして、会わせてやれないものか
封筒の中には便箋とは別に、チョコボのぬいぐるみを抱っこするエアリスの写真があった。花飾りをつけたチョコボのぬいぐるみは、エアリスのイメージによく合っている。
イファルナからの手紙には、こちらを心配する文章と、近状報告が書かれていた。文章から、こちらを案じる心がよく伝わってきた。
――どうするべきか
ぼんやりと天井を眺める。
表面上、ヴィンセントは《この村》へモンスター退治兼村周辺の調査要員として派遣された、スタッフということになっている。村の周辺を巡回して、何らかの調査を行い、暇なときはほとんど引きこもっている生活だ。
この村は、ほとんどが神羅の関係者で構成されている村である。下手な行動を起こすことはできない。今も、おだやかに畑仕事をしている人間が、次の瞬間にはヴィンセントの命を狙う刺客になる可能性もある。後れを取るつもりはないが、神羅の上層部へ連絡をされて、スラムにいるイファルナやエアリス達を人質に取られでもしたら厄介だ。
――しばらくは、おとなしくして、相手を油断させる……それが最善か
ヴィンセントは念のためリーブやヴェルドから渡された手紙を燃やすと、エアリスから渡された手紙を本の一冊に挟んで本棚へしまい込んだ。
ヴィンセントはあの時、神羅へ戻る少し前のことを思い出す。段々と言葉を少なくするセフィロス。その上、時々何か考え込むようなことをしていた。あの時、彼の声をちゃんと聞いていれば、もっと違う未来があったかもしれない。悔やんでも、悔やみきれなかった。
――ルクレツィア……
愛しい女性の名前を思い出し、うつむく。
――私はどうすればいいんだ
脳裏に浮かんだ彼女は、答えてはくれない。
静かに目を閉じる彼女が、悲しそうに見えた。
ただの想像である。けれど、本当に彼女が悲しむような未来が起きるような気がする。
――いや、悪い想像ばかりではだめだ。きっと、なにかあるはずだ……。
自分には協力者がいる。ヴィンセントが動けなくても、彼らが動いてくれるはずだ。自分が動けるようになるために、まずは神羅へ反抗する意思が無くなったようなふりをしなければならない。
そんなことを考えているうちに、扉をたたく音がした。
その相手は分かっている。ここ数日ほとんど毎日のようにヴィンセントの住処を訪ねてくる二人組だ。
――彼らの相手は……しなくてもいいだろう。
うんうんと自分で言い聞かせるが、中に人がいることをよくわかっている少年二人は、また扉をノックした。次いで、ヴィンセントの名前を呼ぶ声も聞こえてくる。
「……」
これはきっと、相手をしなければならない。内心でため息をつきながら、ヴィンセントは扉を開けた。
「なんのようだ」
不機嫌さを隠さないヴィンセントを恐れることなく、少年はヴィンセントに声をかける。
「ヴァレンタインさん」
セフィロスと同い年か、少し年上と思われる少年二人は、よくここにきて《英雄の話》を聞きたがった。
この二人の少年は……?